マツオカコーポレーション(3611) 為替差益で膨らむ増益、本業は営業減益の四半期
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
株式会社マツオカコーポレーション
2026/08/23 時点
株価
2,456円
時価総額
257.84億円
配当利回り
4.68%
年間115円
PER
7.6倍
PBR
0.65倍
ROE
8.5%
ROA
4.2%
純利益ベース
自己資本比率
51.1%
配当性向
35.5%
有利子負債
158億円
D/Eレシオ
0.40倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は売上高18,958百万円(前年同期比+11.8%)、営業利益148百万円(同△28.4%)、経常利益1,113百万円(同+45.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益549百万円(同+63.1%)でした。経常・純利益は大幅増益ですが、伸びの主因は財務取引に伴う為替差益の拡大(前年同期△354百万円→当期+187百万円)で、本業の実力値を示す会社独自指標「為替差損益調整後営業利益」は850百万円(同△21.7%)と減益でした。
- セグメント別では、連結売上の87%を占める縫製事業がベトナム・インドネシア・バングラデシュでの増産により増収増益(セグメント利益+47.1%)だった一方、13%を占めるラミネーションフィルム事業は中国市場の低迷でセグメント利益が△66.6%と急減しました。連結営業利益の減益は、このラミネーションフィルム事業の落ち込みと、縫製事業における新設ラインの先行コストが主因です。
- 通期計画(経常利益4,900百万円、前期比△9.1%)は2026年5月14日公表から据え置かれています。当第1四半期時点で経常利益は通期計画の22.7%に達している一方、営業利益は同計画のわずか4.4%にとどまり、本業の進捗は鈍いままです。据え置きを保守的な見積もりと読むか、下期の反動を織り込んだ現実的な見積もりと読むかは分かれます。
- 2026年8月23日時点の株価2,456円に対し、PER7.59倍(会社予想EPS基準)・PBR0.65倍(前期末BPS基準)、予想配当利回り4.68%(会社予想配当115円基準)という水準です。有利子負債は前期末14,515百万円から当第1四半期末15,810百万円に増加し、D/Eレシオも0.36倍から0.40倍に上昇しました。この水準が薄利なOEM構造とセグメント間の明暗を織り込んだ結果なのか、一時的な要因による評価の遅れなのかが判断の分かれ目です。
目次11項目
1. 概要
マツオカコーポレーションの2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は、売上高18,958百万円(前年同期比+11.8%)、営業利益148百万円(同△28.4%)、経常利益1,113百万円(同+45.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益549百万円(同+63.1%)でした。経常利益・純利益だけを見れば大幅増益ですが、営業利益は減益であり、この符号のねじれこそがこの会社の当第1四半期を読み解く鍵になります(詳細は4節)。
2026年8月23日終値2,456円に対して、PER7.59倍(会社予想EPS323.85円ベース)・PBR0.65倍(2026年3月期末BPS3,804.18円ベース)・予想配当利回り4.68%(会社予想配当115円ベース)という水準です。自己資本比率は当第1四半期末で51.1%(前期末53.1%)、ROE8.51%(予想)・ROA4.15%(予想、純利益÷総資産ベース)となっています。
マツオカコーポレーションは自社ブランドや店舗を持たず、アパレル製品の縫製を受託するOEM専業メーカーです。ベトナム・インドネシア・バングラデシュなど東南アジアの自社工場での増産が主力の縫製事業を支える一方、子会社が手がけるラミネーションフィルム事業は中国市場の低迷に直面しています。このセグメント間の明暗と、経常利益・純利益の増益を作った為替差損益の中身、そして大幅増益にもかかわらず据え置かれた通期計画という3つの論点を、順に整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
