四半期分析自動車部品2027/3期 Q1

タチエス(7239) Q1経常利益+146.6%は本物か、中南米黒字化と進捗率20%の実態

2026/09/07 公開2026/09/07 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

株式会社タチエス

東証プライム 7239 ・ 3月期決算

2026/08/23 時点

株価

2,315円

時価総額

815.87億円

配当利回り

4.97%

年間115円

PER

9.2倍

PBR

0.76倍

ROE

9.2%

ROA

8.1%

経常利益ベース

自己資本比率

61.6%

配当性向

45.9%

有利子負債

41億円

D/Eレシオ

0.04倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高666億18百万円(前年同期比+4.2%)・営業利益20億14百万円(同+79.9%)・経常利益26億01百万円(同+146.6%)・親会社株主に帰属する四半期純利益14億72百万円(前年同期19百万円から約77倍)という大幅増益で着地した。
  • 経常利益急回復の主因は、中南米セグメントが前年同期の営業損失10億51百万円から今期営業利益4億80百万円へ転換したこと(約15億31百万円の改善)。中南米の売上高自体は前年同期比△7.3%減っており、増収ではなく採算面の改善によるものだが、反動によるものか構造的な改善かは本資料からは断定できない。
  • 経常利益の増加額15億46百万円のうち、為替差益(ゼロ→3億17百万円)と為替差損の消滅(3億06百万円→ゼロ)を合わせた為替関連の変動だけで6億23百万円、増加額の4割程度を占める。
  • 親会社株主帰属純利益の急伸には、連結子会社の非支配株主に配分される利益が4億88百万円から32百万円へ大きく減ったことも寄与しており、伸びの一部は事業の拡大以外の要因を含む。
  • それでも会社は通期予想(純利益86億円、前期比△7.5%)を据え置いた。第1四半期時点の進捗率は経常利益20.0%・純利益17.1%と、暦按分の25%を下回っており、見た目のYoY増益率ほど計画に対して先行しているわけではない。
  • 2026年3月期の純利益が前期比△17.8%だった点も、本業の悪化を示すものではない。前期(2025年3月期)の純利益+108.6%は固定資産売却益・関係会社株式売却益・子会社清算益など合計63億33百万円の一過性の特別利益に支えられており、2026年3月期はその反動で特別利益がほぼ消えた(5億78百万円のみ)。営業利益・経常利益はむしろ2026年3月期に伸びている。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. Q1経常利益+146.6%の中身と、通期予想が据え置かれた理由
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

タチエスは、2026年8月23日時点でPER9.24倍・PBR0.76倍・ROE9.2%・ROA8.1%(総資産経常利益率)・自己資本比率61.6%という水準にあります。会社が開示している2027年3月期の年間配当予想は115.00円で、株価2,315円に対する利回りは4.97%です。有利子負債は40億54百万円、D/Eレシオ0.04倍とごく小さく、財務は実質無借金に近い状態です。

2026年8月4日に発表された2027年3月期第1四半期決算は、経常利益が前年同期比+146.6%、親会社株主に帰属する四半期純利益が19百万円から14億72百万円(約77倍)へと、数字だけを見れば劇的な決算でした。ところが会社は同じ発表のタイミングで、通期業績予想(純利益86億円、前期比△7.5%の減益計画)を据え置いています。「これほどの増益なのに、なぜ通期は減益予想のままなのか」という一見矛盾した状態を、第4節で整理します。あわせて、前期(2026年3月期)の純利益が前期比△17.8%だった理由についても、本業の悪化ではないことを第4節で確認します。

2. 会社概要とビジネスモデル

タチエスは自動車用シートを主力とする自動車部品メーカーです。日本・北米・中南米・アジアの4地域に生産・供給拠点を持ち、各地域の完成車メーカーにシートを供給しています。2027年3月期第1四半期の地域別売上高は、中南米246億61百万円が最大で、日本241億1百万円、北米129億74百万円、アジア48億79百万円と続きます(4地域の合計が連結売上高666億18百万円に相当)。

強みと弱みの整理

強み

  • 財務健全性が急速に改善している

    自己資本比率は2022年3月期の45.8%から2026年3月期には61.6%まで、5期連続で上昇しました。有利子負債は2026年6月末時点で40億54百万円(短期借入金46百万円・社債4,008百万円)、D/Eレシオは0.04倍とごく小さく、実質無借金に近い状態です。

