鉄鋼
鉄鋼セクターは、鋼材の国際市況・原材料(鉄鉱石・原料炭)価格・為替に業績が大きく左右され、個社の努力だけでは需給や価格をコントロールしにくい構造にある。世界の粗鋼生産の過半を占める中国メーカーの供給過剰・輸出攻勢が世界的な鋼材価格の下押し圧力となっており、各社は高機能鋼材へのシフトや海外生産拠点の確保(地産地消)で対応している。
鉄鋼セクターの見方(当サイトの整理)
個社の分析に入る前に、この産業に共通してかかる制約と、決算書のどこを見れば状態が分かるかを整理しています。
- 収益がどこから生まれるか
- 鋼材の販売価格と原料(鉄鉱石・原料炭)価格の差であるスプレッドと、数量。電磁鋼板や自動車用鋼板のような高機能鋼材は用途が限られるぶん価格交渉力があり、汎用鋼材は国際市況で決まる。海外拠点や合弁の持分法損益も利益の一部を占める。
- 業績を左右する外部要因
- 世界の粗鋼需給。過半を占める中国の生産と輸出が世界的な価格の下押し圧力になる。原料炭・鉄鉱石の市況、為替、電力・エネルギーコスト。国内では自動車・建設の需要が数量を決める。
- 決算書のどこを見るか
- スプレッドの推移と、在庫評価の影響。原料価格が動いた期は、過去に仕入れた在庫の評価が売上原価に混ざり、実力の利益とずれる。決算資料に在庫評価の影響を除いた利益が開示されていれば、そちらで前年と比べる。高炉の改修・休止がある期は固定費が集中し、設備の減損損失が出ることもある。有利子負債の水準は設備投資計画と併せて見る。
- 配当・株主還元の傾向
- 市況で利益が振れるため、配当性向を目安に置きつつ下限を設ける形が多い。減益局面でも維持される水準がどこかを、方針の文言から読み取る。
- 指標を読むときの注意
- 市況のピークで指標が最も良く見える典型的なセクター。PER・PBRの低さと配当利回りの高さが同時に起きている期は、翌期の減益がすでに織り込まれている可能性を先に疑う。
鉄鋼の分析記事
東京製綱(5981) 増収減益のQ1、価格転嫁のタイムラグと通期減益計画への遅れ
東京製綱の2027年3月期第1四半期は増収減益。原材料・人件費の価格転嫁の遅れが要因で、 通期の減益計画(営業利益-11.3%)に対しても進捗率14.4%と遅れています。
2026/09/0318分で読了
日本製鉄(5401) Q1純利益752億円で黒字転換。USスチール買収後の財務構造と中国勢との価格競争
日本製鉄の2027年3月期Q1は前年同期の赤字から純利益752億円の黒字に転換し、通期予想も2,900億円へ32%上方修正されました。USスチール買収で倍増した有利子負債と中国勢との価格競争を踏まえ、この回復をどう評価するかを整理します。
2026/08/1118分で読了
JFEホールディングス(5411) 税引前利益+295%の中身。土地売却益と鉄鋼の薄い黒字転換
JFEホールディングスの2027年3月期Q1は税引前利益が+295%と急拡大しましたが、その4割弱は土地売却益という一時要因。鉄鋼セグメントは黒字転換したものの利益水準はなお薄く、稼ぎ頭が商社・エンジニアリングという構図は変わっていません。
2026/08/1119分で読了