野村不動産ホールディングス(3231) 全セグメント減益でも据え置いた通期予想と増配計画
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本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
野村不動産ホールディングス株式会社
2026/08/14 時点
株価
919円
時価総額
8,435.893億円
配当利回り
4.79%
年間44円
PER
9.2倍
PBR
0.98倍
ROE
10.7%
ROA
3.0%
純利益ベース
自己資本比率
28.3%
配当性向
43.8%
有利子負債
16,965億円
D/Eレシオ
2.12倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は、住宅・都市開発を中心に全セグメントが減収減益となり、売上高は前年同期比13.7%減、営業利益30.6%減、経常利益36.2%減、純利益36.5%減という大幅な減益で着地した。海外セグメントは前年同期の事業利益132百万円から事業損失1,656百万円へと、唯一「黒字から赤字」への質的な転落を見せている。
- それでも会社は2026年4月24日公表の通期業績予想(売上高1,080,000百万円・営業利益140,000百万円・経常利益125,000百万円・純利益86,000百万円)を修正せず、配当予想も前期実績40円から44円への増配で維持した。ただし決算短信の説明は「2026年4月24日に公表しました連結業績予想の変更はありません」の一文のみで、Q1減益の理由や据え置きの根拠についての詳しい説明は見当たらなかった。
- 不動産デベロッパーは物件の引き渡し・売却時点で売上高を計上するため、四半期ごとの業績が竣工・引き渡しのタイミングで振れやすい業界構造を持つ。2026年3月期の売上高が前期比24.4%増と急伸したのもこの一例で、今回のQ1減益が下期の引き渡し集中を見込んだ計画どおりの推移である可能性はあるが、それを裏付ける記述は短信からは確認できなかった。
- 自己資本比率は28.3%(2026年6月末)、有利子負債1,696,531百万円、自己資本に対するD/Eレシオは2.12倍である。当サイトのスクリーニング基準との関係では、予想PER9.15倍は基準(10〜15倍)をわずかに下回り、予想ROA3.03%(純利益ベース)は基準(5%以上)に届いていない一方、予想ROE10.73%は基準(8%以上)を満たす。
目次11項目
1. 概要
野村不動産ホールディングス(3231)は、2026年8月14日時点で株価919円・予想PER9.15倍・PBR0.98倍という水準にあります。予想配当利回りは、会社が開示した2027年3月期の年間配当予想44.00円(第2四半期末22円・期末22円)を基準に計算すると4.79%です。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、売上高191,064百万円(前年同期比13.7%減)、営業利益25,540百万円(同30.6%減)、経常利益21,648百万円(同36.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益14,728百万円(同36.5%減)と、大幅な減益で着地しました。住宅・都市開発事業を中心に7つの全セグメントが減益となる広範な落ち込みですが、会社は通期業績予想を修正せず、配当予想も前期実績40円から44円への増配で据え置いています。この据え置きの背景を§4で詳しく整理します。
なお、当サイトのスクリーニング基準(配当利回り3%以上・PBR1倍以下・PER10〜15倍・ROE8%以上・ROA5%以上)との関係では、配当利回り予想4.79%・PBR0.98倍はおおむね基準の範囲内にありますが、予想PER9.15倍は基準(10〜15倍)の下限をわずかに下回ります。予想ROE10.73%は基準(8%以上)を満たす一方、予想ROA3.03%(純利益ベース)は基準(5%以上)には届いていません。不動産デベロッパーは販売用不動産などの棚卸資産を多く抱え総資産が大きくなりやすいため、他業種よりROAが低く出やすい業界構造があります。この点は§2・§7で改めて扱います。
2. 会社概要とビジネスモデル
野村不動産ホールディングスは、野村不動産グループの持株会社です。事業は7つのセグメントで構成されています。分譲マンション「プラウド」を中心とする住宅事業、オフィスビル・商業施設等の開発・売却・賃貸を手がける都市開発事業、海外での不動産開発・投資を行う海外事業、REIT運用等を行う資産運用事業、不動産仲介・CRE(企業不動産)コンサルティングを行う仲介・CRE事業、マンション管理等を行う運営管理事業、そしてその他事業です。
