鴻池運輸(9025) Q1営業利益4.6%減、主因は全社費用増で上期減益予想はまだ現れず
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
鴻池運輸株式会社
2026/08/20 時点
株価
2,992円
時価総額
1,704億円
配当利回り
3.68%
年間110円
PER
11.1倍
PBR
0.98倍
ROE
9.3%
ROA
7.7%
経常利益ベース
自己資本比率
52.5%
配当性向
41.7%
有利子負債
582億円
D/Eレシオ
0.36倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期の営業利益は63億75百万円(前年同期比△4.6%)で、通期予想210億円に対する進捗率は30.4%(前年同期の進捗率29.3%とほぼ同水準)だった。会社は「業績は概ね計画通りに推移している」として、2026年5月13日公表の通期・上期予想を修正していない。
- 前号記事で示した論点(上期に集中する△20.6%の営業減益予想を「保守的な期初予想への回帰」と見るか「利益成長の踊り場」と見るか)は、Q1単体では判定できない。上期(2Q累計)予想100億円に対しQ1実績が既に63.75%に達しており、減益の主体はまだ現れていないという事実が一つ増えたにとどまる。
- Q1の営業利益減少(△309百万円)は、セグメント利益合計がほぼ横ばい(+0.75%)だったのに対し、全社費用等の連結調整額が△19億85百万円から△23億58百万円へ+18.8%増加したことがほぼ全額に相当する。増加の内訳(人件費か投資関連費用か等)は決算短信からは特定できなかった。
- 純利益は前年同期比△17.3%と、経常利益の△3.5%を大きく上回って落ち込んだ。税引前利益はほぼ経常利益と同じ△3.5%で沈んだが、法人税等合計が+35.3%増加し、実効税負担率が28.3%から39.7%へ上昇したことが下押しした。
目次11項目
1. 概要
鴻池運輸は、2026年8月20日時点でPER11.13倍・PBR0.98倍・ROE9.3%・ROA7.7%(経常利益ベース)という水準にあります。会社が開示している2027年3月期の年間配当予想は110.00円で、株価2,992円に対する利回りは3.68%です。
前号記事(2026年3月期通期決算を扱った記事)では、会社が2027年3月期に営業利益△7.8%・経常利益△7.0%の減益を予想し、しかも上期(第2四半期累計)は△20.6%とさらに大きい減益が計画されていることを取り上げ、これを「保守的な期初予想への回帰」と見るか「利益成長の踊り場」と見るかを論点にしました。
2026年8月12日に公表された第1四半期決算短信では、この論点への直接の答えはまだ出ていません。 ただし新しい事実が2つ見つかりました。ひとつは、上期の大幅減益予想に対してQ1単体では前年同期比△4.6%の減益にとどまり、通期予想に対する進捗率は前年同期とほぼ同水準だったこと。もうひとつは、この△4.6%の減益がセグメントの収益悪化ではなく、全社費用(本社費)の増加によってほぼ説明できることです。第4節で詳しく整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
鴻池運輸は総合物流企業で、事業を「複合ソリューション事業」「国際物流事業」「国内物流事業」の3つのセグメントに分けて開示しています。複合ソリューション事業は構内物流(工場内・倉庫内での搬送・保管・荷役等)を中心とする事業で、2026年3月期の売上高は2,320億円と連結売上高の65%を占め、セグメント営業利益計に対する構成比は76%に達します。国際物流事業(同670億円)は輸出入貨物の輸送・通関等を、国内物流事業(同565億円)は国内輸送を手がけています。
売上構成比を見ると、鴻池運輸は特定の荷主の構内作業を長期に受託する構内物流を中核に据えており、単純な輸送業者とは事業モデルが異なります。2027年3月期第1四半期でも、複合ソリューション事業の売上高は593億68百万円(前年同期比+2.7%)と3セグメント中唯一増収を確保しており、収益性の面でも同事業が連結全体を牽引する構図に変化はありません。
強みと弱みの整理
強み
複合ソリューション事業の増益基調がQ1も継続
