JFEホールディングス(5411) 税引前利益+295%の中身。土地売却益と鉄鋼の薄い黒字転換
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
JFEホールディングス株式会社
2026/08/10 時点
株価
1,845円
時価総額
11,798億円
配当利回り
4.34%
年間80円
PER
7.8倍
PBR
0.45倍
ROE
5.7%
ROA
2.4%
純利益ベース
自己資本比率
42.6%
配当性向
33.9%
有利子負債
23,121億円
D/Eレシオ
0.88倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は、売上収益1,161,178百万円(前年同期比+4.1%)・税引前四半期利益40,985百万円(+295.0%)・親会社所有者帰属四半期利益31,229百万円(+338.1%)と大幅な増益だった。
- 税引前利益の増加のうち15,046百万円(税引前利益全体の36.7%)は土地売却益という一時的要因であり、本業の回復と特別要因を切り分けて評価する必要がある。
- 鉄鋼セグメントは前年同期の121億円の赤字から30億円の黒字に転換したが、黒字幅は商社(113億円)・エンジニアリング(89億円)を下回り、グループの利益の柱は依然として非鉄鋼2事業にある。
- 会社は中間期(第2四半期累計)業績予想を今回初めて開示し大幅増益を示す一方、通期業績予想・年間配当予想(80円)はいずれも2026年5月公表分から据え置いた。通期予想EPS235.80円に対する配当性向は約33.9%に低下する計算で、2025〜2026年3月期に69〜73%まで上昇していた配当性向は、増益局面で正常化に向かう。
- 有利子負債は2026年3月期末の1,959,385百万円から2027年3月期第1四半期末には2,312,087百万円へ+18.0%増加し、D/Eレシオは0.75倍から0.88倍に上昇した。増加の理由は今回参照した決算短信の範囲では特定できなかった。
目次11項目
1. 概要
JFEホールディングス(5411)は、2026年8月10日時点の株価水準で予想PER7.82倍・実績PBR0.45倍・予想配当利回り4.34%・自己資本比率42.6%(2027年3月期第1四半期末)という状況にあります。
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益1,161,178百万円(前年同期比+4.1%)に対し、税引前四半期利益は40,985百万円(+295.0%)、親会社所有者帰属四半期利益は31,229百万円(+338.1%)と大幅な増益でした。前年同期がもともと低水準だったとはいえ、数字だけを見れば急回復に見えます。
ただし、この税引前利益の増加分のうち約4割(15,046百万円、構成比36.7%)は「土地売却益」という一時的な要因です。主力の鉄鋼セグメントは前年同期の赤字から黒字に転じたものの、その黒字幅は商社・エンジニアリング両事業に比べてなお薄く、グループの稼ぎ頭が鉄鋼本体ではないという構図も変わっていません。この「土地売却益」と「本業の黒字転換」をどう切り分けて評価するかが、この記事の中心的な論点です(第4節)。
2. 会社概要とビジネスモデル
JFEホールディングスは持株会社で、傘下にJFEスチール(鉄鋼)、JFEエンジニアリング(エンジニアリング)、JFE商事(商社)の3事業会社を持ちます。2027年3月期第1四半期の外部売上収益の構成比は、鉄鋼58.2%(676,148百万円)、商社29.5%(342,479百万円)、エンジニアリング12.3%(142,550百万円)です。
JFEスチールは国内2位の高炉一貫製鉄メーカーで、自動車・建設・造船・電機向けなど幅広い鋼材を製造しています。JFEエンジニアリングはごみ処理施設・橋梁・水処理プラントなどの社会インフラ建設を担い、JFE商事は鉄鋼製品を中心とした国内外のトレーディング・物流を担います。
会計基準はIFRS(国際会計基準)です。日本基準の決算短信でおなじみの「経常利益」という区分はIFRSには存在せず、本記事では第3節以降、営業利益(決算短信で「事業利益」とも表記される区分)と純利益の2段階で業績を整理します。
強みと弱みの整理
強み
3事業構成による収益の分散
鉄鋼だけでなく商社(JFE商事)・エンジニアリング(JFEエンジニアリング)を持つ構成で、2027年3月期第1四半期は商社29.5%・エンジニアリング12.3%が外部売上収益の4割強を占めます。鉄鋼市況の悪化を非鉄鋼2事業が緩和する構造です。
鉄鋼セグメントの黒字転換
