ファーストリテイリング(9983) 海外ユニクロ増益の裏で進む単一ブランド依存とグレーターチャイナ集中
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
株式会社ファーストリテイリング
2026/08/04 時点
株価
78,700円
時価総額
250,439億円
配当利回り
0.81%
年間640円
PER
48.3倍
PBR
8.85倍
ROE
18.3%
ROA
11.3%
純利益ベース
自己資本比率
61.6%
配当性向
39.3%
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2026年8月期第3四半期累計は売上収益3,065,182百万円(前年同期比+17.1%)、営業利益614,389百万円(同+36.2%)と大幅な増収増益。通期予想も上方修正され、営業利益は730,000百万円(前期比+29.4%)を見込む。牽引役は海外ユニクロ事業で、同事業の3四半期累計営業利益は前年同期比+46.3%。
- 一方、地域別売上構成比を見ると日本は30.6%から28.3%へ低下し、グレーターチャイナは単独で18.3%を占める最大級の地域集中先になっている。ユニクロとジーユーの2ブランドで売上の96.8%を占め、非ユニクロ・非ジーユーのグローバルブランド事業は3.1%まで縮小した。海外化と特定ブランド・特定地域への集中が同時に進んでいる。
- 配当は期初予想520円から現時点640円へ増額(+23%)されている。過去の期でも期中に増額修正するパターンが繰り返されており、予想配当利回り0.81%という数字自体は高くないが、増配のペースは速い。
- PER48.3倍・PBR8.85倍という水準は、過去レンジ(2010〜2025年でPBR2.52〜10.11倍、PER15.4〜107.57倍)の中では極端な高値ではないが、成長を相応に織り込んだ水準ではある。海外ユニクロの高成長を今後も評価し続けられるかどうかと、グレーターチャイナの地政学リスクをどう織り込むかが、判断の分かれ目になる。
目次11項目
1. 概要
ファーストリテイリングの2026年8月期第3四半期累計(2025年9月〜2026年5月)は、売上収益3,065,182百万円(前年同期比+17.1%)、営業利益614,389百万円(同+36.2%)でした。この結果を受けて通期予想も上方修正され、売上収益3,970,000百万円(前期比+16.7%)、営業利益730,000百万円(前期比+29.4%)を見込んでいます。
2026年8月4日時点の株価78,700円に対して、PER48.3倍(会社予想EPSベース)・PBR8.85倍・ROE18.33%(予想)・予想配当利回り0.81%(会社予想配当640円ベース)という水準です。ROA11.28%は純利益÷総資産ベースの数字です(同社はIFRS会計基準を採用しており、日本基準の「経常利益」に相当する開示はありません)。
指標だけを見ると、増収増益・増配が続く成長企業に見えます。実際、この記事で見る限りその評価は妥当です。ただし業績を牽引しているのは海外ユニクロ事業に集中しており、地域別に売上を分解すると、日本の構成比が年々下がる一方でグレーターチャイナが最大級の地域リスクとして残り、ユニクロ・ジーユー以外の事業(グローバルブランド事業)は縮小を続けています。海外ユニクロの高成長は、同時に特定ブランド・特定地域への依存の裏返しでもある、というのがこの記事の中心的な論点です(詳細は4節)。
2. 会社概要とビジネスモデル
ファーストリテイリングは、「ユニクロ」「ジーユー」を中核とする、企画・製造・販売を一貫して手がけるSPA(製造小売業)です。原材料調達から店舗・ECでの販売までを自社で管理する分、天候・為替・原材料相場といった外部要因が業績に直結しやすいビジネスモデルでもあります。
セグメントは4つに分かれます。2026年8月期第3四半期累計の実績は次のとおりです(金額は営業利益ベース)。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 国内ユニクロ事業 | 867,690百万円 | +8.3% | 173,346百万円 | +15.1% |
| 海外ユニクロ事業 | 1,834,026百万円 | +25.9% | 351,934百万円 | +46.3% |
| ジーユー事業 | 265,668百万円 | +3.7% | 33,210百万円 | +26.1% |
