東プレ(5975) Q1経常利益+229%は本物か、為替評価益と通期据え置きの分かれ目
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
東プレ株式会社
2026/09/04 時点
株価
3,495円
時価総額
1,888.06億円
配当利回り
2.86%
年間100円
PER
9.3倍
PBR
0.68倍
ROE
8.0%
ROA
9.4%
経常利益ベース
自己資本比率
65.0%
配当性向
33.0%
有利子負債
432億円
D/Eレシオ
0.17倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高1,006億46百万円(前年同期比+14.2%)・営業利益68億08百万円(同+39.7%)・経常利益90億38百万円(同+229.4%)・純利益65億62百万円(同+221.8%)という大幅増益で着地した。ただし前年同期(2026年3月期第1四半期)の経常利益27億44百万円は、通期実績357億80百万円のわずか7.7%という異例に低い水準であり、伸び率の大きさにはこの低いベースとの反動という側面が含まれる。
- それでも当第1四半期はプレス関連製品事業のセグメント利益がアメリカでの物量増加により前年同期比+58.3%と伸びており、前期(2026年3月期)通期がプレス関連製品事業の減益(前期比△12.7%)を為替評価益だけで補った構図だったのとは中身が異なる。
- 会社は2026年8月7日の第1四半期決算時点で、通期予想(前期比で営業利益△18.0%・経常利益△32.9%・純利益△19.2%という減益計画)を修正しなかった。通期予想に対する進捗率は売上高25.7%・営業利益29.6%・経常利益37.7%・純利益43.7%で、暦按分の25%を大きく上回っている。これを「第1四半期が特に強かった」と見るか「会社予想が保守的に据え置かれている」と見るかで、この決算の評価は変わる。
- 財務健全性は自己資本比率65.0%(2026年6月末)・D/Eレシオ0.17倍と高水準を維持しており、配当は前期実績100.00円を据え置く計画(配当性向は前期実績26.7%から会社予想33.0%へ上昇する見込み)である。
目次11項目
1. 概要
東プレは、2026年9月4日終値3,495円でPER9.33倍(実績ベース)・PBR0.68倍・ROE8.0%・ROA9.4%(総資産経常利益率)という水準にあります。会社が開示している2027年3月期の年間配当予想は100.00円で、株価に対する利回りは2.86%です。有利子負債は431億53百万円、D/Eレシオ0.17倍と低水準で、自己資本比率も65.0%(2026年6月末時点)に達しています。
2026年8月7日に発表された2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比+14.2%、経常利益が同+229.4%、純利益が同+221.8%という大幅増益でした。数字だけを見ると鮮やかな決算ですが、会社が公表している2027年3月期の通期計画自体は、前期比で営業利益△18.0%・経常利益△32.9%・純利益△19.2%という大幅な減益を織り込んだまま据え置かれています。「第1四半期はなぜこれほど増益だったのに、通期は減益予想のままなのか」という一見矛盾した状態を、第4節で整理します。あわせて、ROA(総資産経常利益率)9.4%がROE(自己資本当期純利益率)8.0%を上回るという珍しい数値の理由も第3節で扱います。
2. 会社概要とビジネスモデル
東プレはトヨタ自動車グループの中核部品メーカーの一角で、車体用のハイテンション材(高張力鋼板)プレス加工を主力とする精密プレス部品メーカーです。事業セグメントは、車体骨格部品を中心とする「プレス関連製品事業」、冷凍車のシャーシなどを手がける「定温物流関連事業」、空調機器・電子機器(キーボード「REALFORCE」)・輸送事業をまとめた「その他」の3区分で開示されています。2027年3月期第1四半期の売上構成では、プレス関連製品事業が804億14百万円と全体(1,006億46百万円)の約8割を占め、定温物流関連事業が164億07百万円、その他が38億24百万円と続きます。プレス関連製品事業は国内に加えてアメリカでの生産・供給比率が高く、完成車メーカーの生産動向と為替の両方の影響を受けやすい構造です。
強みと弱みの整理
強み
為替評価益を除いても、本業(プレス関連製品事業)が伸びている
