石油資源開発(1662) 純利益79.4%減でも通期予想は上方修正、577億円の新規借入の意味
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
石油資源開発株式会社
2026/09/01 時点
株価
1,980円
時価総額
5,089億円
配当利回り
2.27%
年間45円
PER
7.8倍
PBR
0.86倍
ROE
9.2%
ROA
8.0%
経常利益ベース
自己資本比率
68.8%
有利子負債
578億円
D/Eレシオ
0.10倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は、売上高が前年同期比21.4%減の651億14百万円、営業利益が同62.9%減の62億02百万円、経常利益が同72.3%減の57億73百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同79.4%減の32億40百万円と、4段階すべてで大幅な減益になった。
- 会社はこの減益の主因として、原油販売量の減少に加え、ホルムズ海峡緊迫化に伴うLNGの他産地スポット調達によるコスト増、探鉱費の増加(+36億77百万円)、持分法投資利益の減少、デリバティブ評価損益の反転を挙げている。市況・地政学要因と一過性の評価損益が中心で、恒常的な収益力そのものが四半期比較で単純に7〜8割落ち込んだと読むのは早計である。
- その裏付けとして、決算発表と同じ2026年8月6日、会社は2027年3月期の通期業績予想を上方修正した(純利益は600億円→650億円、+8.3%)。Q1の見出しの数字と、会社自身が示す通期の見通しの方向が逆を向いている。
- 同日、無借金に近かった財政状態にも変化が生じた。前期末ゼロだった長期借入金が当第1四半期末に577億56百万円計上され、米国タイトオイル・ガス資産の取得に充当された。自己資本比率は前期末72.8%から当第1四半期末68.8%へ低下している。
- 配当予想は中間22.50円・期末22.50円・合計45.00円で据え置かれたが、2025年3月期・2026年3月期は2期連続で「期初据え置き→特別利益による期末増額」のパターンがあり、2026年8月21日には投資有価証券売却益の計上見込みも公表済みである。据え置きをそのまま最終着地と見るか、過去の癖の延長で増額余地を見るかは、現時点では判断が分かれる。
目次11項目
1. 概要
石油資源開発(JAPEX)は、2026年9月1日時点で株価1,980円・PER7.80倍(会社予想EPS253.91円ベース)・PBR0.86倍(実績BPS2,310.26円ベース)・予想配当利回り2.27%(会社予想45.00円ベース)という水準にあります。自己資本比率は当第1四半期末(2026年6月30日)時点で68.8%、ROEは直近通期(2026年3月期)実績で9.2%です。
2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算は、売上高が前年同期比21.4%減、営業利益が同62.9%減、経常利益が同72.3%減、純利益が同79.4%減と、4段階すべてで大幅な減益になりました。数字だけを見ると強い逆風が吹いたように映りますが、会社は同じ日に通期の純利益予想を600億円から650億円へ上方修正しています。四半期の見出しの数字と、会社自身が示す通期の見通しがなぜ逆を向いているのかが、この記事で最初に整理したい論点です(第4節)。
あわせて、この四半期には財政状態にも目立った変化がありました。前期末ゼロだった長期借入金が577億56百万円計上され、米国のタイトオイル・ガス資産の取得に充当されています。無借金に近かった財務構造が動き始めている点も第4節・第6節で扱います。配当は期初予想(年間45.00円)が据え置かれましたが、過去2期は期末に特別利益を理由に増額してきた実績があり、この点は第5節で見ていきます。
2. 会社概要とビジネスモデル
石油資源開発(JAPEX)は、石油・天然ガスの探鉱・開発・生産から販売までを手がける資源開発会社です。事業は3つのセグメントに分かれます。
- E&P事業:国内外での原油・天然ガスの探鉱・生産・販売。2027年3月期第1四半期の売上高は241億26百万円(全体の約37%)。
- インフラ・ユーティリティ事業:天然ガス・電力の製造販売と都市ガス導管。同347億99百万円(全体の約53%)と売上の柱。
