四半期分析鉄鋼2027/3期 Q1

日本製鉄(5401) Q1純利益752億円で黒字転換。USスチール買収後の財務構造と中国勢との価格競争

2026/08/11 公開2026/08/11 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

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日本製鉄株式会社

東証プライム 5401 ・ 3月期決算

2026/08/07 時点

株価

697.5円

時価総額

37,481億円

配当利回り

3.44%

年間24円

PER

12.7倍

PBR

0.65倍

ROE

5.2%

ROA

1.9%

純利益ベース

自己資本比率

37.1%

配当性向

43.6%

有利子負債

51,700億円

D/Eレシオ

0.94倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は、売上収益2,821,196百万円(前年同期比+40.4%)・事業利益145,511百万円(+58.1%)。親会社の所有者に帰属する四半期利益は752億99百万円の黒字となり、前年同期の▲1,958億33百万円の損失から一転した。
  • 前年同期の赤字は、2025年6月に完了したUSスチール買収に伴う一過性費用が集中計上されたことが主因。今回の黒字転換は、この一過性費用が消えたベース効果と、事業利益+58.1%という本業の回復の両方を反映している。
  • 会社は同時に、通期純利益予想を2026年5月時点の2,200億円から2,900億円へ32%上方修正した。IFISコンセンサス2,670億円を上回る水準で、市場予想より強気な見通しを示している。
  • USスチール買収を機に有利子負債は2兆5,100億円(2025年3月期末)から5兆1,700億円(2026年3月期末)へほぼ倍増し、自己資本比率は49.2%から37.7%へ低下した。財務レバレッジが構造的に切り上がった状態が続いている。
  • 配当は2027年3月期に中間12円・期末12円の合計24円を予想。前期の分割調整後24円と同額で、額面上は中間60円→12円と大幅減配に見えるが、2025年10月の株式分割(1→3)を考慮すれば実質横ばいである。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. USスチール買収後の財務構造と、中国勢との価格競争
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

日本製鉄(5401)は、2026年8月7日時点の水準で予想PER12.69倍・実績PBR0.65倍・予想配当利回り3.44%・自己資本比率37.1%(2027年3月期第1四半期末)という状況にあります。

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益2,821,196百万円(前年同期比+40.4%)・事業利益145,511百万円(+58.1%)と大幅な増収増益でした。何より目を引くのは最終損益で、親会社の所有者に帰属する四半期利益は752億99百万円の黒字となり、前年同期の1,958億33百万円の損失から一転しています。

ただし、この黒字転換をそのまま「業績が力強く回復した」とだけ読むのは早計です。前年同期の赤字は、2025年6月に完了したUSスチール買収に伴う一過性費用が集中計上されたことが主因でした。つまり今回の黒字転換には、この一過性費用が消えたベース効果が相当程度乗っています。

そしてUSスチール買収は、業績の見え方だけでなく財務構造そのものを変えました。有利子負債は買収を境にほぼ倍増し、自己資本比率は10ポイント以上低下しています。この財務構造の変化と、鉄鋼業界に共通する中国勢との価格競争という外部環境をどう評価するかが、この記事の中心的な論点です(第4節)。

2. 会社概要とビジネスモデル

日本製鉄は、国内最大手の高炉一貫製鉄メーカーです。鉄鉱石と石炭を原料に高炉で銑鉄をつくり、そこから鋼材まで一貫して製造する体制を持ち、自動車向けの高機能鋼材から建設・造船・電機向けの鋼材まで幅広く手がけています。

事業の転換点は2025年6月です。米国の大手鉄鋼メーカーUSスチールの買収を完了し、北米に生産・供給拠点を持つに至りました。報道によれば、この買収の狙いは「地産地消」型の生産体制の構築とされています。中国発の輸出鋼材との価格競争を受けにくい、米国内で生産し米国内で供給する体制を築くことが目的だとされます。

会計基準はIFRS(国際会計基準)です。日本基準の決算短信でおなじみの「経常利益」という区分はIFRSには存在しません。本記事では、営業利益に相当する「事業利益」の区分を使い、この点を第3節でも改めて注記します。