売上・利益の中心は住宅事業と都市開発事業で、いずれも物件の引き渡し・売却時点で売上高が計上されるため、開発案件の竣工・引き渡し時期のズレによって四半期ごとの業績が振れやすい性質を持っています。一方、資産運用事業・仲介CRE事業・運営管理事業は、運用報酬や管理料といったストック型収益の比率が相対的に高く、住宅・都市開発の変動を下支えする役割を担います。
強みと弱みの整理
強み
分譲・都市開発・資産運用・仲介管理をまたぐ複合ポートフォリオ
住宅事業(分譲マンション「プラウド」)と都市開発事業(オフィスビル・商業施設)を中心に、資産運用・仲介CRE・運営管理という相対的にストック性の高い事業を組み合わせています。2026年3月期の売上高営業利益率は14.7%で、総合デベロッパーとして安定した収益基盤を持っています。
緩やかな増配基調と配当性向の上昇余地
配当は2023年3月期の24円(配当性向31.7%)から2026年3月期の40円(同39.2%)まで4期連続で増加し、2027年3月期は44円(同43.8%見込み)を予想しています。配当性向はまだ40%台前半にとどまっており、他業種の高配当銘柄と比べても増配余地が急激に狭まっている段階ではありません。
資産運用・仲介CRE事業のストック性による下支え
2027年3月期第1四半期は住宅・都市開発が大きく落ち込む一方、資産運用事業は事業利益2,883百万円(前年同期比7.4%減にとどまる)、仲介・CRE事業は売上高14,951百万円(同2.0%増)と、相対的に振れの小さい収益源として機能しています。
弱み
ROAが当サイトの基準に届かない、業界構造由来の低さ
予想ROA(純利益÷総資産ベース)は3.03%で、当サイトのスクリーニング基準(5%以上)を下回ります。総資産2,836,892百万円(2026年6月末)のうち、販売用不動産651,611百万円・仕掛販売用不動産373,008百万円・開発用不動産279,082百万円と、棚卸資産だけで総資産の約4割を占めており、この資産構造が構造的にROAを押し下げています。
2027年3月期第1四半期は7セグメントすべてが減益
住宅(事業利益16.9%減)、都市開発(同50.6%減)、海外(前年同期の事業利益132百万円から事業損失1,656百万円へ転落)、資産運用(同7.4%減)、仲介・CRE(同15.5%減)、運営管理(同34.4%減)、その他(同10.7%減)と、程度の差はあれ全セグメントが減益となりました。
通期予想据え置きの根拠についての開示が薄い
決算短信の「連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」は「2026年4月24日に公表しました連結業績予想の変更はありません」の一文のみで、Q1の大幅減益に対する会社自身の評価や、据え置きの根拠についての説明はほとんど記載されていません。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/03 | 654,735 | 99,598 | 94,121 | 64,520 | — |
| 2024/03 | 734,715 | 112,114 | 98,248 | 68,164 | — |
| 2025/03 | 757,638 | 118,958 | 106,740 | 74,835 | — |
| 2026/03 | 942,505 | 138,242 | 124,807 | 82,880 | 28.5% |
| 2027/03会社予想 | 1,080,000 | 140,000 | 125,000 | 86,000 | — |
読み取れることは3つあります。
1つ目、売上高は年ごとの振れが大きく、直線的な増収基調ではない。 2023年3月期の654,735百万円から2024年3月期は734,715百万円(前期比12.2%増)、2025年3月期は757,638百万円(同3.1%増)と伸びが鈍化した後、2026年3月期は942,505百万円(同24.4%増)へ急伸しました。不動産デベロッパーは物件の引き渡し・売却時点で売上高を計上するため、開発案件の竣工・引き渡し時期のズレが年度ごとの売上高を大きく動かします。2026年3月期の急伸も、この業界特有の計上タイミングの影響を受けたものとみられます。
