グロービング(277A) 営業利益率上昇の主因はAI黒字化ではなくコンサル事業の増収
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
グロービング株式会社
2026/08/23 時点
株価
1,846円
時価総額
530億円
配当利回り
1.93%
年間35.6円
PER
17.2倍
PBR
6.54倍
ROE
44.2%
ROA
41.7%
経常利益ベース
自己資本比率
73.5%
配当性向
15.9%
有利子負債
0億円
D/Eレシオ
0.00倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2026年5月期は売上高11,512百万円(前期比+39.4%)・営業利益4,142百万円(同+47.9%)・純利益3,052百万円(同+72.6%)の大幅増収増益で、連結営業利益率は33.9%から36.0%へ上昇した。
- セグメント情報を分解すると、営業利益の増加額1,341.7百万円のうち約97%(+1,299.0百万円)はコンサルティング事業の増収によるもので、AI事業の黒字転換(+336.1百万円)は全社共通費用の増加(△293.4百万円)とほぼ相殺されている。利益率上昇の主因はAI事業ではない。
- コンサルティング事業自体のセグメント利益率は45.68%から45.48%へわずかに低下しており、中途採用による増員コストが利益率にどう効いてくるかは次期以降の確認事項として残る。
- 上場後初の配当(期末16.10円、配当性向15.9%)を実施し、2027年5月期は35.60円(予想配当性向30.0%)へ増配を計画している。ただし2027年5月期の会社業績予想はIFRSベースで開示されており、日本基準の2026年5月期実績と会計基準が異なるため単純な前期比では比較できない。
- 決算短信と同日、2026年12月1日付で持株会社体制へ移行し商号を「WAOホールディングス株式会社」に変更する会社分割を決議したと公表しており、2026年8月27日開催の定時株主総会での承認が条件になっている。
目次11項目
1. 概要
2026年8月23日時点で、株価1,846円・PER17.22倍・PBR6.54倍・ROE44.2%・自己資本比率73.5%という水準です(PER・PBRはこの記事で参照する2026年5月期の実績EPS・実績BPSから算出)。
2026年5月期(2025年6月〜2026年5月)は、売上高11,512百万円(前期比+39.4%)・営業利益4,142百万円(同+47.9%)・純利益3,052百万円(同+72.6%)と、増収率を上回るペースで増益しました。連結営業利益率は前期の33.9%から36.0%へ2.1ポイント上昇しています。
同社は2024年11月に上場したばかりで、コンサルティング事業(DX戦略の立案から実行までの伴走支援、売上の96%超)とAI事業(AIプロダクトの共同開発、まだ小規模)の2セグメントを持ちます。AI事業は今期セグメント損失から黒字へ転換しており、話題になりやすい材料です。しかし、この記事でセグメント情報を分解した結果、営業利益率が上がった主因はAI事業ではありませんでした。 どのセグメントが利益率上昇を実際に牽引したのかを、第4節で数字にもとづいて整理します。
あわせて、2026年5月期に上場後初めての配当を実施したこと、そして決算短信と同日に持株会社体制への移行(商号を「WAOホールディングス株式会社」に変更する計画)を決議したことにも触れます。
2. 会社概要とビジネスモデル
グロービングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)・生成AI活用のコンサルティングを手がける会社です。事業は2つのセグメントに分かれます。
- コンサルティング事業:企業のDX戦略の立案から実行までを人的に伴走支援する労働集約型のビジネス。2026年5月期の外部売上高11,107.8百万円は、連結売上高の96.5%を占めます。売上はコンサルタントの中途採用による増員数と稼働率にほぼ比例して動きます。
- AI事業:AIプロダクトの共同開発を手がけるセグメント。2026年5月期の外部売上高は405.0百万円で、まだ全社売上の3.5%程度です。
主要顧客は戦略アカウントを中心とした企業のDX推進部門・経営層とみられ、2026年5月期はトヨタ自動車が2,313.7百万円(コンサルティング事業とAI事業の合算)で最大顧客として新たに開示されました。前期の最大顧客は本田技研工業(12億7千万円)でした。