| グローバルブランド事業 | 96,313百万円 | -4.2% | 3,014百万円 | +5.2% |
| 連結合計 | 3,065,182百万円 | +17.1% | 614,389百万円 | +36.2% |
出典:2026年8月期 第3四半期決算短信「セグメント情報」注記
海外ユニクロ事業は単体で連結売上収益の59.8%、連結営業利益の57.3%を占め、すでにグループ最大のセグメントです。国内ユニクロ・ジーユー・グローバルブランド事業の3つを合計しても、海外ユニクロ1事業の規模に届きません。
強みと弱みの整理
強み
海外ユニクロ事業の高成長・高収益化
第3四半期累計の営業利益は351,934百万円(前年同期比+46.3%)で、売上収益の伸び(+25.9%)を大きく上回っています。営業利益率は19.2%(前年同期16.5%)へ改善しており、規模拡大と収益性向上が同時に進んでいます。
ジーユー事業の効率化
品番数の削減と在庫適正化により、店舗オペレーションの効率化が進み、人件費比率を中心にコストが改善しました。売上収益+3.7%に対し事業利益は+28.0%(会社の定性説明による事業利益ベース)と、増収率を上回る増益を確保しています。
財務健全性の高さ
2026年5月末時点の親会社所有者帰属持分比率は61.6%(2025年8月末58.9%から改善)。現金及び現金同等物の期末残高は1兆1,320億円あり、店舗網の拡大や研究開発、株主還元を賄う体力は厚いといえます。
弱み
非ユニクロ・非ジーユー事業の継続的な縮小
グローバルブランド事業(セオリー、プラステ、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タムなど)の第3四半期累計売上収益は96,313百万円(前年同期比-4.2%)、営業利益率はわずか3.1%です。特にコントワー・デ・コトニエ/プリンセス タム・タム事業は不採算店舗の集約で店舗数を144店から77店へほぼ半減させました。ユニクロ以外への多角化という選択肢が縮んでいる状態です。
グレーターチャイナへの地政学的エクスポージャー
地域別売上のうちグレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)は560,839百万円、構成比18.3%を占めます。米中対立や現地の消費者感情といった、会社の経営努力では制御できない要因が業績に直結する構造です。
海外比率拡大に伴う為替感応度の高まり
海外売上構成比は71.7%(連結3,065,182百万円のうち海外2,197,492百万円)に達しています。今回の通期業績予想の修正でも「第4四半期の前提為替レートを足元の実勢に合わせて修正したこと」が理由の一つに挙げられており、円相場の変動が業績予想そのものを動かす主要因になっています。
3. 業績の推移
過去5期の実績と、会社が示す2026年8月期の予想です。
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2021/08 | 2,008,800 | 249,000 | — | 169,800 |
| 2022/08 | 2,132,900 | 297,300 | — | 273,300 |
| 2023/08 | 2,301,100 | 381,100 | — | 296,200 |
| 2024/08 | 2,766,500 | 500,900 | — | 372,000 |
| 2025/08 | 3,400,539 | 564,265 | — | 433,009 |
| 2026/08会社予想 | 3,970,000 | 730,000 | — | 500,000 |
読み取れることは3つあります。
売上は6期連続で二桁成長が続いている。 2023年8月期から2024年8月期にかけて+20.2%、2024年8月期から2025年8月期にかけて+22.9%、2026年8月期の予想でも+16.7%です。一時的な特需ではなく、複数期にわたる継続的な成長です。
利益の伸び方には波がある。 営業利益は2023年8月期から2024年8月期にかけて+31.4%と大きく伸びましたが、2024年8月期から2025年8月期にかけては+12.7%へ鈍化しました。売上高営業利益率で見ると18.1%(2024年8月期)から16.6%(2025年8月期)へ一時的に低下しており、2026年8月期は+29.4%増益・利益率18.4%(予想)への回復を見込む形です。増収が続く一方で、利益率は毎期一律に改善しているわけではありません。
