マツダ(7261) 営業損益が赤字から黒字に転換したQ1、通期+190.8%増益予想の前提
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
マツダ株式会社
2026/09/25 時点
株価
1,150円
時価総額
7,254億円
配当利回り
4.78%
年間55円
PER
8.1倍
PBR
0.38倍
ROE
4.7%
ROA
2.0%
純利益ベース
自己資本比率
43.3%
配当性向
38.5%
有利子負債
8,429億円
D/Eレシオ
0.44倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結営業利益は328億円で、前年同期の▲461億円の赤字から789億円改善し黒字に転換した。純利益も▲421億円の赤字から296億円の黒字へ717億円改善している。
- 増益要因の内訳は、台数・構成+434億円(うち関税影響+203億円)・為替+413億円・原材料費及び物流費等▲240億円・コスト改善+157億円・成長投資▲98億円・固定費他+123億円で、関税影響は今回はプラス要因として明記されている。
- 本サイトで既出のトヨタ自動車・本田技研工業・SUBARUと比べると、4社の中でマツダだけが営業損益段階での赤字から黒字への転換を実現しており、振れ幅の大きさも際立つ。ただし通期予想に対するQ1の進捗率は営業利益ベースで21.9%(328億円÷1,500億円)にとどまり、単純な四半期按分(25%)を下回っている。
- 2026年3月期は営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益となったにもかかわらず年間配当55.00円を据え置き、配当性向は98.9%まで上昇した。2027年3月期も同額の55.00円を予想しており、会社予想の純利益が計画どおり達成されれば配当性向は38.5%程度へ正常化する見通しである。
目次11項目
1. 概要
2026年8月4日、マツダは2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表しました。売上高は1兆2,857億円で前年同期比+16.9%の増収、連結営業利益は328億円で、前年同期の▲461億円の営業損失から789億円改善して黒字に転換しました。経常利益は428億円(前年同期▲342億円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は296億円(前年同期▲421億円の損失)と、いずれも赤字から黒字への転換です。
2026年9月25日時点の株価1,150円をもとにすると、PER8.06倍(2027年3月期会社予想EPS142.67円ベース)・PBR0.38倍(2026年6月末BPS3,040.36円ベース)・ROE4.69%・ROA2.03%(いずれも会社予想純利益ベース)・自己資本比率43.3%・予想配当利回り4.78%(会社予想の年間配当55円ベース)という水準です。有利子負債は2026年6月末時点で8,429億円、自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.44倍です。
この記事で扱う中心的な論点は、Q1の営業損益が赤字から黒字へ転換した内訳と、無修正のまま据え置かれている通期+190.8%増益予想の前提です。 決算プレゼン資料には増減要因の内訳が示されており、台数・構成の改善(うち米国の関税影響+203億円を含む)・為替・コスト改善がプラスに働き、原材料費・物流費等の悪化・成長投資の増加を上回りました。本サイトで既出のトヨタ自動車・本田技研工業・SUBARUも同じ2027年3月期第1四半期の決算を発表していますが、4社の中で営業損益段階での赤字から黒字への転換を実現したのはマツダだけです。詳しくは第4節で扱います。
2. 会社概要とビジネスモデル
マツダは乗用車を中心に生産・販売する自動車メーカーです。決算短信のグローバル販売台数は「日本」「北米」「欧州」「中国」「その他」の5区分で開示されており、2027年3月期第1四半期の販売台数は日本33千台(前年同期比+2.7%)・北米154千台(同+4.8%)・欧州43千台(同+11.6%)・中国18千台(同+0.5%)・その他56千台(同▲14.0%)の合計304千台(同+1.2%)でした。北米だけで全体の約50.7%を占めており、うち米国は107千台(同+7.4%)です。
新型車では、新型「CX-5」が欧州・北米・日本の主要市場で販売を開始し、6月末時点の受注は欧州2万台超・日本1万台超と計画を上回るペースで進捗しています。電動化モデルでは「MAZDA6e」の出荷が本格化し、「MAZDA CX-6e」も投入準備が進んでいる、というのが決算プレゼン資料の説明です。決算短信・決算プレゼン資料のいずれにも、セグメント別(金融事業やその他事業など)の利益内訳は開示されておらず、本記事はこの点を確認できていません。
強みと弱みの整理
強み
Q1の営業損益が赤字から黒字に転換した
