当サイトの記事はすべて個人の見解であり、投資助言ではありません。必ずご自身で一次情報を確認のうえ、ご自身の判断と責任で投資を行ってください。

基礎知識

ROEとROA — 同じ会社でも数字が違って見える理由

2026/07/22 更新4分で読了

一言でいうと

どちらも「預けた元手に対して、どれだけ利益を生んだか」を測る指標です。違うのは、何を元手とみなすかです。

  • ROE(自己資本利益率) — 株主が出したお金に対する利回り。株主の視点
  • ROA(総資産利益率) — 借入金も含めた事業全体の資産に対する利回り。事業そのものの効率

同じ会社でもROEのほうが高く出るのが普通です。借入を使って自己資本より大きな資産を動かせば、株主の元手あたりの利益は膨らむためです。

計算方法

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROA(%) = 利益 ÷ 総資産 × 100

ROEの定義はほぼ固まっていますが、ROAは「利益」に何を置くかが統一されていません。ここが本記事の中心です。

ROAの分子は少なくとも3通りある

分子呼び方使う場面
経常利益総資産経常利益率決算短信の記載。日本の実務で最も一般的
当期純利益総資産純利益率海外の Return on Assets に近い。IR BANKなど
事業利益(営業利益+受取利息配当金)総資産事業利益率財務分析の教科書的定義

さらに分母も、期末の総資産を使うか、期首と期末の平均(期中平均総資産)を使うかで変わります。

どう読むか

水準の目安

指標目安補足
ROE8%以上日本の機関投資家が最低ラインとする水準として定着している
ROA5%以上ただし分子の定義に依存する。同じ定義同士でしか比べられない

当サイトのスクリーニング条件はROE8%以上・ROA5%以上です。ROE8%という線は、伊藤レポート(2014年)以降、日本企業が意識するようになった水準を踏襲しています。

ROEは3つに分解して読む

ROEは次の3つの積に分解できます(デュポン分解)。

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
       (儲かるか)    (効率よく回すか)  (どれだけ借りるか)

この分解が重要なのは、ROEは借入を増やすだけでも上がるからです。財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)は自己資本比率の逆数なので、自己資本比率が下がればROEは機械的に上がります。ROEが改善したという発表を見たときは、3つのうちどれが効いたのかを確認する価値があります。

ROAにはこの財務レバレッジの項がありません。だからこそ、ROEとROAを並べて見ることで、資本効率の改善が事業の実力によるものか、借入によるものかを切り分けられます

よくある誤解

1. ROAがROEより高い、という逆転が実際に起きる

冒頭で「ROEのほうが高く出るのが普通」と書きましたが、当サイトが扱った未来工業(7931)では逆になっています。

指標
ROE8.7%
ROA(スクリーナー表示)10.2%

これは同社の資本効率が特殊なのではなく、2つの指標で分子が違うために起きた見かけ上の逆転です。ROAの10.2%は経常利益68億99百万円をもとにした総資産経常利益率で、決算短信の記載とも一致します。一方ROEの8.7%は、法人税を引いた後の当期純利益46億96百万円をもとにしています。分子が3割ほど小さくなれば、比率も下がります。

同じ会社について、IR BANKは純利益ベースのROAとして6.84%を掲載しています。10.20%と6.84%。どちらも間違いではありませんが、1.5倍の開きがあります。

2. 定義が揃えば、数字はきちんとつながる

上の6.84%という数字は、検算に使えます。財務レバレッジは自己資本比率の逆数なので、

ROA(純利益ベース) ÷ 自己資本比率 ≒ ROE
6.84% ÷ 0.807 = 8.5%

実際のROE8.7%とおおむね一致します(ROEは期中平均自己資本で計算されることが多いため、完全には一致しません)。定義を揃えれば矛盾は消えます。逆に言えば、数字が噛み合わないときは、まず定義を疑うべきです。

ツムラ(4540)のROA7.6%も同じく経常利益ベースであり、純利益ベースの数字とは直接比較できません。他サイトの数値と突き合わせるときは、必ず分子を確認してください。

3. ROEが高い会社が良い会社とは限らない

デュポン分解が示すとおり、ROEは自己資本を薄くすれば上がります。極端な場合、自社株買いで自己資本を減らせば事業が何も変わらなくてもROEは改善します。

逆に、自己資本比率が高すぎてROEが伸びない会社もあります。未来工業の自己資本比率は80.7%で、財務レバレッジは1.24倍しかありません。事業の稼ぐ力(ROA)が同じでも、レバレッジをかけない分ROEは低く出ます。ROE8.7%という数字は、事業が非効率だからではなく、財務が保守的だからという読み方になります。

この点は 自己資本比率と有利子負債 で詳しく扱います。

4. ROEは自己資本が小さいほど不安定になる

赤字で自己資本が大きく毀損した会社は、翌期に小さな黒字が出ただけで異常に高いROEを記録します。ROEを見るときは、単年ではなく5期程度の推移で判断します。

当サイトでの扱い

ROAの定義の揺れは、当サイトが記事を書く過程で最初につまずいた点でした。そのため、記事のデータ構造そのものに歯止めを入れています。

銘柄分析記事にROAを書く場合、その定義(roaBasis)を書かないとサイトのビルドが失敗する設定にしてあります。数値だけが独り歩きしないよう、機械的に強制する仕組みです。当サイトの記事に載っているROAは、すべて経常利益ベースであることが指標カードに明記されます。

実際の記事では次のように扱っています。

指標を組み合わせて使うときの注意点は PERとPBRだけで割安判断してはいけない理由 も参照してください。