グローブライド(7990) Q1営業利益51%減、通期予想据え置きの中身を検証
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
グローブライド株式会社
2026/08/20 時点
株価
2,500円
時価総額
530億円
配当利回り
4.00%
年間100円
PER
9.9倍
PBR
0.82倍
ROE
8.6%
ROA
6.2%
経常利益ベース
自己資本比率
52.7%
配当性向
39.6%
有利子負債
312億円
D/Eレシオ
0.48倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は売上高337億01百万円(前年同期比+6.3%)に対し、営業利益11億64百万円(同-51.0%)・経常利益12億49百万円(同-49.1%)と大幅な減益だった。純利益は13億45百万円(同-24.1%)で、減益幅は営業利益・経常利益より小さい。
- 減益の主因は、前号記事が論点にした「営業外損益の悪化(為替差損益か支払利息か)」ではなく、海外拡販に向けた先行仕入れによる在庫増加に伴うグループ間取引の未実現利益消去だった。会社自身がこの一時要因を明言しており、報告セグメント利益の合計は-20.6%の減益にとどまるのに対し、セグメント間消去の悪化幅(△905百万円→△1,439百万円)が連結営業利益の落ち込み(-51.0%)の大半を説明する。
- 会社は通期の業績予想(営業利益70億円+7.7%・経常利益64億円-10.9%)と年間配当予想100.00円を、Q1の大幅減益にもかかわらず一切修正していない。在庫は「第3四半期以降の販売シーズンで解消され、通期の業績に影響を及ぼすことはない見通し」としている。
- 一方、前号記事の論点だった「経常利益が営業利益を下回る」という通期予想の構図は、Q1時点ではまだ表れていない(経常利益は営業利益を85百万円上回る)。支払利息は139百万円から162百万円へ+16.5%増えており有利子負債の増加と符合するが、為替差益は横ばいで、前号の論点(為替差損益か支払利息か)に対する答え合わせは依然として結論が出せない。
- 純利益の減少幅(-24.1%)が営業利益・経常利益より小さいのは、投資有価証券売却益618百万円という特別利益が下支えしたためで、一過性の要因である点には注意が必要。
目次11項目
1. 概要
グローブライドは、2026年8月20日時点でPBR0.82倍・PER9.91倍・ROE8.6%・ROA6.2%(経常利益ベース、いずれも2026年3月期実績・会社予想ベース)という水準にあります。会社が開示している2027年3月期の年間配当予想は100.00円で、株価2,500円に対する利回りは4.00%です。
この記事の主題は、2026年8月7日に開示された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算です。 売上高は前年同期比+6.3%と増収でしたが、営業利益は-51.0%・経常利益は-49.1%という大幅な減益で着地しました。それにもかかわらず、会社は通期の業績予想と配当予想をいずれも据え置いています。
前号記事(2026年3月期通期決算を扱った記事)では、2027年3月期の会社予想が「営業利益+7.7%の増益なのに経常利益-10.9%の減益」というねじれた形になっていることを取り上げ、営業外損益の悪化が為替差損益によるものか支払利息によるものかを両論併記としました。今回のQ1決算は、いわばその答え合わせの第一弾です。ところが実際に開示された減益の主因は、前号が想定したどちらでもありませんでした。 何が起きたのか、第4節で具体的に確認します。
2. 会社概要とビジネスモデル
グローブライドは釣具を中心とするスポーツ用品メーカーで、Daiwaブランドの釣具のほか、ゴルフ用品や自転車など複数のスポーツ・レジャー用品を手がけています。決算短信では地域別に日本・米州・欧州・アジア・オセアニアの4セグメントで業績を開示しており、単純な内需企業ではなく海外展開を前提とした事業構造です。
強みと弱みの整理
強み
大幅減益にもかかわらず通期予想・配当予想は据え置き
Q1の営業利益は前年同期比-51.0%でしたが、会社は通期業績予想(営業利益70億円+7.7%・経常利益64億円-10.9%)と年間配当予想100.00円をいずれも修正していません。減益の要因を在庫にかかる一時的な未実現利益消去と特定できている、という会社側の説明が前提になっています。