2つ目、営業利益は増加を続けているが、営業利益率はやや低下している。 営業利益は2023年3月期99,598百万円から2026年3月期138,242百万円まで4期連続で増加しました。ただし売上高営業利益率でみると、2025年3月期15.7%から2026年3月期14.7%へ低下しており(いずれも決算短信に記載の数値)、増収のペースに利益率の改善が追いついていません。2027年3月期の会社予想では営業利益140,000百万円(前期比1.3%増)と、売上高予想の伸び(同14.6%増)に比べて小幅な伸びにとどまっています。
3つ目、経常利益・純利益は営業利益とおおむね同じ方向に動くが、伸び率には差がある。 経常利益は2024年3月期の前期比4.4%増から2025年3月期8.6%増、2026年3月期16.9%増と加速した一方、2027年3月期予想は前期比0.2%増とほぼ横ばいです。純利益も2026年3月期の前期比10.8%増から2027年3月期予想は同3.8%増へ伸びが鈍化しており、会社自身が今期を利益成長の踊り場と位置づけている可能性がうかがえます。この予想と、実際に大幅減益で始まった第1四半期の関係は§4で扱います。
4. 全セグメント減益と、説明の薄いまま据え置かれた通期・増配予想
2027年3月期第1四半期で最も重要な論点は、住宅・都市開発を中心に7セグメントすべてが減益となる広範な落ち込みのなかで、会社が通期業績予想と増配予想の両方をほぼ無言のまま据え置いたことです。
まずセグメント別の状況を数字で確認します。売上構成比が最も大きい住宅事業は、当第1四半期の売上高が101,115百万円(前年同期比14.7%減)、事業利益は15,673百万円(同16.9%減)でした。都市開発事業は、売上高48,657百万円(同21.8%減)、事業利益5,504百万円(同50.6%減)と、7セグメントの中で最も大きな減益幅です。海外事業は、売上高755百万円(同4.2%減)に対し、事業損失1,656百万円(前年同期は事業利益132百万円)へと転落しました。決算短信によれば、この事業利益には持分法投資損益1,257百万円が含まれており、それでもなお損失に落ち込んだ格好です。資産運用事業は事業利益2,883百万円(同7.4%減)、仲介・CRE事業は売上高が増加(同2.0%増)したものの事業利益は4,436百万円(同15.5%減)、運営管理事業も売上高は増加(同4.1%増)したが事業利益は1,196百万円(同34.4%減)、その他は事業利益36百万円(同10.7%減)と、増収セグメントも含めてすべてが減益で着地しました。7セグメントの中で「黒字から赤字」という質的な転落を見せたのは海外事業のみで、他は程度の差はあれ減収・減益の範囲にとどまっています。
この広範な減益にもかかわらず、決算短信の「(3)連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」は「2026年4月24日に公表しました連結業績予想の変更はありません」という一文のみです。通期予想は売上高1,080,000百万円(前期比14.6%増)・営業利益140,000百万円(同1.3%増)・経常利益125,000百万円(同0.2%増)・純利益86,000百万円(同3.8%増)で維持され、配当予想も前期実績40円から44円への増配のまま「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」とされています。以前取り上げたAOKIホールディングス(8214)の第1四半期決算短信は、進捗が計画を下回っていることを自ら認めたうえで通期予想を据え置いていましたが、野村不動産ホールディングスの今回の短信には、そうした自己評価の記述すら見当たりません。この説明の薄さ自体が、この決算の読み方を難しくしている点です。
不動産デベロッパーは物件の引き渡し・売却が計上タイミングを左右するため、四半期ごとの数字の振れが必ずしも構造的な需要の変化を意味しません(この業界特性は§7で改めて扱います)。2026年3月期の売上高が前期比24.4%増と急伸した実績を踏まえれば、今回のQ1減益が下期の引き渡し集中を見込んだ計画どおりの推移である可能性は十分にあります。しかし、それを裏付ける具体的な記述は今回の決算短信からは見つかりませんでした。データから読み取れる事実(全セグメント減益・通期予想据え置き・説明の乏しさ)と、それをどう解釈するか(計画どおりの通過点か、需要の弱さの兆候か)は分けて考える必要があります。次の答え合わせは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、上期の進捗と通期予想を据え置いた根拠が語られるかどうかが焦点です。
5. 配当の推移