2027年3月期第1四半期のプレス関連製品事業のセグメント利益は48億37百万円(前年同期比+58.3%)で、アメリカでの物量増加が要因とされています。前期(2026年3月期)通期はプレス関連製品事業のセグメント利益が前期比△12.7%の減益で、連結の経常利益は為替評価益だけで支えられていましたが、今期第1四半期は本業も伸びている点が異なります。
財務健全性が高く、有利子負債は減少基調
有利子負債は2026年6月末時点で431億53百万円、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は0.17倍で、前期末(2026年3月末)の454億48百万円・0.187倍からむしろ減少しています。自己資本比率も2022年3月期の55.2%から2026年3月期には62.5%、2026年6月末には65.0%まで一貫して上昇しており、財務体質は年々強化されています。
配当は増額改定が続いてきた実績がある
2024年3月期は期初予想40.00円から実績55.00円へ+15円、2025年3月期は期初予想60.00円から実績85.00円へ+25円、2026年3月期は期初予想80.00円から実績100.00円へ+20円と、3期連続で期初予想を上回る増額改定がありました。2027年3月期予想100.00円は前期実績と同額の据え置きで、少なくとも減配ではありません。詳しくは第5節で扱います。
弱み
経常利益の伸びが為替評価益に依存する年が続いている
2026年3月期通期の決算短信は、経常利益が前期比+30.7%増益になった主因を「外貨建て債権の評価による為替影響など」と説明しており、同じ表現が2027年3月期第1四半期決算短信の経常利益+229.4%の説明にも使われています。2期連続で経常利益の伸びの中心が、市況に左右される為替評価という一過性・非経常的な要因である点は留意が必要です。
通期計画そのものが前期比で大幅な減益を織り込んでいる
2027年3月期の会社予想は、増収(売上高3,920億円、前期比+3.5%)を見込みつつも、営業利益230億円(前期比△18.0%)・経常利益240億円(同△32.9%)・純利益150億円(同△19.2%)という減益計画です。第1四半期の進捗率は計画を大きく上回っていますが、会社はこの通期予想を修正していません。
プレス関連製品事業の国内物量には力強さが見られない
前期(2026年3月期)通期はプレス関連製品事業のセグメント利益が前期比△12.7%の減益で、国内物量の減少が要因とされています。今期第1四半期の伸びはアメリカでの物量増加が牽引しており、海外依存度が高まっている裏返しとして、為替や現地生産動向への感応度がさらに強まっている可能性があります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 233,601 | 6,853 | 17,013 | 10,998 | 55.2% |
| 2023/03 | 290,416 | 7,330 | 16,518 | 10,009 | 56.3% |
| 2024/03 | 354,922 | 22,406 | 37,840 | 17,099 | 58.3% |
| 2025/03 | 373,568 | 28,648 | 27,378 | 14,143 | 59.2% |
| 2026/03 | 378,815 | 28,042 | 35,780 | 18,561 | 62.5% |
| 2027/03会社予想 | 392,000 | 23,000 | 24,000 | 15,000 | — |
読み取れることは3つあります。
売上高は右肩上がりで拡大してきた一方、利益の変動幅は大きい。 売上高は2022年3月期2,336億01百万円から2026年3月期3,788億15百万円まで一貫して増加しました。一方で純利益は、2024年3月期に170億99百万円まで急回復した後、2025年3月期には141億43百万円へ反落し、2026年3月期に185億61百万円へ再び回復するという上下動を繰り返しています。自動車部品会社らしく、完成車メーカーの生産動向・為替・原材料コストなど複数の外部要因の影響を年ごとに強く受けていることがうかがえます。