前号で懸念された米州セグメントの赤字がQ1では解消
前号記事では2026年3月期に米州セグメントが営業利益-169百万円の赤字に転落したことを弱気材料として挙げましたが、2027年3月期Q1のセグメント利益は222百万円の黒字(前年同期220百万円)です。関税政策の影響が落ち着き、市況も緩やかに回復していると会社は説明しています。
配当は4期連続で期初予想どおりに着地している実績
2023年3月期以降、年間配当は期初予想と実績が一致し続けています(60円→70円→80円→90円)。2027年3月期の予想100.00円についても、Q1決算にあわせて修正は行われていません。
弱み
Q1は営業利益-51.0%・経常利益-49.1%の大幅減益
売上高は+6.3%の増収だったにもかかわらず、営業利益11億64百万円(前年同期23億73百万円)・経常利益12億49百万円(同24億52百万円)と、利益は前年同期からほぼ半減しました。会社は一時要因と説明していますが、実際に解消されるかどうかはQ1単体の決算からは確認できません。
棚卸資産と有利子負債がそろって増加し、自己資本比率が低下
棚卸資産(商品及び製品)は348億66百万円から385億05百万円へ+36億39百万円増加し、有利子負債も285億26百万円から311億75百万円へ+9.3%増加しました。この結果、自己資本比率は2026年3月期末の54.1%からQ1末は52.7%へ低下しています。詳細は第6節で扱います。
純利益の減少幅が小さいのは特別利益による下支え
純利益の減少幅(-24.1%)は営業利益・経常利益の減少幅より小さいですが、これは投資有価証券売却益618百万円という一過性の特別利益が計上されたためです。本業の利益水準だけを見ると、減益の程度はより大きいと捉えるべきです。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018/03 | 85,800 | 3,770 | 3,600 | 2,500 | — | — |
| 2019/03 | 87,800 | 3,820 | 3,270 | 2,960 | — | — |
| 2020/03 | 88,300 | 3,610 | 3,090 | 1,120 | — | — |
| 2021/03 | 100,300 | 7,410 | 7,150 | 4,800 | — | — |
| 2022/03 | 120,700 | 12,300 | 13,000 | 9,570 | — | — |
| 2023/03 | 134,600 | 12,100 | 12,700 | 9,190 | — | — |
| 2024/03 | 126,000 | 7,500 | 8,380 | 5,580 | — | — |
| 2025/03 | 123,983 | 6,508 | 6,492 | 4,783 | 2,042 | 53.5% |
| 2026/03 | 126,956 | 6,501 | 7,184 | 5,409 | 8,033 | 54.1% |
| 2027/03会社予想 | 134,000 | 7,000 | 6,400 | 5,500 | — | — |
読み取れることは3つあります。
2022年3月期をピークに、業績は一段落ちてから再び持ち直す動きをたどっている。 売上高は2021年3月期の1,003億円から2022年3月期1,207億円、2023年3月期1,346億円まで拡大しましたが、2024年3月期は1,260億円(前期比-6.4%)、2025年3月期は1,239億83百万円(同-1.6%)と2期連続で減少しました。
2026年3月期は増収に転じ、経常利益・純利益は2桁増益で回復した。 売上高126,956百万円(前期比+2.4%)・経常利益7,184百万円(同+10.7%)・純利益5,409百万円(同+13.1%)と回復しましたが、営業利益は6,501百万円(同-0.1%)とほぼ横ばいにとどまりました。
この表は年度ベースの実績・予想のみで、四半期の数値は含まれていない。 2027年3月期は会社が増収増益(売上高+5.5%・営業利益+7.7%)を計画していますが、この年度予想は2026年8月7日開示のQ1決算後も修正されていません。Q1単体の大幅減益がこの通期予想にどう関係するのかを、次の第4節で詳しく見ます。
4. Q1大幅減益の主因は「営業外損益」ではなく「在庫の未実現利益消去」だった
