東京製綱(5981) 増収減益のQ1、価格転嫁のタイムラグと通期減益計画への遅れ
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
東京製綱株式会社
2026/09/03 時点
株価
1,875円
時価総額
289.13億円
配当利回り
3.73%
年間70円
PER
8.4倍
PBR
0.70倍
ROE
8.9%
ROA
5.8%
経常利益ベース
自己資本比率
46.3%
配当性向
31.3%
有利子負債
224億円
D/Eレシオ
0.54倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は、売上高15,260百万円(前年同期比+5.8%)に対し、営業利益620百万円(同-17.1%)、経常利益851百万円(同-1.4%)、純利益607百万円(同-9.8%)という増収減益の決算だった。
- 会社は諸資材・人件費等の物価上昇に対して販売価格改定を進めているが、改定までのタイムラグの影響で営業利益が圧迫されたと説明している。通期の会社予想自体が前期比営業利益-11.3%という減益計画だが、Q1時点の進捗率は売上高22.8%・営業利益14.4%・経常利益19.3%・純利益20.2%で、営業利益はその減益計画に対してもなお遅れているように見える一方、会社は通期予想を据え置いている。
- 主力の鋼索鋼線関連(外部売上高の49.4%)は増収増益で堅調だったが、スチールコード関連と開発製品関連の2セグメントが合計402百万円の営業損失を計上した。特に開発製品関連はCFCC事業の大型プロジェクトが概ね完了した反動で、前年同期の黒字(+5百万円)から赤字(△192百万円)に転落している。
- 財務健全性は良好で、2026年6月末の自己資本比率は46.3%、有利子負債22,385百万円・D/Eレシオ0.54倍と、2026年3月末(有利子負債23,434百万円・D/Eレシオ0.57倍)からむしろ改善した。配当は2022年3月期の20円から2027年3月期予想70円へ5期で3.5倍に増加し、期初予想を期中に上方修正する年度が続いてきたが、2027年3月期の予想は前期実績と同額の70円で据え置かれている。
目次11項目
1. 概要
東京製綱(5981)は、2026年9月2日終値1,875円の水準で、予想PER8.38倍・実績PBR0.70倍・会社予想ベースの配当利回り3.73%・自己資本比率46.3%(2026年6月末時点)という状況にあります。
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高15,260百万円(前年同期比+5.8%)に対し、営業利益620百万円(同-17.1%)、経常利益851百万円(同-1.4%)、純利益607百万円(同-9.8%)という増収減益の決算でした。会社は原材料・人件費等のコスト上昇に対して販売価格改定を進めていますが、改定が反映されるまでのタイムラグが利益を圧迫したと説明しています。
さらに、会社が示す2027年3月期の通期計画自体が前期比営業利益-11.3%という減益計画であるにもかかわらず、第1四半期時点の営業利益進捗率はその減益計画に対しても14.4%にとどまっています。この「増収減益」と「減益計画に対しても遅れている進捗」をどう評価するかが、この記事の中心的な論点です(第4節)。あわせて、主力の鋼索鋼線関連が堅調な一方でスチールコード関連・開発製品関連の2セグメントが赤字という明暗、良好な財務健全性と増配基調についても整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
東京製綱は1887年創業のワイヤロープ(鋼索)専業メーカーです。事業セグメントは5つに分かれます。
- 鋼索鋼線関連: ワイヤロープ・鋼索鋼線製品、繊維ロープ製品。2027年3月期第1四半期の外部売上高は7,539百万円で、全体の49.4%を占める主力セグメントです。
- スチールコード関連: タイヤ用スチールコード。
- 開発製品関連: 炭素繊維複合ケーブル(CFCC)事業を中心とした高付加価値製品。
- 産業機械関連: 粉末冶金事業など。
- エネルギー不動産関連: 石油製品事業、不動産事業。
同じ鉄鋼セクターに分類される日本製鉄(5401)やJFEホールディングス(5411)が鉄鉱石から一貫して鋼材を製造する高炉メーカーであるのに対し、東京製綱は鋼材(線材等)を仕入れて加工する川下の専業メーカーです。上流の製鉄事業を持たない分、原材料である鋼材の市況変動を自ら吸収するのではなく、販売価格への転嫁で対応する必要がある点が事業構造上の違いです。
強みと弱みの整理
強み
主力の鋼索鋼線関連は増収増益で堅調