強みと弱みの整理
強み
高い利益率のコンサルティング事業
コンサルティング事業のセグメント利益率は45%台と高水準です。設備投資をほとんど必要としない労働集約型のビジネスで、増員した分の売上がそのまま利益に近いかたちで積み上がりやすい構造です。
実質無借金で財務が厚い
決算短信の貸借対照表によれば借入金・社債・リース債務のいずれも計上されておらず、有利子負債はゼロ(D/Eレシオ0倍)です。自己資本比率も65.6%(2025年5月期)から73.5%(2026年5月期)へ上昇しています。
増収率を上回るペースの増益
2026年5月期は売上高11,512百万円(前期比+39.4%)に対し営業利益は4,142百万円(同+47.9%)と、増収率を上回るペースで増益しました。規模の拡大が収益性の低下を伴っていません。
弱み
特定顧客への売上依存度が高い
2026年5月期はトヨタ自動車向け売上が2,313.7百万円で、連結売上高11,512.8百万円の20.1%を占めます。前期の最大顧客(本田技研工業、12億7千万円、構成比15.4%)よりも集中度が上がっており、特定顧客の発注方針が変わった場合の影響は小さくありません。
コンサルティング事業自体の利益率はわずかに低下
セグメント利益率は45.68%(2025年5月期)から45.48%(2026年5月期)へ、0.2ポイントですがわずかに下がっています。中途採用による増員が先行コストとして利益率の重荷になっていないか、今後の四半期で確認する必要があります。
単一事業への依存とAI事業はまだ小規模
コンサルティング事業が売上の96.5%を占める一方、AI事業は3.5%にとどまります。DX・生成AI活用への企業投資意欲は景気に連動しやすく、案件は景気後退期に絞られやすい性質があります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/05 | 2,606 | 736 | 738 | 474 | — | — |
| 2024/05 | 4,175 | 370 | 379 | 261 | — | — |
| 2025/05 | 8,255 | 2,800 | 2,783 | 1,768 | 3,098 | 65.6% |
| 2026/05 | 11,512 | 4,142 | 4,111 | 3,052 | 2,953 | 73.5% |
| 2027/05会社予想 | 16,100 | 4,830 | — | 3,381 | — | — |
この5期の推移から読み取れることは3つあります。
1つ目は、2024年5月期に営業利益が一時的に落ち込んでいることです。 売上高は2023年5月期の2,606百万円から2024年5月期は4,175百万円へ増えた一方、営業利益は736百万円から370百万円へ半減しています。上場準備に伴うコストなど何らかの一過性要因が影響した可能性がありますが、本記事の一次情報(決算短信・IR BANK)からは具体的な要因を特定できませんでした。
2つ目は、2025年5月期以降の急回復です。 営業利益は370百万円(2024年5月期)から2,800百万円(2025年5月期)、4,142百万円(2026年5月期)へと、2期連続で大きく伸びています。
3つ目は、2027年5月期の会社予想が示す増益ペースの鈍化です。 会社予想は売上収益16,100百万円(+39.8%)・営業利益4,830百万円(同+16.6%)で、増収ペースはほぼ変わらないのに対し、増益ペースは目に見えて緩やかになる計画です。ただし、この予想はIFRS(国際会計基準)にもとづいて開示されており、日本基準である2026年5月期実績とは会計基準が異なります。 収益認識基準やのれん処理などが日本基準と違うため、この前期比の数字をそのまま「収益性が悪化する」と読むのは正確ではありません。基準の違いを踏まえたうえで、それでも増収率に対して増益率が緩やかになる計画であること自体は指摘できます。この点は第6節で改めて扱います。
4. 営業利益率上昇の主因はどこにあるか
連結営業利益率は2025年5月期の33.9%から2026年5月期は36.0%へ、2.1ポイント上昇しました。この記事の中心的な問いは、この上昇はAI事業の黒字転換によるものなのかという点です。セグメント情報から確かめます。
| コンサルティング事業 | AI事業 | 全社共通費用(調整額) | 連結営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 2025年5月期 外部売上高 | 8,213.6百万円 | 42.3百万円 | — | 8,255.9百万円 |