これがこの記事でいちばん整理したい論点です。まず、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結損益計算書を、前年同期と比べます。
| 項目 | 2026年3月期1Q | 2027年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 316億91百万円 | 337億01百万円 | +6.3% |
| 営業利益 | 23億73百万円 | 11億64百万円 | -51.0% |
| 経常利益 | 24億52百万円 | 12億49百万円 | -49.1% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 17億73百万円 | 13億45百万円 | -24.1% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(連結損益計算書)
前号記事では、2027年3月期の会社予想が営業利益+7.7%・経常利益-10.9%というねじれた形になっている理由として、為替差損益か支払利息による営業外損益の悪化のどちらかだろうと両論併記しました。 ところが実際にQ1で表面化したのは、この2つのどちらでもありません。決算短信の定性的情報には、減益の理由として「グループ間取引在庫の一時的な増加に伴う未実現利益消去の影響により売上原価が増加したこと及び販売費及び一般管理費が増加したこと等」と説明されています。
この説明を、セグメント情報の数値で裏付けることができます。報告セグメントごとのセグメント利益(内部売上高・振替高を含む)を並べると次のようになります。
| セグメント | 2026年3月期1Q | 2027年3月期1Q | 増減 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 19億47百万円 | 15億28百万円 | -21.5% |
| 米州 | 2億20百万円 | 2億22百万円 | ほぼ横ばい |
| 欧州 | 3億47百万円 | 4億60百万円 | +32.7% |
| アジア・オセアニア | 7億63百万円 | 3億91百万円 | -48.7% |
| 報告セグメント計 | 32億78百万円 | 26億03百万円 | -20.6% |
| セグメント間消去及び全社費用 | -9億05百万円 | -14億39百万円 | 悪化5億34百万円 |
| 連結営業利益 | 23億73百万円 | 11億64百万円 | -51.0% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(セグメント情報)
ここが今回のQ1決算のポイントです。 4つの報告セグメントの利益を単純に合算した「報告セグメント計」は32億78百万円から26億03百万円へ-20.6%の減少にとどまっています。ところが連結営業利益は23億73百万円から11億64百万円へ-51.0%と、その2倍以上の落ち込み幅になっています。この差を生んでいるのが「セグメント間消去及び全社費用」で、-9億05百万円から-14億39百万円へ5億34百万円悪化しました。連結営業利益の減少額(12億09百万円)のうち、5億34百万円(約44%)がこのセグメント間消去の悪化で説明できます。セグメント間消去はグループ会社間の内部取引にかかる未実現利益を相殺消去する項目で、決算短信の定性的情報が説明する「グループ間取引在庫の増加に伴う未実現利益消去」と数値のうえで符合します。
アジア・オセアニアのセグメント利益も-48.7%と大きく落ち込んでいますが、これも「工場の生産計画の時期差異による生産機種構成の変化、グループ間取引在庫の増加に伴う未実現利益消去の影響」と説明されており、同じ在庫要因が複数の場所に効いていることが分かります。
一方、前号記事が論点にした「経常利益が営業利益を下回る」という通期予想の構図は、Q1時点ではまだ確認できません。 Q1の経常利益(12億49百万円)は営業利益(11億64百万円)を85百万円上回っており、前年同期の79百万円という上回り幅からむしろわずかに拡大しています。営業外費用のうち支払利息は139百万円から162百万円へ+16.5%増加しており、これは有利子負債の増加(+9.3%)と符合する動きですが、営業外収益のうち為替差益は48百万円から48百万円へ横ばいでした。前号の論点(為替差損益か支払利息か)に対する答え合わせは、この四半期だけでは依然として結論が出せません。