マツオカコーポレーションは、取引先ブランドからの発注を受けて衣料品を製造する縫製OEM(相手先ブランドによる受託製造)を主力事業とする会社です。ベトナム・インドネシア・バングラデシュなどに自社工場を持ち、カジュアルウェアやワーキングウェア(ファン付きウェアを含む)を中心に生産しています。もう一つの事業の柱が、子会社を通じて手がけるラミネーションフィルム(防水透湿フィルムなど)事業で、当第1四半期の連結売上高18,958百万円のうち、縫製事業が16,585百万円(87.5%)、ラミネーションフィルム事業が2,372百万円(12.5%)を占めます。
自社ブランドを展開する小売企業とは異なり、マツオカコーポレーションの業績は最終消費者の購買動向よりも、取引先企業からの発注量、海外生産拠点の人件費、そして為替レートに直接連動する構造です。
強みと弱みの整理
強み
東南アジアでの増産余力と受注の堅調さ
当第1四半期の縫製事業は、ベトナム・インドネシア・バングラデシュでの生産ライン増設と人員拡充により販売枚数が前年同期比+12.0%(1,418万枚)となり、売上高16,585百万円(同+16.2%)、セグメント利益1,278百万円(同+47.1%)と増収増益でした。カジュアルウェア・ワーキングウェアの受注が堅調に推移しています。
経常利益・純利益の伸び率は大きい
当第1四半期の経常利益は1,113百万円(前年同期比+45.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は549百万円(同+63.1%)でした。ただし伸びの中身は4節で詳しく見るとおり、財務取引に伴う為替差益の拡大が大きく寄与しており、単純に評価してよいかは検討が必要です。
増配が続く配当方針
2027年3月期の会社予想配当は年115円で、前期実績100円(普通90円+記念配当10円)から15円の増配です。配当性向は過去5期を通じておおむね20〜35%のレンジで、無理な水準ではありません(詳細は5節)。
弱み
本業の実力値は減益基調
営業利益は148百万円(前年同期比△28.4%)、会社独自指標「為替差損益調整後営業利益」(本業の実力値)も850百万円(同△21.7%)と、いずれも減益です。経常利益・純利益の増益は本業の改善によるものではありません。
ラミネーションフィルム事業の急減益
連結売上の12.5%を占めるラミネーションフィルム事業は、中国市場の低迷と需要回復の遅れを受け、当第1四半期の売上高が2,372百万円(前年同期比△11.8%)、セグメント利益は116百万円(同△66.6%)と急減しました。
有利子負債の増加と自己資本比率の低下
有利子負債は前期末14,515百万円から当第1四半期末15,810百万円に増加し、自己資本比率は前期末53.1%から当第1四半期末51.1%へ低下しました。棚卸資産の積み増しなど運転資金の増加が背景にあります(詳細は6節)。
3. 業績の推移
過去5期の実績と、会社が示す2027年3月期の予想です。
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 51,056 | 181 | 1,037 | 559 |
| 2023/03 | 62,778 | 67 | 3,202 | 1,676 |
| 2024/03 | 60,176 | 792 | 4,493 | 2,457 |
| 2025/03 | 70,579 | 433 | 4,199 | 2,600 |
| 2026/03 | 74,251 | 2,174 | 5,391 | 3,117 |
| 2027/03会社予想 | 80,000 | 3,400 | 4,900 | 3,400 |
読み取れることは3つあります。
利益の振れ幅が売上高よりはるかに大きい。 売上高は2022年3月期の51,056百万円から2026年3月期の74,251百万円まで、多少の凸凹はありつつも概ね拡大基調です。一方、営業利益は2022年3月期181百万円→2023年3月期67百万円(△63.0%)→2024年3月期792百万円(+1,082%)→2025年3月期433百万円(△45.3%)→2026年3月期2,174百万円(+402.1%)と、期によって数倍〜数分の1に振れています。薄い営業利益率(1%未満の期もある)のため、わずかな費用や為替の変動が伸び率を大きく動かす構造です。