2027年3月期第1四半期、鉄鋼セグメントは前年同期の121億円の赤字から30億円の黒字に転換しました。方向としては業績回復のシグナルです。
中間期予想の初開示と通期見通しの維持
会社は2027年3月期第2四半期(中間)累計の業績予想を今回初めて開示し、税引前利益+148.7%という大幅増益を見込みます。通期業績予想(純利益150,000百万円、+113.8%)も2026年5月公表分から据え置いており、業績回復シナリオを崩していません。
弱み
黒字転換の相当部分が一時要因
税引前利益40,985百万円のうち15,046百万円(36.7%)は土地売却益という一時的な要因です。本業の改善と特別要因を切り分けずに評価すると、回復の実力を見誤るおそれがあります。
鉄鋼セグメントの利益水準はなお非鉄鋼2事業より薄い
黒字転換後の鉄鋼セグメント利益(30億円)は、商社(113億円)・エンジニアリング(89億円)を下回ります。外部売上収益の6割弱を占める鉄鋼本体が、利益では非鉄鋼2事業の後塵を拝む構図が続いています。
有利子負債の急増とD/Eレシオの上昇
有利子負債は2027年3月期第1四半期だけで+18.0%(+352,702百万円)増加し、D/Eレシオは0.75倍から0.88倍に上昇しました。増加の理由は今回参照した決算短信の範囲では特定できていません。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 4,370,000 | 400,200 | — | 288,100 | — | — |
| 2023/03 | 5,270,000 | 225,100 | — | 162,600 | — | — |
| 2024/03 | 5,170,000 | 287,000 | — | 197,400 | 479,000 | 42.8% |
| 2025/03 | 4,860,000 | 165,100 | — | 91,867 | 379,000 | 44.8% |
| 2026/03 | 4,540,000 | 112,203 | — | 70,165 | 379,100 | 44.4% |
| 2027/03会社予想 | 4,850,000 | 215,000 | — | 150,000 | — | — |
過去5期の実績と、会社が示した2027年3月期の通期予想です。IFRS採用会社であるJFEホールディングスには日本基準の「経常利益」という区分が無いため、本表では営業利益と純利益の2段階に統一しています。
読み取れることは3つあります。
第一に、売上高は市況に応じて緩やかに縮小してきました。2022年3月期4,370,000百万円から2023年3月期5,270,000百万円へ+20.6%増収した後、2024年3月期-1.9%、2025年3月期-6.0%、2026年3月期-6.6%と3期連続で減収が続いています。世界的な鋼材市況の悪化を映した動きです。
第二に、営業利益は減益基調がより急でした。2022年3月期400,200百万円をピークに、2023年3月期は225,100百万円(前の期から-43.8%)まで落ち込み、2024年3月期は287,000百万円(+27.5%)にいったん戻したものの、2025年3月期165,100百万円(-42.5%)、2026年3月期112,203百万円(-32.0%)と再び減益が続きました。営業利益率も2026年3月期には2.47%まで低下しています。
第三に、純利益の落ち込みは営業利益以上に大きく、2026年3月期は70,165百万円と2022年3月期(288,100百万円)の4分の1以下の水準まで縮小しました。会社はこの水準を底に、2027年3月期は増収増益への転換を見込んでおり、通期予想として売上収益4,850,000百万円・営業利益215,000百万円・純利益150,000百万円を据え置いています。第1四半期の結果は、この回復シナリオの最初の確認材料です。
4. 税引前利益+295%の中身:土地売却益と鉄鋼セグメントの薄い黒字転換
2027年3月期第1四半期の税引前四半期利益は40,985百万円で、前年同期の10,377百万円から+295.0%という大幅な伸びを記録しました。ただし、この数字を「本業が急回復した」とそのまま読むのは早計です。
税引前利益の伸びの4割弱は一時要因
今回の税引前利益には、土地売却益15,046百万円が計上されています。これは税引前利益40,985百万円の36.7%に相当します。言い換えると、税引前利益の押し上げ分30,608百万円(40,985百万円-10,377百万円)のうち、半分近くが不動産売却という一時的な要因によるものだったことになります。決算短信を見る限り、この土地売却益がどのセグメントに計上されているかは明記されておらず、次に見る鉄鋼セグメントの黒字転換額と単純に同一視することはできません。