株価は成長を相応に織り込んだ水準にある。 PBR8.85倍は2010年以降のレンジ(2.52〜10.11倍)の中では上位に位置しますが、レンジの最大値ではありません。PER48.3倍(予想)も同じ期間のレンジ(15.4〜107.57倍)の中では中位から下寄りです。「割高」「割安」を単独で断定できる水準ではなく、この後の成長を市場がどこまで織り込むかという話になります。
4. ユニクロ単一ブランド依存とグレーターチャイナ集中
ここが本記事の中心です。地域別の売上収益(顧客所在地基準)を見ると、増収増益の裏側で進んでいる構造変化が見えてきます。
| 区分 | 当第3四半期累計 | 構成比 | 前年同期 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 867,690百万円 | 28.3% | 801,422百万円 | 30.6% |
| グレーターチャイナ | 560,839百万円 | 18.3% | 510,491百万円 | 19.5% |
| 韓国・東南アジア・インド・豪州 | 617,575百万円 | 20.1% | 469,223百万円 | 17.9% |
| 北米 | 268,164百万円 | 8.7% | 200,927百万円 | 7.7% |
| 欧州 | 387,447百万円 | 12.6% | 276,492百万円 | 10.6% |
| ユニクロ事業計 | 2,701,717百万円 | 88.1% | 2,258,558百万円 | 86.3% |
| ジーユー事業 | 265,668百万円 | 8.7% | 256,287百万円 | 9.8% |
| グローバルブランド事業 | 96,313百万円 | 3.1% | 100,586百万円 | 3.8% |
| 連結合計 | 3,065,182百万円 | 100% | 2,616,708百万円 | 100% |
出典:2026年8月期 第3四半期決算短信「収益」注記(地域別内訳)
1点目:日本の構成比が下がり続けている。 前年同期の30.6%から28.3%へ、2.3ポイント低下しました。これは日本事業が縮んでいるからではなく(国内ユニクロの当第3四半期累計売上収益は前年同期比+8.3%の増収です)、海外の伸びがそれ以上に速いために相対的な比重が下がっているということです。海外化はこの会社にとって既定路線であり、後戻りする動きは見えません。
2点目:グレーターチャイナが最大級の地域集中先になっている。 グレーターチャイナ単独で連結売上収益の18.3%を占めます。「韓国・東南アジア・インド・豪州」という複数国をまとめた区分(20.1%)に次ぐ規模で、北米(8.7%)・欧州(12.6%)を上回ります。直近四半期(3カ月間)は中国大陸・香港・台湾とも現地通貨ベースで増収・2桁増益と好調でしたが、これは業績面の話です。米中対立や現地の消費者感情の変化といった地政学リスクは、業績の良し悪しとは別の軸で存在し続けます。
3点目:ユニクロ・ジーユー以外の事業は縮小を続けている。 ユニクロとジーユーを合わせた構成比は96.8%(前年同期96.1%)まで上がり、残るグローバルブランド事業は3.1%(同3.8%)まで縮小しました。内訳を見ると、セオリー事業は現地通貨ベースで減収増益(米国事業中心に値引率が低下)、プラステ事業は増収増益(Eコマースが伸長)と踏みとどまっている一方、コントワー・デ・コトニエ/プリンセス タム・タム事業は減収が続き、不採算店舗の集約で店舗数を144店から77店へほぼ半減させました。会社として非ユニクロブランドを積極的に育てるのではなく、選別・縮小する方向にあることが読み取れます。
3点をまとめると、この会社の成長ドライバーは実質的に「海外ユニクロ事業の拡大」1点に集約されていると言えます。これは強みでもあります。経営資源を絞り込むことで海外ユニクロの営業利益率は19.2%まで改善しました(2節参照)。一方で弱みでもあります。グレーターチャイナのような特定地域で需要や規制の逆風が生じた場合、他のブランド・地域による分散効果が乏しく、業績への影響を吸収しにくい構造になっています。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2021/08 | 480円 | 480円 | 0円 | 28.9% |
| 2022/08 | 520円 | 620円 | +100円 | 23.2% |
| 2023/08 | 680円 | 290円 | -390円 | 30.0% |