2027年3月期Q1のセグメント利益は68億03百万円(前年同期比+4.1%)と、3セグメント中唯一増益を確保しました。連結売上高の65%以上、セグメント利益計の8割近くを占めるこの事業の底堅さが、連結業績の下支えになっています。
自己資本比率52.5%・D/Eレシオ0.36倍の堅実な財務基盤
2027年3月期Q1末の自己資本比率は52.5%、有利子負債582億49百万円・自己資本比0.36倍(D/Eレシオ)です。前期末(自己資本比率53.1%、有利子負債576億40百万円)からの変化は小幅にとどまり、財務基盤は引き続き堅実です。
会社は通期・上期予想を修正せず、進捗も前年同期並み
Q1の営業利益進捗率は30.4%で、前年同期の29.3%とほぼ同水準でした。会社は決算短信で「業績は概ね計画通りに推移している」として、2026年5月13日公表の予想を据え置いています。
弱み
全社費用(本社費)が前年同期比+18.8%増加
連結調整額(全社費用等)は前年同期△19億85百万円から当期△23億58百万円へ拡大しました。Q1の連結営業利益の減少額(△3億09百万円)は、ほぼこの一項目で説明できます。増加の具体的な内訳は決算短信からは特定できません。
国内物流事業のセグメント利益が△18.4%と大きく落ち込み
国内物流事業の売上高は+0.5%の増収でしたが、セグメント利益は9億66百万円から7億88百万円へ△18.4%減少しました。生活産業関連の一部得意先の業務終了等の影響を、製品保管量・冷凍冷蔵貨物の取扱量増加でカバーしきれていません。
純利益の減益幅が経常利益を大きく上回る
Q1の純利益は前年同期比△17.3%で、経常利益の△3.5%を大きく上回って落ち込みました。実効税負担率が28.3%から39.7%へ上昇したことが主因です。詳細は第6節で扱います。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018/03 | 276,800 | 11,100 | 11,500 | 7,040 | — | — |
| 2019/03 | 294,200 | 11,000 | 11,400 | 6,290 | — | — |
| 2020/03 | 310,800 | 9,690 | 9,560 | 4,590 | — | — |
| 2021/03 | 292,300 | 4,000 | 9,400 | 4,840 | — | — |
| 2022/03 | 301,400 | 10,300 | 11,800 | 7,990 | — | — |
| 2023/03 | 311,800 | 13,200 | 14,300 | 8,300 | — | — |
| 2024/03 | 315,000 | 16,600 | 17,000 | 11,300 | — | — |
| 2025/03 | 344,987 | 21,385 | 21,295 | 14,050 | 23,468 | 50.7% |
| 2026/03 | 355,555 | 22,785 | 22,585 | 14,268 | 24,862 | 53.1% |
| 2027/03会社予想 | 361,000 | 21,000 | 21,000 | 14,000 | — | — |
読み取れることは3つあります。
2020年3月期から2021年3月期にかけて、営業利益が急減した局面がある。 売上高は3,108億円から2,923億円へ縮小し、営業利益は96億90百万円から40億円へ大きく落ち込みました。一方で経常利益は95億60百万円から94億円とほぼ横ばいで踏みとどまっており、営業外収支が下支えしたことがうかがえます。
2022年3月期から2026年3月期にかけて、原価率の低下を背景に5期連続で営業増益が続いた。 営業利益は103億円→132億円→166億円→214億円→228億円と積み上がり、営業利益率は3.41%(2022年3月期)から6.41%(2026年3月期)へほぼ倍増しました。前期(2025年3月期)は売上高が前期比+9.5%、営業利益+28.6%という大幅増益でした。
そして2027年3月期は、会社が売上高の増収を見込みながら、営業利益以下すべての利益段階で減益に転じる計画を出している。 この年間の計画そのものは前号記事で扱いましたが、今回のQ1実績を見る限り、少なくとも第1四半期の時点では急激な減益はまだ起きていません。次の第4節で、この「まだ来ていない」実態を詳しく見ます。
4. 上期△20.6%減益予想、Q1時点で見えた「まだ来ていない」実態
