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基礎知識

PBR(株価純資産倍率)とは — 1倍割れは割安のサインか

2026/07/22 更新4分で読了

一言でいうと

PBR(株価純資産倍率、Price Book-value Ratio)は、株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。

PERが「稼ぐ力」に対する評価だとすれば、PBRは「これまでに積み上げた財産」に対する評価です。会社が今すぐ解散して資産を売り払い、負債を返済して残った額を株主で分けたとすると、理屈のうえではBPS(1株あたり純資産)が手元に残ります。PBRが1倍を下回るのは、その解散価値より安く株が売られている状態を指します。

計算方法

PBR(倍) = 株価 ÷ BPS(1株あたり純資産)
BPS(円) = 自己資本 ÷ 発行済株式数(自己株式を除く)

未来工業(7931)の2026年7月17日時点の株価は3,235円、BPSは3,430.96円でした。

3,235円 ÷ 3,430.96円 = 0.94倍

株価がBPSを下回っているので、PBRは1倍割れです。

分母は「純資産」ではなく「自己資本」

細かい点ですが、BPSの分子は貸借対照表の純資産合計そのものではありません。純資産には非支配株主持分(子会社のうち親会社以外が持っている分)や新株予約権が含まれており、これらは親会社の株主のものではないため、通常は除いて計算します。

また、自己株式(会社が買い戻して保有している自社株)は純資産のマイナス項目であると同時に、株式数からも除かれます。自己株式を多く持つ会社では、分子と分母の両方から同時に差し引かれるため、BPSの見え方が単純な「純資産 ÷ 発行済株式数」とはずれます。未来工業は発行済株式の36.9%が自己株式であり、この差が大きく出る例です。

どう読むか

1倍割れは「珍しくない」

日本株では、PBR1倍割れは例外的な状態ではありません。特に成熟した製造業や、自己資本を厚く持つ会社では常態化しています。当サイトが対象とするスクリーニング条件がPBR1倍以下となっているのも、この水準の銘柄が十分な数あることを前提にしています。

実際、当サイトで扱っている3銘柄はいずれも1倍を下回っています。

銘柄株価BPSPBR
未来工業(7931)3,235円3,430.96円0.94倍
ツムラ(4540)3,880円4,315.86円0.90倍
愛知時計電機(7723)3,070円3,427.47円0.90倍

いずれも2026年7月17日時点。

過去のレンジと比べる

PBRの絶対値には意味がなく、その会社自身の過去のレンジのどこにいるかで初めて情報になります。たとえば過去15年の実績が0.4〜1.8倍で動いてきた会社の0.9倍と、常に0.8〜1.0倍で推移してきた会社の0.9倍は、まったく別の状態です。前者は中間、後者はレンジの上限近くです。

長期のPBRレンジは、IR BANKなどの株価指標ページで確認できます。現在値がレンジの下限付近にあるなら「なぜ今それほど売られているのか」を、上限付近にあるなら「なぜ市場が評価を変えたのか」を、決算内容から確かめる作業とセットにします。

ROEとの関係

PBRは、PERとROEの積でおおよそ表せます。

PBR ≒ PER × ROE

定義を展開すると、(株価 ÷ EPS) × (EPS ÷ BPS) = 株価 ÷ BPS となり、EPSが約分されて成り立ちます。実際に当てはめると、次のようにきれいに一致します。

銘柄PERROEPER × ROE実際のPBR
未来工業(7931)11.1倍8.7%0.970.94倍
ツムラ(4540)10.3倍8.74%0.900.90倍
愛知時計電機(7723)9.8倍9.1%0.890.90倍

この関係が意味するのは、PBRが低い会社は、PERが低いかROEが低いかのどちらかだということです。そして日本のPBR1倍割れ銘柄の多くは、後者に該当します。資本効率が低いことを市場が織り込んだ結果として1倍を割っているのであって、見落とされているわけではありません。

よくある誤解

1. 「1倍割れ=解散価値以下=必ず割安」ではない

解散価値という説明は、あくまで帳簿上の話です。実際には次の理由でずれます。

  • 資産が簿価どおりに売れるとは限らない。 専用機械や仕掛品は、事業を止めた瞬間に価値が大きく下がります。逆に、取得時期の古い土地は簿価より高く売れることがあります
  • 会社は解散しない。 解散価値は理論上の下限であって、投資家がそれを受け取る現実的な道筋はありません
  • 1倍割れが是正されるとは限らない。 是正されるには、増配・自社株買い・資本効率の改善といった具体的なきっかけが必要です。そのきっかけが見えないまま10年以上1倍を割り続けている会社は珍しくありません

2. 自己資本が厚いほどPBRは低くなりやすい

これは意外と見落とされます。無借金で現金を厚く持つ会社は、BPS(分母)が大きくなるためPBRが下がります。財務が健全であることが、そのままPBRを押し下げる方向に働きます。

未来工業は自己資本比率80.7%・実質無借金で、財務の安全性は際立って高い会社です。しかしその厚い自己資本が分母を膨らませ、PBR0.94倍・ROE8.7%という数字につながっています。財務が良いからPBRが低い、という因果は成り立ちます。「財務が良いのにPBRが低いから割安」と読むのは、順序が逆です。

3. 減損や特別損失でBPSは動く

BPSは毎期の利益で積み上がる一方、減損損失や大きな特別損失が出ると減ります。過去のBPS推移が右肩上がりでない会社は、どこかで資産を目減りさせています。PBRを見るときは、BPS自体が安定して増えているかを合わせて確認します。

当サイトでの扱い

当サイトの銘柄分析記事では、PBRBPS を同じスナップショット時点の株価と整合させ、株価 ÷ BPS ≒ PBR が成り立つように記載しています。

PBRとPERを組み合わせるときの注意点は PERとPBRだけで割安判断してはいけない理由 に、資本効率そのものの読み方は ROEとROA にまとめています。