| 2024/08 | 330円 | 400円 | +70円 | 33.0% |
| 2025/08 | 450円 | 500円 | +50円 | 35.4% |
| 2026/08会社予想 | 520円 | 640円 | — | 39.3% |
- 2023/08:2023年2月に普通株式1株を3株に分割している期。期初予想680円は分割前基準、実績290円は分割後基準の数字が混在しており、単純な前年比較はできない。
- 2026/08:期初予想520円から現時点の予想640円へ増額(+23%)。直近の第2四半期発表時点の予想からは変更なし。配当性向39.3%は会社予想EPS1,629.46円から算出した参考値(会社が配当性向を明示しているわけではない)。
2026年8月期の年間配当は、期初予想520円から現時点640円へ増額されています(+23%)。ただし直近の第2四半期決算発表時点の予想(中間320円・期末320円)からは変更がありません。増額はすでに第2四半期の時点で織り込まれていたということです。
過去の期を見ても、期初予想を上回って着地するパターンが続いています。2022年8月期は期初520円に対し実績620円、2024年8月期は期初330円に対し実績400円、2025年8月期は期初450円に対し実績500円でした。2023年8月期は株式分割(1株を3株に)を挟んでいるため単純比較はできませんが、それ以外の期はいずれも増額基調です。
予想配当利回り0.81%という数字自体は、当サイトが扱う高配当銘柄の水準(3%以上)には遠く及びません。この銘柄を検討する場合、利回りではなく増配率と株価成長の組み合わせで評価する対象になります。配当性向は会社予想EPSベースで39.3%程度(会社が明示した数字ではなく、公表されている配当予想とEPS予想からの参考値)で、無理のある水準ではありません。
6. 会社の現状と直近の動き
直近四半期(3カ月間)の内容をもう一段分解します。
国内ユニクロ事業は、直近四半期(3カ月間)の既存店売上高が前年同期比+9.9%でした。トレンドを反映したボトムスやUVカットパーカ、イージーパンツといった機能性商品が好調で、ゴールデンウイークや感謝祭商戦も伸びました。売上総利益率は前年並み、売上高販管費比率は1.5ポイント改善しています。
海外ユニクロ事業は出店ペースを維持しています。北米ではシカゴ旗艦店を含む大型店を6店舗、欧州では英ブリストル・オランダユトレヒトを含め4店舗を出店しました。韓国では明洞にグローバル旗艦店を開いています。グレーターチャイナ以外の地域でも積極的に店舗網を広げていることが分かります。
ジーユー事業は品番数の削減と在庫適正化を進め、店舗オペレーションの効率化が人件費比率を中心とした改善につながりました。
キャッシュ・フローの状況(第3四半期累計)は次のとおりです。営業キャッシュ・フローは+6,501億円(前年同期+4,271億円)で、税引前四半期利益の増加と減価償却等の増加が押し上げ要因、法人税等の支払いが押し下げ要因でした。投資キャッシュ・フローは-1,099億円(前年同期-3,723億円)で前年より支出は縮小、財務キャッシュ・フローは-3,719億円(前年同期-2,714億円)で社債償還700億円・配当金支払1,778億円・リース負債返済1,083億円が主な内訳です。現金及び現金同等物の期末残高は1兆1,320億円(前期末比+2,388億円)でした。
財政状態は次のとおり改善しています。
| 項目 | 2025年8月末 | 2026年5月末 |
|---|---|---|
| 資産合計 | 3,859,353百万円 | 4,432,387百万円 |
| 資本合計 | 2,327,501百万円 | 2,809,459百万円 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 58.9% | 61.6% |
| BPS | 7,408.65円 | 8,891.75円 |
出典:2026年8月期 第3四半期決算短信「財政状態」
なお、この第3四半期決算にあわせて通期業績予想も上方修正されました。理由は会社によれば「6月までの実績を反映したこと」と「第4四半期3カ月間の前提為替レートを足元の実勢に合わせて修正したこと」の2点です。
| 指標 | 前回予想(2026年4月9日公表) | 今回修正予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,900,000百万円 | 3,970,000百万円 | +1.8% |