| 2026年5月期 外部売上高 | 11,107.8百万円 | 405.0百万円 | — | 11,512.8百万円 |
| 2025年5月期 セグメント利益(損失) | 3,752.5百万円 | △101.9百万円 | △850.1百万円 | 2,800.5百万円 |
| 2026年5月期 セグメント利益(損失) | 5,051.5百万円 | 234.3百万円 | △1,143.5百万円 | 4,142.2百万円 |
| セグメント利益の増減額 | +1,299.0百万円 | +336.1百万円 | △293.4百万円 | +1,341.7百万円 |
| 利益率(2025→2026年5月期) | 45.68%→45.48% | 赤字→黒字 | — | 33.9%→36.0% |
出典:決算短信(セグメント情報)
連結営業利益の増加額1,341.7百万円の内訳を見ると、コンサルティング事業の増益分(+1,299.0百万円)が全体の約97%を占めています。 一方、話題になりやすいAI事業の黒字転換(△101.9百万円→234.3百万円、+336.1百万円)は、全社共通費用の増加(△850.1百万円→△1,143.5百万円、△293.4百万円)とほぼ相殺されており、連結損益への正味の寄与は+42.7百万円程度(+336.1百万円−293.4百万円)にとどまります。
つまり、連結営業利益率が上がった実質的な主因は、AI事業の黒字化ではありません。 コンサルティング事業のセグメント利益率は45.68%(2025年5月期)から45.48%(2026年5月期)へ、実はごくわずかに低下しています。それでも連結の利益率が上がったのは、この高い利益率をほぼ維持したまま、コンサルティング事業そのものが35.2%増収するかたちで規模拡大したためです。AI事業の黒字転換は事実ですが、全社共通費用の増加によってその効果の大半が打ち消されている点は見落とされがちです。
この整理から浮かぶ論点は2つあります。1つは、コンサルティング事業の利益率がわずかに下がった背景に、中途採用による増員(人件費の先行計上)があるのではないかということです。決算短信からはこの因果関係を直接確認できませんでしたが、次の四半期以降、増員のペースと利益率の関係を追う価値があります。もう1つは、全社共通費用が824百万円から1,143.5百万円へ増えた理由です。これも決算短信の開示範囲からは費目の内訳まで特定できませんでした。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2025/05 | — | 0円 | — |
| 2026/05 | — | 16.1円 | 15.9% |
| 2027/05会社予想 | 35.6円 | 35.6円 | 30.0% |
- 2025/05:上場後初の本決算期。無配。
- 2026/05:上場来初配当(純資産配当率5.7%)。期初予想の値は本記事で参照した決算短信の範囲からは確認できていない。支払開始予定日は2026年8月13日。
- 2027/05:2026年7月15日公表の会社予想。予想配当性向は前期実績15.9%から30.0%へ引き上げ計画。
グロービングは2026年5月期に、上場後初めての配当を実施しました。期末16.10円(配当性向15.9%、純資産配当率5.7%)で、支払開始予定日は2026年8月13日です。前期(2025年5月期)は無配でした。
2027年5月期の会社予想は、中間14.20円・期末21.40円の合計35.60円(予想配当性向30.0%)です。配当性向を実績15.9%から予想30.0%へ引き上げる計画になっており、利益成長にあわせて還元も拡大していく方針が読み取れます。この配当予想は会社自身が明示的に開示しているため、予想配当利回り1.93%(2026年8月23日時点の株価1,846円ベース)はそのまま使える数字です。
なお、2026年5月期の配当については、本記事で参照した決算短信の範囲からは期初予想の値を確認できませんでした。上場後初の配当だったため、期初と着地を比較する「期初予想の癖」はこの1期分だけではまだ判断材料になりません。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態。 総資産は8,768百万円(2025年5月期末)から10,950百万円(2026年5月期末)へ増加し、自己資本比率は65.6%から73.5%へ上昇しました。決算短信の貸借対照表によれば、借入金・社債・リース債務のいずれも計上されておらず、有利子負債はゼロ(D/Eレシオ0倍)の無借金経営です。自己資本比率の上昇は、有利子負債による資金調達を伴わずに利益を内部留保として積み上げた結果と考えられますが、増資や自己株式取得を含めた資本構成の変動の詳細までは、本記事で参照した決算短信の範囲では特定できませんでした。