鉄鋼セグメントは黒字転換したが、なお薄い
セグメント別に見ると、報告セグメントは鉄鋼・エンジニアリング・商社の3つです。
| セグメント(税引前利益ベース) | Q1 2026/3期(前年同期) | Q1 2027/3期(今回) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 鉄鋼 | △12,150(赤字) | 3,051 | +15,201(黒字転換) |
| エンジニアリング | 5,752 | 8,940 | +55.4% |
| 商社 | 12,614 | 11,332 | -10.2% |
| セグメント計 | 6,216 | 23,324 | +275.3% |
| 全社消去等 | 4,160 | 2,614 | – |
| 連結(税引前利益) | 10,377 | 40,985 | +295.0% |
出典:決算短信のセグメント情報(税引前利益ベース)
主力の鉄鋼セグメントは前年同期121億5,000万円の赤字から30億5,100万円の黒字に転換しました。方向としては改善ですが、黒字の絶対額で見ると、商社(113億3,200万円)はもちろん、エンジニアリング(89億4,000万円)にも届いていません。外部売上収益では鉄鋼が58.2%を占めるにもかかわらず、利益では非鉄鋼2事業の後塵を拝む構図は、今回の黒字転換後もなお続いています。
配当予想は据え置き、計算上の配当性向は正常化に向かう
会社は同時に、2027年3月期第2四半期(中間)累計の連結業績予想を今回初めて開示しました。前回(2026年5月8日の通期決算発表時点)は中間期の予想を「未定」としていましたが、今回は売上収益2,380,000百万円・営業利益90,000百万円・税引前利益85,000百万円・純利益65,000百万円という具体的な数字を示しています。
一方、通期業績予想(売上収益4,850,000百万円・営業利益215,000百万円・純利益150,000百万円)と年間配当予想(80円)はいずれも2026年5月8日公表分から変更されていません。会社の開示文言はごく簡潔で、「中間期の業績予想について相応の確度を得た」という趣旨のみで、増額の具体的な要因説明はありませんでした。
この配当据え置きを通期予想EPS235.80円に当てはめると、予想配当性向は33.9%という計算になります。2025年3月期・2026年3月期は減益局面で配当性向が69.2%・72.5%まで上昇していましたが、2027年3月期は純利益の大幅増益計画のもとで配当を据え置くため、配当性向は計算上大きく低下します。増益局面での配当据え置きは、株主還元姿勢としては保守的とも、内部留保の積み増しとも解釈できる余地があり、どちらの評価が妥当かは今後の会社の説明を待つ必要があります。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 140円 | 28.0% |
| 2023/03 | — | 80円 | 28.5% |
| 2024/03 | — | 100円 | 30.9% |
| 2025/03 | — | 100円 | 69.2% |
| 2026/03 | — | 80円 | 72.5% |
| 2027/03会社予想 | 80円 | 80円 | 33.9% |
- 2026/03:期初(2025年5月頃)時点では年間配当の具体的な金額は開示されておらず、期中に80円で確定したとみられる。確定の具体的な時期は今回参照した資料の範囲では特定できなかった。
- 2027/03:2026年5月8日の通期決算発表時点で年間80円(中間40円・期末40円)の予想が示され、2026年8月5日の第1四半期決算でもこの水準が据え置かれた。前期実績80円と同額の据え置きとなる。
JFEの配当を見るうえで、まず押さえておきたい癖があります。IR BANKの集計によれば、JFEは2024年3月期以降、期初(本決算発表)の時点では年間配当の具体的な金額を示さず「未定」とし、期中に金額を確定させるパターンが続いてきました。
2027年3月期については、2026年5月8日の通期決算発表の時点で年間80円(中間40円・期末40円)という具体的な予想が示され、今回(2026年8月5日)の第1四半期決算でもこの水準が据え置かれています。前期(2026年3月期)の実績も80円で、額面上は「増配でも減配でもない据え置き」という位置づけです。
