四半期分析総合商社2027/3期 Q1

三井物産(8031) 2027年3月期Q1、純利益+53.4%の中身と一過性のIPO評価益

2026/08/11 公開2026/08/11 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

三井物産株式会社

東証プライム 8031 ・ 3月期決算

2026/08/10 時点

株価

4,880円

時価総額

139,796億円

配当利回り

2.87%

年間140円

PER

15.0倍

PBR

1.54倍

ROE

10.2%

ROA

4.0%

純利益ベース

自己資本比率

43.3%

配当性向

39.5%

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期比+53.4%の294,052百万円と大幅増益で着地した。だが増益額約1,025億円のうち、549億円超はイノベーション・コーポレートディベロップメント区分での米国不動産関連事業(CIM Group)のリサイクル・量子コンピューティング関連事業のIPOに伴うFVTPL評価益であり、金属資源区分の海外エネルギー資産IPO関連評価益+142億円を合わせると増益の3分の2前後が一過性の評価益で説明できる。
  • 通期の親会社帰属当期利益予想920,000百万円(+10.3%)は、Q1の大幅増益を確認した後もそのまま据え置かれている。Q1の伸び率(+53.4%)をそのまま延長した水準にはなっておらず、会社自身が一過性要因を通期の実力としては織り込んでいないと読める。
  • 2027年3月期の配当予想は中間70.00円・期末70.00円の合計140.00円で、前期実績115.00円から+21.7%の増配予想。上限2,000億円の自己株式取得もQ1決算と同日に発表されており、株主還元の姿勢は明確である。
  • 有利子負債の総額は今回参照した一次情報の範囲では確認できず、D/Eレシオ(負債資本比率)を算出できていない。親会社所有者持分比率は2026年3月末の42.1%から2026年6月末には43.3%へ改善しているが、レバレッジ面の評価には限界がある。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. Q1増益の中身、半分以上を占める一過性のIPO評価益
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

三井物産(8031)は、2026年8月10日時点で株価4,880円・予想PER15.04倍・実績PBR1.54倍という水準にあります。予想配当利回りは2.87%、実績ROEは10.22%です。

2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期比+53.4%の294,052百万円と、大幅な増益で着地しました。税引前利益も同+54.6%の362,156百万円まで拡大しています。ただし、この増益の中身を分解すると、半分以上が米国不動産関連事業(CIM Group)のIPOに伴う一過性の評価益によるものだったことが決算短信の内訳からわかります。この点は§4で詳しく扱います。

2027年3月期の通期予想は、親会社帰属当期利益920,000百万円(+10.3%)で据え置かれており、Q1の伸び率をそのまま延長した水準にはなっていません。配当は中間70.00円・期末70.00円の合計140.00円(前期比+21.7%)に増配予想となったほか、Q1決算と同日に上限2,000億円の自己株式取得も発表されました。この記事では、増益の中身の質と、据え置かれた通期予想・増配・自己株買いという株主還元の動きを合わせて整理します。

2. 会社概要とビジネスモデル

三井物産は、総合商社大手の一角に位置づけられる企業です。エネルギー、金属資源、モビリティ・デジタル・インフラ、化学品、ウェルネス・エコシステム、イノベーション・コーポレートディベロップメントといった事業区分を通じて、資源権益から生活産業・新規事業領域まで幅広く事業投資を展開しています。単なる商品の売買仲介ではなく、出資先企業の経営に関与し、持分法による投資損益や、出資先が株式公開(IPO)した際の公正価値評価(FVTPL)による評価損益までを収益源に含めるビジネスモデルが特徴です。イノベーション・コーポレートディベロップメント区分は、米国不動産関連事業(CIM Group)を通じたリサイクルや量子コンピューティングなど、新規性の高い事業領域への投資を担っています。

強みと弱みの整理

強み

  • Q1の大幅増益と株主還元の強化

    2027年3月期第1四半期は親会社帰属四半期利益+53.4%の294,052百万円で着地しました。同日に上限2,000億円の自己株式取得も発表しており、配当予想も前期比+21.7%の140.00円に引き上げられています。

  • 新規事業領域への投資が収益化する局面を持つ

    イノベーション・コーポレートディベロップメント区分では、CIM Groupが手がけるリサイクル・量子コンピューティング関連事業のIPOにより、四半期利益が103億円から652億円へ拡大しました。投資先の株式公開が実際の収益につながった一例です。

  • 自己資本比率は改善傾向

    親会社所有者持分比率は2026年3月末の42.1%から2026年6月末には43.3%へ改善しました。5期の推移で見ても、2022年3月期の37.6%から総じて上昇基調にあります。