- その他事業:掘削工事や地質調査の受託等。同61億88百万円(全体の約10%)。
生産した天然ガスの一部は、自社のインフラ・ユーティリティ事業(電力・都市ガス)向けにも供給されています。海外では北米のタイトオイル・ガス資産など、持分法適用会社を通じた権益も持ちます。
強みと弱みの整理
強み
自己資本比率68.8%という厚い財務基盤
当第1四半期末時点でも自己資本比率68.8%を確保しており、資源価格が下振れた局面でも財務が急速に悪化しにくい体力があります。長期借入金が新規に生じたとはいえ、有利子負債57億76百万円は自己資本591億42百万円の1割程度(D/Eレシオ0.10倍)にとどまります。
インフラ・ユーティリティ事業による売上の下支え
売上の過半を占める天然ガス・電力・都市ガス導管事業は、E&P事業ほど市況の振れをそのまま受けにくく、E&P事業の減収局面でも会社全体の売上が急減するのを緩和する役割を果たしています。
通期業績予想の上方修正という会社側の見通し
2026年8月6日、会社は2027年3月期の売上高・営業利益・純利益をそろって上方修正しました。純利益は600億円→650億円(+8.3%)です。Q1の減益を受けても、会社自身は通期でむしろ強気の見通しを示しています。
弱み
原油・天然ガス価格と為替への直接的な業績連動
当第1四半期の減収減益は、原油販売量の減少とLNGのスポット調達コスト増によるものでした。会社の努力だけでコントロールできない市況・地政学要因が、四半期ごとの業績を大きく振れさせます。
特別損益・デリバティブ評価損益による純利益の振れやすさ
当第1四半期は持分法投資利益の減少とデリバティブ評価益から評価損への転換が経常利益を押し下げました。投資有価証券の時価変動(274,024百万円→240,866百万円)も純資産を通じて財務状態に影響しています。営業利益ベースの実力と、経常利益・純利益ベースの見た目の乖離が生じやすい構造です。
無借金に近かった財務方針の転換の兆し
前期末ゼロだった長期借入金が当第1四半期末に577億56百万円計上されました。米国タイトオイル・ガス資産の取得という前向きな投資が理由ですが、これまでの実質無借金経営から一歩踏み出したことは事実で、今後さらに借入が積み上がるかどうかは注視が必要です。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 249,140 | 19,809 | 43,674 | -30,988 | -1,052 | 78.7% |
| 2023/03 | 336,492 | 62,085 | 83,130 | 67,394 | 104,581 | 74.9% |
| 2024/03 | 325,863 | 55,247 | 68,808 | 53,661 | 90,564 | 76.2% |
| 2025/03 | 389,082 | 62,012 | 64,221 | 81,153 | 130,766 | 77.4% |
| 2026/03 | 340,336 | 38,915 | 61,556 | 53,427 | 102,976 | 72.8% |
| 2027/03会社予想 | 314,000 | 46,000 | 46,000 | 65,000 | — | — |
過去5期の通期実績を並べると、読み取れることは3つあります。
1つ目は、2022年3月期が特殊な赤字の年だったことです。 営業利益・経常利益は黒字(198億円・437億円)でしたが、純利益は309億88百万円の赤字でした。営業CFも△10億52百万円とマイナスで、この期だけ営業利益と純利益・キャッシュフローの方向が食い違っています。
2つ目は、2023年3月期に業績が急回復し、その後は緩やかに水準を切り下げていることです。 2023年3月期は売上高336,492百万円(前期比+35.1%)、営業利益62,085百万円(同+213.4%)と急拡大しましたが、2024年3月期は営業利益55,247百万円(同△11.0%)、2026年3月期は同38,915百万円(同△37.2%)と2期にわたって営業利益が縮小しています。2025年3月期は売上高389,082百万円(同+19.4%)、純利益81,153百万円(同+51.2%)と一時的に持ち直しましたが、これは北海道のガス製造・販売・導管事業の譲渡に伴う特別利益が主因(第5節)で、営業利益ベースでは62,012百万円と2023年3月期の水準には届いていません。