過去の配当の推移を見ると、2022年3月期140円→2023年3月期80円→2024年3月期100円→2025年3月期100円→2026年3月期80円と、水準を切り下げてきました。この間、配当性向は2022年3月期の28%前後から、2025年3月期69.2%、2026年3月期72.5%へと大きく上昇しています。純利益が2022年3月期288,100百万円から2026年3月期70,165百万円へ縮小する中で、配当額の減少ペースが純利益の減少ペースに追いつかず、配当性向が切り上がった結果です。
2027年3月期は、通期予想EPS235.80円に対し配当予想80円を据え置いた場合、配当性向は33.9%まで下がる計算になります。増益計画のもとでの配当据え置きは、配当性向の観点では「正常化」に向かう動きと整理できます。ただし、この予想配当利回り4.34%はあくまで会社が示した予想配当80円にもとづく水準であり、2027年3月期の実際の業績が計画を下回れば、実質的な配当性向はこの計算値より高くなる可能性がある点には留意が必要です。
6. 会社の現状と直近の動き
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算内容を、もう少し細かく見ます。
2027年3月期第1四半期の売上収益は1,161,178百万円(前年同期比+4.1%)でした。セグメント別の外部売上収益は、鉄鋼676,148百万円(前年同期679,154百万円からほぼ横ばい)、商社342,479百万円(同304,507百万円から+12.5%)、エンジニアリング142,550百万円(同131,650百万円から+8.3%)で、商社・エンジニアリングの伸びが全体の増収を下支えした形です。
四半期利益(合計)は32,267百万円(前年同期比+315.0%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は31,229百万円(同+338.1%)でした。基本的EPSは49.09円(前年同期11.21円)、希薄化後EPSは46.74円(同10.82円)です。四半期包括利益合計額は46,131百万円で、前年同期の▲26,290百万円の損失から黒字転換しています。
財政状態も見ておきます。2027年3月期第1四半期末(2026年6月30日)の総資産は6,185,920百万円、資本合計は2,698,432百万円、親会社所有者帰属持分は2,635,917百万円、自己資本比率は42.6%でした。2026年3月期末(自己資本比率44.4%)からは低下しています。
有利子負債(社債、借入金及びリース負債の流動・非流動合計)は、2026年3月期末の1,959,385百万円から2027年3月期第1四半期末には2,312,087百万円へ、四半期だけで352,702百万円(+18.0%)増加しました。D/Eレシオ(有利子負債÷親会社所有者帰属持分)も0.75倍から0.88倍に上昇しています。この増加の理由は、今回参照した決算短信の範囲では特定できませんでした。設備投資や在庫積み増しなどが推測されがちな要因ではありますが、決算短信に明示的な説明が無いため、本記事では推測で断定することを避けます。
会社は同時に、2027年3月期第2四半期(中間)累計の連結業績予想を初めて開示し、売上収益2,380,000百万円(+6.6%)・営業利益90,000百万円(+96.7%)・税引前利益85,000百万円(+148.7%)・純利益65,000百万円(+143.7%)・EPS102.18円としました。通期予想(売上収益4,850,000百万円・営業利益215,000百万円・純利益150,000百万円)は変更ありません。
7. 業界とセクターの状況
鉄鋼セクターには、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約があります。
第一に、世界的な供給過剰と海外メーカーの動向に価格が左右されます。 中国をはじめとする海外メーカーの生産・輸出動向によって鋼材市況は大きく変動し、日本の高炉メーカーがどれだけ効率化を進めても、この需給構造そのものは一社の努力で解消できません。
第二に、原材料価格と為替の変動を業績が直接受けます。 鉄鉱石・原料炭の価格変動、為替の変動はコスト構造に直接跳ね返り、売価への転嫁ができるかどうかは市況次第です。
第三に、鋼材は装置産業であり、生産能力の調整に時間がかかります。 需要が急減しても高炉を簡単には止められず、逆に需要が急増してもすぐには増産できません。この硬直性が、市況変動時の収益のブレを大きくします。