これが今回の記事でいちばん整理したい論点です。前号では、会社が2027年3月期第2四半期累計(上期)に営業利益△20.6%という大幅な減益を予想していることを取り上げ、「保守的な期初予想への回帰」か「利益成長の踊り場」かを論点にしました。今回のQ1決算短信を読んだ結果、新しい事実が2つ見つかりました。
事実1:Q1単体の減益は△4.6%にとどまり、進捗率は前年並み
第1四半期(2026年4〜6月)の連結営業利益は63億75百万円で、前年同期比△4.6%でした。上期予想の△20.6%と比べるとかなり緩やかな落ち込みです。
| 項目 | Q1(2027年3月期) | Q1(2026年3月期) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 890億07百万円 | 892億90百万円 | △0.3% |
| 営業利益 | 63億75百万円 | 66億84百万円 | △4.6% |
| 経常利益 | 64億44百万円 | 66億74百万円 | △3.5% |
| 純利益 | 38億26百万円 | 46億26百万円 | △17.3% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信
通期の営業利益予想210億円に対する進捗率は30.4%で、前年同期の進捗率29.3%(66億84百万円÷2026年3月期通期実績227億85百万円)とほぼ同水準です。会社自身も決算短信で「現在、当社グループの業績は概ね計画通りに推移しており、第2四半期連結累計期間及び通期の連結業績につきましては、2026年5月13日に公表いたしました業績予想から変更はありません」と説明しており、通期・上期の予想を修正していません。
一方で、上期(第2四半期累計)予想の営業利益100億円に対して、Q1実績63億75百万円は既に63.75%に達しています。単純計算では、残るQ2(7〜9月)で許容される営業利益は36億25百万円程度にとどまる計算です。前年同期のQ2単体実績は今回参照した資料からは分からないため直接の比較はできませんが、「上期の大幅減益の主体は、Q1の時点ではまだ現れていない」という事実は確認できます。 前号で示した「保守的な期初予想への回帰か、利益成長の踊り場か」という論点そのものへの判定材料としてはまだ不足していますが、少なくとも急激な悪化がすでに起きているわけではないことが分かりました。
事実2:△4.6%減益の主因はセグメント収益ではなく全社費用の増加
もうひとつの発見は、Q1の営業減益の中身です。セグメント別の利益を見ると、実は大きく落ち込んでいるわけではありません。
| セグメント | Q1利益(2027年3月期) | Q1利益(2026年3月期) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 複合ソリューション事業 | 68億03百万円 | 65億38百万円 | +4.1% |
| 国内物流事業 | 7億88百万円 | 9億66百万円 | △18.4% |
| 国際物流事業 | 11億75百万円 | 11億96百万円 | △1.8% |
| セグメント利益合計(その他含む) | 87億34百万円 | 86億69百万円 | +0.75% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信
セグメント利益の合計は前年同期比+0.75%とほぼ横ばいで、むしろ複合ソリューション事業は+4.1%の増益です。 ところが、ここから全社費用等(連結調整額)を差し引く段階で状況が変わります。連結調整額は前年同期△19億85百万円(うち全社費用△19億95百万円)から、当期△23億58百万円(うち全社費用△23億59百万円)へと+18.8%(全社費用単体では+18.2%)拡大しました。
セグメント利益合計87億34百万円から連結調整額23億58百万円を差し引くと63億76百万円となり、実際の連結営業利益63億75百万円とほぼ一致します(1百万円の端数差はセグメント別数値の四捨五入によるものです)。つまり、Q1の営業減益(△3億09百万円)は、ほぼ全額が全社費用等の増加によって説明できます。 全社費用の増加が具体的に何に起因するのか(人件費なのか、投資関連費用なのか等)は、今回参照した決算短信からは特定できませんでした。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 22円 | 29円 | +7円 | 19.2% |