3つ目は、2027年3月期の会社予想が、営業利益・経常利益・純利益のいずれも前期実績を上回る水準に置かれていることです。 予想営業利益46,000百万円は前期実績38,915百万円比+18.2%、予想純利益65,000百万円は前期実績53,427百万円比+21.6%です。第1四半期の大幅減益(純利益△79.4%)とは対照的に、通期では回復を見込む予想になっています。この落差が第4節の中心的な論点です。
4. Q1純利益79.4%減と通期上方修正、577億円の新規借入をどう読むか
当第1四半期の決算は、見出しの数字だけを見ると強い逆風の四半期に見えます。実際の数値を確認します。
| 項目 | 前第1四半期(2025/4-6) | 当第1四半期(2026/4-6) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 82,844百万円 | 65,114百万円 | △21.4% |
| 営業利益 | 16,699百万円 | 6,202百万円 | △62.9% |
| 経常利益 | 20,810百万円 | 5,773百万円 | △72.3% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 15,714百万円 | 3,240百万円 | △79.4% |
| 1株当たり四半期純利益 | 61.41円 | 12.66円 | ー |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日)
減益の中身は市況・一過性要因が中心
決算短信の「経営成績の概況」によれば、減収減益の理由は次のとおりです。
- 原油の販売量減少に加え、ホルムズ海峡の緊迫化に伴い、ペルシャ湾内から調達予定だったLNGカーゴを他産地からスポット調達したことでLNG調達コストが増加した。
- 探鉱費が39億29百万円と、前年同期比36億77百万円増加した。
- 経常利益はさらに、持分法投資利益の減少と、デリバティブ評価損益が評価益から評価損に転じたことが押し下げ要因になった。
- 販管費も前年同期比+13.2%増加した。
これらはいずれも、原油・LNG市況や地政学リスク、投資有価証券・デリバティブの評価という、会社の本業のオペレーション効率とは別の要因です。ホルムズ海峡情勢のようなその時々の地政学リスクや、評価損益の反転は、四半期をまたいで反復する保証がない一過性の要素を多く含みます。
通期予想は同じ日に上方修正されている
ここが最も重要な点です。この決算と同じ2026年8月6日、会社は2027年3月期の通期業績予想を次のとおり上方修正しています。
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS | |
|---|---|---|---|---|---|
| 修正前予想(2026年5月13日時点) | 303,000百万円 | 41,000百万円 | 45,000百万円 | 60,000百万円 | 234.38円 |
| 修正後予想(2026年8月6日) | 314,000百万円 | 46,000百万円 | 46,000百万円 | 65,000百万円 | 253.91円 |
| 前期実績(2026年3月期) | 340,336百万円 | 38,915百万円 | 61,556百万円 | 53,427百万円 | 208.74円 |
出典:業績予想の修正に関するお知らせ(2026年8月6日)
修正理由として会社は、原油販売価格の上昇と販売量増加による増収増益の見込み、および同日公表の「特別利益(投資有価証券売却益)の計上見込みについて」による純利益の押し上げを挙げています。四半期の見出し(純利益△79.4%)と、会社が同じ日に示した通期の方向(純利益予想+8.3%)が逆を向いているというのが、この決算の実態です。Q1だけを切り取って「業績が急速に悪化している」と読むと、会社自身の見通しとは異なる結論になります。
もっとも、これは「Q1は無視してよい」という意味ではありません。Q1の純利益32億40百万円は、上方修正後の通期予想650億円に対してわずか5.0%の進捗です。原油販売価格の上昇・販売量増加という会社の前提が今後の四半期で実際に確認できるかどうかは、まだ検証されていません。
