四半期分析不動産デベロッパー2027/3期 Q1

大和ハウス工業(1925) 通期減益予想25.2%の中身、実質は7.9%減

2026/09/05 公開2026/09/05 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

大和ハウス工業株式会社

東証プライム 1925 ・ 3月期決算

2026/09/04 時点

株価

4,697円

配当利回り

3.79%

年間178円

PER

10.9倍

PBR

1.00倍

ROE

9.1%

ROA

3.1%

純利益ベース

自己資本比率

33.8%

有利子負債

34,640億円

D/Eレシオ

1.19倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は、売上高1,408,385百万円(前年同期比9.0%増)・営業利益130,644百万円(同10.6%増)・純利益83,194百万円(同9.1%増)と増収増益で着地した。一方で会社が示す通期予想は、営業利益460,000百万円(前期比25.2%減)・純利益266,000百万円(同24.1%減)と、大幅な減益計画になっている。
  • この乖離は、前期(2026年3月期)の営業利益614,879百万円に、退職給付数理差異等償却額(営業費用115,675百万円減)という一時的な会計要因が含まれていたことが主因である。会社自身が開示した参考比較によれば、この要因を除いた実質ベースでは営業利益は前期比7.9%減にとどまり、見かけの25.2%減とは20ポイント近い差がある。
  • セグメント別には、戸建住宅・賃貸住宅・事業施設(物流施設・データセンター等)は増収増益で好調な一方、マンション事業は引渡戸数の減少で営業利益が46.5%減と大幅に落ち込み、商業施設は増収ながら営業利益はほぼ横ばい(利益率低下)と、明暗が分かれている。
  • 自己資本比率は2025年3月期の37.1%から2026年3月期34.4%、2026年6月末33.8%へと低下基調にあり、有利子負債は3,463,955百万円・D/Eレシオ1.19倍(ハイブリッドファイナンスの資本性を考慮すると1.10倍)である。低下の具体的な要因は、決算短信からは特定できなかった。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 見かけの25.2%減益予想と、実質7.9%減の中身 ― セグメント別の明暗
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

大和ハウス工業(1925)は、2026年9月4日時点で株価4,697円・予想PER10.94倍・PBR1.00倍という水準にあります。予想配当利回りは、会社が開示した2027年3月期の年間配当予想(株式分割を考慮しない場合の換算で178.00円)を基準に計算すると3.79%です。なお2026年10月1日に普通株式1株を2株にする株式分割が予定されているため、PER・EPS・配当の各指標は分割前の株数を基準にそろえています(理由は§4・§5で説明します)。

2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、売上高1,408,385百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益130,644百万円(同10.6%増)、経常利益123,000百万円(同9.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益83,194百万円(同9.1%増)と、増収増益で着地しました。ところが会社が示す通期業績予想は、営業利益460,000百万円(前期比25.2%減)・経常利益402,000百万円(同29.7%減)・純利益266,000百万円(同24.1%減)という大幅な減益計画です。増収増益の第1四半期と、大幅減益の通期予想という一見矛盾する組み合わせの理由を§4で整理します。

もう一つの論点は、6つの事業セグメントの明暗です。戸建住宅・賃貸住宅・事業施設(物流施設・データセンター等)は増収増益で好調な一方、マンション事業は引渡戸数の減少で営業利益が大きく落ち込んでいます。この明暗が一時的な引渡時期のズレなのか、それとも需要の変化を示すものなのかも§4・§6で扱います。

2. 会社概要とビジネスモデル

大和ハウス工業は、戸建住宅・賃貸住宅・マンション・商業施設・事業施設(物流施設等)・環境エネルギーの6セグメントを持つ、国内最大手級の総合デベロッパーです。単なる住宅メーカーにとどまらず、法人向けの物流施設・商業施設の開発や、米国での戸建住宅事業(Trumark社)も収益の柱に育っています。

事業施設セグメントは物流施設の開発・賃貸に加えて、2026年4月に新設されたデータセンター事業本部を通じたデータセンター事業の拡大が進んでいます。顧客基盤は個人(戸建・分譲マンション購入者)、賃貸住宅オーナー、法人テナント(商業施設・物流施設)、グループ会社(大和リビング・大和リース・大和物流など)と幅広く、特定顧客への依存度は低い構造です。