営業利益と経常利益の差が年によって大きく開く。 2024年3月期は営業利益224億06百万円に対し経常利益378億40百万円、2026年3月期は営業利益280億42百万円に対し経常利益357億80百万円と、経常利益が営業利益を大きく上回る年があります。通常、自動車部品会社では営業外損益はそれほど大きくならないため、この乖離の大きさは、営業外収益に計上される為替評価益の存在を示唆しています。この点は次の第4節で詳しく扱います。
ROA(総資産経常利益率)9.4%がROE(自己資本当期純利益率)8.0%を上回るという、通常は珍しい組み合わせになっている。 会社が開示する「総資産経常利益率」(ROA、経常利益÷総資産)と「自己資本当期純利益率」(ROE、純利益÷自己資本)は、分子(経常利益か純利益か)も分母(総資産か自己資本か)も異なる別々の指標で、本来は単純に比較できません。2026年3月期は経常利益が為替評価益で純利益より大きく押し上げられていたため、分母がより広い総資産で割るROAの方が、分母が狭い自己資本で割るROEより高い数値になるという組み合わせが生じています。ROAが高いこと自体を、ROEより優れた収益性の証拠と読むのは誤りです。
4. Q1経常利益+229.4%は本物か——為替評価益と前年同期の反動を差し引く
これが今回の決算でいちばん整理したい論点です。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の実績は、売上高1,006億46百万円(前年同期比+14.2%)、営業利益68億08百万円(同+39.7%)、経常利益90億38百万円(同+229.4%)、純利益65億62百万円(同+221.8%)でした。経常利益・純利益の伸び率だけを見ると、極めて好調な決算に見えます。
まず押さえておきたいのは、比較対象の前年同期が異例に低い水準だったことです。 前年同期(2026年3月期第1四半期)の経常利益は27億44百万円で、その期の通期実績357億80百万円のわずか7.7%しかありません。2026年3月期は経常利益の伸びの大半が期末にかけて計上された為替評価益によるもので、第1四半期時点ではまだそれがほとんど乗っていなかったということです。今期第1四半期がこの低いベースと比べて大きく伸びるのは、ある程度自然な反動でもあります。
それでも、今期第1四半期は本業も伸びています。 セグメント別では、プレス関連製品事業のセグメント利益が48億37百万円(前年同期比+58.3%、アメリカでの物量増加が要因)、定温物流関連事業が18億51百万円(同+9.1%、冷凍車小型車の販売台数増加・生産効率化)、その他が4億16百万円(同+37.0%)と、いずれも増益でした。決算短信は連結経常利益の増益についても「外貨建て債権の評価による為替影響などにより」と説明しており、これは前期(2026年3月期)通期決算で使われたのと同じ表現です。ただし前期通期は「本業(特にプレス関連製品事業)が弱いのを為替評価益が補った」構図だったのに対し、今期第1四半期は「本業も伸び、そこに為替評価益も乗った」構図であり、中身が異なります。
通期予想(売上高3,920億円・営業利益230億円・経常利益240億円・純利益150億円)に対する第1四半期の進捗率は次のとおりです。
| 項目 | 通期会社予想 | 当第1四半期実績 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,920億円 | 1,006億46百万円 | 25.7% |
| 営業利益 | 230億円 | 68億08百万円 | 29.6% |
| 経常利益 | 240億円 | 90億38百万円 | 37.7% |
| 純利益 | 150億円 | 65億62百万円 | 43.7% |
出典:2027年3月期 第1四半期 決算短信
単純な暦按分(4分の1=25.0%)と比べると、特に経常利益・純利益の進捗率の超過が大きくなっています。それにもかかわらず、会社は2026年8月7日のこの決算発表にあわせて、通期予想を修正しませんでした。 通期予想自体が前期比で営業利益△18.0%・経常利益△32.9%・純利益△19.2%という減益計画のままです。
この据え置きをどう読むかは、会社の想定為替レート(1ドル150円)に対して、実勢がどちらに振れるかに左右されると考えられます。第1四半期に計上された為替評価益が、外貨建て債権の期末(あるいは四半期末)時点の評価によるものである以上、下期にかけて為替が反対方向に動けば評価損として反転する可能性があります。会社が通期予想を据え置いたのは、この反転リスクを保守的に織り込んでいるためなのか、あるいは単に前期の急変動を踏まえて計画を動かさない方針を取っているだけなのかは、今回参照した決算短信のみからは判別できません。2026年11月に予定される中間決算で、為替評価益の内訳がどこまで開示されるかが、この判断材料になります。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 25円 | — | 11.9% |