無借金に近かった財務に、577億円の新規借入
もう一つの変化は財政状態です。当第1四半期末の長期借入金は577億56百万円で、前期末(2026年3月31日)はゼロでした。同じ2026年8月6日に開示された「米国タイトオイル・ガス資産の取得および連結子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」と符合しており、この借入は当該資産の取得に充当されたとみられます。
この結果、自己資本比率は前期末72.8%から当第1四半期末68.8%へ4.0ポイント低下しました。それでも68.8%は業種内で見ても高い水準ですが、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は0(前期末)から0.10倍(577億56百万円÷591億42百万円)へ変化しており、これまで実質無借金だった財務方針が変わり始めた最初の四半期だと位置づけられます。米国タイトオイル・ガス資産という前向きな投資が理由であることは確認できますが、この資産が実際にどれだけの利益を生むかは、今回の決算短信からはまだ読み取れません。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 10円 | — | — |
| 2023/03 | — | 74円 | — | 29.9% |
| 2024/03 | 40円 | 60円 | +20円 | 30.2% |
| 2025/03 | 50円 | 55円 | +5円 | — |
| 2026/03 | 40円 | 65円 | +25円 | 31.1% |
| 2027/03会社予想 | 45円 | 45円 | — | — |
- 2022/03:会社開示は分割前の株数基準(中間25.00円・期末25.00円・合計50.00円)。2024年10月の1→5株式分割後の株数に合わせるため、当サイトで5分の1に換算して表示している。
- 2023/03:会社開示は分割前の株数基準(中間150.00円・期末220.00円・合計370.00円、配当性向29.9%)。当サイトで5分の1に換算して表示している。
- 2024/03:会社開示は分割前の株数基準(中間125.00円・期末175.00円・合計300.00円、配当性向30.2%)。当サイトで5分の1に換算して表示している。
- 2025/03:株式分割(2024年10月1日、1株→5株)をまたぐ期のため、会社は年間配当合計を「-」と記載している。中間配当125.00円は分割前の株数基準、期末配当30.00円は分割後の株数基準で、基準が異なる金額をそのまま合算できない。当サイトでは中間分を5分の1に換算した25.00円と期末実績30.00円を合算した55.00円を、分割後の株数に統一した実質的な年間合計として表示している。
- 2026/03:期初予想は中間20.00円・期末20.00円の合計40.00円だったが、北海道におけるガス製造・販売・導管事業の譲渡に伴う特別利益を受けて期末配当を45.00円へ増額した。いずれも分割後の株数基準。
- 2027/03:2026年8月6日の通期業績予想の上方修正でも、配当予想は期初の水準(中間22.50円・期末22.50円・合計45.00円)から据え置かれた。
2027年3月期の配当予想は中間22.50円・期末22.50円の合計45.00円で、2026年8月6日の通期業績予想の上方修正でも据え置かれています。株価1,980円に対する予想配当利回りは2.27%です。
この水準をどう見るかは、過去2期の推移を踏まえる必要があります。分割後の株数基準に統一すると、年間配当は2024年3月期60.00円→2025年3月期55.00円→2026年3月期65.00円と推移しており、いずれの期も期初予想を上回って着地しています(2024年3月期は期初予想40.00円→実績60.00円、2025年3月期は期初予想50.00円→実績55.00円、2026年3月期は期初予想40.00円→実績65.00円)。増額の主因は、いずれも期中に計上された特別利益(2026年3月期は北海道のガス事業譲渡益)でした。