外部売上高の49.4%を占める鋼索鋼線関連は、2027年3月期第1四半期に売上高7,539百万円(前年同期比+6.2%)・セグメント利益723百万円(同693百万円から増益)でした。繊維ロープ製品のスポット案件増加が増収を牽引し、鋼索鋼線製品の資材・人件費上昇分も吸収して営業増益となっています。
財務健全性は良好
2026年6月末の自己資本比率は46.3%、有利子負債22,385百万円・D/Eレシオ0.54倍です。2026年3月末(有利子負債23,434百万円・D/Eレシオ0.57倍)からはむしろ有利子負債が減少しており、財務レバレッジは高くありません。
増配基調が続いてきた
年間配当は2022年3月期の20円から2027年3月期予想70円へ、5期で3.5倍に増加しました。2023・2025・2026年3月期は期初予想を期中に上方修正しており、保守的に予想を出したうえで着地を引き上げる傾向が見られます。
弱み
スチールコード関連・開発製品関連の2セグメントが赤字
2027年3月期第1四半期、スチールコード関連は営業損失210百万円(前年同期は77百万円の損失)、開発製品関連は営業損失192百万円(前年同期は5百万円の黒字)と、2セグメント合計で402百万円の営業損失を計上しました。
価格転嫁のタイムラグが利益を圧迫
会社は諸資材・人件費等の物価上昇に対して販売価格改定を進めていますが、改定までのタイムラグの影響で、2027年3月期第1四半期の営業利益は前年同期比-17.1%となりました。コスト上昇に価格改定が追いついていない期間が生じています。
通期計画自体が減益計画で、第1四半期の進捗はそれにも届いていない
会社が示す2027年3月期通期予想は、前期比で営業利益-11.3%・経常利益-14.3%・純利益-13.8%という減益計画です。それにもかかわらず、第1四半期時点の営業利益進捗率は14.4%にとどまっています(詳細は第4節)。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021/03 | 59,183 | 700 | 209 | 408 | — | — |
| 2022/03 | 63,780 | 1,621 | 2,021 | 1,306 | — | — |
| 2023/03 | 67,135 | 3,305 | 3,653 | 3,783 | — | — |
| 2024/03 | 64,231 | 3,901 | 4,753 | 2,040 | — | — |
| 2025/03 | 62,867 | 3,585 | 3,875 | 3,247 | 2,416 | 42.0% |
| 2026/03 | 64,094 | 4,849 | 5,136 | 3,481 | 5,385 | 46.2% |
| 2027/03会社予想 | 67,000 | 4,300 | 4,400 | 3,000 | — | — |
2021年3月期から2027年3月期(会社予想)までの7期分です。読み取れることは3つあります。
第一に、2021年3月期はコロナ禍の影響で営業利益700百万円・純利益408百万円まで落ち込みましたが、その後は急回復しました。2023年3月期にかけて営業利益は700百万円から3,305百万円へ4.7倍に拡大し、経常利益も209百万円から3,653百万円へ大きく伸びています。
第二に、2024年3月期は経常利益が4,753百万円(前期比+30.1%)まで伸びた一方、純利益は2,040百万円(前期比-46.1%)と大きく落ち込みました。経常利益が増加した局面での純利益の大幅減少は、経常段階より下の特別損益や税負担の影響が考えられますが、今回参照した決算短信・IR BANKの範囲ではその具体的な内訳を特定できませんでした。
第三に、2025・2026年3月期は増収基調が続き、2026年3月期は営業利益+35.3%・経常利益+32.5%・純利益+7.2%と回復しました。ところが2027年3月期について、会社自らが売上高+4.5%の増収を見込みながら、営業利益-11.3%・経常利益-14.3%・純利益-13.8%という減益を計画しています。増収と利益率悪化が両立する計画であり、その最初の実績確認が第1四半期決算です(第4節)。
4. 増収減益の第1四半期、そして通期の減益計画にも届かない進捗
2027年3月期第1四半期は、売上高15,260百万円(前年同期比+5.8%)に対し、営業利益620百万円(同-17.1%)、経常利益851百万円(同-1.4%)、純利益607百万円(同-9.8%)という増収減益の決算でした。
通期の減益計画に対しても進捗が遅れている
会社が示す2027年3月期通期予想は、売上高67,000百万円(前期比+4.5%)・営業利益4,300百万円(同-11.3%)・経常利益4,400百万円(同-14.3%)・純利益3,000百万円(同-13.8%)と、前期比で減益を見込む計画です。この通期計画に対する第1四半期の進捗率は次の通りです。