| 営業利益 | 700,000百万円 | 730,000百万円 | +4.3% |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 480,000百万円 | 500,000百万円 | +4.2% |
出典:2026年8月期 第3四半期決算短信「業績予想の修正に関するお知らせ」
7. 業界とセクターの状況
アパレル・SPA業界は、いくつかの構造的な制約を個社の努力では変えられません。
原材料価格と為替の変動が原価に直接響く。 SPAモデルは素材調達から店舗販売までを自社で一貫して手がけるため、綿花・化学繊維の相場や仕入通貨(多くはドル建て)の変動を、価格転嫁できるまでの間、自社で吸収する必要があります。
天候リスクを避けられない。 猛暑・暖冬といった季節外れの気象は、季節商品の販売計画を直接崩します。店舗の固定費(賃借料・人件費)が重いビジネスのため、既存店売上高の増減が損益に大きく影響します。
グローバル展開する企業ほど、進出国の消費動向・関税・地政学リスクにさらされる。 ファーストリテイリングに限らず、H&M(スウェーデン)やインディテックス(ZARA、スペイン)、SHEIN(中国系)といった競合も同様の構造を抱えています。海外展開の規模が大きいほど、特定地域の逆風を業績全体で吸収する必要が生じます。
このセクターの中でファーストリテイリングの位置づけを見ると、海外ユニクロ事業の営業利益率19.2%は、グローバルなアパレル小売の中でも高い部類に入ります。一方で、これだけ海外比率を高めながら非ユニクロ・非ジーユーの多角化がほとんど進んでいない点は、同業他社と比べても際立った特徴です。多角化によるリスク分散よりも、単一ブランドへの経営資源集中を選んでいるとみることができます。
8. 今後のスケジュール
2026年8月期 通期 決算発表
通期予想(売上収益3,970,000百万円・営業利益730,000百万円)に対する着地と、2027年8月期の業績・配当予想が確認できる。
2027年8月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年8月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年8月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
通期決算発表日は会社が公表済みです。それ以降の四半期決算は過去の発表時期からの推定であり、確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
通期予想(営業利益730,000百万円、前期比+29.4%)に対する着地確認と、2027年8月期の会社予想・配当予想の初回開示。
直近の通期予想修正でも「第4四半期の前提為替レートを足元の実勢に合わせて修正」が理由の一つに挙げられている。海外売上構成比は71.7%に達しており、円相場の変動が業績予想を直接動かす。
直近四半期(3カ月間)は中国大陸・香港・台湾とも現地通貨ベースで増収・2桁増益だが、地政学リスクが顕在化すれば反転しうる、業績への影響が最も大きい単一地域。
直近四半期でシカゴ旗艦店を含む北米6店舗、英ブリストル・オランダユトレヒトを含む欧州4店舗を出店。グレーターチャイナ以外の地域分散が進めば、集中リスクの相対的な低下につながる。
10. 想定されるリスク
グレーターチャイナの地政学リスク。 単独で売上収益の18.3%を占める最大級の地域です。現状は好調ですが、米中対立の激化や現地の消費者感情の悪化といった、会社の経営努力では制御しにくい要因が業績に直結します。この記事で挙げた強みの裏返しとして、最も重い構造的リスクだと考えられます。
非ユニクロブランドの選択肢喪失。 グローバルブランド事業がこのまま縮小を続ければ、ユニクロ・ジーユー以外の収益源という「保険」を実質的に失うことになります。単一ブランドへの依存が強まるほど、そのブランドに逆風が吹いたときの代替手段が乏しくなります。
為替変動リスク。 海外売上構成比は71.7%に達しており、円高が進めば海外で稼いだ収益の円換算額が目減りします。今回の通期予想上方修正も為替前提の見直しが理由の一つであり、逆方向に振れれば下方修正の理由にもなり得ます。