2027年3月期Q1の連結営業利益は328億円で、前年同期の▲461億円の赤字から789億円改善しました。純利益も▲421億円の赤字から296億円の黒字へ717億円改善しています。
主要市場で販売台数が伸びている
Q1のグローバル販売台数は304千台(前年同期比+1.2%)で、北米+4.8%・欧州+11.6%・米国+7.4%と、主要市場で増加しました。新型CX-5の受注も欧州・日本で計画を上回るペースです。
自己資本比率は改善傾向にある
自己資本比率は2026年3月末の42.5%から2026年6月末は43.3%へ0.8pt改善しました。有利子負債は8,429億円(前期末比72億円減)で、現金同等物1兆2,148億円を上回るネットキャッシュ(3,719億円)を維持しています。
弱み
通期+190.8%増益予想は前期の低いベースが前提
2027年3月期の会社予想営業利益150,000百万円は、前期(2026年3月期)の51,579百万円との比較で+190.8%ですが、この前期の水準自体がQ1の▲461億円の赤字を含む異例に低いものでした。Q1時点の進捗率は21.9%(328億円÷1,500億円)にとどまり、単純な四半期按分(25%)を下回っています。
北米・為替への依存度が高い
Q1の販売台数は北米が全体の約50.7%を占め、営業利益の増減要因には為替だけで+413億円のプラスが計上されています。想定為替レート(米ドル155円・ユーロ180円)から円高方向に振れれば、この寄与は縮小・反転しえます。
原材料費・物流費等はなお押し下げ要因
Q1の営業利益増減要因のうち、原材料費・物流費等は▲240億円のマイナス寄与でした(原材料費単独では▲249億円)。台数・為替の改善がこれを上回った結果として黒字転換していますが、原材料市況の悪化が続けば押し下げ圧力は残ります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 3,120,349 | 104,227 | 123,525 | 81,557 | 43.8% |
| 2023/03 | 3,826,752 | 141,969 | 185,936 | 142,814 | 44.2% |
| 2024/03 | 4,827,662 | 250,503 | 320,120 | 207,696 | 45.8% |
| 2025/03 | 5,018,893 | 186,125 | 188,996 | 114,079 | 43.8% |
| 2026/03 | 4,918,172 | 51,579 | 131,835 | 35,086 | 42.5% |
| 2027/03会社予想 | 5,500,000 | 150,000 | 140,000 | 90,000 | — |
この6期を並べて読み取れることは3つあります。
2022年3月期から2024年3月期にかけて、業績は拡大基調にあった。 売上高は3兆1,203億円(2022年3月期)から4兆8,277億円(2024年3月期)まで2期で約55%増え、営業利益は1,042億円から2,505億円まで2.4倍に拡大しました。純利益も815億円から2,077億円まで2.5倍に伸びています。
2025年3月期・2026年3月期は急速に失速した。 営業利益は2025年3月期に1,861億円(前期比▲25.7%)、2026年3月期は515億円(同▲72.3%)まで落ち込みました。純利益も2026年3月期は350億円(同▲69.2%)まで減少しています。2026年3月期は、その期初(2025年5月開示)時点では通期業績予想自体が「未定」だったという異例の経緯もありました(第4節で詳述)。
2027年3月期の会社予想は大幅増益だが、水準としては2024年3月期にはまだ届かない。 会社予想の営業利益1,500億円は2026年3月期からは190.8%の増益ですが、2024年3月期の2,505億円と比べると6割程度の水準にとどまります。この増益予想の前提と、直近Q1の実績(営業損益が赤字から黒字に転換)との関係を、次の第4節で詳しく見ます。
4. 営業損益が赤字から黒字に転換したQ1と、無修正の通期+190.8%増益予想
Q1決算の内訳:6つの増減要因、関税影響はプラス203億円
2026年8月4日発表のQ1(2026年4〜6月)決算は、以下の内容でした。
| 項目 | 2026年3月期Q1 | 2027年3月期Q1 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆998億円 | 1兆2,857億円 | +16.9% |
| 営業利益 | ▲461億円(赤字) | +328億円 | +789億円 |
| 経常利益 | ▲342億円(赤字) | +428億円 | +771億円 |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | ▲421億円(赤字) | +296億円 | +717億円 |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信・決算プレゼンテーション資料(いずれも2026年8月4日開示)