同じ高炉大手である日本製鉄と比較すると、財務構造の動き方に違いがあります。日本製鉄は2025年6月にUSスチールを買収し、有利子負債が2025年3月期末の2兆5,100億円から2026年3月期末には5兆1,700億円へほぼ倍増、D/Eレシオも0.47倍から0.94倍に急上昇しました。一方でJFEホールディングスは、大型M&Aによる急激な構造変化は無く、有利子負債は今回の第1四半期に+18.0%増加したとはいえ、D/Eレシオは0.88倍と、日本製鉄の0.94倍に近い水準にとどまっています。ただし、両社とも海外メーカーとの価格競争という同じ外部環境にさらされている点は共通しています。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定。会社の中間(累計)予想は売上収益2,380,000百万円・営業利益90,000百万円・税引前利益85,000百万円・純利益65,000百万円。第1四半期の急回復が中間期まで続いているか、一時要因なしに利益水準を維持できるかを確認する最初の機会。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定。通期予想(売上収益4,850,000百万円・営業利益215,000百万円・純利益150,000百万円)に対する着地を確認する。
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
決算発表日はいずれも過去の傾向からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
会社の中間予想は売上収益2,380,000百万円(+6.6%)・営業利益90,000百万円(+96.7%)・税引前利益85,000百万円(+148.7%)・純利益65,000百万円(+143.7%)。第1四半期の急回復が中間期まで続くか、土地売却益のような一時要因なしに利益水準を維持できるかが焦点。
鉄鋼セクター共通の外部要因。市況が改善すれば鉄鋼セグメントの収益力向上を後押しし、悪化すれば黒字転換が一時的なもので終わるリスクがある。
鉄鋼セグメントの黒字幅(30億円)は商社・エンジニアリングに比べなお薄い。土地売却益のような一時要因に頼らず本業の利益率が改善するかが焦点。
有利子負債は第1四半期に+18.0%増加し、D/Eレシオも0.88倍に上昇した。この増加が一時的な変動か構造的な資金需要の高まりかが、財務健全性を評価するうえでの分かれ目になる。
10. 想定されるリスク
土地売却益のような一時要因への依存度が今後も残るリスク。 今回の税引前利益の伸びのうち36.7%を占めた土地売却益は、毎期発生するとは限りません。次の四半期以降にこうした一時的な利益が無くなれば、税引前利益の伸び率は大きく鈍化する可能性があります。
鉄鋼セグメントの収益力がなお脆弱なリスク。 黒字転換したとはいえ、鉄鋼セグメントの利益(30億円)は商社・エンジニアリング両事業を下回る水準にとどまっています。市況が再び悪化すれば、鉄鋼セグメントが再度赤字に転落する可能性は否定できません。
有利子負債の増加とD/Eレシオ上昇が続くリスク。 有利子負債は第1四半期だけで+18.0%増加し、D/Eレシオも0.75倍から0.88倍に上昇しました。増加の理由は今回参照した決算短信の範囲では特定できておらず、この増加が一時的な変動なのか、構造的な資金需要の高まりなのかを見極める必要があります。
四半期ベースの急回復と、長期トレンドの評価が併存しているリスク。 一部の株式情報サービスでは、過去の四半期を通じた業績・ROE・ROAの悪化傾向、自己資本比率のやや低下と有利子負債の増加傾向が指摘されています。これは複数四半期を跨いだ長期トレンドの評価であり、今回の第1四半期単体の急回復とは時間軸が異なります。直近四半期の改善が長期トレンドの反転を意味するのか、一時的な変動にとどまるのかは、今後複数四半期の推移を見て判断する必要があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
事実として確定しているのは次の点です。2027年3月期第1四半期は、税引前四半期利益40,985百万円(前年同期比+295.0%)、親会社所有者帰属四半期利益31,229百万円(同+338.1%)と大幅な増益だった。この増加分の一部(15,046百万円、税引前利益の36.7%)は土地売却益という一時的要因である。鉄鋼セグメントは黒字転換したが、その利益水準は商社・エンジニアリング両事業になお及ばない。会社は通期業績予想・年間配当予想(80円)を据え置き、中間期予想を初めて開示した。有利子負債は四半期で+18.0%増加し、D/Eレシオは0.88倍に上昇した。