キャッシュ・フロー。 営業キャッシュ・フローは2,953百万円(前期3,098百万円)で2期連続の黒字を確保しています。一方、投資キャッシュ・フローは△2,554百万円(前期△448百万円)、財務キャッシュ・フローは△1,329百万円(前期+2,574百万円)といずれも支出超過となり、現金同等物の期末残高は6,612百万円から5,694百万円へ減少しました。投資・財務両面での支出拡大の具体的な内訳(設備投資・M&A・自己株式取得等の内訳)は、本記事で参照した決算短信の範囲からは特定できていません。
2027年5月期の会社業績予想(IFRS基準)。 売上収益16,100百万円、営業利益4,830百万円(営業利益率30.0%)、税引前利益4,830百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益3,381百万円、EPS118.55円という計画です。決算短信は「2026年5月期の有価証券報告書における連結財務諸表からIFRSを任意適用するため、2027年5月期の連結業績予想はIFRSに基づき作成しており、日本基準を適用した2026年5月期の実績値に対する増減率は記載していない」と明記しています。日本基準の当期実績(連結営業利益率36.0%)とIFRS基準の来期予想(同30.0%)は会計基準が異なるため、このまま「利益率が6ポイント下がる」と読むのは不正確です。 それでも、増収率+39.8%に対して営業利益は+16.6%にとどまる計画であること自体は、会計基準の違いを踏まえたうえでの留保つきの事実として指摘できます。
後発事象:持株会社体制への移行。 決算短信と同日(2026年7月15日)付で、2026年12月1日に持株会社体制へ移行し、商号を「グロービング株式会社」から「WAOホールディングス株式会社」に変更する会社分割を決議したと公表しています。吸収分割準備会社として「株式会社グロービング吸収分割準備会社」を設立済みで、2026年12月1日付で同社が「グロービング株式会社」に商号変更し、グループ経営管理事業を除くコンサルティング事業・AI事業を承継する計画です。2026年8月27日開催の定時株主総会での承認が条件となっており、社名が実際に変わるかどうかは本記事の執筆時点ではまだ確定していません。
株式分割。 2024年9月20日・2025年3月1日にそれぞれ普通株式1株を5株にする分割を実施しています(合計25倍)。EPS・BPSなど本記事で扱う指標はいずれも分割後ベースで開示されています。
7. 業界とセクターの状況
グロービングが属するITコンサルティング・DX支援セクターは、構造的にいくつかの特徴を持ちます。
第一に、売上はコンサルタントの人員数と稼働率にほぼ比例する「人月型」のビジネスです。在庫や大きな設備を持たない代わりに、増員した分しか売上は伸びません。成長のボトルネックは需要ではなく、採用と教育の速度になりやすい構造です。
第二に、需要には二面性があります。 景気後退局面では外部コンサル費用は真っ先に削られやすい一方、DXや生成AI活用のように経営課題として設定された投資は削りにくく、この二面性が需要の底を作ります。グロービングのコンサルティング事業が高い増収率を維持できているのも、この構造的な追い風が効いていると考えられます。
第三に、最大の外部コスト変動要因は人材の採用単価・平均年収の上昇です。 固定資産が少なく自己資本比率が高くなりやすい業態である半面、人件費の増減が利益率に直結します。第4節で見たコンサルティング事業の利益率のわずかな低下も、この構造と整合する動きです。
第四に、参入障壁は本質的に薄く、大手コンサルティングファームやSIer(システムインテグレーター)との人材獲得競争に常にさらされます。 グロービングが挙げる優位性は、戦略アカウントを中心とした長期的関係構築(JI案件)ですが、これも他社が模倣しにくい参入障壁というより、営業効率を上げる工夫という性格が強いものです。
8. 今後のスケジュール