会社はこの在庫要因について、業績予想の修正に関するお知らせのなかで「これらの在庫は第3四半期以降の販売シーズンで解消され、通期の業績に影響を及ぼすことはない見通し」としています。ただし第2四半期においても在庫水準は継続する見込みで、実際に通期予想の営業利益70億円・経常利益64億円が達成されるかどうかは、この時点ではまだ会社の説明を判断材料として受け止めるしかありません。次に確認すべきは、この説明どおりに第2四半期・第3四半期の決算で在庫要因が解消に向かうかどうかです。
なお、純利益の減少幅(-24.1%)が営業利益・経常利益の減少幅より小さいのは、投資有価証券売却益618百万円(前年同期は0)という特別利益が計上されたためです。税金等調整前四半期純利益は18億49百万円(前年同期24億52百万円)、法人税等は5億05百万円(同6億84百万円)で、実効税率はいずれも27%台とほぼ横ばいでした。本業の利益水準だけを見れば、減益の程度は純利益の見た目より大きいと捉えるべきです。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2023/03 | 60円 | 60円 | 0円 | 15.0% |
| 2024/03 | 70円 | 70円 | 0円 | 28.8% |
| 2025/03 | 80円 | 80円 | 0円 | 38.4% |
| 2026/03 | 90円 | 90円 | 0円 | 37.5% |
| 2027/03会社予想 | 100円 | 100円 | — | 39.6% |
- 2025/03:中間40.00円・期末40.00円(決算短信)。
- 2026/03:中間45.00円・期末45.00円(決算短信)。同時に自己株式取得を27.7億円実施(前期0.03億円から急増、IR BANK集計)。配当と自己株式取得を合わせた総還元性向は38.5%から88.8%へ上昇した。
- 2027/03:中間50.00円・期末50.00円の予想(決算短信)。2026年8月7日開示の第1四半期決算短信でも据え置かれており、Q1が大幅減益だったにもかかわらず配当予想の修正は無い。
配当は着実に増加してきました。2023年3月期の60.00円から、2024年3月期70.00円、2025年3月期80.00円、2026年3月期90.00円と、4期連続の増配です。2023年3月期以降、期初予想と実績が一致し続けており、保守的に予想を出して期中に積み増すタイプの会社ではありません。
2027年3月期は、会社が中間50.00円・期末50.00円の合計100.00円を予想しています。この予想は、Q1が営業利益-51.0%という大幅減益だった2026年8月7日の決算短信でも修正されていません。 株価2,500円に対する利回りは4.00%で、会社が明示的に開示した予想にもとづく数値です。配当性向は2026年3月期実績の37.5%から2027年3月期予想では39.6%へ上昇する計画になっています。
配当予想が据え置かれていること自体は、会社が今回の在庫要因を一過性と見ていることの傍証にはなります。ただし、これは会社の見通しであって確定した事実ではない点には注意が必要です。中間決算以降も予想どおりに配当方針が維持されるかどうかを、引き続き確認していく必要があります。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態を見ると、棚卸資産と有利子負債がそろって増加しています。 棚卸資産(商品及び製品)は2026年3月期末の348億66百万円からQ1末は385億05百万円へ+36億39百万円増加しました。決算短信は総資産の増加(1,196億31百万円→1,224億75百万円)について「主に棚卸資産の増加」によるものと説明しており、第4節で見た在庫要因と符合します。
有利子負債は2026年3月期末の285億26百万円からQ1末は311億75百万円へ+9.3%増加しました。内訳は短期借入金が151億73百万円から178億56百万円へ、長期借入金は133億53百万円から133億19百万円へほぼ横ばいです。増加の大半は短期借入金で、在庫積み増しの資金手当てとみられますが、その具体的な使途までは本記事で参照した資料からは特定できませんでした。この結果、自己資本比率は2026年3月期末の54.1%からQ1末は52.7%へ低下し、負債資本比率(D/Eレシオ、有利子負債÷自己資本)も0.44倍から0.48倍へ上昇しています。