強みと弱みの整理

強み

  • 6セグメントにまたがる分散型のポートフォリオ

    戸建住宅・賃貸住宅・マンション・商業施設・事業施設・環境エネルギーという性質の異なる6事業を持ち、当第1四半期は戸建住宅(営業利益29.2%増)・賃貸住宅(同12.6%増)・事業施設(同13.5%増)が好調に推移し、マンション事業の落ち込みを一定程度相殺しました。

  • 5期連続増配と、資本効率の高さ

    配当は2022年3月期126円から2026年3月期175円まで5期連続で増加しています。予想ROE9.14%(純利益266,000百万円÷1Q末自己資本2,909,582百万円)は、当サイトのスクリーニング基準(8%以上)を満たす水準です。

  • 物流施設・データセンターという成長領域への布石

    2026年4月に新設したデータセンター事業本部を含め、事業施設セグメントは当第1四半期に売上高368,867百万円(前年同期比6.9%増)・営業利益54,402百万円(同13.5%増)と、6セグメントの中でも増益率の高い部類に入ります。

弱み

  • 自己資本比率の低下基調

    自己資本比率は2025年3月期37.1%から2026年3月期34.4%、2026年6月末33.8%へと低下が続いています。有利子負債は3,463,955百万円、自己資本に対するD/Eレシオは1.19倍(ハイブリッドファイナンスの資本性を考慮すると1.10倍)で、低下の具体的な要因は決算短信からは特定できませんでした。

  • マンション事業の大幅減益

    当第1四半期のマンション事業は、売上高56,068百万円(前年同期比13.6%減)・営業利益1,878百万円(同46.5%減)と、6セグメントの中で最も大きく落ち込みました。会社の説明は「分譲マンションの引渡戸数が前年同期を下回ったこと」で、一時的な時期のズレなのか構造的な弱さなのかは§4・§7で検討します。

  • 通期予想は見かけ上、前期比25%を超える大幅減益

    会社が示す通期予想は営業利益前期比25.2%減・経常利益同29.7%減・純利益同24.1%減という数字で、増収増益だった第1四半期の実績だけを見ていると違和感のある計画です。この見かけの数字を額面どおり受け取ると、実態以上に悲観的な評価をしてしまうおそれがあります(詳細は§4)。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
001,500,000175,0003,000,000350,0004,500,000525,0006,000,000700,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20304036.637.237.337.134.4
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/034,439,536383,256376,246225,272336,43636.6%
2023/034,908,199465,370456,012308,399230,29837.2%
2024/035,202,919440,210427,548298,752302,29437.3%
2025/035,434,819546,279515,985325,058420,56137.1%
2026/035,576,861614,879571,971350,568189,27734.4%
2027/03会社予想5,900,000460,000402,000266,000
単位:百万円。出典:決算短信(2022年3月期〜2027年3月期第1四半期)

読み取れることは3つあります。

1つ目、売上高は2022年3月期の4,439,536百万円から2026年3月期5,576,861百万円まで5期連続で増加しているものの、増収率は10.6%→6.0%→4.5%→2.6%と一貫して鈍化しています。 2027年3月期予想は5,900,000百万円(前期比5.8%増)と、鈍化傾向からいったん反転する計画です。

2つ目、営業利益は年ごとの振れが大きい。 2024年3月期は前期比5.4%減、2025年3月期は同24.1%増、2026年3月期は同12.6%増と方向感が一定しません。特に2026年3月期の増益には後述する一時的な会計要因が含まれており、2027年3月期予想の前期比25.2%減という数字も、この一時要因の反動を大きく受けています(§4で詳しく扱います)。

3つ目、純利益は2023年3月期の前期比36.9%増から2024年3月期同3.1%減、2025年3月期同8.8%増、2026年3月期同7.8%増と、実績ベースでは4期中3期で増加が続いてきました。 これに対し2027年3月期予想は前期比24.1%減と、実績の増加基調から一転して大幅な減益計画になっています。この減益計画の中身と配当への影響は§4・§5で確認します。