| 項目 | 第1四半期実績 | 通期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 15,260百万円 | 67,000百万円 | 22.8% |
| 営業利益 | 620百万円 | 4,300百万円 | 14.4% |
| 経常利益 | 851百万円 | 4,400百万円 | 19.3% |
| 純利益 | 607百万円 | 3,000百万円 | 20.2% |
単純に4分の1(25%)を基準にすれば、営業利益・経常利益・純利益はいずれもそれを下回っています。それだけでなく、通期計画そのものが前期比の減益計画であることを踏まえても、第1四半期の営業利益進捗率14.4%は見劣りします。それでも会社は、2026年5月14日の通期決算発表時点で公表した通期予想を、2026年8月10日の第1四半期決算時点でも修正していません。上期の遅れを下期でどう挽回する計画なのか、あるいは例年第1四半期の利益水準が低いという季節性があるのかについて、今回参照した決算短信の定性的情報には明言がありませんでした。この点は不確実性として残ります。
原因は価格改定までのタイムラグ
会社の決算短信は、利益減少の理由を次のように説明しています。
「操業コストの低減等に努めるとともに、諸資材や人件費等の物価上昇に伴う販売価格改定を進めてまいりましたが、価格改定までのタイムラグの影響に加え、高付加価値製品であるCFCC事業の売上減少等により、営業利益は620百万円(前年同期比17.1%減)、経常利益は851百万円(前年同期比1.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は607百万円(前年同期比9.8%減)となりました。」
つまり、コスト上昇そのものは価格改定によって最終的には転嫁できる前提のようですが、改定が反映されるまでの期間、利益が圧迫される構造です。このタイムラグが一時的なもので今後解消に向かうのか、原材料・エネルギー価格の上昇が続く限り恒常的に発生し続けるのかは、次以降の四半期の営業利益率を見ないと判断できません。
セグメント間の明暗
セグメント別に見ると、5セグメントのうち3つが増益、2つが赤字という明暗が分かれた決算でした。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 利益(△は損失) | 前年同期 |
|---|---|---|---|---|
| 鋼索鋼線関連 | 7,539 | +6.2% | 723 | 693 |
| スチールコード関連 | 1,250 | +12.3% | △210 | △77 |
| 開発製品関連 | 3,355 | -6.3% | △192 | 5 |
| 産業機械関連 | 1,239 | +33.3% | 114 | 29 |
| エネルギー不動産関連 | 1,875 | +10.6% | 184 | 96 |
| 合計(連結営業利益) | 15,260 | +5.8% | 620 | 748 |
出典:決算短信のセグメント情報(単位:百万円)
主力の鋼索鋼線関連は繊維ロープ製品のスポット案件増加で増収増益となり、産業機械関連(粉末冶金事業の価格改定進展)とエネルギー不動産関連(石油製品の市況是正)も増益でした。一方、スチールコード関連は販売数量が増加したにもかかわらず、資材・エネルギー価格・運賃の上昇を吸収しきれず損失が拡大(前年同期△77百万円→今期△210百万円)しています。開発製品関連は、前期に貢献したCFCC事業のプロジェクトが概ね完了した反動で減収となり、営業利益は前年同期の5百万円の黒字から192百万円の赤字に転落しました。この赤字転落が大型プロジェクト完了に伴う一過性の反動なのか、事業の実力を反映したものなのかは、次の新規プロジェクトの有無を見て判断する必要があります。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 20円 | — | 24.7% |
| 2023/03 | 30円 | 35円 | +5円 | 14.9% |
| 2024/03 | — | 40円 | — | 31.2% |
| 2025/03 | 40円 | 64円 | +24円 | 31.1% |
| 2026/03 | 65円 | 70円 | +5円 | 31.3% |
| 2027/03会社予想 | 70円 | 70円 | — | 36.3% |
- 2023/03:期初(2022年5月頃)に示した年間30円(期末30円)の予想が、期中に35円へ増額修正された。
- 2025/03:期初に示した年間40円の予想が、期中に60円、さらに64円へと2段階で上方修正された。