決算プレゼンテーション資料は、この789億円の営業利益改善の内訳を次の6要因に分解しています。
| 要因 | 金額 | 主な内訳 |
|---|---|---|
| 台数・構成 | +434億円 | 台数構成・価格+364億円、販売奨励金▲209億円、関税影響+203億円、その他+76億円 |
| 為替 | +413億円 | 米ドル+98億円、ユーロ+66億円、豪ドル+86億円、タイバーツ▲32億円、メキシコペソ+60億円、その他+135億円 |
| 原材料費・物流費等 | ▲240億円 | 原材料費▲249億円、物流費+9億円 |
| コスト改善 | +157億円 | ベースCI+38億円、構造的原価低減+119億円 |
| 成長投資 | ▲98億円 | ITセキュリティ▲4億円、広告宣伝費▲94億円 |
| 固定費他 | +123億円 | 研究開発費+45億円、減価償却費▲18億円、品質関連費用▲25億円、その他+121億円 |
| 合計 | +789億円 |
出典:2027年3月期第1四半期決算プレゼンテーション資料
注目すべきは、台数・構成の内訳に「関税影響+203億円」がプラス要因として明記されている点です。 前年同期(2026年3月期Q1)は米国の関税措置による負担が大きかったとみられ、その影響が縮小したことが今期の増益要因の一つになっています。ただし為替が円安方向に動いたこと(米ドル145円→160円)や台数構成・価格の改善(+364億円)も同規模以上のプラス要因であり、関税影響の縮小だけがこの黒字転換を説明しているわけではありません。
トヨタ・本田技研工業・SUBARUとの対比:4社の中で唯一の赤字から黒字への転換
自動車セクターでは、本サイトで既出のトヨタ自動車(7203)・本田技研工業(7267)・SUBARU(7270)も同じ2027年3月期第1四半期の決算を発表しています。4社を並べると、次のような違いが見えます。
| 銘柄 | Q1営業利益(前年同期比) | Q1純利益(前年同期比) | 方向性 |
|---|---|---|---|
| トヨタ自動車(7203) | ▲8.8% | +75.6% | 減益だが小幅、純利益は急回復 |
| 本田技研工業(7267) | +117.4% | +129.3%(約2.3倍) | 前期のEV関連特別損失からの反動増 |
| SUBARU(7270) | ▲44.3% | ▲10.3% | 関税影響の減少という追い風があっても減益 |
| マツダ(7261) | ▲461億円→+328億円(黒字転換) | ▲421億円→+296億円(黒字転換) | 営業損益・純損益とも赤字から黒字へ転換 |
トヨタ・本田技研工業は、前期に計上した米国関税影響や特別損失という特殊要因からの反動で純利益が急回復した点で共通しています。一方SUBARUは、決算短信に「米国関税影響の減少」という同じ方向のプラス要因が明記されているにもかかわらず、販売台数の減少や原材料市況の悪化がそれを上回り、営業利益は▲44.3%の減益でした。
マツダは、この4社の中で唯一、営業損益段階での赤字から黒字への転換を実現しています。 前年同期が▲461億円という営業損失だったこと自体、4社の中では突出して深刻な状況だったことを意味しており、そこからの789億円という改善幅の大きさも際立ちます。方向性としてはトヨタ・本田技研工業と同じ「反動増」型ですが、振れ幅の大きさという点ではこの4社の中でも特異な動きです。
通期+190.8%増益予想の前提:低いベースと「未定」だった期初予想の経緯
会社は2027年3月期通期の業績予想を、Q1決算時点でも修正していません。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(会社予想) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4兆9,182億円 | 5兆5,000億円 | +11.8% |
| 営業利益 | 516億円 | 1,500億円 | +190.8% |
| 経常利益 | 1,318億円 | 1,400億円 | +6.2% |
| 純利益 | 351億円 | 900億円 | +156.5% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月4日開示、2026年5月12日公表の期初予想から無修正)
営業利益+190.8%という増益率だけを見ると強気な予想に見えますが、背景には前期(2026年3月期)の水準そのものが極めて低かった事情があります。2026年3月期の通期営業利益は51,579百万円でしたが、そのうちQ1単体は▲46,115百万円の赤字でした。通期(51,579百万円)からQ1の赤字(▲46,115百万円)を差し引くと、2026年3月期のQ2〜Q4合計では97,694百万円(約977億円)の営業利益を稼いでいたと逆算できます。 つまり前期は、年度前半(Q1)の大きな落ち込みを、後半(Q2〜Q4)の回復で補う展開だったとみられ、2027年3月期の増益予想はこの後半の回復基調が続くことを前提にしていると考えられます。