4. 見かけの25.2%減益予想と、実質7.9%減の中身 ― セグメント別の明暗

2027年3月期の論点は2つあります。1つは、通期の減益予想が見かけほど大きくない可能性があること。もう1つは、その減益が主にどのセグメントから来ているかです。

まず、見かけの減益幅から確認します。 会社が示す2027年3月期通期予想は、営業利益460,000百万円(前期比25.2%減)・経常利益402,000百万円(同29.7%減)・純利益266,000百万円(同24.1%減)です。増収増益だった第1四半期の実績だけを見ると、この大幅な減益計画には違和感があります。

この違和感を解く鍵は、2026年8月6日開示の決算短信に会社自身が載せている「退職給付数理差異等償却額を除く前期実績との比較」という参考表です。前期(2026年3月期)の営業利益614,879百万円には、退職給付数理差異等償却額として営業費用が115,675百万円減少するという一時的な会計要因が含まれていました。この要因を除いて前期実績を引き直すと、会社の開示によれば売上高5,576,861百万円(前期比2.6%増)・営業利益499,203百万円(同12.2%増)・経常利益456,296百万円(同10.0%増)・純利益271,439百万円(同6.1%増)という実質ベースの前期実績になります。

そして2027年3月期予想を、この実質ベースの前期実績と比較すると、売上高5,900,000百万円(前期実績に対して5.8%増)・営業利益460,000百万円(同7.9%減)・経常利益402,000百万円(同11.9%減)・純利益266,000百万円(同2.0%減)となります。見かけの25.2%減という数字と、実質ベースの7.9%減という数字の差、実に20ポイント近くは、前期の一時的な会計要因の反動でほぼ説明できることになります。「25%の大幅減益」と「実質8%程度の減益」のどちらを基準に評価するかで、この会社の見え方は大きく変わります。

次に、セグメント別の明暗を確認します。 当第1四半期の実績(前年同期比)は、戸建住宅事業が売上高269,258百万円(14.3%増)・営業利益9,255百万円(29.2%増)、賃貸住宅事業が売上高386,648百万円(10.7%増)・営業利益42,868百万円(12.6%増)、事業施設事業が売上高368,867百万円(6.9%増)・営業利益54,402百万円(13.5%増)、環境エネルギー事業が売上高32,044百万円(14.6%増)・営業利益4,943百万円(12.9%増)と、この4セグメントは増収増益で好調でした。事業施設事業の伸びには、2026年4月に新設されたデータセンター事業本部を軸としたデータセンター事業の拡大が寄与しています。

一方、商業施設事業は売上高315,416百万円(9.1%増)と増収でしたが、営業利益は35,656百万円(0.5%増)とほぼ横ばいにとどまり、増収に見合う増益になっていません。最も落ち込んだのはマンション事業で、売上高56,068百万円(13.6%減)・営業利益1,878百万円(46.5%減)と、6セグメントの中で唯一減収かつ大幅な減益です。会社の説明は「分譲マンションの引渡戸数が前年同期を下回ったこと」にとどまり、それ以上の詳細な理由は決算短信からは確認できませんでした。

不動産デベロッパーは物件の引渡時点で売上高を計上するため、四半期ごとの業績が引渡時期のズレで振れやすい業界構造を持っています(この点は§7で改めて扱います)。マンション事業の今回の落ち込みも、このタイミングのズレによる一時的なものである可能性はありますが、それを裏付ける記述は決算短信からは見つかりませんでした。会社の実質ベースの説明(前期比7.9%減)を受け入れるとしても、その内訳の一部にマンション事業の構造的な弱さが含まれていないかは、次の中間決算で確認する必要があります。

5. 配当の推移

会社が開示している2027年3月期の配当予想は、中間86.00円・期末46.00円です。ただし、この2つを単純に合算した132円という数字には意味がありません。中間配当86.00円は2026年10月1日の株式分割(1株を2株にする分割、基準日2026年9月30日)より前の株数を基準にした金額である一方、期末配当46.00円は分割後の株数を基準にした金額だからです。会社は参考として、分割を考慮しない場合の期末配当92.00円・年間合計178.00円を開示しており、本記事のmetrics(dividendYield・dividendPerShare)もこの178.00円ベースで統一しています。株価4,697円に対する予想配当利回りは3.79%になります。