2027年3月期についても、2026年8月21日に「特別利益(投資有価証券売却益)の計上見込みについて」が開示されており、金額や計上時期はこの記事の一次情報からは確認できないものの、過去2期と同じパターンで期末配当が増額される可能性は残っています。一方で、8月6日時点の通期予想修正でも配当据え置きが維持された事実は変わらず、増額を前提に利回りを見積もるのは時期尚早です。会社の基本方針は連結配当性向30%を目安とするというもので、必要に応じて第2四半期時点の通期業績予想等に基づき配当を見直すとしています。
6. 会社の現状と直近の動き
セグメント別に見ると、当第1四半期はいずれも減収でした。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 主因 |
|---|---|---|---|
| E&P事業 | 24,126百万円 | △11.7% | 原油販売量の減少 |
| インフラ・ユーティリティ事業 | 34,799百万円 | △12.5% | 天然ガス・電力の販売量減少 |
| その他事業 | 6,188百万円 | △60.8% | 掘さく工事等の受注減 |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信
売上の柱であるインフラ・ユーティリティ事業も、その他事業ほどではないものの2桁の減収です。天然ガス・電力の販売量そのものが落ち込んでおり、価格要因だけでなく需要側の弱さも表れています。
財政状態については、総資産が前期末862,470百万円から当第1四半期末859,805百万円へほぼ横ばいでした。純資産は658,897百万円から623,535百万円へ35,361百万円減少していますが、この主因はその他有価証券評価差額金・繰延ヘッジ損益の減少です。投資有価証券は274,024百万円から240,866百万円へ減少しており、保有する有価証券の時価下落が純資産を通じて自己資本比率の低下(72.8%→68.8%)にも影響しています。
包括利益は当第1四半期に△237億53百万円となり、前年同期の+36億27百万円から大きく悪化しました。四半期純利益は黒字(32億40百万円)でも、その他の包括利益(有価証券評価差額金の減少等)を含めた包括利益ではマイナスになっている点も、投資有価証券の時価変動の影響が大きい会社であることを示しています。
7. 業界とセクターの状況
石油・天然ガス開発(E&P)や電力・都市ガスの製造販売を担うエネルギー資源セクターには、個社の努力だけでは動かせない構造的な制約があります。
原油・天然ガス価格と為替が業績を直接左右する。 上流(E&P)は市況と生産量、下流(電力・ガス)は販売量と燃料調達コストの差が利益を決めます。当第1四半期のJAPEXの減益も、原油販売量の減少とLNGスポット調達コストの増加という、市況・地政学要因が中心でした。
中東情勢など地政学リスクが先行指標になる。 2026年4月にJAPEXが「中東情勢の緊迫化に伴う当社業績への影響について」を開示し、実際に第1四半期の決算でホルムズ海峡の緊迫化がLNG調達コストに影響したことが確認されました。この種のリスクは会社が事前に回避できるものではなく、調達先の分散などで影響を緩和する以外に手立てが乏しい領域です。
特別損益・デリバティブ評価損益が四半期の純利益を振れさせやすい。 JAPEXも投資有価証券やデリバティブの評価損益、持分法投資利益の増減が経常利益・純利益に反映されやすい構造で、これはセクター共通の特徴です。営業利益(本業の実力に近い指標)と経常利益・純利益の差を毎期確認する必要があります。
PERは市況の局面次第で評価が振れやすい。 市況が良い期の一時的な高利益を分母にするとPERは過小評価に見えやすく、逆に市況低迷期は当期赤字でPERが算出不能になることもあります。現在の会社予想PER7.80倍が「割安」かどうかは、この予想がどの市況局面を前提にしているかとあわせて考える必要があります。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
第2四半期(中間)決算の発表日は過去の傾向からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
通期業績予想(純利益650億円)に対する進捗と、中間配当22.50円の据え置き・増額の有無が最初に確認できる機会。
通期上方修正は原油販売価格の上昇と販売量増加を前提にしている。市況が反転すれば、上方修正の前提自体が崩れる。