さらに異例だったのは、2026年3月期の期初(2025年5月12日開示)時点で、通期業績予想自体が「未定」だったことです。この時の決算短信には次のように記載されています。
「2026年3月期の連結業績予想につきましては、米国政府の関税政策の動向など、当社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況が続くと見込まれ、現時点で合理的な業績予想を算定することが困難であることから、未定とさせていただきます。」
結果として2026年3月期は、営業利益が前期比▲72.3%・純利益が同▲69.2%という大幅減益で着地しました。決算短信の本文には、この減益の要因として関税の影響額を明示した記述は本記事が精査した範囲では見当たらず、関税政策との関連は推測にとどまります。この「期初は予想を出せないほど不透明だった期が、翌期には+190.8%の増益予想に転じている」という経緯自体が、通期予想の前提を評価するうえでの材料になります。
なお、2027年3月期Q1時点での通期予想に対する進捗率は、営業利益ベースで21.9%(328億円÷1,500億円)、純利益ベースで32.9%(296億円÷900億円)、売上高ベースで23.4%(1兆2,857億円÷5兆5,000億円)です。純利益の進捗が相対的に高い一方、営業利益の進捗は単純な四半期按分(25%)を下回っており、Q2以降での上乗せが必要な水準です。
配当は横ばい55円でも配当性向は98.9%から38.5%への正常化見通し
2026年3月期は、営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益となったにもかかわらず、年間配当は前期と同額の55.00円を維持しました。この結果、配当性向は98.9%まで跳ね上がっています。2027年3月期も同額の55.00円を予想しており、Q1決算時点でも修正はありません。会社予想の純利益900億円が計画どおり達成されれば、配当性向は55円÷142.67円=38.5%程度まで正常化する計算になります。この正常化が実現するかどうかは、通期予想そのものが達成できるかどうかにかかっています。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 20円 | — | 15.4% |
| 2023/03 | 35円 | 45円 | +10円 | 19.8% |
| 2024/03 | 45円 | 60円 | +15円 | 18.2% |
| 2025/03 | — | 55円 | — | 30.4% |
| 2026/03 | — | 55円 | — | 98.9% |
| 2027/03会社予想 | 55円 | 55円 | — | 38.5% |
- 2024/03:期末配当35.00円には特別配当5.00円を含む(普通配当ベースなら期末30.00円、年間合計55.00円)。決算短信に特別配当の具体的な事由の記載は無い。
- 2025/03:期初(2024年5月開示)予想は中間25.00円のみ公表され、期末配当は「未定」だった。期末配当は後に30.00円で確定し、年間合計55.00円で着地した。
- 2026/03:期初(2025年5月開示)は「米国政府の関税政策の動向など、当社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況が続くと見込まれ、現時点で合理的な業績予想を算定することが困難である」ことを理由に、配当予想を含む通期業績予想自体が「未定」だった。実績は前期と同額の年間55.00円で着地し、営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益となったため配当性向は98.9%まで上昇した。
- 2027/03:期初(2026年5月開示)予想は年間55.00円(中間25.00円・期末30.00円)。2026年8月4日のQ1決算時点でも修正は無い。会社予想の純利益(900億円)が計画どおり達成されれば、配当性向は前期の98.9%から38.5%程度まで正常化する見通し。
配当は2022年3月期の20.00円から段階的に増額され、2024年3月期には60.00円まで伸びました。ただし2024年3月期の期末配当35.00円には特別配当5.00円が含まれており、普通配当ベースでは年間55.00円でした(決算短信に特別配当の具体的な事由の記載はありません)。
2025年3月期は、期初(2024年5月開示)時点で中間配当25.00円のみが公表され、期末配当は「未定」という開示でした。最終的に期末配当は30.00円で確定し、年間合計55.00円で着地しています。
2026年3月期はさらに踏み込んで、期初(2025年5月開示)時点で配当予想を含む通期業績予想全体が「未定」でした。理由は前述のとおり米国の関税政策の不透明感です。実績は前期と同額の年間55.00円で着地しました。この期は営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益でした。配当を据え置いた結果、配当性向は98.9%まで上昇しています。