2027年5月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年5月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年5月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年5月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
持株会社体制への移行・商号変更(グロービング株式会社→WAOホールディングス株式会社)
2026年7月15日開示の決算短信で決議を公表。2026年8月27日開催の定時株主総会での承認が条件。承認された場合、コンサルティング事業・AI事業は新設する吸収分割準備会社(同日付で「グロービング株式会社」に商号変更予定)が承継する。
9. 想定されるカタリスト
会社分割・商号変更(グロービング株式会社→WAOホールディングス株式会社)の議案が可決されるかどうかが確定する。
コンサルティング事業のセグメント利益率が45%台を維持できるか、トヨタ自動車向けなど大口顧客の売上動向がどうなっているかを確認する最初の材料。
定時株主総会で承認された場合の実施予定日。グループ経営管理事業を持株会社に残し、コンサルティング事業・AI事業を新設子会社(承継後に「グロービング株式会社」へ商号変更)が引き継ぐ計画。
会社予想(売上収益161億円・営業利益48.3億円)の達成可否と、IFRSベースの利益率が実際にどう着地するかが判明する。
10. 想定されるリスク
特定顧客への依存。 トヨタ自動車向け売上が連結売上高の20.1%を占めており、前期の最大顧客(本田技研工業、構成比15.4%)よりも集中度が上がっています。大口顧客の発注方針の変化は業績への影響が大きくなりやすい構造です。
コンサルティング事業自体の利益率の低下傾向。 セグメント利益率は45.68%から45.48%へわずかに下がっています。中途採用による増員コストが今後も先行し続ければ、この低下がさらに進む可能性があります。
2027年5月期の増益ペース鈍化計画。 会計基準の違い(日本基準→IFRS)を踏まえても、会社予想は増収率+39.8%に対して営業利益+16.6%にとどまる計画です。この着地を招く具体的な費目についての会社コメントは、本記事で確認できた開示の範囲には含まれていませんでした。
AI事業の黒字化が小規模で一過性の可能性。 セグメント利益234.3百万円という金額はまだ小さく、コンサルティング事業側のリソース配分の結果として一時的に黒字化している可能性も排除できません。
組織再編に伴う不確実性。 2026年12月1日に予定する持株会社体制への移行・商号変更は、2026年8月27日の定時株主総会での承認が条件です。承認されるかどうか、承認後に体制移行が事業運営にどのような影響を与えるかは、現時点では確定していません。
上場から日が浅いこと。 2024年11月の上場から2年に満たず、複数期にわたる季節性・景気敏感度の検証材料がまだ十分にありません。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2026年5月期のグロービングは、増収率を上回るペースで増益し、連結営業利益率も2.1ポイント上昇しました。この記事で整理したとおり、利益率上昇の実質的な主因はAI事業の黒字転換ではなく、利益率をほぼ維持したままコンサルティング事業が35.2%増収したことでした。AI事業の黒字転換自体は事実ですが、その効果は全社共通費用の増加によってほぼ相殺されています。
判断の分かれ目は2つあります。1つは、コンサルティング事業のわずかな利益率低下(45.68%→45.48%)を、増員先行の一過性コストと見るか、構造的な下押しの始まりと見るかです。前者と見るなら、高い利益率を維持したまま増収を続けられる成長企業として評価できますし、後者と見るなら増員のたびに利益率が削られていく可能性を織り込む必要があります。もう1つは、2027年5月期の会社予想が示す増益ペースの鈍化を、会計基準の違いを踏まえた保守的な計画と見るか、実際の収益性変化の予兆と見るかです。IFRS移行という基準断絶があるため、この予想だけから収益性の悪化を断定することはできません。
次の確認ポイントは、2026年8月27日の定時株主総会(持株会社体制移行の承認可否)と、2026年10月上旬に予定される2027年5月期第1四半期決算です。コンサルティング事業のセグメント利益率が45%台を維持できているか、トヨタ自動車向けなど大口顧客の売上動向がどうなっているかを、あわせて確認することをおすすめします。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- コンサルティング事業のセグメント利益率が45%を明確に下回る水準まで低下した場合(2026年5月期は45.48%)。中途採用による増員コストが構造的な下押し要因になっていることを意味し、「利益率はほぼ横ばい」という本記事の整理が崩れる。