強みと弱みの整理

強み

  • 高機能鋼材と幅広い顧客基盤

    自動車・建設・造船・電機など、景気循環の異なる複数の需要家を持ち、特定業界への依存度が過度に高くない構造です。

  • USスチール買収による北米生産拠点の確保

    2025年6月の買収完了により、米国内で生産・供給する体制を持つに至りました。中国発の輸出鋼材との価格競争を受けにくい市場(米国)に足場を築いたことは、中長期的な供給網の分散という意味を持ちます。

  • 2027年3月期第1四半期は増益・通期予想も上方修正

    事業利益は前年同期比+58.1%、親会社所有者帰属四半期利益は752億99百万円の黒字。会社は通期純利益予想も2,200億円から2,900億円へ32%上方修正しており、業績の底打ちを示すシグナルが複数出ています。

弱み

  • 中国勢との構造的な価格競争

    中国は世界の粗鋼生産の約55%を占めるとされ、国内不動産不況で内需が弱いため、過剰生産分が輸出に向かいやすい構造にあります。これは日本製鉄一社の努力では変えられない外部環境です。

  • USスチール買収に伴う財務レバレッジの急上昇

    有利子負債は2025年3月期末の2兆5,100億円から2026年3月期末には5兆1,700億円へほぼ倍増し、自己資本比率は49.2%から37.7%へ低下しました。買収の効果が財務コストを上回って初めて報われる状態です。

  • 一過性費用に業績が振れやすい

    前年同期(2026年3月期第1四半期)は買収関連の一過性費用で四半期赤字になりました。一過性要因の有無で損益が大きく振れるため、単純な前年同期比だけでは実力を測りにくい局面が続いています。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
005,000,000225,00010,000,000450,00015,000,000675,00020,000,000900,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20355039.643.744.649.237.7
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/036,810,000840,900637,30039.6%
2023/037,980,000883,600694,000660,00043.7%
2024/038,870,000778,700549,4001,010,00044.6%
2025/038,700,000548,000350,200980,00049.2%
2026/0310,100,000242,90017,200720,00037.7%
2027/03会社予想11,200,000630,000290,000
単位:百万円。出典:決算短信、およびIR BANK集計による過年度実績

過去5期の実績と、会社が示した2027年3月期の通期予想です。IFRS採用会社である日本製鉄には日本基準の「経常利益」という区分が無いため、本表では営業利益(事業利益)と純利益の2段階に統一しています。

読み取れることは3つあります。

第一に、売上高は市況とM&Aの両方を映して大きく動いています。 2022年3月期6,810,000百万円から2023年3月期7,980,000百万円へ+17.2%増収した後、2024年3月期は+11.2%とさらに伸びましたが、2025年3月期は市況悪化で-1.9%の減収に転じました。2026年3月期は+16.1%と再び増収していますが、これはUSスチール買収による連結範囲拡大の影響が大きいとみられます。

第二に、利益(事業利益)は2022年3月期をピークに4期連続で減益が続きました。 840,900百万円(2022年3月期)から883,600百万円(2023年3月期、+5.1%)でいったん増えたあと、778,700百万円(2024年3月期、-11.9%)、548,000百万円(2025年3月期、-29.6%)、242,900百万円(2026年3月期、-55.7%)と減益率が年々拡大しています。中国勢を中心とした供給過剰による鋼材市況の悪化と、買収関連費用の両方が影響したとみられます。

第三に、2026年3月期の純利益はほぼ消滅しました。 17,200百万円という水準は、2022年3月期の637,300百万円の3%にも届きません。この期がボトムで、2027年3月期は会社予想で630,000百万円(事業利益、+159.4%)・純利益290,000百万円へ、回復軌道に転じる計画です。第1四半期の結果は、この回復シナリオの最初の確認材料になります。