  • 配当は5期連続で増額が続いている

    年間配当は2022年3月期63.60円から2027年3月期予想115.00円まで、5期でおよそ8割増えました。2026年3月期は純利益が前期比△17.8%だった年でも配当は103.80円から105.00円へ増額されており、減益がそのまま減配につながっていません。

  • 中南米セグメントが黒字転換した

    売上構成比で最大の中南米セグメントが、2027年3月期第1四半期に営業利益4億80百万円と、前年同期の営業損失10億51百万円から転換しました。売上高自体は前年同期比△7.3%減っているため、採算改善によるものです。

弱み

  • 北米セグメントが黒字から赤字に転落した

    2027年3月期第1四半期の北米セグメントは、売上高が前年同期比+44.5%と伸びたにもかかわらず、営業損失6千5百万円(前年同期は営業利益1千万円)に転落しました。増収と減益(赤字化)が同時に起きている理由は、本資料からは特定できません。

  • 利益の変動が大きく、特別損益や為替評価の影響を受けやすい

    2025年3月期の純利益+108.6%は資産・株式売却益など一過性の特別利益によるところが大きく、2026年3月期はその反動で純利益が△17.8%になりました。2027年3月期第1四半期の経常利益急増も、増加額の4割程度は為替差益・為替差損の解消という営業外要因から来ています。単年の増減率だけで実力を判断しにくい会社です。

  • 通期予想への進捗は見た目ほど先行していない

    第1四半期の経常利益は前年同期比+146.6%でしたが、通期会社予想130億円に対する進捗率は20.0%(純利益は17.1%)にとどまり、暦按分の25%を下回っています。増益率の大きさが、そのまま通期の上振れ期待に直結するわけではありません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
0075,0005,000150,00010,000225,00015,000300,00020,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)30507045.847.349.756.061.6
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/03206,441-4,203-3,536-2,05945.8%
2023/03243,4361,3671,9735,82347.3%
2024/03292,9477,2058,7555,42249.7%
2025/03285,3949,62510,76811,31056.0%
2026/03269,00911,60413,8109,29713,58361.6%
2027/03会社予想270,00012,00013,0008,600
単位:百万円。出典:決算短信(2023年3月期・2024年3月期・2025年3月期・2026年3月期・2027年3月期第1四半期)

読み取れることは3つあります。

売上高は2024年3月期をピークに2期連続で減少している。 2022年3月期の2,064億41百万円から2024年3月期には2,929億47百万円まで拡大しましたが、2025年3月期2,853億94百万円、2026年3月期2,690億09百万円と2期連続で減っています。2027年3月期の会社予想は2,700億円で、ほぼ横ばいの計画です。

利益の振れ幅が売上高よりも大きい。 2022年3月期は営業利益△42億03百万円・経常利益△35億36百万円・純利益△20億59百万円という赤字でしたが、2023年3月期に黒字転換し、2025年3月期には純利益113億10百万円まで急回復。2026年3月期はそこから純利益92億97百万円へ減少しています。売上高の増減幅(-2.6%〜+20.3%)に比べて、純利益の増減幅(-98.6%〜+108.6%)ははるかに大きく、営業外損益・特別損益の影響を受けやすい利益構造がうかがえます。

自己資本比率は5期連続で上昇し、財務基盤が着実に厚くなっている。 45.8%(2022年3月期)→47.3%→49.7%→56.0%→61.6%(2026年3月期)という推移です。有利子負債は2026年6月末時点で40億54百万円(短期借入金46百万円・社債4,008百万円)とごく小さく、前期末(2026年3月末、短期借入金46百万円・社債4,009百万円)からほぼ変わっていません。有利子負債自体が小さいことから、自己資本比率の上昇は借入の圧縮というより、業績回復にともなう利益の蓄積が主因と考えられますが、より長期の有利子負債の推移までは本資料からは確認できていません。

4. Q1経常利益+146.6%の中身と、通期予想が据え置かれた理由

これが今回の決算でいちばん整理したい論点です。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の実績は、売上高666億18百万円(前年同期比+4.2%)、営業利益20億14百万円(同+79.9%)、経常利益26億01百万円(同+146.6%)、親会社株主に帰属する四半期純利益14億72百万円(前年同期19百万円)でした。伸び率だけを見ると、極めて好調な決算に見えます。