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/03126円36.6%
2023/03130円27.7%
2024/03143円31.3%
2025/03150円29.2%
2026/03175円30.9%
2027/03会社予想
  • 2026/03:期末配当100.00円のうち10.00円は創業70周年記念配当(普通配当は165.00円)。
  • 2027/03:2026年10月1日の株式分割(1株→2株、基準日2026年9月30日)をまたぐため、中間配当86.00円は分割前の株数基準、期末配当46.00円は分割後の株数基準で、単純合算した132円という数字には意味がありません。会社は分割を考慮しない場合の期末配当92.00円・年間合計178.00円を参考として開示しており、metricsのdividendYield・dividendPerShareはこの178.00円ベースで統一しています。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2022年3月期〜2027年3月期予想)

配当は、2022年3月期126円(配当性向36.6%)から2023年3月期130円(同27.7%)、2024年3月期143円(同31.3%)、2025年3月期150円(同29.2%)、2026年3月期175円(同30.9%、うち期末配当のうち10円は創業70周年記念配当)と、5期連続で増加しています。おおむね配当性向30%前後を目安とした累進的な増配が続いてきた形です。2027年3月期の年間178.00円(分割考慮前換算)は、EPS429.48円(同じく分割考慮前)に対して配当性向41.4%相当となり、過去の実績レンジ(27.7〜36.6%)からは切り上がる計算になります。これは通期予想の純利益266,000百万円が計画どおり達成されることが前提で、§4で述べたとおり通期の減益計画そのものの評価が実質ベースか見かけベースかで分かれる以上、この配当性向の上昇も中間決算で改めて確認する必要があります。

なお、EPSに株式分割の影響が出るのは2027年3月期第2四半期(中間)以降です。今回の決算短信には「株式分割を考慮しない場合の1株当たり当期純利益は429円48銭となります」と明記されており、本記事のfinancialsでは過去期との連続性を保つため、分割をまだ考慮しない429.48円を採用しています。1株当たり利益や配当の推移を株数の異なる期同士で単純に並べてはいけない点に注意が必要です。

6. 会社の現状と直近の動き

貸借対照表面では、2026年6月末の総資産は8,616,366百万円(2026年3月末8,412,419百万円から203,947百万円増、2.4%増)、純資産は3,002,624百万円(同3,022,275百万円から19,651百万円減)でした。会社の説明によれば、当第1四半期に831億94百万円の四半期純利益を計上した一方、前期分の株主配当金619億34百万円の支払いと非支配株主持分の減少があったため、純資産は減少しています。自己資本は2,909,582百万円(同2,896,744百万円から12,838百万円増)で、総資産の伸びが自己資本の伸びを上回った結果、自己資本比率は34.4%から33.8%へ0.6ポイント低下しました。

自己資本比率は2025年3月期の37.1%から2026年3月期34.4%、2026年6月末33.8%へと複数期にわたって低下基調にあります。有利子負債(リース債務等を除く)は3,463,955百万円で、自己資本に対するD/Eレシオは1.19倍です。会社はハイブリッドファイナンス(劣後性の資金調達で、格付機関等から一定割合が資本とみなされる資金調達手法)の資本性を考慮した場合のD/Eレシオを1.10倍としても開示しています。物流施設・データセンター事業など投資を要する事業の拡大がこの水準に影響している可能性はありますが、自己資本比率が複数期にわたって低下してきた具体的な要因を、決算短信の記載から特定することはできませんでした。

§4で見たセグメント別の状況を改めて整理すると、戸建住宅・賃貸住宅・事業施設・環境エネルギーの4セグメントが増収増益、商業施設が増収ながら利益率低下、マンション事業が唯一の減収・大幅減益という構図です。特に事業施設セグメントは、2026年4月に新設されたデータセンター事業本部を軸に、物流施設に加えたデータセンター事業の拡大が進んでいます。

7. 業界とセクターの状況

不動産デベロッパーのセクターには、個社の努力だけでは変えられない構造がいくつかあります。

第一に、売上高の計上タイミングです。戸建住宅・マンション・商業施設・物流施設は、引渡しが完了した時点で初めて売上高として計上されるため、開発案件の竣工・引渡スケジュールのズレによって四半期ごとの業績が振れやすくなります。大和ハウス工業のマンション事業が当第1四半期に減収・大幅減益となったのも、引渡戸数の減少という時期要因が影響している可能性がありますが、§4で述べたとおりそれが一時的なものか構造的なものかは決算短信だけからは判断できません。同じ2027年3月期第1四半期を対象にした野村不動産ホールディングス(3231)でも、住宅・都市開発を中心に全セグメントが減益となっており、引渡時期のズレによる四半期業績の振れやすさは、大手デベロッパーに共通する業界構造として現れています。