2026年8月21日に「特別利益(投資有価証券売却益)の計上見込みについて」が開示されている。金額と計上時期が確定すれば、通期純利益予想や期末配当の増額余地に直接影響する。
577億56百万円の新規借入で取得した資産がどの程度の利益を生むかは、今回のQ1決算短信からはまだ確認できない。次四半期以降のE&P事業セグメント売上・利益への反映を見る必要がある。
10. 想定されるリスク
強みと弱みを踏まえたうえで、判断材料として押さえておくべきリスクを整理します。
市況・為替の悪化が続くリスク。 通期予想の上方修正は原油販売価格の上昇と販売量増加を前提にしています。この前提が崩れれば、上方修正後の予想自体が下振れます。
投資有価証券売却益が想定を下回るリスク。 2026年8月21日に特別利益の計上見込みが開示されていますが、金額・時期はこの記事の一次情報からは確認できていません。想定より小さければ、通期純利益予想の達成度や期末配当の増額余地に影響します。
財務レバレッジが今後さらに高まるリスク。 577億56百万円の新規借入は今回が最初のケースで、今後も同様の借入を伴う投資が続けば、自己資本比率68.8%という水準がさらに切り下がっていく可能性があります。
投資有価証券の時価変動が純資産を振れさせるリスク。 当第1四半期は投資有価証券の時価下落により純資産が35,361百万円減少し、包括利益も赤字(△237億53百万円)になりました。保有資産の時価が今後も下振れれば、自己資本比率のさらなる低下要因になります。
Q1の進捗率の低さ。 純利益32億40百万円は通期予想650億円に対して5.0%の進捗にとどまっており、通期予想達成には第2四半期以降の大幅な回復が必要です。
11. まとめ:どう判断材料にするか
石油資源開発の2027年3月期第1四半期は、純利益が前年同期比79.4%減という見出しだけを見れば弱い決算に見えます。しかし、その主因はLNGスポット調達コスト増や探鉱費増加、デリバティブ評価損益の反転といった市況・一過性要因が中心で、会社は同じ日に通期の純利益予想を600億円から650億円へ上方修正しています。あわせて、無借金に近かった財務に577億56百万円の新規借入が生じ、自己資本比率は72.8%から68.8%へ低下しました。
判断の分かれ目は2つあります。1つは、Q1の大幅減益を市況・一過性要因の一過性の落ち込みと見るか、通期予想の前提(原油販売価格の上昇・販売量増加)が実際に実現するかどうかまだ検証されていない不確実な見通しと見るかです。Q1の進捗率はまだ5.0%にとどまっています。もう1つは、577億円の新規借入を、米国タイトオイル・ガス資産という前向きな投資への一歩と見るか、実質無借金だった財務方針の転換の始まりと見るかです。この2つの分かれ目にどちらの見方を取るかで、この銘柄の評価は変わります。
次の確認ポイントは、2026年11月頃に予定される第2四半期(中間)決算です。通期予想650億円に対する進捗と、投資有価証券売却益の計上状況、そして中間配当22.50円が据え置かれるか増額されるかが、この記事で挙げた論点の答え合わせになります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月頃の第2四半期(中間)決算で、通期純利益予想650億円に対する進捗が第1四半期の減益基調(純利益32億40百万円、通期予想の5.0%)から大きく改善せず、上方修正の前提だった原油販売価格の上昇・販売量増加が確認できなかった場合。
- 2026年8月21日に開示された投資有価証券売却益が想定を下回る、または計上時期が翌期以降にずれ込み、期末配当が期初予想の22.50円から増額されずに年間45.00円で着地した場合(2025年3月期・2026年3月期に見られた期末増額のパターンが途切れることを意味する)。
- 長期借入金57億76百万円(当第1四半期末)がさらに積み増され、自己資本比率が当第1四半期末の68.8%から明確に下回る水準(例えば60%台前半)まで低下した場合。無借金に近かった財務方針そのものの転換を意味する。
- ホルムズ海峡情勢や中東情勢がさらに緊迫化し、LNGのスポット調達コスト増加が第1四半期以上に拡大した場合、または原油販売量の減少が一時的でなく構造的なものだったと確認された場合。
よくある質問
- 石油資源開発(JAPEX)の配当はいくらですか?