| 2023/03 | 36円 | 42円 | +6円 | 26.8% |
| 2024/03 | 48円 | 65円 | +17円 | 30.4% |
| 2025/03 | 70円 | 96円 | +26円 | 36.3% |
| 2026/03 | 110円 | 110円 | 0円 | 40.9% |
| 2027/03会社予想 | 110円 | 110円 | — | 41.7% |
- 2022/03:当初予想は中間11.00円・期末11.00円(合計22.00円)。期中に29.00円へ増額修正され、その水準で着地した(当初予想比+31.8%、IR BANK集計)。純資産配当率1.4%。
- 2023/03:当初予想は中間18.00円・期末18.00円(合計36.00円)。期中に42.00円へ増額修正され着地した(当初予想比+16.7%、IR BANK集計)。純資産配当率1.9%。
- 2024/03:当初予想は中間24.00円・期末24.00円(合計48.00円)。期中に62.00円へ修正後、最終的に中間24.00円・期末41.00円、合計65.00円(当初予想比+35.4%)で着地した(IR BANK集計)。純資産配当率2.7%。
- 2025/03:当初予想は中間35.00円・期末35.00円(合計70.00円)。期中に96.00円へ修正後、中間35.00円・期末61.00円、合計96.00円(当初予想比+37.1%)で着地した(決算短信)。純資産配当率3.6%。
- 2026/03:当初予想どおり中間55.00円・期末55.00円、合計110.00円で着地した(決算短信)。2022年3月期以降4期続いた期中の増額修正が、初めて行われなかった。純資産配当率3.8%。
- 2027/03:中間55.00円・期末55.00円の予想(決算短信)。2026年8月12日公表のQ1決算短信でも、2026年5月13日公表の予想から「修正なし」と明記されている。
配当は2022年3月期の29.00円から、2023年3月期42.00円、2024年3月期65.00円、2025年3月期96.00円、2026年3月期110.00円と5期連続で増額されてきました。うち2022年3月期から2025年3月期までの4期は、期初予想を期中に大幅に増額するパターンを繰り返しており、期初予想に対する実績の比率は+31.8%〜+37.1%でした。
2026年3月期はこの増額修正のパターンが初めて途絶え、当初予想どおり合計110.00円で着地しました。2027年3月期についても、今回のQ1決算短信で「配当予想の修正の有無:無」と明記されており、2026年5月13日公表の中間55.00円・期末55.00円、合計110.00円の予想がそのまま維持されています。 株価2,992円に対する利回りは3.68%で、これは会社が開示した予想配当にもとづく数値です。配当性向は前期実績の40.9%から41.7%へ上昇する計画で、純利益が減益予想であるにもかかわらず配当額を維持する計画になっています。
6. 会社の現状と直近の動き
Q1決算では、セグメント別の動き(第4節で扱った内容)に加えて、利益の質と財務状況の面で押さえておくべき点があります。
純利益の落ち込み幅は、経常利益よりも大幅に大きい。 税金等調整前四半期純利益(税引前利益)は前年同期67億11百万円から当期64億76百万円(△3.5%)と、経常利益とほぼ同じ下げ幅で沈みました。ところが法人税等合計は18億98百万円から25億68百万円へ+35.3%増加し、税引前利益に対する実効税負担率は28.3%から39.7%へ上昇しました。この結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は38億26百万円(前年同期46億26百万円)と、前年同期比△17.3%まで下げ幅が拡大しています。短信本文も、純利益減少の直接要因として「税金費用が増加したことにより」と明記しています。税金費用増加の具体的な内訳(一時差異の解消、税率の変動等)は今回参照した資料からは特定できません。