第二に、資産構成と資金調達構造です。用地取得から竣工・引渡しまでの間、開発中の物件は棚卸資産として貸借対照表に計上され続けます。この開発資金の多くは社債・借入金など有利子負債で調達されるため、自己資本比率は他業種より低めに出やすく、大和ハウス工業の自己資本比率33.8%・D/Eレシオ1.19倍も、この業界特有の資金調達構造を映したものと捉える必要があります。

第三に、マクロの金利・地価・建築費環境への感応度です。住宅ローン金利の動向は戸建住宅・マンション事業の需要と採算の両方に、地価と建築費(資材・労務費)の動向は用地仕入れコストと利益率の両方に影響します。海外事業(米国Trumark社)を通じて為替の影響も受けます。これらはいずれも個社の努力で制御できるものではなく、セクター全体が共通して受ける外部要因です。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定。第1四半期に好調だった戸建・賃貸・事業施設の勢いが続くか、マンション事業の減益が挽回するか、通期予想(営業利益460,000百万円)に対する進捗率が焦点。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定。通期予想(売上高5,900,000百万円・営業利益460,000百万円)の着地と、分割考慮前換算178.00円の配当予想の最終確定を確認する回。

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

第2四半期以降の発表日は、過去の傾向からの推定です。確定日は必ず同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算・通期予想に対する進捗率の確認両面

実質ベースで前期比7.9%減という会社の説明どおりの着地になるか、マンション事業の減益が一時的な引渡時期のズレにとどまるかが焦点。

随時マンション事業の引渡戸数の回復上振れ

当第1四半期の営業利益46.5%減が引渡時期のズレによるものであれば、下期以降に挽回する可能性がある。

随時データセンター・物流施設(事業施設セグメント)の拡大上振れ

2026年4月に新設されたデータセンター事業本部を含め、事業施設セグメントは当第1四半期に営業利益13.5%増と好調で、通期成長を牽引する候補になっている。

2026年10月1日(予定)普通株式1株を2株にする株式分割の効力発生両面

2026年5月13日の取締役会で決議済み。基準日は2026年9月30日。分割自体は既存株主の保有価値を変えないが、投資単位の引き下げによる流動性への影響が考えられる。

10. 想定されるリスク

強気材料と同じ重さで、リスク要因を整理します。

マンション事業の減益が構造化するリスク。 当第1四半期の営業利益46.5%減が、引渡時期のズレにとどまらず、需要や採算の構造的な弱さを反映したものであれば、通期予想の達成にも影響します。会社の説明は「引渡戸数が前年同期を下回った」という一文にとどまり、それ以上の判断材料は決算短信からは得られませんでした。

自己資本比率の低下とレバレッジ上昇が続くリスク。 自己資本比率は2025年3月期37.1%から2026年6月末33.8%へと複数期連続で低下し、有利子負債は3,463,955百万円・D/Eレシオ1.19倍です。低下の要因を決算短信から特定できなかったこと自体、投資家が財務健全性の変化を検証しづらいことを意味します。

通期の見かけの減益予想25.2%が市場心理に与える影響。 §4で見たとおり実質ベースでは7.9%減にとどまる可能性がありますが、見かけの数字だけが独り歩きすれば、実態以上に悲観的な評価につながるリスクがあります。逆に「一時要因を除けば実質8%減」という会社の説明を無条件に受け入れることも、判断を単純化しすぎるリスクを伴います。

商業施設事業の増収減益率(利益率低下)が続くリスク。 当第1四半期は売上高9.1%増に対し営業利益は0.5%増にとどまりました。この状態が続けば、6セグメントの中で最も規模の大きい部類に入る商業施設事業の収益性が徐々に低下していく可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