経常利益は営業利益より安定して高い水準にある。 2022年3月期1,037百万円から2026年3月期5,391百万円まで、営業利益ほどの乱高下はなく右肩上がりに近い推移です。これは、後述するように営業外収益に計上される為替差益が継続的に発生していることが背景にあり、裏を返せば本業(営業利益)の実力と、決算書に表れる利益水準(経常利益)にギャップがある会社だということでもあります。
2027年3月期予想は増収・営業増益・経常減益という珍しい組み合わせ。 売上高は+7.7%、営業利益は+56.3%の増益を見込む一方、経常利益は△9.1%の減益予想です。前期(2026年3月期)に経常利益を押し上げた為替差益が今期は縮小する、あるいは為替前提を保守的に置いていることを示唆しています。
4. 為替差益で膨らむ増益と、動かない通期計画
当第1四半期の営業利益は148百万円(前年同期比△28.4%)と減益でした。それにもかかわらず経常利益が1,113百万円(同+45.5%)、純利益が549百万円(同+63.1%)と大幅増益になったのは、営業外収益に計上される為替差損益が膨らんだためです。
為替差損益の内訳を見ると、その中身がはっきりします。当第1四半期の為替差損益合計は889百万円(前年同期524百万円、+69.6%)でしたが、これは2つの異なる性質の差損益で構成されています。輸出入など営業取引から生じる為替差損益は702百万円(前年同期879百万円、△20.1%)とむしろ減少しました。一方、財務取引(外貨建ての資金調達・運用など)から生じる為替差損益は、前年同期の△354百万円(差損)から当期は+187百万円(差益)へと541百万円振れています。会社独自指標「為替差損益調整後営業利益」(営業利益に営業取引由来の為替差損益を加減算し、本業の実力値を示す指標として会社が開示)は、当第1四半期850百万円(前年同期比△21.7%)で、こちらも減益です。つまり、経常利益・純利益の増益は、事業活動そのものの改善ではなく、財務取引に伴う為替差益の振れという、性質上変動が大きい要因によって作られています。
進捗率で見ても、この非対称さは表れています。通期計画(経常利益4,900百万円)に対する当第1四半期の進捗率は22.7%(1,113百万円÷4,900百万円)である一方、通期計画(営業利益3,400百万円)に対する進捗率はわずか4.4%(148百万円÷3,400百万円)にとどまります。四半期ごとに均等に利益が積み上がるわけではないため単純な比較はできませんが、経常段階と営業段階でこれほど進捗率が乖離している点は、増益の中身を評価するうえで無視できません。
もう一つの論点が、この大幅増益にもかかわらず通期計画が据え置かれていることです。会社は2026年5月14日に公表した通期業績予想(売上高80,000百万円、営業利益3,400百万円、経常利益4,900百万円、純利益3,400百万円)を、当第1四半期決算でも修正していません。経常利益4,900百万円は前期(2026年3月期)実績5,391百万円に対して△9.1%の減益予想です。当第1四半期の好調な滑り出しにもかかわらず計画を据え置いた背景としては、財務取引の為替差益が今後も同じペースで発生する保証がないこと、縫製事業における新設ラインの先行コストが下期も続く可能性があること、ラミネーションフィルム事業の回復時期が見通しにくいことなどが考えられますが、会社は具体的な理由を開示していません。保守的に見積もった結果なのか、下期の実態を織り込んだ現実的な計画なのかは、次回以降の決算で進捗を確認しないと判断できません。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 40円 | 70.1% |
| 2023/03 | — | 40円 | 23.5% |
| 2024/03 | — | 50円 | 20.3% |
| 2025/03 | — | 90円 | 34.7% |
| 2026/03 | — | 100円 | 33.5% |
| 2027/03会社予想 | 115円 | 115円 | 35.5% |
- 2026/03:期末一括配当。内訳は普通配当90円+記念配当10円。
- 2027/03:2026年5月14日公表の期初予想から修正なし(当第1四半期決算短信の時点)。中間配当は実施しない期末一括方式。