4. USスチール買収後の財務構造と、中国勢との価格競争

この記事の核心は、USスチール買収を境に日本製鉄の財務構造がどう変わったか、そしてそれが中国勢との価格競争という外部環境とどう結びつくかです。

財務構造の急変

まずバランスシートとキャッシュ・フローを確認します。

項目2025年3月期末2026年3月期末増減
総資産10兆9,000億円14兆7,000億円+3兆8,000億円
有利子負債2兆5,100億円5兆1,700億円ほぼ倍増
自己資本比率49.2%37.7%-11.5pt
有利子負債/自己資本(D/Eレシオ0.47倍0.94倍倍増

出典:IR BANK集計(有価証券報告書・決算短信ベース)

原因はキャッシュ・フローを見るとはっきりします。2026年3月期の投資活動によるキャッシュ・フローは-2兆8,400億円と、それ以前の期(2023〜2025年3月期は-3,700億〜-7,100億円で推移)とは桁が違う規模になりました。USスチール買収の対価支払いが主因です。

項目2024年3月期2025年3月期2026年3月期
営業キャッシュ・フロー1兆100億円9,800億円7,200億円
投資キャッシュ・フロー-7,100億円-4,600億円-2兆8,400億円
フリーキャッシュフロー3,000億円5,200億円-2兆1,200億円
財務キャッシュ・フロー-5,400億円-3,100億円+1兆8,900億円
現金等残高4,489億円6,725億円4,613億円

出典:IR BANK集計(有価証券報告書・決算短信ベース)

財務キャッシュ・フローが+1兆8,900億円のプラスになっている点が重要です。買収資金の大半を借入で調達したことを示しています。 結果としてフリーキャッシュフローは-2兆1,200億円という大幅マイナスになり、現金等残高も減少しました。有利子負債+2兆6,600億円・自己資本比率-11.5ポイントという第3節までの数字は、この資金調達の帰結です。

2027年3月期第1四半期末(2026年6月30日)の総資産は15兆1,761億円、親会社所有者帰属持分は5兆6,361億円、自己資本比率は37.1%でした。2026年3月期末(37.7%)からさらにわずかに低下しており、レバレッジの高い状態が続いています。なお、第1四半期末時点の有利子負債の実額は、今回入手できた資料の範囲では確認できませんでした。 自己資本比率の推移からレバレッジがやや上がった可能性は読み取れますが、金額としての特定はできていません。

中国勢との価格競争という外部環境

このタイミングでのUSスチール買収には、外部環境の文脈があります。報道によれば、中国は世界の粗鋼生産の約55%を占めるとされ、国内の不動産不況で内需が弱いため、過剰な生産分が輸出に向かいやすい構造にあります。これが世界的な鋼材市況を押し下げる圧力になってきました。第3節で見た2023〜2026年3月期の4期連続減益は、この構造と無縁ではないとみられます。

USスチール買収は、この構造への対応の一つと位置づけられます。中国発の輸出鋼材との価格競争を受けにくい米国市場で、現地生産・現地供給の体制を持つことは、市況の変動に対する耐性を高める効果が期待できます。直近の報道では、構造改革の結果として日本製鉄が主要高炉メーカーの中でトン当たり利益で世界首位になったとされていますが、これは本記事で一次情報として確認した数値ではなく、報道ベースの情報である点に留意してください。

一過性費用のはく落と、それでもなお強気な通期予想

前年同期(2026年3月期第1四半期)の四半期赤字は、この買収に伴う一過性費用(買収関連コスト・つなぎ融資関連費用等)が集中計上されたことが主因でした。詳細な内訳は決算短信に開示がないため、本記事では「前年同期は買収関連の一過性費用で四半期赤字だった」という事実のみを扱います。