経常利益急回復の主因は中南米セグメントの黒字転換

セグメント別の営業利益(前年同期比)を見ると、地域間で明暗がはっきり分かれています。

セグメント売上高(当期)前年同期比営業利益(当期)前年同期
日本241億1百万円△3.2%4億67百万円△36.1%
北米129億74百万円+44.5%営業損失6千5百万円営業利益1千万円
中南米246億61百万円△7.3%4億80百万円営業損失10億51百万円
アジア48億79百万円+40.5%10億1百万円△28.3%

出典:2027年3月期 第1四半期 決算短信

中南米セグメントが、前年同期の営業損失10億51百万円から今期営業利益4億80百万円へ転換しました。 改善幅は約15億31百万円で、連結営業利益の増加額(20億14百万円-11億19百万円=8億95百万円)を上回る規模です。つまり、他の地域(特に日本・北米)の減益・赤字化を中南米の改善が補って余りある形で、連結全体の増益を牽引しました。

注目すべきは、中南米セグメントの当第1四半期の売上高自体は前年同期比△7.3%の減収だったことです。増収によらない黒字転換であり、コスト構造や採算面の改善が起きたことを示唆します。 ただし、これが前年同期の一時的な悪化からの反動なのか、価格転嫁や為替など構造的な改善なのかは、決算短信の記載からは断定できません。

経常利益への上乗せの4割は為替関連

営業利益から経常利益への上乗せ額(15億46百万円)にも、為替の影響が大きく寄与しています。営業外収益では為替差益がゼロから3億17百万円に、持分法投資利益が83百万円から2億22百万円に増加。営業外費用では、前年同期に3億06百万円あった為替差損が今期はゼロになりました。為替差益の発生と為替差損の消滅を合わせた為替関連の変動だけで6億23百万円の改善となり、経常利益の増加額の4割程度を占めます。 為替は市況次第で反対方向にも動きうる要因であり、この分がそのまま次の四半期以降も続くとは限りません。

純利益の急伸には非支配株主への配分減少も寄与している

親会社株主に帰属する四半期純利益は19百万円から14億72百万円へと大きく伸びましたが、四半期純利益の合計(非支配株主分を含む連結ベース)で見ると5億08百万円から15億04百万円と、3倍弱の伸びにとどまります。この差は、連結子会社の非支配株主(少数株主)に配分される利益が4億88百万円から32百万円へ大きく減ったことによるものです。前年同期は、稼いだ利益の大半が非支配株主に配分されていた計算になります。 つまり親会社株主帰属純利益の伸びの一部は、事業そのものの拡大以外に、連結子会社の利益配分構造の変化からも来ています。どの子会社の業績変動が主因かは、本資料からは特定できませんでした。

それでも通期予想は据え置かれた

会社は2026年8月4日のこの決算発表にあわせて、2026年5月15日公表の通期業績予想(売上高2,700億円・営業利益120億円・経常利益130億円・純利益86億円、純利益は前期比△7.5%)を変更しませんでした。

第1四半期の通期予想に対する進捗率は次のとおりです。

項目通期会社予想当第1四半期実績進捗率
売上高2,700億円666億18百万円24.7%
営業利益120億円20億14百万円16.8%
経常利益130億円26億01百万円20.0%
純利益86億円14億72百万円17.1%

出典:2027年3月期 第1四半期 決算短信、2026年3月期 決算短信(通期業績予想)

単純な暦按分(4分の1=25.0%)と比べると、売上高はほぼ同水準ですが、営業利益・経常利益・純利益はいずれも下回っています。見た目のYoY増益率(+146.6%など)が大きいのは、比較対象である前年同期の水準が低かったことも影響しています。 実際、前年同期(2026年3月期第1四半期)の経常利益10億55百万円は、その期の通期実績138億10百万円のわずか7.6%程度に過ぎません。前年同期が特に弱かった分、今期の伸び率が大きく出やすい面があります。