会社が開示している2027年3月期の配当予想は、第2四半期末22.00円・期末22.00円の合計44.00円です。株価919円に対する予想配当利回りは4.79%になります。
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2023/03 | — | 24円 | — | 31.7% |
| 2024/03 | — | 28円 | — | 32.9% |
| 2025/03 | — | 34円 | — | 35.7% |
| 2026/03 | 36円 | 40円 | +4円 | 39.2% |
| 2027/03会社予想 | 44円 | 44円 | — | 43.8% |
- 2026/03:期初予想36円から実績40円へ増額修正。2022〜2025年3月期も期初予想から期中増額修正する年が続いた。
- 2027/03:第2四半期末22円・期末22円の合計。前期実績40円からの+4円増配で、2026年7月30日開示の第1四半期決算短信時点で修正は無し。
配当は、2023年3月期24円(配当性向31.7%)、2024年3月期28円(同32.9%)、2025年3月期34円(同35.7%)、2026年3月期40円(同39.2%)と、緩やかな増配・配当性向の上昇基調が続いています。2026年3月期は期初予想36円から実績40円へ増額修正されており、2022〜2025年3月期も期初予想から期中に増額修正する年が続きました。これに対し2027年3月期は、第1四半期時点で期初から44円(前期比+4円)が示され、修正はありません。過去の「保守的に出して期中に増額する」パターンと違い、今回は最初から増配水準で提示されている点が特徴です。予想EPS100.48円に対する配当性向は43.8%で、過去の実績レンジ(31.7〜39.2%)よりも一段切り上がる計算になります。ただし、これは通期予想(純利益86,000百万円)が計画どおりに達成されることが前提であり、§4で述べたとおり第1四半期は大幅な減益で始まっているため、この前提の確からしさは中間決算で改めて確認する必要があります。
6. 会社の現状と直近の動き
貸借対照表面では、2026年6月末の総資産は2,836,892百万円(2026年3月末2,811,989百万円から24,903百万円増、0.9%増)、総負債は2,034,610百万円(同2,009,259百万円から25,351百万円増、1.3%増)、純資産は802,282百万円(同802,729百万円から447百万円減、0.1%減)でした。決算短信によれば、資産の増加は主にその他(前渡金など、30,091百万円増)と現金及び預金(10,164百万円増)の増加による一方、販売用不動産(9,984百万円減)・受取手形及び売掛金(8,430百万円減)は減少しています。負債の増加は主にコマーシャル・ペーパー(72,000百万円増)・短期借入金(32,463百万円増)の増加によるもので、支払手形及び買掛金(30,924百万円減)は減少しました。純資産の減少は主に利益剰余金(4,483百万円減、配当金の支払いによる)によるもので、為替換算調整勘定(3,666百万円増)が一部を相殺しています。自己資本は801,665百万円(同801,312百万円)、自己資本比率は28.5%から28.3%へ0.2ポイント低下しました。
有利子負債にも触れておきます。2026年6月末の有利子負債(短期借入金175,096百万円、コマーシャル・ペーパー148,000百万円、社債167,000百万円、長期借入金1,206,435百万円の合計)は1,696,531百万円です。自己資本801,665百万円に対するD/Eレシオは2.12倍で、前回取り上げたオリエントコーポレーション(8585、D/Eレシオ8.89倍)ほど外部調達に依存してはいないものの、AOKIホールディングス(8214、同0.18倍)のような低レバレッジとも異なる、不動産デベロッパーとして典型的な中間的水準です。この四半期に短期借入金・コマーシャル・ペーパーが増加した具体的な使途は、資産側のその他(前渡金など)の増加と符合する可能性がうかがえるものの、決算短信の記載からは確定的には特定できませんでした。
損益計算書では、特別損失として減損損失387百万円(前年同期142百万円)を計上した一方、前年同期に計上されていた建替関連損失610百万円は今期は発生していません。特別利益には固定資産売却益189百万円・子会社株式売却益109百万円(いずれも前年同期は無し)を計上しています。この結果、税金等調整前四半期純利益は21,560百万円、法人税等合計6,794百万円(実効負担率31.5%、前年同期は9,961百万円・30.0%)を控除し、親会社株主に帰属する四半期純利益は14,728百万円となりました。