今回の黒字転換は、この一過性費用が消えたベース効果と、事業利益+58.1%という本業側の改善の両方を反映しています。会社はこれを受けて、通期純利益予想を2026年5月時点の2,200億円から2,900億円へ32%上方修正しました。これはIFISコンセンサス2,670億円を上回る水準で、会社が市場予想以上に強気な見通しを示していることになります。一方で、第1四半期単独の税引前利益113,899百万円はIFISコンセンサス117,700百万円を3.2%下回っており、四半期単体の着地は市場予想にわずかに届いていません。強気の通期上方修正と、四半期単体でのコンセンサス未達がどちらも同時に起きている点は、判断材料として両論を押さえておくべきところです。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/0332円
2023/0336円
2024/0332円
2025/0332円
2026/0324円
2027/03会社予想24円24円43.6%
  • 2026/03:分割調整後ベースの金額。実際の額面は中間60円(分割前)+期末12円(分割後)で単純合算はできない。決算短信の注記にもとづき、分割を考慮した年間合計として24円を記載。
  • 2027/03:中間12円・期末12円の合計24円。前期の分割調整後24円と同額で、額面上は中間60円→12円と大幅減配に見えるが、2025年10月の株式分割(1→3)を考慮すれば実質横ばい。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の配当の推移(分割調整後ベース)

配当を見るうえで、まず押さえておくべきことがあります。2025年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割が実施されました。このため、分割の前後で額面上の配当額を単純比較すると誤解が生じます。

2026年3月期の配当は、中間60円(分割前ベース)+期末12円(分割後ベース)という構成で、額面のまま合算はできません。決算短信の注記にもとづき、分割を考慮した年間配当の合計は24円です。

2027年3月期の予想配当は、中間12円・期末12円の合計24円です。額面だけを見ると、中間配当が60円から12円へ大幅に減ったように見えますが、これは株式分割によるもので、分割調整後ベースでは前期24円→今期予想24円と実質横ばいです。 「大幅減配」という見出しだけを見て判断すると、実態を見誤ります。

IR BANKが集計した分割調整後の年間配当の推移を見ると、2022年3月期32円→2023年3月期36円→2024年3月期32円→2025年3月期32円→2026年3月期24円と、2026年3月期にかけて水準を切り下げています。業績の急減益(2026年3月期の純利益はほぼ消滅)を踏まえれば、この配当の切り下げ自体は業績と整合的な動きです。2027年3月期は24円で据え置きの予想であり、増配ではなく「減益局面からの配当維持」という位置づけになります。

予想配当利回り3.44%は、会社が開示した2027年3月期の配当予想24円にもとづく水準です。配当性向は、会社予想EPS55.00円に対して43.6%となります。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算内容を、もう少し細かく見ます。

税引前利益は113,899百万円で、前年同期の139,559百万円の損失から黒字転換しました。四半期利益(全体)は84,288百万円(前年同期は190,719百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は75,299百万円(前年同期は195,833百万円の損失)です。基本的1株当たり四半期利益(EPS)は14.40円(前年同期は37.47円の損失)でした。

四半期包括利益合計額は179,878百万円で、前年同期の281,044百万円の損失からこちらも黒字転換しています。四半期利益(84,288百万円)を上回る水準であり、為替換算調整や有価証券評価などその他の包括利益項目もプラスに寄与したとみられますが、内訳の詳細な特定は本資料の範囲では行っていません。

会社は同時に、2027年3月期の第2四半期累計(中間)予想と通期予想を公表しました。中間予想は売上収益5,600,000百万円(+20.8%)・事業利益260,000百万円(+14.3%)・純利益120,000百万円。通期予想は売上収益11,200,000百万円(+11.3%)・事業利益630,000百万円(+22.5%)・純利益290,000百万円です。通期純利益予想は、2026年5月13日公表の従来予想2,200億円から2,900億円へ引き上げられており、これは第1四半期発表と同時の上方修正で、株式ニュースメディアの見出しでも「今期最終を32%上方修正」と報じられています。

株主構成の面でも動きがありました。2026年4月13日付の適時開示によれば、バークシャー・ハサウェイ傘下のNational Indemnity Companyが、自己株式の第三者割当処分により日本製鉄株式を取得しています。海外の著名な機関投資家が株主に加わった事実として、本記事では触れるにとどめます。