2027年3月期の会社予想配当は年115円(期末一括、中間配当なし)で、2026年5月14日公表の期初予想から修正はありません。前期(2026年3月期)実績100円(普通配当90円+記念配当10円)と比べると15円の増配です。配当性向は2022年3月期70.1%、2023年3月期23.5%、2024年3月期20.3%、2025年3月期34.7%、2026年3月期33.5%、2027年3月期予想35.51%と期によってばらつきがありますが、直近は30%台前半〜半ばで概ね安定しています。
配当は期末に一括して支払う方式で、中間配当は実施していません。過去の配当実績を見ると、2022年3月期40円から2026年3月期100円まで一貫して増配が続いており、減配した期はありません。ただし、2026年3月期実績100円には記念配当10円が含まれているため、普通配当だけで見た増配ペース(90円→予想115円)とは区別して捉える必要があります。
予想配当利回り4.68%は、会社が開示した2027年3月期予想配当115円を基準にした数字で、当サイトが扱う高配当銘柄の目安(3%以上)を上回る水準です。ただし4節で見たとおり、直近の増益は財務取引の為替差益に依存する部分が大きく、この利益水準がそのまま今後も続くかどうかは不確実性があります。
6. 会社の現状と直近の動き
当第1四半期の内容をセグメント別にもう一段分解します。
縫製事業は当第1四半期の売上高16,585百万円(前年同期比+16.2%)、セグメント利益1,278百万円(同+47.1%)でした。ベトナム、インドネシア、バングラデシュで生産ラインの増設と人員拡充を進め、販売枚数は前年同期比+12.0%の1,418万枚となりました。カジュアルウェアの受注が増加したほか、ファン付きウェアの需要拡大を背景にワーキングウェアの受注も堅調でした。会社は、生産性向上の途上にある新設ラインの先行コストにより、増益幅が売上高の伸びに比べて緩やかになったと説明しています。
ラミネーションフィルム事業は当第1四半期の売上高2,372百万円(前年同期比△11.8%)、セグメント利益116百万円(同△66.6%)でした。中国における市場環境の低迷や需要回復の遅れが影響し、販売数量は前年同期比△14.1%の374万ヤードにとどまりました。
財政状態は次のとおりです。
| 項目 | 2026年3月期末 | 2027年3月期第1四半期末(2026年6月末) |
|---|---|---|
| 総資産 | 75,174百万円 | 78,266百万円 |
| 純資産 | 43,558百万円 | 43,689百万円 |
| 自己資本比率 | 53.1% | 51.1% |
| 有利子負債 | 14,515百万円 | 15,810百万円 |
| D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本) | 0.36倍 | 0.40倍 |
出典:決算短信「財政状態」、有利子負債は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金・転換社債型新株予約権付社債の合計
有利子負債は当第1四半期に1,295百万円増加しました。決算短信の説明によれば、資産側では棚卸資産が2,234百万円、有形固定資産が639百万円増加しており、負債側では支払手形及び買掛金が2,341百万円、短期借入金が1,531百万円増加した一方、賞与引当金が620百万円、未払法人税等が351百万円、長期借入金が301百万円それぞれ減少しています。棚卸資産の積み増しと短期借入金の増加が対応しており、増産を支える運転資金の需要が有利子負債とD/Eレシオを押し上げた形です。自己資本比率51.1%・D/Eレシオ0.40倍は引き続き財務上大きな懸念がある水準ではありませんが、前期末からの低下・上昇トレンドは、増産投資が一段落するまで続く可能性があります。
会社は通期業績予想を据え置いています(売上高80,000百万円・営業利益3,400百万円・経常利益4,900百万円・純利益3,400百万円、いずれも変更なし)。
7. 業界とセクターの状況
アパレル・衣料品業界には、個社の努力では変えられない構造的な制約があります。天候(猛暑・暖冬)が季節商品の販売を左右すること、綿花・化学繊維などの原材料価格の変動、生産をアジアに置くことによる為替感応度、可処分所得や値上げ耐性の変化などです。