7. 業界とセクターの状況
不動産デベロッパーのセクターには、個社の努力だけでは変えられない構造がいくつかあります。
第一に、売上高の計上タイミングです。マンションやオフィスビルは、引き渡し・売却が完了した時点で初めて売上高として計上されるため、開発案件の竣工スケジュールのズレによって四半期・年度ごとの業績が大きく振れます。野村不動産ホールディングスの2026年3月期の売上高が前期比24.4%増と急伸した一方、2027年3月期第1四半期は前年同期比13.7%減となったのも、この計上タイミングの影響が大きいと考えられます。単一四半期の増減だけを見て構造的な需要変化と即断できない点は、このセクターに共通する特徴です。
第二に、資産構成と資金調達構造です。用地取得から竣工・引き渡しまでの間、開発中の物件は棚卸資産(販売用不動産・仕掛販売用不動産・開発用不動産)として貸借対照表に計上され続けます。野村不動産ホールディングスの場合、2026年6月末の総資産2,836,892百万円のうち、この3科目だけで1,303,701百万円(約46%)を占めます。この開発資金の多くは社債・借入金など有利子負債で調達されるため、自己資本比率は他業種より低め(同社は28.3%)に出やすく、D/Eレシオ(同社は2.12倍)は業界の典型的な水準として捉える必要があります。
第三に、マクロの金利・地価環境への感応度です。住宅ローン金利の動向は住宅事業の需要と採算の両方に、地価動向は用地仕入れコストと販売価格の両方に影響します。都市部の再開発需要やオフィス・商業施設の稼働状況も、都市開発事業や資産運用事業の業績を左右します。これらはいずれも個社の努力で制御できるものではなく、セクター全体が共通して受ける外部要因です。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定。第1四半期に見られた全セグメント減益がどこまで挽回するか、通期予想と増配予想(44円)を据え置いたままにできるかが焦点。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定。通期予想(売上高1,080,000百万円・営業利益140,000百万円・配当44円)の着地を確認する回。
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
第2四半期以降の発表日は、過去の傾向からの推定です。確定日は必ず同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
第1四半期の全セグメント減益が中間時点でどこまで挽回するか、通期予想・増配予想(44円)の修正有無が焦点。
住宅事業(分譲マンション「プラウド」)の販売採算と需要の両方に、住宅ローン金利と地価動向が影響する。
都市開発セグメントは物件の売却時点で利益が計上されるため、下期に売却が集中すれば通期予想の達成に寄与しうる。
進捗率の低さにもかかわらず据え置かれた通期予想と増配予想が、最終的にどう着地するかを確認する回。
10. 想定されるリスク
強気材料と同じ重さで、リスク要因を整理します。
全セグメント減益が下期以降も続くリスク。 住宅・都市開発を中心に7セグメントすべてが減益となった状況が中間決算以降も続けば、据え置かれた通期業績予想(営業利益140,000百万円等)の達成そのものが揺らぎます。決算短信からは、Q1の減益が計画どおりの通過点なのか需要の弱さの兆候なのかを判断する材料が乏しく、この不確実性自体がリスクです。
海外事業の損失が定着するリスク。 海外セグメントは前年同期の事業利益132百万円から事業損失1,656百万円へ転落しました。持分法投資損益1,257百万円を含んでもなお損失であり、この状態が複数四半期にわたって続けば、プロジェクト会社の持分売却益に依存してきた海外事業のビジネスモデルそのものの見直しが必要になる可能性があります。
通期予想据え置きの説明不足による不確実性。 決算短信は業績予想の変更が無いことのみを一文で述べるにとどまり、Q1の大幅減益に対する会社自身の評価や据え置きの根拠がほとんど示されていません。この開示の薄さは、投資家が会社の判断の妥当性を検証する材料が乏しいことを意味します。