7. 業界とセクターの状況

鉄鋼セクターには、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約があります。

第一に、世界的な需給バランスが中国メーカーの動向に大きく左右されます。 中国は世界の粗鋼生産の約55%を占めるとされ、国内の不動産不況で内需が弱いため、過剰な生産分が輸出に向かいやすい構造です。日本の高炉メーカーがどれだけ効率化を進めても、この供給過剰そのものは一社の努力で解消できません。

第二に、原材料価格と為替の変動を業績が直接受けます。 鉄鉱石・原料炭の価格変動、為替の変動はコスト構造に直接跳ね返り、売価への転嫁ができるかどうかは市況次第です。

第三に、鋼材は装置産業であり、生産能力の調整に時間がかかります。 需要が急減しても高炉を簡単には止められず、逆に需要が急増してもすぐには増産できません。この硬直性が、市況変動時の収益のブレを大きくします。

こうした構造のなかで、日本製鉄がとった対応がUSスチール買収による北米生産拠点の確保です。中国発の輸出鋼材との価格競争を受けにくい市場に足場を築くという意味では合理的な一手ですが、セクター全体としての供給過剰構造そのものが解消されたわけではありません。この点は、次のセクター記事が出た際に、同業他社との比較でさらに検証していく余地があります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定。会社の中間(累計)予想は売上収益5,600,000百万円・事業利益260,000百万円。第1四半期の増益基調が中間期まで続いているかを確認する最初の機会。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定。通期予想(売上収益11,200,000百万円・事業利益630,000百万円・純利益290,000百万円)に対する着地を確認する。

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

決算発表日はいずれも過去の傾向からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算発表両面

会社の中間(累計)予想は売上収益5,600,000百万円(+20.8%)・事業利益260,000百万円(+14.3%)・純利益120,000百万円。第1四半期の事業利益+58.1%という伸びがそのまま続くかが焦点。

随時中国の粗鋼生産・輸出動向の変化両面

中国は世界の粗鋼生産の約55%を占め、内需の弱さから過剰生産分が輸出に向かいやすい構造にある。減産や内需刺激策が打ち出されれば鋼材市況の下押し圧力が和らぐ可能性がある一方、輸出がさらに拡大すれば価格競争は強まる。

随時USスチール統合の進捗と北米事業の収益貢献上振れ

北米での生産・供給体制の構築が計画どおり進めば、中国発の輸出鋼材との価格競争を受けにくい収益基盤が積み上がる。統合コストの一巡も業績の重荷を軽くする方向に働く。

2027年3月期中有利子負債の圧縮・自己資本比率の回復ペース上振れ

自己資本比率は2026年3月期末の37.7%から2027年3月期第1四半期末には37.1%とわずかに低下が続いている。フリーキャッシュフローが黒字に戻れば、デレバレッジが進み財務面の懸念が和らぐ。

10. 想定されるリスク

中国勢との価格競争が長期化するリスク。 中国メーカーの供給過剰が是正されなければ、鋼材市況の下押し圧力は構造的に続きます。これは日本製鉄一社では解決できない、セクター共通の最大のリスクです。

財務レバレッジのリスク。 有利子負債は2026年3月期末で5兆1,700億円、D/Eレシオは0.94倍です。USスチール買収前(2025年3月期末は0.47倍前後)と比べて大きく上昇しており、金利上昇局面では金融費用の負担がより重くなります。

USスチール統合が計画どおりに進まないリスク。 大型買収の統合には労務・組織文化・生産性改善など、時間とコストのかかる課題が伴います。統合効果が期待どおりに出なければ、増えた有利子負債だけが残ることになります。

利益のボラティリティが高いリスク。 前年同期は買収関連の一過性費用で四半期赤字、今期は黒字とベース効果込みで振れが大きく、四半期ごとの数字だけでは実力を見極めにくい状態が続いています。第1四半期単体の税引前利益はIFISコンセンサスをわずかに下回ってもいます。