弱み

  • 増益の中身の半分以上が一過性の評価益

    Q1の増益額約1,025億円のうち、549億円超はCIM Group関連事業のIPOに伴うFVTPL評価益、142億円は金属資源区分での海外エネルギー資産IPO関連評価益でした。経常的に稼ぐ力がどれだけ伸びたかは、この一過性要因を除いて見る必要があります。

  • 為替関連の評価損が同時に発生している

    Q1の為替差損益は前年同期の+55億円から△308億円へ、363億円のマイナス寄与でした。主因はCIM Groupのコール・オプションの評価損で、IPO関連の評価益と表裏の関係にある変動要因です。

  • 有利子負債の総額を一次情報で確認できていない

    今回参照した決算短信・IR BANKの範囲では、グロスの有利子負債額が確認できませんでした。D/Eレシオ(負債資本比率)を算出できないため、自己資本比率の改善だけでは財務レバレッジの全体像を判断しきれません。

3. 業績の推移

三井物産はIFRS(国際財務報告基準)を採用しており、決算短信では「収益→売上総利益→販売費及び一般管理費→有価証券損益・固定資産評価損益・為替差損益・持分法による投資損益等→税引前利益→四半期利益→親会社の所有者に帰属する四半期利益」という構成で開示されます。持分法投資損益や資源権益・事業投資からの損益の比重が大きく、日本基準の営業利益経常利益に相当する中間段階の利益区分は単体では開示されていません。これは総合商社に共通する特徴です。そのため以下では収益(売上高に相当)と純利益の2段階で示します。

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
005,000,000010,000,000115,000,000120,000,00012022/032023/032024/032025/032026/03単位:百万円
自己資本比率(%)20355037.641.444.644.942.1
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/0311,800,000910,00037.6%
2023/0314,300,0001,130,00041.4%
2024/0313,300,0001,060,00044.6%
2025/0314,700,000900,00044.9%
2026/0313,995,222833,97142.1%
単位:百万円。出典:決算短信(2026年3月期・2027年3月期第1四半期)、およびIR BANK集計による過年度実績

読み取れることは3つあります。

収益は2023年3月期にピークをつけたあと、増減を繰り返している。 2022年3月期の11,800,000百万円から2023年3月期には14,300,000百万円(+21.2%)まで拡大した後、2024年3月期は13,300,000百万円(-7.0%)、2025年3月期は14,700,000百万円(+10.5%)、2026年3月期は13,995,222百万円(-4.8%)と、一方向のトレンドではなく資源・エネルギー価格に応じて上下しています。

純利益は2023年3月期をピークに3期連続で減少していた。 2023年3月期の1,130,000百万円(+24.2%)から、2024年3月期-6.2%、2025年3月期-15.1%、2026年3月期-7.3%と減少が続き、2026年3月期は833,971百万円まで落ち込みました。2027年3月期第1四半期の+53.4%という大幅増益は、この3期連続の減益局面からの反発という側面を含んでいることが見て取れます。

親会社所有者持分比率は2022年3月期の37.6%から2025年3月期の44.9%まで一貫して上昇した後、2026年3月期は42.1%へ低下し、2026年6月末には43.3%へ再び持ち直している。 この動きの背景は§6で改めて扱います。

4. Q1増益の中身、半分以上を占める一過性のIPO評価益

2027年3月期第1四半期の決算で最も目を引くのは、親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期の191,647百万円から294,052百万円へ、+53.4%(増加額にして約1,025億円)拡大したという数字です。しかし、この増益の「中身」を決算短信の増減要因分析まで遡ると、経常的な稼ぐ力の伸びとは切り分けて見るべき要因が大きな割合を占めていることがわかります。

増減要因の内訳(単位:億円、前年同期→当期)を見ると、有価証券損益は37億円から870億円へ+833億円拡大しました。この主因は米国不動産関連事業(CIM Group)持分の一部売却に伴う評価益です。一方で為替差損益は55億円から△308億円へ△363億円のマイナス寄与となっており、これはCIM Groupのコール・オプションの評価損によるものです。持分法による投資損益は1,209億円から1,392億円へ+183億円拡大していますが、これは資源価格上昇によるもので、比較的経常性の高い要因といえます。

セグメント別の四半期利益(親会社帰属ベース)を見ると、増益の中身がさらに鮮明になります。イノベーション・コーポレートディベロップメント区分は103億円から652億円へ、+549億円という突出した増加を見せました。主因はCIM Groupが手がけるリサイクル・量子コンピューティング関連事業のIPOに伴うFVTPL(公正価値評価)評価益です。金属資源区分も202億円から344億円へ+142億円増加していますが、これも海外エネルギー資産(豪州石炭)のIPOに伴うFVTPL評価益が主因であり、評価益要因を含んでいます。