ただし、マツオカコーポレーションはSPA(製造小売)型の小売企業とは異なる位置づけにあります。自社の店舗を持たないため、天候が自社の売上に直接響くのではなく、あくまで取引先ブランドの店頭での販売動向を通じて、発注量という形で間接的に影響します。一方で、東南アジアに生産拠点を集中させていることから、生産拠点の人件費上昇と為替変動の影響は、SPA企業以上に直接的です。当第1四半期の経常利益・純利益の増益が財務取引の為替差益によって作られていたこと(4節)は、この会社が為替の影響を強く受ける構造にあることの表れでもあります。
このセクターの中でマツオカコーポレーションが置かれている立場は、川下(店舗・ブランド)ではなく川上(生産受託)にあるという点で、しまむらやファーストリテイリングのような小売・SPA企業とは業績変動の主因が異なります。天候リスクではなく、取引先の発注動向・生産拠点の人件費・為替という3つが、この会社の業績を動かす主な変数です。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
会社は決算発表の予定日を公表していないため、いずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
通期計画(経常利益4,900百万円、前期比△9.1%)への進捗を確認できる。当第1四半期の経常利益進捗率は22.7%で、上期累計でどこまで積み上がるかが最初の判断材料になる。
当第1四半期の経常利益・純利益の増益は、財務取引に伴う為替差益の拡大(前年同期△354百万円→当期+187百万円)が主因だった。為替が反対方向に振れれば、この押し上げ効果は反転しうる。
ベトナム・インドネシア・バングラデシュで増設した生産ラインが軌道に乗れば、増収(+16.2%)に対して緩やかだった増益ペース(セグメント利益+47.1%)が改善する可能性がある。
当第1四半期はセグメント利益が△66.6%と急減した。中国の需要回復が確認できれば、連結営業利益の重荷が軽くなる。
10. 想定されるリスク
財務取引の為替差益への依存。 当第1四半期の経常利益・純利益の増益は、財務取引に伴う為替差益の拡大(前年同期△354百万円→当期+187百万円)によって作られました。この種の差益は為替相場の動き次第で反転しうる性質のもので、継続的な収益源として見込めるかどうかは不透明です。2節で挙げた「経常利益・純利益の伸び率の大きさ」という強みの裏返しにあたるリスクです。
ラミネーションフィルム事業の回復時期が見通せない。 連結売上の12.5%を占めるこの事業は、当第1四半期にセグメント利益が△66.6%と急減しました。中国市場の需要回復の遅れが要因とされていますが、回復時期について会社は具体的な見通しを示していません。
縫製事業の増益ペースが売上の伸びに追いついていない。 販売枚数+12.0%・売上高+16.2%に対し、セグメント利益は+47.1%と大きく見えますが、これは前年同期の水準が低かったことも影響しており、新設ラインの先行コストが今後も利益率を圧迫し続ける可能性があります。
有利子負債の増加と自己資本比率の低下トレンド。 前期末53.1%から当第1四半期末51.1%へ、自己資本比率は2.0ポイント低下しました。棚卸資産の積み増しに伴う運転資金需要が主因と見られますが、増産投資が今後も続けば、この低下トレンドがさらに進む可能性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
事実として確定しているのは次の点です。2027年3月期第1四半期は経常利益+45.5%・純利益+63.1%の大幅増益だが、営業利益は△28.4%の減益で、本業の実力値を示す為替差損益調整後営業利益も△21.7%の減益だった。増益の主因は財務取引に伴う為替差益の拡大である。セグメント別では縫製事業が増収増益、ラミネーションフィルム事業が大幅減益と明暗が分かれた。通期計画(経常利益4,900百万円、前期比△9.1%)は据え置かれたままである。
財務取引の為替差益を一時的な要因と割り引き、本業(為替差損益調整後営業利益△21.7%)の減益を実態と見るなら、PER7.59倍・PBR0.65倍という水準は、収益性の低下を織り込んだ結果として説明がつきます。 ラミネーションフィルム事業の不振が続く限り、この評価が大きく変わる材料は乏しいという見方です。
一方、縫製事業の増産投資が軌道に乗り、新設ラインの先行コストが一巡すれば増益ペースが売上の伸びに追いつくと見るなら、この株価は東南アジアでの生産能力拡大という成長ドライバーをまだ十分に織り込んでいない水準とも言えます。 経常利益・純利益の伸び率の大きさをどこまで額面どおりに評価するかが、この見方を左右します。