会社が通期予想を据え置いたのは、中南米の黒字転換や為替差益の発生が今後も続くと保証できないためだと考えられますが、この解釈は決算短信に明記されているわけではなく、本資料からは断定できません。次回(2026年11月予定)の中間決算で、中南米の黒字継続と北米の赤字幅がどうなるかが、この読みを検証する材料になります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/0363.6円
2023/0373.6円43.3%
2024/0392.8円58.6%
2025/03103.8円31.5%
2026/03105円38.7%
2027/03会社予想115円115円45.9%
  • 2022/03:決算短信では期末31.80円のみが明記されており、合計63.60円の内訳(中間配当分)は本資料からは特定できなかった。純損失(△20億59百万円)のため配当性向の記載なし。
  • 2027/03:2026年5月15日公表の予想(中間57.50円・期末57.50円)が、2026年8月4日の第1四半期決算時点でも変更されていない。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2023年3月期・2024年3月期・2025年3月期・2026年3月期・2027年3月期第1四半期)

配当は2022年3月期の63.60円から2027年3月期予想115.00円まで、5期でおよそ8割増えました。特に2023年3月期から2024年3月期にかけては73.60円から92.80円へ、2025年3月期にかけては92.80円から103.80円へと、増額のペースは緩やかになりながらも継続しています。

配当性向の動きには注意が必要です。 2025年3月期は純利益が前期比+108.6%と急増しました。それにもかかわらず配当は103.80円への増額にとどまり、配当性向はむしろ31.5%まで下がりました。逆に2026年3月期は純利益が前期比△17.8%と減りました。それにもかかわらず配当は105.00円へ増額されたため、配当性向は38.7%へ上昇しています。2027年3月期の予想配当性向は45.9%です。純利益が会社予想どおり減益(86億円、前期比△7.5%)で着地すれば、配当性向はさらに上昇する計画になります。利益が伸び縮みするなかでも配当水準そのものは維持・増額する方針がうかがえますが、配当性向の上昇余地には限りがあります。

2027年3月期の配当予想(中間57.50円・期末57.50円、合計115.00円)は、2026年5月15日公表分から2026年8月4日の第1四半期決算時点でも変更されていません。この予想は会社が実際に開示しているものであり、株価2,315円に対する利回り4.97%はそのまま使える数値です。

6. 会社の現状と直近の動き

貸借対照表面では、2026年6月末時点で総資産1,768億99百万円、純資産1,093億89百万円(うち自己資本1,083億円)でした。前期末(2026年3月末、総資産1,703億72百万円、純資産1,059億04百万円)と比べると、総資産・純資産ともに増加しています。発行済株式数(35,242,846株、うち自己株式922,317株)は変わっていません。

連結範囲では、当第1四半期にTACHI-S Engineering U.S.A., Inc.を連結の範囲から除外しています。前期(2026年3月期)には、中国の連結子会社2社(広州泰李汽車座椅有限公司・襄陽東実李爾泰極愛思汽車座椅有限公司)について、出資持分の一部譲渡により連結子会社から持分法適用会社に変更しており、これが2026年3月期の中国セグメント(売上高89億99百万円)が前の期から大きく減少した一因になっています(決算短信によれば減少率は50.6%)。

中期経営計画は「Transformative Value Evolution(TVE)」の第2フェーズ「Wave2 2027」の初年度にあたり、2030年度に売上高4,000億円規模を目指すとしています。2026年4月10日には、株式会社TOYO H&Iのシート・内装事業関連株式の取得に合意しており、事業領域の拡大を進めています。連結業績への具体的な影響額は、本資料からは確認できていません。

7. 業界とセクターの状況

タチエスは当サイトの「auto-parts(自動車部品)」セクターの記事です。このセクターには、完成車メーカーとの系列取引が根強く価格決定力は完成車メーカー側が握りやすいこと、海外生産拠点を持つ企業は為替の影響を受けやすいこと、ガソリン車からEVへのシフトが特定製品の需要を構造的に変化させうることなど、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約があります。

タチエスの場合、シートという製品の性格上、エンジンや燃料系部品のメーカーほど電動化シフトの直接的な影響は受けにくいと考えられます。一方で、日本・北米・中南米・アジアの4地域に生産拠点を分散していることから、完成車メーカーの各地域での生産動向と為替変動の両方に業績が左右されやすい構造は、このセクターに共通する制約そのものです。実際、今回の第1四半期決算でも、経常利益の増加額の4割程度が為替関連の変動によるものでした。