- 2026/03:期末配当は当初予想40円から45円へ増額修正され(2026年5月14日公表)、中間25円とあわせた年間配当は70円で着地した(期初の年間合計予想は65円)。
- 2027/03:2026年5月14日の通期決算発表時に示した年間70円(中間30円・期末40円)の予想が、2026年8月10日公表の第1四半期決算時点でも修正されていない。前期(2026年3月期)実績70円と同額の据え置き。
東京製綱の配当は、2022年3月期の20円から2027年3月期予想70円まで、5期で3.5倍に増加してきました。その過程では、期初予想を期中に上方修正する年度が繰り返されています。2023年3月期は当初予想30円から35円へ、2025年3月期は当初予想40円から60円、さらに64円へと2段階で、2026年3月期は期末配当が当初予想40円から45円へ、それぞれ増額修正されました。この癖を踏まえると、期初(あるいは今回のように第1四半期時点)に示された予想は保守的な下限として見ておく余地があります。
一方、2027年3月期の予想は年間70円(中間30円・期末40円)で、2026年5月14日の公表以来、2026年8月10日の第1四半期決算時点でも修正されていません。これは前期(2026年3月期)実績70円と同額であり、増配でも減配でもない据え置きです。これまでの増額修正の癖が今期も続くかどうかは現時点では未確定です。
配当利回り3.73%は、この会社予想ベースの年間70円を株価1,875円で割った値です。配当性向は2026年3月期実績で31.3%、2027年3月期は予想EPS192.76円に対して70円を割ると36.3%という計算になります。
6. 会社の現状と直近の動き
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算内容を、もう少し細かく見ます。
1株当たり四半期純利益は39.42円で、前年同期の43.22円から低下しました。包括利益は1,081百万円(前年同期527百万円)となり、純利益が減少する一方で対照的に大きく伸びています。減価償却費は400百万円(前年同期481百万円)でした。なお、この決算短信は四半期レビューが実施されておらず監査対象外であり、四半期連結キャッシュ・フロー計算書も作成されていません。
財政状態は、総資産89,741百万円(2026年3月末89,071百万円)、純資産41,573百万円(同41,191百万円)、自己資本比率46.3%(同46.2%)と、第1四半期でわずかに改善しました。
有利子負債は2026年3月末の23,434百万円(短期借入金13,531百万円+長期借入金9,254百万円+リース債務649百万円)から、2026年6月末には22,385百万円(短期借入金12,705百万円+長期借入金9,048百万円+リース債務632百万円)へ、四半期で1,049百万円(-4.5%)減少しました。D/Eレシオも0.57倍から0.54倍に低下しています。この減少の具体的な理由(借入金の返済スケジュールによるものか、他の要因があるのか)は、今回参照した決算短信の範囲では特定できませんでした。ただし、方向としては財務レバレッジが上昇ではなく低下している点は、財務健全性の観点ではプラス材料です。
発行済株式数は期末16,268,242株、期末自己株式848,089株(前期末847,950株)で、自己株式にほぼ変化はありません。
7. 業界とセクターの状況
東京製綱が属するワイヤロープ・鋼索鋼線業には、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約があります。
第一に、鋼材を仕入れて加工する川下業種であり、原材料市況の変動を上流の高炉メーカーのようには制御できません。 仕入コストの上昇分をどれだけ、どれだけ早く販売価格に転嫁できるかが収益性を左右する構造です。今回の第1四半期で顕在化した「価格改定までのタイムラグ」は、この業種構造に起因する典型的な現象と言えます。
第二に、主力用途(橋梁・港湾クレーン・エレベーターなどのインフラ設備の更新需要)は公共投資・設備投資のサイクルに連動します。 需要そのものを個社の営業努力だけで創出することは難しく、更新投資のタイミングに業績が左右されやすい構造です。
第三に、タイヤ用スチールコードは自動車・タイヤ産業の需要変動と、原材料である鋼材コストの両方の影響を受けます。 今回のように価格転嫁が追いつかないと、販売数量が増えても損失が拡大しやすい、薄利な事業構造です。