2027年3月期は中間25.00円・期末30.00円の合計55.00円を予想しており、2026年8月4日のQ1決算時点でも期初予想から修正されていません。会社予想ベースの配当利回りは4.78%(株価1,150円、年間配当55円)です。この利回りは会社が明示している予想にもとづくもので、そのまま参考にできます。ただし、直近2期にわたって期初の配当予想が「未定」または部分的にしか出せなかった経緯があるため、今期の予想も期中の環境変化次第では見直される可能性があります。
6. 会社の現状と直近の動き
2026年8月4日発表の第1四半期(2026年4〜6月)決算では、売上高1兆2,857億円(前年同期比+16.9%)・営業利益328億円(赤字から黒字に転換)という実績でした。グローバル販売台数は合計304千台(前年同期比+1.2%)で、日本・北米・欧州・中国が増加した一方、その他地域は▲14.0%の減少でした。生産台数は296千台(同+7%)です。
財政状態は、2026年6月末時点で総資産4兆4,343億円(2026年3月末4兆4,795億円)・純資産1兆9,376億円(同1兆9,250億円)で、自己資本比率は43.3%(同42.5%、+0.8pt)へ改善しました。総資産が前期末比452億円減少する一方、純資産は127億円増加しています。劣後特約付ローンの資本性を考慮した自己資本比率は44.0%です。
有利子負債は2026年6月末で8,429億円と、2026年3月末の8,501億円から72億円減少しました。 自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.44倍(有利子負債8,429億円÷自己資本1兆9,179億円)です。現金及び現金同等物は1兆2,148億円(前期末比784億円減)で、有利子負債を上回るネットキャッシュ3,719億円(前期末4,430億円)を維持しています。有利子負債・自己資本比率の変動要因について、決算短信・決算プレゼン資料のいずれにも設備投資やM&Aなど具体的な理由の記載は無く、本記事が確認した一次情報からは特定できませんでした。
キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが▲406億円(前年同期▲1,411億円)、投資活動によるキャッシュ・フローが▲286億円(同+443億円)、フリー・キャッシュ・フローが▲692億円(同▲968億円)、財務活動によるキャッシュ・フローが▲275億円(同▲257億円、配当金支払・長期借入金返済等)でした。営業CF・投資CFともに前年同期からマイナス幅は縮小しています。
新型車では、新型「CX-5」が欧州・北米・日本の主要市場で販売を開始し、6月末時点の受注は欧州2万台超・日本1万台超と計画を上回るペースで進捗しています。豪州など他地域は7月以降順次販売開始の予定です。米国では安全性評価機関IIHSの「Top Safety Pick+」等を獲得したとされています。電動化モデルでは「MAZDA6e」の出荷が本格化し、「MAZDA CX-6e」も投入準備が進んでいます。会社はこれらの新型車を第2四半期以降の販売拡大の成長ドライバーと位置づけており、通期業績予想(売上高5兆5,000億円・営業利益1,500億円・純利益900億円)は無修正のまま据え置いています。
7. 業界とセクターの状況
自動車セクターは、国内外の販売台数・為替レート・各国の環境規制や通商政策といった、個社の努力だけでは変えられないマクロ要因の影響を強く受けます。マツダも例外ではなく、今回のQ1決算では関税影響+203億円・為替+413億円という2つの外部要因だけで、789億円の営業利益改善のうち大部分を説明できる構図になっています。
本サイトで既出のトヨタ自動車・本田技研工業は、四輪車事業に加えて金融事業や二輪車事業・パワープロダクツ事業を併せ持ち、四輪車市場の変動を一定程度吸収できる収益構造を持っています。マツダの決算短信・決算プレゼンテーション資料には、こうしたセグメント別の内訳(金融事業やその他事業の利益貢献など)の開示が見当たらず、四輪車事業以外の多角化の程度や、それが業績変動を緩和する役割を果たしているかどうかは、本記事が参照した一次情報からは確認できませんでした。開示されている数字は連結ベースの業績のみであり、その分、四輪車事業(とりわけ北米・欧州向け)の変動がそのまま連結業績に反映されやすい可能性があります。
系列サプライヤーを含む裾野の広いサプライチェーンを抱える点は自動車メーカーに共通する構造で、関税や為替の影響は完成車メーカー1社にとどまらず、部品メーカーを含むグループ全体に及びます。本サイトの自動車セクター記事は本記事でトヨタ自動車・本田技研工業・SUBARU・マツダの4本になりましたが、同じ関税・為替という外部要因への現れ方は、トヨタ・本田技研工業(純利益急回復)、SUBARU(営業利益大幅減益)、マツダ(営業損益の赤字から黒字への転換)と、4社4様の結果になっています。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期第1四半期決算は、本記事の執筆時点(2026年9月25日)ですでに2026年8月4日に発表済みです。第4節・第6節の内容がその実績です。表には、まだ発表日が確定していない第2四半期以降の決算のみを記載しています。