同じ「auto-parts」セクターで当サイトが扱っている東プレ(5975)も、2027年3月期第1四半期に経常利益が前年同期比+229.4%という大幅増益でありながら通期予想(前期比大幅減益)を据え置いています。東プレのケースは為替評価益と前年同期の低いベースが中心的な説明でしたが、タチエスの場合は中南米セグメントの黒字転換という事業面の要因がより大きい点が異なります。同じ「Q1大幅増益・通期据え置き」という組み合わせでも、中身の構図は会社ごとに異なることが分かります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 中間決算両面

中南米セグメントの黒字(当第1四半期4億80百万円)が第2四半期以降も続くか、北米セグメントの営業損失(当第1四半期6千5百万円)が拡大するかを確認する最初の機会。

随時中南米セグメントの採算改善が構造的か一過性かの見極め両面

売上高は前年同期比△7.3%と減収が続くなかでの黒字転換であり、価格転嫁・為替・前年の一時的な悪化の反動のいずれが主因かは本資料からは特定できない。

随時北米セグメントの収益性下振れ

当第1四半期は売上高+44.5%の増収にもかかわらず営業損失6千5百万円に転落した。増収と減益(赤字化)が同時に起きている理由は本資料からは特定できない。

随時株式会社TOYO H&Iのシート・内装事業関連株式取得(2026年4月10日合意)の進捗上振れ

中期経営計画「Wave2 2027」(2030年度売上高4,000億円規模を目指す)のもとでの事業領域拡大の一環。連結業績への具体的な影響額は本資料からは確認できていない。

10. 想定されるリスク

第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。

中南米セグメントの黒字が一過性で終わるリスク。 当第1四半期の売上高が前年同期比△7.3%の減収のなかでの黒字転換であり、前年同期の一時的な悪化からの反動という可能性を排除できません。反動であれば、次の四半期以降は伸び率が縮小、あるいは再び赤字化する可能性があります。

北米セグメントの収益性悪化。 当第1四半期は売上高+44.5%の増収にもかかわらず営業損失6千5百万円に転落しました。増収と赤字化が同時に起きている理由は本資料からは特定できず、改善のめども不明です。

為替関連の変動に業績が左右されやすいこと。 経常利益の増加額の4割程度は為替差益・為替差損の解消によるものでした。為替は市況次第で反対方向にも動きうるため、今期のような追い風が続く保証はありません。

利益のボラティリティが大きく、単年の増減率だけでは実力を測りにくいこと。 2025年3月期の純利益+108.6%は一過性の特別利益、2026年3月期の△17.8%はその反動によるところが大きく、2027年3月期第1四半期の急伸も為替や非支配株主への配分変化を含みます。表面上の増減率をそのまま実力の変化と受け取ると、判断を誤る可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

2027年3月期第1四半期は、前年同期比で経常利益+146.6%・純利益が19百万円から14億72百万円へという大幅増益でした。それでも会社は通期予想(純利益86億円、前期比△7.5%)を据え置いており、第1四半期時点の進捗率は経常利益20.0%・純利益17.1%と、暦按分の25%を下回っています。

判断の分かれ目は、第1四半期の大幅増益を「事業の実力が上向いた証拠」と見るか、「低いベースからの反動と為替・配分構造による一時的な押し上げ」と見るかです。 前者と見るなら、中南米セグメントが減収下で黒字転換したという採算改善の事実や、自己資本比率61.6%・D/Eレシオ0.04倍という財務健全性の高さが、会社の据え置いた通期予想に対する上振れ余地を示していると読めます。後者と見るなら、経常利益の増加額の4割程度が為替関連の変動であること、純利益の急伸には非支配株主への配分減少も寄与していること、そして進捗率が暦按分を下回っていることが、この決算の強さを割り引いて見るべき根拠になります。次に確認すべきは、2026年11月に予定される中間決算で、中南米の黒字が続くか、北米の赤字がどうなるかです。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期通期の経常利益が会社予想130億円を大きく下回り、中南米セグメントの黒字(当第1四半期4億80百万円)が続かず再び赤字化した場合。
  • 通期の純利益が会社予想86億円を明確に上回るペースで着地し、第1四半期時点の進捗率(経常利益20.0%・純利益17.1%、暦按分25%を下回る水準)が実は保守的な据え置きに過ぎなかったことが判明した場合。
  • 有利子負債・D/Eレシオが今後大きく増加した場合。2026年6月末時点で有利子負債は40億54百万円・D/Eレシオ0.04倍という低水準だが、この前提が崩れM&Aや大型投資で財務レバレッジが上がれば、財務健全性を強みとする本記事の整理は見直しが必要になる。
  • 北米セグメントの営業損失が拡大し、黒字化のめどが立たなくなった場合。当第1四半期は6千5百万円の損失で、前年同期の1千万円の黒字から悪化している。