- 2027年3月期の会社予想は、中間22.50円・期末22.50円の年間合計45.00円です(2026年8月6日の 通期業績予想の上方修正時点でも据え置き)。株価1,980円(2026年9月1日時点)に対する予想 配当利回りは2.27%です。前期(2026年3月期)実績は年間65.00円でしたが、これは期中に 特別利益を受けて期末配当を増額した結果で、期初予想は40.00円でした。
- 純利益が79.4%も減ったのに、なぜ通期の業績予想は上方修正されたのですか?
- 2027年3月期第1四半期の減益は、LNGの他産地スポット調達によるコスト増や探鉱費の増加、 デリバティブ評価損益の反転など、一過性・市況要因が中心でした。一方で会社が同じ日 (2026年8月6日)に示した通期予想は、原油販売価格の上昇と販売量増加を前提に、純利益で 600億円から650億円(+8.3%)への上方修正です。四半期の見出しの数字と、会社自身が 見込む通期の方向は逆を向いています。
- 株式分割で配当が減ったように見えるのですが、実際に減配したのですか?
- 2024年10月1日付で1株につき5株の株式分割を行っているため、分割前の株数基準の金額 (例:2023年3月期の合計370.00円)をそのまま並べると大きく減っているように見えます。 分割後の株数に統一して換算すると、2023年3月期74.00円→2024年3月期60.00円→2025年3月期 55.00円→2026年3月期65.00円という推移で、2026年3月期にかけては増加しています。 2025年3月期は分割をまたいだため会社の開示上は年間合計が「-」表記になっており、 当サイトでは中間・期末の金額をそれぞれ分割後の株数基準に換算して55.00円として扱っています。
参考文献・引用元
- 01石油資源開発株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月6日開示。連結経営成績(累計)、財政状態、セグメント別売上高、減収減益の理由、貸借対照表の増減理由、配当の状況、発行済株式数を参照。 / 2026/08/06 開示
- 02
石油資源開発株式会社「業績予想の修正に関するお知らせ」
2026年8月6日開示。2027年3月期の通期業績予想の修正内容(修正前後の売上高・各利益・EPS)と修正理由を参照。 / 2026/08/06 開示
- 03
石油資源開発株式会社「(開示事項の経過)特別利益(投資有価証券売却益)の計上見込みについて」
2026年8月21日開示。投資有価証券売却益の計上見込みの有無を参照。金額・計上時期の詳細は本記事執筆時点では確認できていない。 / 2026/08/21 開示
- 04
石油資源開発株式会社「米国タイトオイル・ガス資産の取得および連結子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」
2026年8月6日開示。当第1四半期末に新規計上された長期借入金577億56百万円の使途(米国タイトオイル・ガス資産の取得)の確認に参照。 / 2026/08/06 開示
- 05
石油資源開発株式会社「中東情勢の緊迫化に伴う当社業績への影響について」
2026年4月17日開示。ホルムズ海峡緊迫化がLNG調達コストに影響しうるという背景の確認に参照。 / 2026/04/17 開示
- 06
石油資源開発株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月13日開示。2025年3月期・2026年3月期の通期経営成績、財政状態、配当の状況(配当性向31.1%)、2027年3月期期初業績予想・配当予想、株式分割(2024年10月1日、1株→5株)に伴う配当金の記載方法に関する注記を参照。 / 2026/05/13 開示
- 07
石油資源開発株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年3月期の通期経営成績、自己資本比率、配当の状況(配当性向30.2%、分割前の株数基準)を参照。
- 08
石油資源開発株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2022年3月期・2023年3月期の通期経営成績、自己資本比率、営業キャッシュ・フロー、配当の状況(配当性向29.9%、分割前の株数基準)を参照。
- 09Yahoo!ファイナンス「石油資源開発(株)【1662】株価・株式情報」
二次情報。2026年9月1日終値1,980円(前日比+3.34%)、時価総額、発行済株式数257,000,380株、予想PER・予想配当利回り・実績PBR等を本記事のmetricsの算出根拠として参照した。 / 2026/09/01 開示