判断の分かれ目は、財務取引の為替差益による増益を一時的なノイズと見るか、それとも会社の収益力の一部として織り込むか、そして縫製事業の増産投資がいつ利益に結びつくかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬(予定)の第2四半期決算で、通期計画(経常利益4,900百万円、前期比△9.1%)への進捗と、ラミネーションフィルム事業の回復兆候の有無が最初の材料になります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 通期計画(経常利益4,900百万円、前期比△9.1%)が2026年11月頃(予定)の第2四半期決算までに上方修正されず、それでいて上期の進捗が計画に対して大きく遅れている場合。当第1四半期時点の経常利益進捗率は22.7%(1,113百万円÷4,900百万円)。
- 本業の実力値を示す為替差損益調整後営業利益(当第1四半期850百万円・前年同期比△21.7%)が今後複数四半期にわたり前年割れを続け、通期予想5,300百万円(前期比+10.1%)との乖離が拡大した場合。
- ラミネーションフィルム事業(連結売上の13%、当第1四半期セグメント利益△66.6%)の落ち込みが縫製事業(同87%)にも波及し、連結営業利益率の低迷が複数四半期続いた場合。
- 有利子負債が当第1四半期末15,810百万円(D/Eレシオ0.40倍)からさらに増加を続け、自己資本比率が当第1四半期末51.1%を下回って継続的に低下した場合。
よくある質問
- マツオカコーポレーションの配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の会社予想配当は年115円(期末一括、中間配当なし)です。100株保有なら年間11,500円(税引前)になります。前期(2026年3月期)実績は普通配当90円+記念配当10円の合計100円だったので、15円の増配にあたります。
- なぜ経常利益・純利益が大幅増益なのに、営業利益は減益なのですか?
- 2027年3月期第1四半期は営業利益が前年同期比△28.4%だった一方、経常利益は+45.5%、純利益は+63.1%でした。差を生んでいるのは営業外損益に計上される為替差損益です。財務取引に伴う為替差損益が前年同期の△354百万円から当期は+187百万円へと541百万円振れ、経常利益を押し上げました。本業の実力値を示す会社独自指標「為替差損益調整後営業利益」で見ると850百万円(前年同期比△21.7%)と減益で、表面の増益と本業の実態は逆方向です。
- マツオカコーポレーションのPER・PBRが低いのはなぜですか?
- 2026年8月23日時点でPER7.59倍・PBR0.65倍という水準です。理由を1つに断定はできませんが、材料としては、自社ブランド・店舗を持たない受託製造(OEM)で営業利益率が1〜3%台と薄いこと、連結売上の13%を占めるラミネーションフィルム事業が中国市場の低迷でセグメント利益△66.6%と急減していること、直近の増益が財務取引の為替差益に依存していることが挙げられます。この水準が妥当かどうかは、縫製事業の増産効果とラミネーションフィルム事業の回復力をどう評価するかで分かれます。
参考文献・引用元
- 01株式会社マツオカコーポレーション「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月7日開示(TDnet)。連結経営成績(累計)、財政状態、配当の状況、通期業績予想、セグメント情報、四半期連結損益計算書・貸借対照表、発行済株式数を参照した。 / 2026/08/07 開示
- 02IR BANK「マツオカコーポレーション(3611) 決算まとめ」
2022年3月期〜2027年3月期予の通期業績(売上高・営業利益・経常利益・純利益)、ROE・ROA・営業利益率、財務状況(総資産・純資産・自己資本比率・BPS)の時系列を、二次情報として参照した。決算短信の実績値と整合することを確認済み。ROAは純利益÷総資産ベース。有利子負債は決算短信の内訳積み上げ値(短期借入金+1年内返済予定の長期借入金+長期借入金+転換社債型新株予約権付社債)を優先して採用した。
- 03IR BANK「マツオカコーポレーション(3611) 配当金の推移」
2022年3月期〜2027年3月期の配当実績・配当性向の時系列を、二次情報として参照した。