同じ鉄鋼セクターに分類される日本製鉄・JFEホールディングスのような高炉一貫メーカーは、鉄鉱石・原料炭の価格変動を製鉄工程で直接受けますが、東京製綱はその一段下流で、加工後の鋼材コストと自社の製品価格改定のタイミングのズレという、性格の異なるコスト圧力にさらされています。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定。第1四半期時点で通期計画に対して遅れていた営業利益進捗率が、上期でどこまで挽回されるかを確認する最初の機会。中間配当予想30円(据え置きかどうか)もあわせて確認する。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定。通期予想(売上高67,000百万円・営業利益4,300百万円・純利益3,000百万円)に対する着地と、期末配当(予想40円)の増額修正の有無を確認する。
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
決算発表日はいずれも過去の傾向からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
第1四半期時点で通期計画に対して遅れていた営業利益の進捗率(14.4%)が、上期累計でどこまで挽回されるかを確認する最初の機会。中間配当予想30円の据え置き・修正の有無もあわせて確認する。
会社は価格改定を進めていると説明しているが、改定が浸透してタイムラグが解消されれば営業利益率の改善要因になり、コスト上昇が続けば圧迫要因が残る。
今回の赤字転落が前期の大型プロジェクト完了に伴う一過性の反動減か、事業の実力低下かは、新規プロジェクトの受注状況を見ないと判断できない。
主力の鋼索鋼線関連の需要は公共投資・設備投資のサイクルに連動する。今回参照した資料の範囲では具体的な受注動向までは確認できていない。
10. 想定されるリスク
通期計画未達のリスク。 第1四半期時点の営業利益進捗率は14.4%で、会社が据え置いた通期計画(営業利益4,300百万円、前期比-11.3%)に対しても遅れているように見えます。上期・下期でどう挽回するかについて、今回参照した資料の範囲では具体的な説明が確認できませんでした。
価格転嫁の遅れが恒常化するリスク。 会社は価格改定を進めていると説明していますが、原材料・エネルギー価格の上昇が続く限り、改定が追いつかない状態が長期化する可能性があります。タイムラグが一時的な現象で終わるかどうかは、今後の営業利益率の推移で確認する必要があります。
スチールコード関連・開発製品関連の赤字が続くリスク。 2セグメント合計で402百万円の営業損失を計上しました。特に開発製品関連の赤字転落がCFCC事業の大型プロジェクト完了に伴う一過性の反動減にとどまるのか、事業の実力を反映したものなのかは、まだ見極めが必要です。
財務健全性が今後悪化に転じるリスク。 現状の自己資本比率46.3%・D/Eレシオ0.54倍は健全な水準で、第1四半期にかけてむしろ改善していますが、今後の設備投資や運転資金需要によって有利子負債が増加に転じる可能性は否定できません。
11. まとめ:どう判断材料にするか
事実として確定しているのは次の点です。2027年3月期第1四半期は、売上高15,260百万円(前年同期比+5.8%)・営業利益620百万円(同-17.1%)・経常利益851百万円(同-1.4%)・純利益607百万円(同-9.8%)という増収減益だった。会社が据え置いた通期計画(前期比営業利益-11.3%の減益計画)に対しても、第1四半期の営業利益進捗率は14.4%にとどまる。主力の鋼索鋼線関連は増収増益で堅調な一方、スチールコード関連・開発製品関連の2セグメントは営業損失を計上した。財務健全性は良好で、有利子負債・D/Eレシオはむしろ改善している。配当予想70円は前期実績と同額で据え置かれた。
この決算を「価格改定のタイムラグという一時的な要因による遅れであり、下期にかけて挽回が見込める」と見るなら、PER8.38倍・PBR0.70倍という株価水準は、主力セグメントの底堅さや財務健全性の良さに対して割安に映る余地があります。増配基調が続いてきた実績も、株主還元の観点ではプラス材料です。
一方で「通期の減益計画そのものに対しても進捗が遅れており、会社からその挽回策の説明が無い」と見るなら、現在の株価水準はこの不確実性を織り込んだ結果とも解釈できます。開発製品関連の赤字転落が一過性か構造的かも未確定であり、慎重な評価が必要です。
判断の分かれ目は、価格改定がQ2以降どこまで浸透し、通期の減益計画に対する進捗率が改善するかどうかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、上期累計の進捗率と、開発製品関連の赤字が継続しているかどうかを確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期累計時点で、営業利益の通期計画(4,300百万円)に対する累計進捗率が第1四半期(14.4%)から明確に改善せず、会社が通期予想を下方修正した場合。今回の遅れが一時的なタイムラグではなく構造的な収益力低下だったことになる。