| 2023/03 | 40円 | 30円 | -10円 | 15.7% |
| 2024/03 | 40円 | 55円 | +15円 | 16.8% |
| 2025/03 | 60円 | 85円 | +25円 | 30.6% |
| 2026/03 | 80円 | 100円 | +20円 | 26.7% |
| 2027/03会社予想 | 100円 | 100円 | — | 33.0% |
- 2023/03:2022年5月公表の期初予想は40.00円だったが、実績は30.00円へ減額改定された(今回確認した年度の中で唯一の減額改定例)。
- 2024/03:2023年5月公表の期初予想40.00円から、実績55.00円へ+15円の増額改定。
- 2025/03:2024年5月公表の期初予想60.00円から、実績85.00円へ+25円の増額改定。期末50.00円のうち10.00円は創立90周年記念配当で、普通配当は40.00円。
- 2026/03:2025年5月公表の期初予想80.00円から、実績100.00円へ+20円の増額改定。
- 2027/03:2026年5月公表の期初予想100.00円(中間50.00円・期末50.00円)が、2026年8月7日の第1四半期決算時点でも修正されていない。前期実績と同額の据え置きだが、予想EPS302.64円は前期実績374.49円から減る計画のため、配当性向は前期実績26.7%から33.0%へ上昇する計画になっている。
配当は近年、期初予想を上回る増額改定が続いてきました。2024年3月期は期初予想40.00円から実績55.00円へ+15円、2025年3月期は期初予想60.00円から実績85.00円へ+25円、2026年3月期は期初予想80.00円から実績100.00円へ+20円と、3期連続で期初予想超えの増額改定がありました。一方で2023年3月期は、2022年5月公表の期初予想40.00円から実績30.00円へ減額改定されており、今回確認した年度の中では唯一の減額例です。過去に増額基調が続いているからといって、必ず増額されるとは限らないことが分かります。
2025年3月期の期末配当50.00円のうち10.00円は、創立90周年記念配当であり、普通配当は40.00円でした。 記念配当のような一時的な上乗せを含む年は、翌期以降の配当水準をそのまま単純比較すると見誤りやすい点に注意が必要です。
2027年3月期の配当予想は100.00円(中間50.00円・期末50.00円)で、2026年5月公表の当初予想から、2026年8月7日の第1四半期決算時点でも修正されていません。 金額としては前期実績と同額の据え置きですが、予想EPSは302.64円と前期実績374.49円から減る計画になっているため、配当性向は前期実績26.7%から会社予想33.0%へ上昇する計画です。つまり「配当を増やしている」わけではなく、「利益が減る計画のなかで配当水準を維持しようとしている」という配当方針として読むのが実態に近いと考えられます。
株価3,495円に対する予想配当利回りは2.86%です。会社が開示した予想配当100.00円にもとづく数値で、実績配当(前期も100.00円)と同水準です。
6. 会社の現状と直近の動き
2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上高1,006億46百万円(前年同期比+14.2%)、営業利益68億08百万円(同+39.7%)、経常利益90億38百万円(同+229.4%)、親会社株主に帰属する四半期純利益65億62百万円(同+221.8%)でした。1株当たり四半期純利益は134.26円です。
セグメント別には次のとおりです。
| セグメント | 売上高(当期) | 前年同期比 | セグメント利益(当期) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| プレス関連製品事業 | 804億14百万円 | +14.5%(アメリカでの物量増加) | 48億37百万円 | +58.3% |