- 2027年5月期の実績営業利益がIFRSベースの会社予想4,830百万円を大きく下回った場合。増収ペース(会社予想+39.8%)に対して増益ペースが緩やかになるという計画の是非が検証される。
- トヨタ自動車向け売上(2,313.7百万円、2026年5月期の全社売上の20.1%)が減少し、代替できる新規大口顧客を確保できなかった場合。特定顧客への依存というリスクが顕在化する。
- 2026年8月27日の定時株主総会で持株会社体制移行の議案が否決される、または2026年12月1日予定の会社分割が延期・撤回された場合。会社の組織再編計画そのものの前提が崩れる。
- AI事業が再びセグメント損失に転落した場合(2026年5月期はセグメント利益234.3百万円で黒字転換)。今期の黒字化が一過性だった可能性が高まる。
よくある質問
- グロービングの2026年5月期の営業利益率上昇は、AI事業の黒字化によるものですか?
- いいえ。セグメント情報を分解すると、連結営業利益の増加額1,341.7百万円のうち約97%(+1,299.0百万円)は コンサルティング事業の増収によるもので、AI事業の黒字転換(+336.1百万円)は全社共通費用の増加 (△293.4百万円)とほぼ相殺されています。利益率上昇の主因はAI事業ではなく、ほぼ横ばいの利益率のまま コンサルティング事業が拡大したことです。
- グロービングの配当はいくらですか?
- 2026年5月期に上場後初めての配当を実施し、期末16.10円(配当性向15.9%)でした。支払開始予定日は 2026年8月13日です。2027年5月期の会社予想は中間14.20円・期末21.40円の合計35.60円 (予想配当性向30.0%)で、配当性向を引き上げていく方針が読み取れます。
- グロービングは社名が変わるのですか?
- 2026年7月15日付の決算短信で、2026年12月1日に持株会社体制へ移行し、商号を「グロービング株式会社」から 「WAOホールディングス株式会社」に変更する会社分割を決議したと公表しています。コンサルティング事業・ AI事業は新設する吸収分割準備会社(同日付で「グロービング株式会社」に商号変更予定)が承継する計画で、 2026年8月27日開催の定時株主総会での承認が条件です。
参考文献・引用元
- 01グロービング株式会社「2026年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年7月15日公表。連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益、 EPS・潜在株式調整後EPS、ROE、総資産経常利益率、売上高営業利益率)、連結財政状態(総資産・純資産・ 自己資本比率・BPS)、連結キャッシュ・フロー(営業・投資・財務CF、現金同等物期末残高)、 配当の状況(2025年5月期実績・2026年5月期実績・2027年5月期会社予想)、セグメント情報 (コンサルティング事業・AI事業の外部売上高・セグメント利益、調整額)、2027年5月期の連結業績予想 (IFRS基準)、株式分割の経緯、後発事象(持株会社体制移行・会社分割・商号変更の決議、主要顧客として トヨタ自動車を新たに開示)を参照。 / 2026/07/15 開示
- 02IR BANK「グロービング(277A) 決算まとめ」
二次情報。2023年5月期・2024年5月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益の参照に使用(原本の 決算短信は本記事では未確認)。なお同サイトが集計する2026年5月期の営業利益・純利益は決算短信の実際の 数値(41億42百万円・30億52百万円)とそれぞれ数%食い違っていたため、2025年5月期・2026年5月期の 数値は本記事では決算短信の値を優先して使用している。
- 03
当サイト銘柄データベース「グロービング(277A)」株価スナップショット
2026年8月23日時点の株価1,846円・時価総額約530億円を参照。同時点のPER・PBRは、この株価と 決算短信記載のEPS実績107.17円・BPS282.12円から本記事で計算し直しており、算出結果は いずれも整合していることを確認した。