2027年3月期第1四半期は、売上高9.0%増・営業利益10.6%増という増収増益で着地した一方、会社が示す通期予想は営業利益前期比25.2%減という大幅な減益計画です。会社自身の開示によれば、前期の一時的な会計要因(退職給付数理差異等償却額)を除いた実質ベースでは7.9%減にとどまるとされていますが、この実質ベースの数字をそのまま受け入れるかどうかは判断が分かれるところです。加えて、戸建住宅・賃貸住宅・事業施設が好調な一方、マンション事業は大幅減益、商業施設は増収減益率という明暗も、通期を通じて解消されるのか広がるのかはまだ確認できていません。

判断が分かれるのは、通期の減益計画を見かけどおりの25%減益と受け止めるか、会社の説明する実質7.9%減と受け止めるか、という1点です。実質ベースの見方を取るなら、予想PER10.94倍・PBR1.00倍は業績の踊り場にしては割安に映る可能性があります。見かけの数字を重視するなら、自己資本比率の低下基調やマンション事業の減益と合わせて、慎重な評価も成り立ちます。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、実質ベースの説明どおりの進捗になっているか、マンション事業の減益が挽回しているかが焦点になります。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月の中間決算時点で、通期営業利益予想460,000百万円に対する進捗率が四半期あたりの目安(単純計算で25%)を大きく下回り、かつ会社が「一時要因を除けば実質7.9%減にとどまる」という説明どおりの着地を示せなかった場合。
  • マンション事業の営業利益減少(当第1四半期は前年同期比46.5%減)が、引渡時期のズレでは説明できない形で複数四半期にわたって続いた場合。
  • 2027年3月期の配当予想(分割を考慮しない場合の年間178.00円、中間86.00円・期末換算92.00円)が減額修正された場合。
  • 自己資本比率が2026年6月末の33.8%からさらに低下し(目安として30%を下回る水準)、有利子負債3,463,955百万円・D/Eレシオ1.19倍からさらに悪化した場合。

よくある質問

大和ハウス工業の配当はいくらですか?
2027年3月期の会社予想は、株式分割を考慮しない場合の換算で年間178.00円(中間86.00円・期末92.00円相当)です。実際に開示されている中間配当86.00円は分割前の株数基準、期末配当46.00円は2026年10月1日の株式分割(1株→2株)後の株数基準のため、単純に合算した132円という数字には意味がありません。2026年9月4日終値4,697円に対する予想利回りは3.79%です。
なぜ増収増益の第1四半期なのに、通期は25%も減益の予想なのですか?
前期(2026年3月期)の営業利益614,879百万円には、退職給付数理差異等償却額(営業費用115,675百万円減)という一時的な会計要因が含まれていました。会社自身が開示した参考比較によれば、この要因を除いた実質ベースでは前期の営業利益は499,203百万円となり、2027年3月期予想460,000百万円との差は7.9%減にとどまります。見かけの25.2%減という数字は、前期の高水準な会計要因の反動が大きく影響しています。
大和ハウス工業の株式分割はいつ行われますか?
2026年5月13日開催の取締役会で、普通株式1株を2株にする株式分割が決議されています。基準日は2026年9月30日、効力発生日は2026年10月1日です。2027年3月期第2四半期末(中間配当の基準日)と分割基準日が同じ日になるため、配当の内訳が分割前後の株数基準で混在しています。

参考文献・引用元

  1. 01

    大和ハウス工業株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年8月6日開示。一次情報。1ページ目(連結業績・財政状態・配当の状況)、2ページ目(通期業績予想)、2〜4ページ目(セグメント別概況)、5ページ目(財政状態の概況・D/Eレシオ・退職給付数理差異等償却額を除く前期実績との比較)を参照。 / 2026/08/06 開示

  2. 02

    大和ハウス工業株式会社「2022年3月期〜2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    各年5月公表。一次情報。各年の決算短信1ページ目(連結業績・配当の状況)から、financialsの2022〜2026年3月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益・EPS・自己資本比率・営業キャッシュ・フロー、dividendsの各期配当を確認した。 / 2026/05/01 開示

  3. 03
    IR BANK「大和ハウス工業(1925) 株価・PER・PBR」

    二次情報。2026年9月4日終値・時価総額、PER・PBR・ROE・ROAのスナップショットの突合に使用(本文のmetricsは会社開示ベースで算定した数値を採用)。 / 2026/09/04 開示