自己資本比率はわずかに低下し、有利子負債はほぼ横ばい。 自己資本比率は2026年3月期末の53.1%から2027年3月期Q1末は52.5%へ0.6ポイント低下しました。総資産が2,997億26百万円から3,073億80百万円へ+76億54百万円増加した一方、自己資本の増加(159,076→161,451百万円、+2,375百万円)がそれに追いつかなかったためです。有利子負債は576億40百万円から582億49百万円へ+1.1%とほぼ横ばいで、D/Eレシオも0.36倍で大きな変化はありません。総資産の増加要因としては、流動資産では有価証券+60億14百万円・売掛金等+24億01百万円、固定資産では建設仮勘定+12億24百万円・投資有価証券+11億26百万円・繰延税金資産+5億96百万円などが挙げられており、投資有価証券や建設仮勘定の増加は設備投資・投資運用の積み増しを示唆しますが、有利子負債そのものが大きく動いた形跡はありません。
四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。 第1四半期では作成しない会社が多く、鴻池運輸も短信でその旨を明記しています。営業活動によるキャッシュ・フローの実額は今回の資料からは確認できません。
7. 業界とセクターの状況
鴻池運輸は当サイトの「logistics(物流)」セクターの記事です。このセクターで構造的に決まっていることとして、次の点が挙げられます。
- 労働集約的な事業で、人件費や外部委託費の負担が大きい。 構内物流・輸送のいずれも人手に依存する部分が大きく、人手不足や最低賃金の上昇は個社の努力だけでは吸収しきれないコスト圧力になります。
- 荷主企業(製造業・小売業等)の生産・出荷動向に売上が連動する。 構内物流事業は特定の荷主の工場・倉庫内作業を長期契約で受託する形が多く、荷主側の生産計画の変化が業績に直結します。
- 国内物流の担い手は、時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)による輸送能力の制約と、運賃転嫁の必要性に直面している。 これは個社の努力だけでは変えられない業界共通の制約です。
- 空港関連・国際物流事業は、地政学リスクや国際線の運航状況といった外部要因の影響を受けやすい。 今回のQ1決算短信では、2025年12月から続く中国路線の減便が空港関連事業に継続的に影響していると記載されており、周辺業務の新規獲得や人材活用の最適化で対応するとされています。中東情勢の緊迫化に伴う燃油価格上昇についても言及がありますが、輸送コスト増への影響は限定的としています。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
会社の上期(2Q累計)予想は営業利益100億円(前年同期比△20.6%)。Q1実績6,375百万円に対し、残るQ2で許容される営業利益は単純計算で3,625百万円程度になる。この水準に収まるか、上振れ・下振れするかが「保守的回帰か踊り場か」を判断する最初の材料になる。
Q1の連結営業利益減少はほぼ全額が全社費用等の増加(+18.8%)に起因する。会社が中間決算以降でこの内訳(人件費・投資関連費用等)に言及するかどうかが注目点。
2025年12月以降、中国路線の減便が空港関連事業に継続的に影響していると短信に記載されている。周辺業務の新規獲得・人材活用の最適化で対応するとしているが、影響の解消時期は確認できない。
Q1は法人税等合計が前年同期比+35.3%と急増し、実効税負担率が28.3%から39.7%へ上昇した。この水準が一時的なものか、通期を通じて続くのかで、経常利益予想210億円に対する純利益予想140億円の妥当性が変わる。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
全社費用の増加が中間・通期でも続くリスク。 Q1の連結営業利益の減少はほぼ全額が全社費用等の増加(+18.8%)によるものでした。この増加要因が一時的なものか構造的なものか特定できていない以上、中間・通期でも同水準の増加が続けば、セグメント利益が横ばい〜増益であっても連結営業利益は圧迫され続けます。
上期の大幅減益予想(△20.6%)が実際に現れるリスク。 Q1時点では進捗率が前年並みでしたが、これはあくまでQ1単体の結果です。会社の上期予想どおり進めば、Q2単体では前年同期を大きく下回る着地が必要になります。実際にそうなった場合、前号で示した「利益成長の踊り場」という見方がより強く裏付けられることになります。
国内物流事業の減益(△18.4%)が拡大するリスク。 生活産業関連の一部得意先の業務終了等の影響が続けば、増収でも減益という構図がさらに強まる可能性があります。