収益性指標(ROA)が当サイトの基準に届いていない点。 予想ROA(純利益ベース)は3.03%で、当サイトのスクリーニング基準(5%以上)を下回ります。棚卸資産を多く抱える業界構造に起因する面はありますが、資本効率の観点では見劣りする指標であることに変わりはありません。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期は、住宅・都市開発を中心に7セグメントすべてが減益となり、売上高13.7%減・営業利益30.6%減・経常利益36.2%減・純利益36.5%減という大幅な減益で着地しました。それでも会社は通期業績予想と、前期実績40円から44円への増配予想の両方を据え置いています。決算短信にはこの据え置きの根拠を裏付ける説明がほとんど無く、不動産デベロッパー特有の「引き渡しタイミングによる四半期業績の振れ」という業界構造を踏まえても、断定的な評価はできません。
判断が分かれるのは、この全セグメント減益と説明の薄い据え置きを、下期の引き渡し集中を見込んだ計画どおりの通過点と見るか、それとも需要の構造的な弱さが複数事業に同時に表れ始めた予兆と見るかという1点です。予想PER9.15倍・PBR0.98倍という水準は割安に映る一方、予想ROA3.03%(純利益ベース)は当サイトの基準に届いておらず、海外事業の事業損失転落という質的な変化も無視できません。次の確認ポイントは2026年11月の中間決算で、全セグメント減益からの挽回状況と、通期予想・増配予想を据え置いた根拠が語られるかどうかが焦点になります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月の中間決算で、住宅・都市開発を中心とした減収減益が引き続き確認され、それでも会社が通期業績予想(売上高1,080,000百万円・営業利益140,000百万円)を据え置いた場合、または進捗の乖離を理由に下方修正した場合。
- 2027年3月期の配当予想(第2四半期末22円・期末22円、合計44円、前期比+4円)が減額修正された場合。
- 自己資本比率が2026年6月末の28.3%からさらに低下し(目安として25%を下回る水準)、有利子負債1,696,531百万円・D/Eレシオ2.12倍からさらに上昇するなど、財務レバレッジが一段と悪化した場合。
- 海外セグメントの事業損失(当第1四半期1,656百万円)が今後複数四半期にわたって継続・拡大し、一過性ではなく構造的な要因であることが判明した場合。
参考文献・引用元
- 01野村不動産ホールディングス株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年7月30日開示。連結経営成績(売上高・営業利益・事業利益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益・EPS・包括利益)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率)、配当の状況、通期業績予想、経営成績の概況(セグメント別の定性的情報・財政状態の概況)、四半期連結貸借対照表(有利子負債の各項目)、四半期連結損益計算書(営業外損益・特別損益の内訳)を参照。 / 2026/07/30 開示
- 02野村不動産ホールディングス株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年4月24日開示。一次情報。2025年3月期・2026年3月期の連結経営成績(売上高・営業利益・事業利益・経常利益・純利益)、自己資本当期純利益率・総資産経常利益率・売上高営業利益率、1株当たり純資産(株式分割調整後)を参照し、financials の2025・2026年3月期の裏付けとした。 / 2026/04/24 開示
- 03IR BANK「野村不動産ホールディングス(3231) 会社業績・財務状況」
二次情報。2023年3月期・2024年3月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益(伸び率注記からの逆算値。2025年3月期以降の一次情報確定値と整合することを検算済み)、PBR・PERの2010年以降のレンジ(PBR 0.45〜1.49倍、PER 5.67〜78.98倍)、株価・時価総額・PER・PBR・ROE・ROAのスナップショットを参照した。ROAは純利益÷総資産の定義で、当サイトのスクリーニングツールが使う経常利益ベースの定義とは異なる。 / 2026/08/14 開示
- 04IR BANK「野村不動産ホールディングス(3231) 配当金の推移」
二次情報。2023年3月期〜2026年3月期の配当実績・配当性向の推移(株式分割調整後)、2025年4月1日付の株式1株につき5株の分割、期初予想と実績修正の履歴を参照。