この決算を「一時要因を除いても、鉄鋼セグメントが赤字体質から脱却しつつある転換点」と見るなら、通期業績予想の据え置きと中間期予想の初開示は、会社が業績回復に一定の確度を持っていることの表れと評価する余地があります。予想PER7.82倍・予想配当利回り4.34%という水準も、増益局面の入り口としては相応の評価軸になり得ます。
一方で「税引前利益の伸びの4割弱は一時要因であり、鉄鋼セグメントの利益はなお非鉄鋼2事業より薄い」と見るなら、今回の黒字転換を額面どおりに評価することには慎重さが必要です。有利子負債の増加理由が特定できていない点、配当が増益計画下でも据え置きにとどまっている点も、業績回復への自信の強さを測るうえで気になる材料です。
判断の分かれ目は、土地売却益のような一時要因を除いた実質ベースで、鉄鋼セグメントの収益力が改善を続けるかどうかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、会社予想(税引前利益85,000百万円・+148.7%)の水準に対する着地と、有利子負債・D/Eレシオがこれ以上悪化していないかを確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期(中間)累計の税引前利益が会社予想85,000百万円を大きく下回った場合(目安として1割以上の未達)。第1四半期の急回復が一時的だったことになる。
- 鉄鋼セグメントが土地売却益等の一時要因を除いた実質ベースで再び赤字に転落した場合。今回の黒字転換が特別要因頼みだったことが裏付けられる。
- 2027年3月期の配当が年間80円を下回る減配となった場合。通期純利益予想150,000百万円(+113.8%)という増益計画のもとでの据え置きという整理が崩れる。
- 有利子負債が2027年3月期第1四半期末の2,312,087百万円からさらに拡大し、自己資本比率が同時点の42.6%から明確に40%を割り込んだ場合。財務レバレッジの上昇が一時的でなく構造的だったことになる。
参考文献・引用元
- 01JFEホールディングス株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年8月5日開示。連結経営成績(売上収益・営業利益(事業利益)・税引前四半期利益・四半期利益・EPS)、連結財政状態(総資産・資本合計・自己資本比率)、セグメント情報(鉄鋼・エンジニアリング・商社の外部売上収益とセグメント利益)を参照。PDFは埋め込みフォントの都合で日本語部分がほぼ空白に落ちるが、数値はIR BANK集計値との照合で整合性を確認済み。有利子負債(社債、借入金及びリース負債の流動・非流動合計)は、2026年3月期末の合計値がIR BANKの公表値(1兆9,594億円)と一致することでラベルを確認した。 / 2026/08/05 開示
- 02JFEホールディングス株式会社「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」
2026年8月5日、決算短信と同時開示。2027年3月期第2四半期(中間)累計の連結業績予想を初開示。通期業績予想・年間配当予想は2026年5月8日公表分から変更なしであることを確認した。 / 2026/08/05 開示
- 03IR BANK「JFE HD(5411) 決算まとめ」
2022年3月期〜2026年3月期の通期業績(売上高・営業利益・純利益・EPS・ROE・ROA・営業利益率)と財務状況(総資産・純資産・自己資本比率・BPS)、キャッシュ・フロー計算書の推移を、有価証券報告書・決算短信の集計値として二次情報で参照した。
- 04IR BANK「JFE HD(5411) 配当金の推移」
2022年3月期〜2027年3月期予想の年間配当・配当性向・総還元性向の推移、および期初に配当予想を開示しない年度が続いてきたという傾向を二次情報として参照した。
- 05Yahoo!ファイナンス「JFEホールディングス(株)【5411】株価・株式情報」
2026年8月10日時点の終値1,845円、時価総額、発行済株式数639,438,399株、予想配当利回り・予想PER・実績PBR等を本記事のmetricsとして参照した。決算短信のAI要約(鉄鋼事業の黒字転換や土地売却益150億円への言及)も事実確認の補助として参照したが、直接引用はしていない。 / 2026/08/10 開示
- 06日本製鉄株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(比較参照)
同業の日本製鉄との財務レバレッジ比較のため、有利子負債・D/Eレシオの推移(2025年3月期末→2026年3月期末)を参照した。数値は当サイトの日本製鉄(5401)分析記事で一次情報から確認済みのものを再掲している。