純利益の減益幅が経常利益を上回る状態が続くリスク。 Q1は実効税負担率が28.3%から39.7%へ上昇し、経常利益の落ち込み(△3.5%)以上に純利益が沈みました(△17.3%)。要因が特定できていないため、この乖離が中間・通期でも続くかどうかは注視が必要です。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期の鴻池運輸は、売上高890億07百万円(前年同期比△0.3%)・営業利益63億75百万円(同△4.6%)・純利益38億26百万円(同△17.3%)という決算でした。会社は通期・上期の業績予想を修正せず、「概ね計画通り」と説明しています。営業利益の進捗率は30.4%で前年同期の29.3%とほぼ同水準であり、前号で取り上げた「上期△20.6%」という大幅減益はQ1時点ではまだ現れていません。同時に、Q1の緩やかな減益(△4.6%)はセグメント収益の悪化ではなく、全社費用等の+18.8%増加によってほぼ説明できることも分かりました。
指標面ではPER11.13倍・PBR0.98倍・ROE9.3%・ROA7.7%(経常利益ベース)という水準で、会社予想配当110円に対する利回りは3.68%、配当予想にも修正はありません。財務面では自己資本比率が52.5%、D/Eレシオ0.36倍とおおむね前期末から大きな変化はありません。
判断の分かれ目は、前号から変わらず「Q2以降に予想どおりの大幅減益(上期△20.6%)が実際に現れるか」です。 Q1時点で減益の主体がまだ現れていないことを、上期後半に減益が集中する計画が予定どおり進んでいる途中経過と見るか、それとも会社が慎重に置いた予想が結果的に上振れる兆しと見るかで評価は変わります。加えて、全社費用等の増加(+18.8%)が一時的なものか構造的なものかも、中間決算で確認すべき材料です。次の確認機会は2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算です。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期累計の営業利益が、会社予想100億円(前年同期比△20.6%)を大幅に下回って着地した場合。Q1時点の進捗率30.4%(前年同期並み)から一転して急速な減益が実際に起きたことになり、「利益成長の踊り場」の見方を裏付ける。
- 逆に第2四半期累計の営業利益が予想100億円を上回り、通期予想210億円が上方修正された場合。前号で示した「保守的な期初予想への回帰」の見方を裏付ける。
- 全社費用等の連結調整額の増加(Q1は+18.8%)が中間・通期でも同水準で続き、セグメント利益の伸びを継続して相殺した場合。個社の収益力とは別の要因(本社費・投資関連費用等)が連結利益の重石になっている構図が定着していることを意味する。
- 2027年3月期の配当が会社予想110.00円を下回って着地した場合(減配)。Q1決算短信では配当予想に修正なしと明記されているが、通期の利益進捗次第では株主還元方針の転換点になりうる。
- 自己資本比率が2027年3月期Q1末の52.5%から大きく低下した場合(目安として45%を下回るなど)、あるいは有利子負債(Q1末582億49百万円)が大きく増加した場合。財務改善のトレンドが反転していることを示す。
参考文献・引用元
- 01鴻池運輸「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月12日開示(対象期間2026年4月1日〜2026年6月30日)。連結経営成績、財政状態の概況、セグメント情報、四半期連結損益計算書、配当の状況、業績予想の修正の有無(1〜7ページ目付近)を参照。有利子負債は貸借対照表の借入金・社債・リース債務の各科目から本記事の筆者が集計した(短信内に合計値の明示は無い)。 / 2026/08/12 開示
- 02IR BANK「鴻池運輸(9025) 決算まとめ/配当金の推移/セグメント情報」
2018年3月期以降の通期業績、財務状況、配当の期初予想・修正・実績の履歴を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(前号記事執筆時点、2026年7月31日時点の表示を継続使用)。2024年3月期以前の業績数値は同サイトの表示値(億円単位に丸めた値)にもとづく。