純資産は648億29百万円から648億18百万円へわずかに減少しました。決算短信は「純利益計上の一方で自己株式を取得したことによる」と説明しています。なお、2026年5月13日の取締役会決議にもとづき、自己株式600,700株が2026年7月31日付で消却されており、これは今回の短信で後発事象として記載されています。
Q1(第1四半期・第3四半期)は日本基準上キャッシュ・フロー計算書の作成義務が無く、今回の短信にも掲載されていません。 減価償却費のみ10億61百万円(前年同期10億97百万円)と開示されています。
セグメント別の詳細(内部取引を含む売上高・セグメント利益)は第4節の表のとおりです。外部顧客向けの売上高では、日本が206億02百万円から162億44百万円へ減少しています(内部売上高が増えた分、外部向けの構成比が変わったことによります)。
7. 業界とセクターの状況
グローブライドは当サイトの「sporting-goods(スポーツ用品)」セクターの記事です。このセクターで構造的に決まっていることとして、次の点が挙げられます。
- 需要は生活必需品ではなく余暇支出に属する。 釣具・ゴルフ用品・自転車といった製品は、景気動向や家計の余裕度に需要が左右されやすい性質を持ちます。
- 海外の余暇市場の成長度合いが業績を左右する。 アジア・オセアニア地域は例年高い収益性を示していますが、今回のQ1では在庫要因の影響を最も強く受けた地域でもあり、海外拡販戦略のスピードと在庫管理のバランスが問われる局面にあります。
- 原材料・部材の多くを輸入に頼るため、為替の影響を受けやすい。 生産拠点をタイ・ベトナム・中国に持ち、販売子会社を米州・欧州・アジアオセアニアに置く事業構造上、為替相場の変動が売上・費用の両面に影響しうる構造です。
- グループ内で生産・販売子会社をまたぐ取引が多い会社では、在庫の増減が未実現利益消去を通じて連結損益を一時的に振らせやすい。 今回のグローブライドのQ1決算は、このセクターに限らず海外生産・海外販売の比重が大きい製造業に共通する構造がそのまま表面化した例だといえます。海外拡販戦略を積極化するほど、この振れは大きくなりうる構造です。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも会社のIRカレンダーが「月旬」までしか公表していないための推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
会社は2026年8月7日、中間期予想を営業利益35億円(期初予想比-30.0%)・経常利益34億円(同-29.2%)へ下方修正している。在庫にかかる未実現利益消去の影響が「第2四半期も継続する見込み」としており、実際にこの水準に着地するか、通期予想(営業利益70億円)は据え置かれたままかを確認できる。
会社は在庫要因が「第3四半期以降の販売シーズンで解消される」と説明している。この説明どおりに利益率が回復するかを確認できる最初の機会になる。
前号記事では2026年3月期の米州が営業赤字(-169百万円)に転落したことを懸念材料としたが、Q1は222百万円の黒字(前年同期220百万円)を確保した。通期の赤字は下期に集中して発生していたことになり、下期に再び同じ動きが出るかが焦点。
前号記事の論点(2027年3月期の営業外損益悪化が為替差損益と支払利息のどちらによるか)は、Q1決算だけでは結論が出ていない。支払利息は+16.5%増加した一方、為替差益は横ばいで、中間決算以降の動きを追う必要がある。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
在庫要因が「一時的」で終わらないリスク。 第4節で見たとおり、Q1の大幅減益は会社によれば在庫にかかる未実現利益消去という一時要因です。しかし会社自身も第2四半期において在庫水準が継続する見込みだとしており、この解消が会社の説明どおりのタイミング・規模で進む保証はありません。
財務健全性がじわりと低下しているリスク。 自己資本比率は2026年3月期末の54.1%からQ1末は52.7%へ低下し、有利子負債も311億75百万円(+9.3%)へ増加しました。今回の水準自体はまだ健全な範囲ですが、在庫積み増しが続けば有利子負債のさらなる増加につながる可能性があります。
前号記事の論点(営業外損益の悪化)がまだ解消されていないリスク。 2027年3月期の通期予想は依然として経常利益-10.9%という減益を織り込んでおり、その理由はQ1決算でも特定できませんでした。支払利息は+16.5%増加しており、金利負担の増加という構造的な要因が中間決算以降で表面化する可能性は残っています。