| 定温物流関連事業 | 164億07百万円 | +13.6%(冷凍車小型車の販売台数増加・生産効率化) | 18億51百万円 | +9.1% |
| その他 | 38億24百万円 | +10.3% | 4億16百万円 | +37.0% |
出典:2027年3月期 第1四半期 決算短信(会社コメントを含む)
主力のプレス関連製品事業が売上・利益ともにセグメント内で最も高い伸びを示しており、アメリカでの物量増加が牽引役になっています。定温物流関連事業も冷凍車小型車の販売台数増加を背景に増収増益で、その他(空調機器・電子機器「REALFORCE」キーボード・輸送事業)も増益でした。今回の決算では明確な赤字セグメントは確認されていません。
貸借対照表面では、2026年6月末時点で総資産3,807億91百万円、純資産2,513億47百万円(うち自己資本2,475億円)、自己資本比率65.0%でした。 前期末(2026年3月末、総資産3,893億87百万円、自己資本2,434億61百万円、自己資本比率62.5%)と比べると、総資産はやや減少した一方で自己資本比率は上昇しています。1株当たり純資産(BPS)は前期末4,926.54円から5,116.85円へ増加しました。
有利子負債は2026年6月末時点で431億53百万円(1年内返済予定の長期借入金90億70百万円、社債155億円、長期借入金185億83百万円の合計)で、金融機関からの短期借入金の計上はありません。 前期末(454億48百万円)と比べると22億95百万円減少しており、D/Eレシオも前期末0.187倍から0.17倍へやや低下しています。内訳を見ると、1年内返済予定の長期借入金が91億55百万円から90億70百万円へ、長期借入金が207億93百万円から185億83百万円へそれぞれ減少しており、社債155億円は残高が変わっていません。この減少が既存借入金の約定返済によるものか、新規の設備投資・M&Aが控えられた結果かは、今回参照した決算短信のみからは特定できませんでした。
7. 業界とセクターの状況
東プレは当サイトの「auto-parts(自動車部品)」セクターの記事です。このセクターには、完成車メーカーとの系列取引が根強く価格決定力は完成車メーカー側が握りやすいこと、海外生産拠点を持つ企業は為替の影響を受けやすいこと、そしてガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが進むと特定製品の需要が構造的に変化しうることなど、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約があります。
東プレの場合、この構造的な制約が最も具体的に表れているのが為替の影響です。プレス関連製品事業はアメリカでの生産・供給比率が高く、今期第1四半期の増益はアメリカでの物量増加が牽引した一方、連結経常利益の伸びの中心は「外貨建て債権の評価による為替影響」という、物量とは別の市況要因でした。
同じトヨタ系部品メーカーである東海理化(6995)の2027年3月期第1四半期決算とは、対照的な見え方になっている点も興味深いところです。東海理化は前年同期比で増収減益でしたが、会社の通期計画自体が前期比で大幅減益であるため、その減益計画に対する進捗率で見ればほぼ計画線上という「見た目は悪いが計画比では順調」な決算でした。一方で東プレは前年同期比で大幅増益でしたが、通期計画自体は前期比で大幅減益のまま据え置かれており、「見た目は良いが会社は先行きを楽観していない」という逆方向の構図になっています。同じ系列部品メーカーでも、四半期の見え方と会社自身の通期見通しの組み合わせ方は一様ではないことが分かります。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
第1四半期の経常利益急増(+229.4%)の主因とされる外貨建て債権の評価による為替影響が、中間期以降も続くか反転するかを確認する回。会社の想定為替レートは1ドル150円。
会社想定為替(1ドル150円)に対して実勢がどちらに振れるかで、外貨建て債権の評価損益の方向が変わる。2026年3月期・2027年3月期第1四半期と2期連続で、経常利益の伸びの主因が為替評価益とされている。
第1四半期のプレス関連製品事業のセグメント利益は+58.3%と、アメリカでの物量増加が牽引した。この増加基調が続くかどうかが、為替評価益を除いた本業の実力を測る材料になる。