バリュエーションの調整リスク。 PER48.3倍・PBR8.85倍は過去レンジの中で極端な水準ではないものの、高い成長率を前提にした株価です。海外ユニクロの成長率が鈍化した場合、業績の下振れ以上に株価が調整するリスクがあります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
事実として確定しているのは次の点です。2026年8月期第3四半期累計は増収増益で、通期予想も上方修正された。牽引役は海外ユニクロ事業で、営業利益率は19.2%まで改善している。一方で、日本の売上構成比は年々低下し、グレーターチャイナは単独で18.3%を占める最大級の地域リスクとなり、ユニクロ・ジーユー以外の事業は3.1%まで縮小した。
海外ユニクロ事業の高成長を今後も評価し続けられると見るなら、現在のPER48.3倍・PBR8.85倍は割高とは言い切れません。 営業利益率の改善が続いている限り、この成長ドライバーへの集中は合理的な経営資源配分と評価できます。
グレーターチャイナの地政学リスクや、非ユニクロブランドの縮小による分散効果の乏しさを重く見るなら、現在の株価は相応のリスクプレミアムを織り込んでいない水準に見えるはずです。 特定地域・特定ブランドへの依存度がここまで高い会社が、成長率鈍化以外の理由で株価調整を受けるとすれば、この経路が最も可能性が高いと考えられます。
判断の分かれ目は、海外ユニクロの高成長をどこまで先行きも織り込むか、そしてグレーターチャイナの地政学リスクをどの程度のディスカウント要因として見るかです。次の確認ポイントは2026年10月8日に予定される通期決算発表で、通期予想(営業利益730,000百万円、前期比+29.4%)への着地と、2027年8月期の会社予想・配当予想が最初の材料になります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- グレーターチャイナの既存店売上高が前年割れに転じ、地政学リスクや現地消費者感情の悪化が業績に明確に現れた場合。現状(2026年8月期第3四半期)は現地通貨ベースで中国大陸・香港・台湾とも増収・2桁増益。
- 通期業績予想(営業利益730,000百万円、前期比+29.4%)を大きく下回って着地した場合。特に、修正理由に挙げられた為替前提の見直しが裏目に出て円高が進んだ場合。
- 海外ユニクロ事業の営業利益率が悪化に転じた場合。現状は3四半期累計で19.2%(前年同期16.5%)へ改善しており、この改善トレンドが逆転すれば海外ユニクロ牽引という成長シナリオの前提が崩れる。
- グローバルブランド事業(非ユニクロ・非ジーユー)の縮小がさらに進み、事業ポートフォリオの分散という選択肢を事実上放棄した場合。現状すでに売上構成比3.1%まで縮小し、コントワー・デ・コトニエ/プリンセス タム・タム事業は店舗数を144店から77店へほぼ半減させている。
参考文献・引用元
- 01株式会社ファーストリテイリング「2026年8月期 第3四半期決算短信〔IFRS会計基準〕(連結)」
2026年7月9日開示。連結経営成績(累計)、財政状態、キャッシュ・フローの状況、配当の状況、通期業績予想の修正、セグメント情報および地域別収益の注記を参照した。IFRS会計基準のため経常利益は開示されていない(事業利益・営業利益・税引前四半期利益の3段階で開示)。financials.ordinaryIncomeを空欄にしているのはこのため。 / 2026/07/09 開示
- 02IR BANK「ファーストリテイリング(9983) 決算まとめ」
2021年8月期〜2026年8月期予の通期業績(売上収益・営業利益・親会社帰属当期利益・EPS・ROE・ROA)を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月5日時点の表示)。2025年8月期の売上収益は、この二次情報の表示値(約3兆1,038億円)と決算短信が開示する実績値(3,400,539百万円)に乖離があったため、一次情報である決算短信の数値を本文・financialsに採用した。
- 03IR BANK「ファーストリテイリング(9983)」株式情報
株価・時価総額・PER・PBR・ROE・ROA・自己資本比率、およびPBR・PERの過去レンジ(2010年以降)を、二次情報として参照した(2026年8月4日時点の表示)。
- 04IR BANK「ファーストリテイリング(9983) 配当金の推移」
2021年8月期〜2026年8月期の配当の期初予想・修正・実績・配当性向の履歴を集計した二次情報として参照した(2026年8月5日時点の表示)。