- 開発製品関連セグメントの営業損失が2四半期以上連続した場合。今回の赤字転落(△192百万円)をCFCC事業の大型プロジェクト完了に伴う一過性の反動減と整理した見立てが崩れる。
- 2027年3月期の配当予想70円が減配方向に修正された場合。2022年3月期以降続いてきた増配・据え置き基調が途切れ、株主還元姿勢の後退を示すことになる。
- 有利子負債が2026年6月末の22,385百万円からさらに増加し、自己資本比率が同時点の46.3%から明確に低下した場合(目安として40%割れ)。現状は改善方向にある財務健全性が悪化方向に転じたことになる。
よくある質問
- 東京製綱(5981)の配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の会社予想は年間70円(中間30円・期末40円)です。100株保有の場合、税引前で 年間7,000円(中間3,000円・期末4,000円)に相当します。ただし業績次第で修正される可能性がある 予想値であり、実際にはこれまでも期中に増額修正された年度が複数あります。
- 東京製綱はなぜ増収なのに営業利益が減益なのですか?
- 諸資材や人件費等の物価上昇に対して販売価格改定を進めているものの、改定が反映されるまでの タイムラグの影響で、コスト増加を価格転嫁で吸収しきれなかったためと会社は説明しています。 加えて、前期に貢献した開発製品関連(CFCC事業)の大型プロジェクトが概ね完了した反動減も、 2027年3月期第1四半期の営業利益を押し下げた要因です。
- 東京製綱は減配したのですか?
- いいえ。2027年3月期の予想配当は年間70円で、前期(2026年3月期)実績の70円と同額です。 減配ではなく据え置きです。2022年3月期の20円から見ると、直近5期で大幅な増配が続いてきた経緯があります。
参考文献・引用元
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東京製綱株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月10日開示。連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益・EPS)、財政状態(総資産・純資産・自己資本比率)、配当の状況、通期業績予想、セグメント別の外部売上高・セグメント利益、発行済株式数、減価償却費を参照した。四半期レビューは実施されておらず、四半期連結キャッシュ・フロー計算書も作成されていない。 / 2026/08/10 開示
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東京製綱株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月14日開示。通期の連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・純利益・EPS・ROE・総資産経常利益率)、財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・BPS)、キャッシュ・フロー計算書、配当の状況(期初予想からの修正経緯を含む)、2027年3月期の通期業績予想を参照した。 / 2026/05/14 開示
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IR BANK「東京製綱(5981) 決算まとめ」
2021年3月期〜2026年3月期の通期業績(売上高・営業利益・経常利益・純利益)の推移を、有価証券報告書・決算短信の集計値として二次情報で参照した。決算短信と一致する期は本文中に明記している。 / 2026/09/03 開示
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IR BANK「東京製綱(5981) 配当金の推移」
2022年3月期〜2026年3月期の配当(中間・期末・合計)と配当性向、期初予想から実績までの修正履歴を二次情報として参照した。数値は決算短信の記載と照合済み。 / 2026/09/03 開示
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Yahoo!ファイナンス/IR BANK 株価情報
2026年9月2日終値1,875円と、2026年6月末時点の自己株式控除後発行済株式数15,420,153株を、本記事のmetrics(時価総額・PER・PBR・配当利回り)の算出に用いた。 / 2026/09/03 開示