純利益の質のリスク。 Q1の純利益の底堅さは投資有価証券売却益618百万円という一過性の要因に支えられています。同様の特別利益が今後も継続的に発生する保証はなく、この要因を除いた実力ベースでの利益水準は、営業利益・経常利益の減少幅により近いと考えるのが妥当です。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期のグローブライドは、売上高337億01百万円(前年同期比+6.3%)に対し、営業利益11億64百万円(同-51.0%)・経常利益12億49百万円(同-49.1%)という大幅な減益で着地しました。減益の主因は、前号記事が想定した営業外損益の悪化ではなく、海外拡販に向けた在庫増加に伴うグループ間取引の未実現利益消去でした。報告セグメント利益の合計が-20.6%の減益にとどまる一方、セグメント間消去の悪化(5億34百万円)が連結営業利益の落ち込みの多くを説明しています。それにもかかわらず、会社は通期業績予想(営業利益70億円+7.7%・経常利益64億円-10.9%)と配当予想100.00円をいずれも据え置いています。
判断の分かれ目は、会社の「在庫は第3四半期以降の販売シーズンで解消され、通期業績に影響しない」という説明をどこまで信頼するかです。 この説明どおりに在庫が解消され、中間決算・第3四半期決算で利益率が回復していくと見るなら、Q1の大幅減益は一過性のノイズとして扱ってよいことになります。一方、海外拡販戦略を積極化するほど同様の在庫変動が繰り返されうる構造だと見るなら、通期予想の達成度そのものを慎重に見極める必要があります。加えて、前号記事の論点だった営業外損益の悪化(経常利益が営業利益を下回る構図)はQ1では確認されておらず、この点の答え合わせも中間決算以降に持ち越されています。次に確認すべきは、2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、在庫要因が会社の説明どおりに推移しているかどうかです。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期中間決算(2026年11月予定)で、在庫にかかる未実現利益消去の影響が「解消せず継続」し、通期業績予想(営業利益70億円+7.7%・経常利益64億円-10.9%)が下方修正された場合。会社の「一時要因」という説明が崩れることになる。
- 前号記事が指摘した営業外損益の悪化(経常利益が営業利益を下回る構図)が、中間決算以降で実際に表面化した場合。Q1時点では経常利益(12億49百万円)が営業利益(11億64百万円)を85百万円上回っており、逆転はまだ起きていない。
- 米州セグメントが再び営業赤字に転落した場合。Q1は222百万円の黒字を確保しているが、2026年3月期通期では-169百万円の赤字だった実績があり、下期に再び悪化する可能性は消えていない。
- 2027年3月期の配当が会社予想100.00円を下回って着地した場合(減配)。2023年3月期以降4期続いた「期初予想=実績」という着地の安定性が崩れることを意味する。
- 自己資本比率がさらに大きく低下した場合(目安として40%を下回るなど)。2026年3月期末の54.1%からQ1末は52.7%へ低下しており、有利子負債も285億26百万円から311億75百万円(+9.3%)へ増加している。
参考文献・引用元
- 01グローブライド「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月7日開示。連結経営成績、連結財政状態、貸借対照表・損益計算書の各科目、セグメント情報、配当の状況、業績予想、後発事象(自己株式の消却)を参照。 / 2026/08/07 開示
- 02グローブライド「業績予想の修正に関するお知らせ」
2026年8月7日開示。2027年3月期第2四半期(中間期)業績予想の下方修正内容と修正理由(在庫にかかる未実現利益の一時的な増加、生産機種構成の変化)を参照。通期予想は無修正である旨が明記されている。 / 2026/08/07 開示
- 03IR BANK「グローブライド(7990) 決算まとめ/配当金の推移」
2018年3月期以降の通期業績(売上高・各利益)、配当の期初予想・実績の履歴を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(取得日2026年8月20日)。