よくある質問

タチエスの2027年3月期の配当はいくらですか?
会社予想は年間115.00円(中間57.50円・期末57.50円)です。2026年5月15日公表の予想が、2026年8月4日の第1四半期決算時点でも変更されていません。前期(2026年3月期)実績は105.00円だったため、予想どおりなら10円の増配になります。株価2,315円(2026年8月23日時点)に対する利回りは4.97%です。
なぜ経常利益が前年同期比+146.6%も増えたのに、通期予想は減益のままなのですか?
決算短信は通期業績予想を2026年5月15日公表分から変更していません。第1四半期の経常利益26億01百万円は、通期会社予想130億円に対して進捗率20.0%にとどまり、単純な暦按分(25%)を下回っています。見た目の伸び率が大きいのは、中南米セグメントが前年同期の営業損失から黒字に転換したことに加え、前年同期の経常利益10億55百万円自体が通期実績138億10百万円の7.6%程度という低い水準だったことも影響しています。通期でどこまでこのペースが続くかは、本資料からは断定できません。
純利益が19百万円から14億72百万円に急増したのは本業の拡大が理由ですか?
一部はそうですが、それだけではありません。四半期純利益の合計(非支配株主分を含む)は5億08百万円から15億04百万円へと3倍弱の伸びにとどまっており、親会社株主に帰属する分がより大きく伸びたのは、連結子会社の非支配株主(少数株主)に配分される利益が4億88百万円から32百万円へ大きく減ったためでもあります。この配分構造の変化がどの子会社の業績変動によるものかは、本資料からは特定できませんでした。

参考文献・引用元

  1. 01

    タチエス株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年8月4日開示。連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・純利益、前年同期比、1株当たり四半期純利益)、四半期連結損益計算書の内訳(営業外収益・営業外費用・特別損益・法人税等・非支配株主に帰属する四半期純利益)、セグメント情報(日本・北米・中南米・アジアの4区分、前年同期比・会社コメント)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本・自己資本比率)、配当の状況(変更なし)、通期業績予想(2026年5月15日公表分から変更なし)、連結範囲の変更(TACHI-S Engineering U.S.A., Inc.の連結除外)を参照した。有利子負債(40億54百万円)は連結貸借対照表の短期借入金46百万円・社債4,008百万円の合計から算出した。 / 2026/08/04 開示

  2. 02

    タチエス株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年5月15日開示。連結経営成績(売上高・各利益・EPS・ROE・総資産経常利益率)、連結損益計算書の特別損益内訳(固定資産売却益・関係会社株式売却益・子会社清算益・投資有価証券売却益、事業構造改善費用等)、財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・BPS)、キャッシュ・フロー計算書関連指標(自己資本比率・CF対有利子負債比率・インタレスト・カバレッジ・レシオの5期推移)、配当の状況(2027年3月期予想を含む)、セグメント情報(日本・北米・中南米・中国・東南アジアの5区分)、連結範囲の変更(中国子会社2社の持分法適用会社化)、中期経営計画「Wave2 2027」およびTOYO H&I株式取得合意(2026年4月10日)を参照した。 / 2026/05/15 開示

  3. 03

    タチエス株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2025年5月14日開示。2024年3月期・2025年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS・ROE・総資産経常利益率)、配当の状況(2023年3月期・2024年3月期の実績を含む)を参照した。 / 2025/05/14 開示

  4. 04

    タチエス株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2024年5月15日開示。2023年3月期・2024年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS・ROE・総資産経常利益率・自己資本比率)、配当の状況を参照した。 / 2024/05/15 開示

  5. 05

    タチエス株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2023年5月15日開示。2022年3月期(営業赤字・経常赤字・純損失)・2023年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS・ROE・総資産経常利益率・自己資本比率)、配当の状況(2022年3月期は期末31.80円のみの明記)を参照した。 / 2023/05/15 開示