11. まとめ:どう判断材料にするか

事実として確定しているのは次の点です。2027年3月期第1四半期は、前年同期の四半期赤字から752億99百万円の黒字に転換した。会社は通期純利益予想を32%上方修正し、市場コンセンサスを上回る水準を示している。一方で、この黒字転換には前年同期の一過性費用消失というベース効果が乗っており、財務面ではUSスチール買収を機に有利子負債がほぼ倍増し、自己資本比率は10ポイント以上低下したままである。配当は額面上は大幅減配に見えるが、株式分割を考慮すれば実質横ばいである。

この決算を「一過性要因が消え、本業の回復が本格的に始まった局面」と見るなら、PER12.69倍・PBR0.65倍という水準は、業績回復の初期段階にしては割安と評価する余地があります。通期予想の32%上方修正やコンセンサス超えの水準も、この見方を後押しする材料です。

一方で「USスチール買収によって高まった財務レバレッジのリスクが、業績の振れ幅そのものを大きくしている」と見るなら、この株価水準は相応の割引を織り込んだ結果とも解釈できます。有利子負債5兆1,700億円・D/Eレシオ0.94倍という財務構造は、金利や為替の変動に対する感応度を高めており、中国勢との価格競争が続く限り、その負担は軽くなりません。

判断の分かれ目は、財務レバレッジの負担を上回るペースで、USスチール統合の収益貢献と本業の回復が続くかどうかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、会社予想(事業利益260,000百万円・+14.3%)の軌道に乗っているか、そして自己資本比率がこれ以上低下していないかを確認してください。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)累計の事業利益が会社予想260,000百万円を大きく下回った場合(目安として1割以上の未達)。通期630,000百万円という上方修正後の予想の説得力が失われる。
  • 自己資本比率が2027年3月期第1四半期末の37.1%からさらに明確に低下し、35%を割り込んだ場合。USスチール統合コストや追加投資が想定以上に膨らんでいることを意味する。
  • 中国の鋼材輸出・世界市況が一段と悪化し、事業利益率(2027年3月期第1四半期は約5.2%)が再び縮小に転じた場合。市況要因が業績回復シナリオを上回るペースで悪化していることになる。
  • 2027年3月期の配当が年間24円を下回る減配となった場合。株式分割の影響を勘案しても実質的な減配であることを意味し、「実質横ばい」という本記事の整理が崩れる。

参考文献・引用元

  1. 01
    日本製鉄株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月4日開示。連結経営成績(売上収益・事業利益・税引前利益・四半期利益・EPS)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率)、配当の状況、通期業績予想を参照。PDFは埋め込みフォントの都合で日本語部分が文字化けするが、数値はEPSからの逆算等で整合を確認済み。 / 2026/08/04 開示

  2. 02
    IR BANK「日本製鉄(5401) 決算まとめ」

    2022年3月期〜2026年3月期の通期業績・財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・有利子負債・BPS)・キャッシュ・フロー計算書の推移を、有価証券報告書および決算短信の集計値として二次情報で参照した。

  3. 03
    IR BANK「日本製鉄(5401) 配当金の推移」

    2022年3月期〜2027年3月期予想の、株式分割調整後ベースの年間配当の推移を二次情報として参照した。

  4. 04

    株予報(kabuyoho)指標データ

    2026年8月7日時点の予想配当利回り3.44%、税引前利益・当期利益・IFISコンセンサス値のクロスチェックに二次情報として参照した。

  5. 05
    Yahoo!ファイナンス「日本製鉄(株)【5401】株価・株式情報」

    2026年8月7日終値697.5円を本記事のmetrics.priceとして参照した。発行済株式数5,373,633,760株(2026年8月10日時点)との積から時価総額を算出した。

  6. 06

    世界の粗鋼生産統計・鉄鋼業界動向に関する報道

    中国が世界の粗鋼生産の約55%を占めること、USスチール買収の狙いが「地産地消」型の生産体制構築とされていること、日本製鉄がトン当たり利益で主要高炉メーカー中首位になったとされる報道など、業界文脈に関する一般的な報道内容を二次情報として参照した。個別記事のURLは特定していない。