2026年8月7日時点で通期予想(売上高3,920億円・営業利益230億円・経常利益240億円・純利益150億円)は据え置かれた。進捗率が経常利益37.7%・純利益43.7%と暦按分を大きく超えているため、中間決算で上方修正が入るか、下期の反動を見込んで据え置かれ続けるかが焦点になる。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
経常利益の伸びが為替評価益に依存している状態が続くリスク。 2026年3月期通期・2027年3月期第1四半期のいずれも、決算短信は経常利益の増益要因を「外貨建て債権の評価による為替影響など」と説明しています。為替は市況次第で反対方向にも動きうる要因であり、この評価益が反転すれば経常利益・純利益は大きく押し下げられます。
通期の減益計画そのものが、前期比で大幅な減益を織り込んでいること。 2027年3月期の会社予想は営業利益△18.0%・経常利益△32.9%・純利益△19.2%という計画であり、第1四半期の進捗率が良好であっても、通期でこの減益計画に近い着地になれば、2026年3月期実績からの後退という結果になります。
プレス関連製品事業の国内物量の弱さと、海外(特にアメリカ)依存度の高まり。 前期(2026年3月期)通期はプレス関連製品事業のセグメント利益が前期比△12.7%の減益で、国内物量の減少が要因とされています。今期第1四半期の増益はアメリカでの物量増加によるところが大きく、特定地域への依存が強まるほど、その地域の生産動向・為替変動の影響を受けやすくなります。
中間決算での為替評価益の反転可能性。 会社の想定為替レートは1ドル150円で、これに対して実勢がどちらに振れるかによって、下期の為替評価損益の方向は変わりえます。第1四半期の大幅増益が一過性のものであった場合、通期の進捗率の高さは維持されない可能性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期は、前年同期比で売上高+14.2%・営業利益+39.7%・経常利益+229.4%・純利益+221.8%という大幅増益でした。通期予想に対する進捗率も売上高25.7%・営業利益29.6%・経常利益37.7%・純利益43.7%と暦按分の25%を上回っています。それでも会社は2026年8月7日時点で、前期比大幅減益を織り込んだ通期予想(営業利益△18.0%・経常利益△32.9%・純利益△19.2%)を修正しませんでした。
判断の分かれ目は、第1四半期の大幅増益を「本業の実力が上向いた証拠」と見るか、「為替評価益と前年同期の低いベースによる一時的な押し上げ」と見るかです。 前者と見るなら、プレス関連製品事業のセグメント利益がアメリカでの物量増加により+58.3%伸びたことや、D/Eレシオ0.17倍・自己資本比率65.0%という財務健全性の高さが、会社の保守的な通期予想に対して上振れの余地を示していると読めます。後者と見るなら、経常利益の伸びの説明が2期連続で「外貨建て債権の評価による為替影響など」とされていることや、会社自身が想定為替レート1ドル150円を前提に通期の減益計画を据え置いていることが、この決算の強さを割り引いて見るべき根拠になります。次に確認すべきは、2026年11月に予定される中間決算で、為替評価益の内訳がどこまで開示され、進捗率の高さが維持されるか、そしてプレス関連製品事業のアメリカでの物量増加が続くかです。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月の中間決算で為替評価益が反転し、経常利益・純利益の通期予想(経常利益240億円・純利益150億円)に対する進捗率が大きく後退した場合(第1四半期時点の進捗率は経常利益37.7%・純利益43.7%)。
- プレス関連製品事業のセグメント利益がアメリカでの物量増加という牽引役を失い、第1四半期の+58.3%という伸びが下期にかけて反落した場合。
- 会社が通期業績予想(売上高3,920億円・営業利益230億円・経常利益240億円・純利益150億円)を下方修正した場合、または年間配当予想100.00円を減額した場合。
- 有利子負債・D/Eレシオが増加傾向に転じた場合(2026年6月末時点で有利子負債431億53百万円・D/Eレシオ0.17倍、前期末(2026年3月末)の454億48百万円・0.187倍からむしろ減少している基調が反転した場合)。
よくある質問
- 東プレの2027年3月期の配当はいくらですか?