9. 想定されるカタリスト
Q1で21.9%にとどまった通期進捗率(営業利益ベース)が上向くか、関税影響+203億円のようなプラス要因が続くかを確認する最初の機会。
Q1の増益要因には関税影響+203億円が含まれており、運用が変われば、このプラスが縮小・反転する可能性がある。
Q1は為替要因だけで+413億円のプラスだった(USD+98億円・EUR+66億円・MXN+60億円等)。通期の想定レートは米ドル155円・ユーロ180円で、これから乖離すれば損益に直接影響する。
新型CX-5は6月末時点で欧州2万台超・日本1万台超の受注があり、計画を上回るペースで進捗している。豪州など他地域は7月以降順次販売開始。
10. 想定されるリスク
通期予想の進捗率が単純按分を下回っているリスク。 Q1時点の営業利益進捗率は21.9%(328億円÷1,500億円)で、単純な四半期按分(25%)を下回っています。Q2以降で進捗を上乗せできなければ、通期予想(1,500億円、前期比+190.8%)の達成は難しくなります。
北米・為替への依存度が高いリスク。 Q1の販売台数は北米が全体の約50.7%を占め、営業利益の増減要因には為替だけで+413億円のプラスが計上されています。想定為替レート(米ドル155円・ユーロ180円)から円高方向に振れれば、この寄与は縮小・反転しえます。関税影響+203億円も、米国の通商政策運用が変われば同様に縮小・反転する可能性があります。
前期が「予想不能」なほど不透明だった経緯。 2026年3月期は期初時点で通期業績予想自体が「未定」となるほど、米国関税政策の先行きが読めない状況でした。同様の不透明感が再燃すれば、2027年3月期の通期予想(+190.8%増益)自体が見直される可能性があります。
配当性向の高止まりリスク。 2026年3月期の配当性向は98.9%まで上昇しました。2027年3月期の会社予想ベースでも配当性向38.5%への正常化は、純利益900億円という会社予想の達成が前提になっており、これが未達となれば配当性向は再び高止まりします。
11. まとめ:どう判断材料にするか
マツダの2027年3月期第1四半期は、営業利益が前年同期の▲461億円の赤字から+328億円の黒字へ789億円改善しました。関税影響+203億円・為替+413億円という外部要因のプラスが、原材料費・物流費等▲240億円・成長投資▲98億円のマイナスを上回った結果です。本サイトで既出のトヨタ自動車・本田技研工業・SUBARUと比べても、営業損益段階での赤字から黒字への転換を実現したのはマツダだけであり、振れ幅の大きさが際立ちます。
判断の分かれ目は、この789億円の改善を「前期の異例に低いベースからの反動増が、今後も続く回復局面の始まり」と見るか、「関税影響の縮小と円安という外部要因頼みの、一時的な改善」と見るかです。
前者と見るなら、前期のQ2〜Q4合計で約977億円の営業利益を稼いでいたという実績があり、その回復基調がQ1にも表れたという解釈になります。Q1の進捗率21.9%は単純按分をやや下回るものの、後半に稼ぐ傾向があった前期のパターンを踏まえれば、通期予想の達成は視野に入ります。後者と見るなら、789億円の改善のうち関税影響+203億円・為替+413億円という2つの外部要因だけで大部分を説明できてしまう構図は、事業環境が再び変化すれば容易に反転しうることを意味し、前期に通期予想自体が「未定」になったという異例の経緯が再び起きないとは言い切れません。PBR0.38倍・配当利回り4.78%という水準は選定条件(配当利回り3%以上・PBR1倍以下)を満たしていますが、ROE4.69%・ROA2.03%は高い水準とは言えず、この判断の分かれ目自体が指標の解釈にも影響します。
次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期決算です。営業利益の通期進捗率がQ1の21.9%からどう推移するか、関税影響・為替影響のプラス幅がQ1と同水準で続くかを確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月上旬公表予定の第2四半期決算で、営業利益の通期進捗率がQ1時点の21.9%(328億円÷1,500億円)からさらに悪化し、通期予想(1,500億円、前期比+190.8%)の達成が困難になった場合。
- 会社が通期業績予想(営業利益1,500億円・純利益900億円)を下方修正した場合。2026年8月4日のQ1決算時点では無修正で据え置かれていたこととの方針転換を意味する。
- 会社が2027年3月期の配当予想(年間55.00円)を減額修正した場合。2026年3月期は営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益でも配当を前期と同額の55.00円で維持した実績と矛盾する。
