PER(株価収益率)とは — 実績と予想で数字が変わる
一言でいうと
PER(株価収益率、Price Earnings Ratio)は、株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示す指標です。
「今の利益水準が続くとしたら、投資した金額を利益で回収するのに何年かかるか」と読み替えることもできます。PER10倍なら10年分、20倍なら20年分の利益が株価に織り込まれている、という見方です。
計算方法
PER(倍) = 株価 ÷ EPS(1株あたり利益)
EPS(円) = 当期純利益 ÷ 発行済株式数(自己株式を除く)
実際の数字を当てはめます。愛知時計電機(7723)の2026年7月17日時点の株価は3,070円、2026年3月期の実績EPSは312.12円でした。
3,070円 ÷ 312.12円 = 9.83倍
一方、同社が開示している2027年3月期の会社予想EPSは300.49円です。同じ株価で計算し直すと、
3,070円 ÷ 300.49円 = 10.22倍
株価は1円も動いていないのに、PERは9.8倍にも10.2倍にもなります。どちらが正しいということではなく、分母に何を置いたかが違うだけです。
どう読むか
水準の目安
日本株の場合、おおまかには次のように受け取られることが多い指標です。
| PERの水準 | 一般的な受け取られ方 |
|---|---|
| 10倍未満 | 低い。市場が将来の減益や構造的な問題を織り込んでいる可能性 |
| 10〜15倍 | 成熟企業として標準的 |
| 15〜25倍 | 成長を織り込んでいる |
| 25倍以上 | 高い成長期待、または一時的な減益で分母が縮んでいる |
当サイトのスクリーニング条件がPER10〜15倍としているのは、この表の2段目を狙っているためです。10倍未満をあえて外しているのは、安いことには理由があるのが普通で、その理由を説明できないなら記事にする価値がないという判断からです。
業種によって「妥当な水準」が違う
同じPER12倍でも、意味はまったく異なります。
- 利益が景気に大きく振れる業種(海運、鉄鋼、半導体製造装置など)は、好況期の利益で計算するとPERが低く出ます。市況のピークで低PERになるのはむしろ危険信号です
- 規制で価格が決まっていて利益が安定する業種(医薬品、電力・ガス、鉄道など)は、利益のブレが小さいぶんPERの変動も小さくなります
- 成長企業は将来の利益を織り込むためPERが高く出ます
したがって、PERは市場平均と比べるものではなく、同業他社とその会社自身の過去のレンジと比べるものです。
よくある誤解
1. 「予想PER」がどの予想なのかは、実は自明ではない
株式情報サイトが表示する「PER(予)」の分母は、次のどれかです。
- 会社自身が開示した業績予想のEPS
- アナリスト予想(コンセンサス)のEPS
- 前期実績のEPS(会社が予想を出していない場合の代替)
会社が通期業績予想を開示していないケースは実際にあります。 未来工業(7931)は2027年3月期の通期業績予想を出しておらず、第1四半期の予想だけを開示しています。この場合、サイトに表示される予想PERは前期実績や独自推計にもとづく数字であり、会社の見通しではありません。
2. PERが下がったからといって割安になったとは限らない
PERは株価が下がっても、利益が増えても下がります。分子が下がったのか分母が上がったのかで、意味は正反対です。
さらに、分母の利益に一過性の要因が入っていると、PERは実力より低く出ます。愛知時計電機の2026年3月期は、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比35.9%増と大きく伸びた一方、経常利益の伸びは9.3%に留まりました。増益の大半が本業以外から出ている可能性が高く、この純利益を前提にしたPER9.8倍を、そのまま実力水準として受け取ることはできません。会社自身も翌期の純利益を4.0%の減益で予想しています。
3. 赤字企業のPERは「割高」ではなく「計算できない」
当期純利益がマイナスだとPERは負の値になり、指標として意味を持ちません。多くのサイトでは空欄や「—」と表示されます。スクリーニングで低PER順に並べたとき、赤字企業が上位に紛れ込んでいないかは確認する価値があります。
当サイトでの扱い
当サイトの銘柄分析記事では、指標カードに載せる PER は株価 ÷ EPS が計算上一致するようにしています。読者が電卓で検算したときに合わない、という状態を作らないためです。実績ベースか予想ベースかは本文で明示します。
実際の記事では次のように扱っています。
- 愛知時計電機(7723) 2026年3月期 — 実績PER9.8倍と、利益の質のギャップ
- ツムラ(4540) 2026年3月期 — 実績EPS376.28円でPER10.3倍。ただし会社は翌期を減益予想としており、会社予想EPS351.46円で計算すると11倍台に上がる
- 未来工業(7931) 2026年3月期 — 通期業績予想が非開示で、予想PERを会社の見通しから作れない例
PERとPBRを組み合わせて使うときの注意点は、PERとPBRだけで割安判断してはいけない理由 にまとめています。