- 会社予想は年間100.00円(中間50.00円・期末50.00円)です。2026年5月公表の期初予想から、2026年8月7日の第1四半期決算時点でも修正されていません。前期(2026年3月期)実績も100.00円で、金額としては据え置きですが、予想EPSが前期実績374.49円から302.64円へ減る計画のため、配当性向は前期実績26.7%から33.0%へ上昇する計画になっています。
- なぜ経常利益が前年同期比+229.4%も増えたのに、通期予想は減益のままなのですか?
- 決算短信は経常利益の急増を「外貨建て債権の評価による為替影響など」によるものと説明しています。加えて、比較対象となる前年同期(2026年3月期第1四半期)の経常利益27億44百万円は、その期の通期実績357億80百万円の7.7%しかない異例に低い水準だったため、伸び率が大きく出やすい面もあります。会社は2026年8月7日時点でこの為替評価益が通期を通じて続くとは見ておらず、通期予想(前期比で経常利益△32.9%の減益計画)を据え置いています。この為替評価益が中間決算以降も続くかどうかは、今回参照した資料からは断定できません。
- 東プレのROAが9.4%でROEの8.0%より高いのは珍しいのですか?
- はい、珍しい部類に入ります。ただし両者は本来比較できない指標です。会社が開示する「総資産経常利益率」(ROA、経常利益÷総資産)9.4%と「自己資本当期純利益率」(ROE、純利益÷自己資本)8.0%は、分子(経常利益か純利益か)も分母(総資産か自己資本か)も異なります。2026年3月期は経常利益が為替評価益で純利益より大きく押し上げられたため、分母がより広い総資産で割るROAの方が、分母が狭い自己資本で割るROEより数値として上回るという組み合わせが生じました。
参考文献・引用元
- 01東プレ「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月7日開示。連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・純利益、前年同期比、1株当たり四半期純利益)、セグメント情報(プレス関連製品事業・定温物流関連事業・その他別の売上高・セグメント利益と会社コメント)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・BPS)、配当の状況(次期予想に変更なし)、通期業績予想(2026年5月14日公表分から変更なしの記載)を参照した。有利子負債(43,153百万円)は連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金・社債・長期借入金の合計から算出し、短期借入金の計上がないことを確認した。 / 2026/08/07 開示
- 02東プレ「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月14日開示。2026年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS・ROE・総資産経常利益率)、財政状態(自己資本比率・BPS)、配当の状況(2025年5月公表の期初予想80.00円から実績100.00円への増額改定、2027年3月期予想100.00円)、2027年3月期の通期業績予想、「今後の見通し」(想定為替レート1ドル150円、CASE・MaaS等の先行き不透明要因)、プレス関連製品事業のセグメント利益が前期比△12.7%だった点を、経常利益が「外貨建て債権の評価による為替影響などにより」前期比+30.7%増益になった経緯とあわせて参照した。有利子負債(前期末45,448百万円)も同短信の連結貸借対照表から算出した。 / 2026/05/14 開示
- 03東プレ「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年5月14日開示。2024年3月期・2025年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS)、配当の状況(2024年5月公表の期初予想60.00円から実績85.00円への増額改定、期末50.00円のうち10.00円が創立90周年記念配当である旨の内訳)を参照した。 / 2025/05/14 開示
- 04東プレ「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年5月12日開示。2022年3月期・2023年3月期の連結経営成績(売上高・各利益・EPS)、配当の状況(2022年5月公表の期初予想40.00円から実績30.00円への減額改定)を参照した。 / 2023/05/12 開示
- 05IR BANK「東プレ(5975) 決算まとめ/配当金の推移」
通期業績・財務状況・配当の期初予想/修正/実績の履歴を、決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年9月時点の表示)。本文の数値はいずれも決算短信の一次情報で裏付けを取ったものを採用している。
- 06株探「東プレ(5975) 株価」
2026年9月4日15:30終値(3,495円、前日比+55円)、時価総額、発行済株式数をスナップショットとして参照した。ただし記事内のPER・PBR・配当利回りは会社開示の実績EPS・最新BPS・予想配当にもとづき当サイトで再計算した数値を採用している。 / 2026/09/04 開示