- 為替が通期予想の想定レート(米ドル155円・ユーロ180円)から円高方向に大きく乖離し、Q1に為替要因だけで+413億円あったプラス寄与が縮小・反転した場合。
よくある質問
- マツダの配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の会社予想は年間55.00円(中間25.00円・期末30.00円)で、2026年8月4日のQ1決算時点でも無修正のまま据え置かれています。100株なら年間5,500円です(税引前)。2026年9月25日時点の株価1,150円に対する予想配当利回りは4.78%です。
- なぜQ1の営業損益は赤字から黒字に転換したのですか?
- 前年同期(2026年3月期Q1)は▲461億円の営業損失でしたが、2027年3月期Q1は+328億円の営業利益になり、789億円改善しました。内訳は台数・構成+434億円(うち関税影響+203億円)・為替+413億円・原材料費及び物流費等▲240億円・コスト改善+157億円・成長投資▲98億円・固定費他+123億円で、プラス要因がマイナス要因を上回りました。
- 2026年3月期の通期業績予想は、なぜ期初は「未定」だったのですか?
- 2025年5月12日開示の決算短信で、会社は「米国政府の関税政策の動向など、当社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況が続くと見込まれ、現時点で合理的な業績予想を算定することが困難である」ことを理由に、2026年3月期の通期業績予想を「未定」としました。結果として2026年3月期は営業利益が前期比▲72.3%の大幅減益で着地しています。
参考文献・引用元
- 01マツダ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月4日開示。連結業績(売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益・EPS)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率)、配当の状況、2027年3月期通期業績予想(無修正)、キャッシュ・フロー、グローバル販売台数(地域別)、営業利益増減要因の定性説明を参照。 / 2026/08/04 開示
- 02マツダ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算プレゼンテーション資料」
2026年8月4日開示。営業利益変動要因の内訳(台数・構成/為替/原材料費・物流費等/コスト改善/成長投資/固定費他、それぞれの二次内訳)、為替レート(通貨別)、キャッシュ・フロー及びネットキャッシュの推移、新型CX-5の受注状況、通期見通し(台数・財務指標)を参照。 / 2026/08/04 開示
- 03マツダ株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月12日開示。2025年3月期・2026年3月期の通期実績(売上高・営業利益・経常利益・純利益・EPS・自己資本比率)、配当の状況(2026年3月期実績・2027年3月期期初予想)、2027年3月期通期業績予想(期初)を参照。 / 2026/05/12 開示
- 04マツダ株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年5月12日開示。2024年3月期・2025年3月期の通期実績、配当の状況(2025年3月期実績、2026年3月期期初予想)を参照。2026年3月期の通期業績予想を「未定」とした理由(米国政府の関税政策の動向等)の記載箇所。 / 2025/05/12 開示
- 05マツダ株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年5月10日開示。2023年3月期・2024年3月期の通期実績、配当の状況(2024年3月期実績。期末配当に特別配当5.00円を含む旨の注記)を参照。 / 2024/05/10 開示
- 06マツダ株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年5月12日開示。2022年3月期・2023年3月期の通期実績、配当の状況を参照。 / 2023/05/12 開示
- 07マツダ株式会社「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2022年5月13日開示。2021年3月期・2022年3月期の通期実績、配当の状況を参照。 / 2022/05/13 開示
- 08株探「マツダ(7261)」株価ページ
2026年9月25日15:30時点の株価(1,150.0円)・時価総額を参照。同ページのPER・PBR・利回りは株探算出の参考値であり、本記事のmetricsには採用せず、会社開示ベースで別途算出した値を使用した。 / 2026/09/25 開示