これらを踏まえると、Q1の増益額約1,025億円のうち、イノベーション・コーポレートディベロップメント区分だけで549億円超、金属資源区分の評価益要因も合わせれば約691億円、比率にして3分の2前後が、CIM Group関連事業のIPOという一過性の資本市場イベントに紐づく評価益で説明できることになります。エネルギー区分(+97億円)、モビリティ・デジタル・インフラ区分(+236億円、自動車事業・ガスインフラが主因)、ウェルネス・エコシステム区分(+36億円、タイ養鶏等食品関連が主因)は、相対的に事業の実勢を反映した増益と見られます。

この構図を踏まえると、通期予想が親会社帰属当期利益920,000百万円(+10.3%)のまま据え置かれていることの意味も理解しやすくなります。Q1の四半期利益294,052百万円は通期予想に対して単純計算で約32.0%の進捗率にあたりますが、四半期ごとの利益が均等に発生するとは限らないうえ、増益の主因が一過性のIPO関連評価益である以上、Q1のペース(+53.4%)をそのまま通期に延長することは会社自身も想定していないと読めます。通期予想の伸び率(+10.3%)は、一過性要因を除いた実力ベースの増益ペースに近い水準を示している可能性があります。

なお、同じ2027年3月期第1四半期に増益で着地した三菱商事(8058)と比較すると、増益の質には違いがあります。三菱商事のQ1増益は持分法による投資損益+348億円(資源関連会社からの受取配当金の増加等)が主因で、豪州石炭事業の売却関連益+95億円という一過性要因は増益全体に対して相対的に小さい部分にとどまっていました。一方、三井物産のQ1増益は、経常性の高い持分法投資損益の伸び(+183億円)よりも、CIM Group関連の一過性のIPO評価益(合計691億円規模)の方が大きく、増益の質としては三菱商事よりも一過性要因への依存度が高いと言えます。

5. 配当の推移

会社が開示している2027年3月期の配当予想は、中間70.00円・期末70.00円の合計140.00円です。前期(2026年3月期)の実績配当115.00円と比べると、期初の予想時点ですでに25.00円(+21.7%)の増配を見込んでいます。株価4,880円に対する予想配当利回りは2.87%です。

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/03105円
2023/03140円
2024/03170円
2025/03100円
2026/03115円39.5%
2027/03会社予想140円140円
  • 2022/03:2024年7月の株式分割前の株数ベースの金額。現在の株数に換算するとおよそ半分の水準になる。
  • 2023/03:2024年7月の株式分割前の株数ベースの金額。
  • 2024/03:2024年7月の株式分割前の株数ベースの金額(分割後の株数に換算するとおよそ85円相当)。
  • 2025/03:2024年7月に普通株式1株を2株に分割。この期から分割後の株数ベースで一貫している。
  • 2026/03:中間55.00円・期末60.00円の実績。配当性向は概算(115円÷EPS約291.12円)で約39.5%。
  • 2027/03:中間70.00円・期末70.00円の会社予想。前期実績115円から+21.7%の増配予想で、分割後ベースでは最高水準。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の実績(2024年7月の株式分割前後で分割調整が不整合な箇所があるため生の実績値を使用)

この表で注意すべきは、2024年7月に普通株式1株を2株に分割している点です。2024年3月期以前の配当額(170円・140円・105円)は分割前の株数ベースの金額であり、現在の株数・株価とそのまま比較すると額面が2倍過大に見えます。2024年3月期の170円は、分割後の株数に換算するとおよそ85円相当です。分割後の株数で一貫している2025年3月期(100円)以降で見ると、2026年3月期は115円、2027年3月期予想は140円と、2期連続の増配が続いています。2026年3月期は純利益が前期比-7.3%だった一方で配当は増額されており、単年度の利益変動よりも配当そのものを安定的に伸ばす方針が読み取れます。2026年3月期の配当性向は概算(115円÷EPS約291.12円)で約39.5%です。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、収益4,347,565百万円(前年同期比+31.7%)、税引前利益362,156百万円(同+54.6%)、四半期利益303,080百万円(同+53.3%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益294,052百万円(同+53.4%)でした。一株当たり利益(EPS)は基本103.73円・希薄化後103.65円で、前年同期(66.68円/66.63円)から大きく拡大しています。

財務面では、2026年6月末の総資産は20,730,973百万円、資本合計9,239,277百万円、親会社所有者持分は8,980,814百万円で、持分比率は43.3%です。2026年3月末(総資産20,821,528百万円、資本合計9,017,921百万円、親会社所有者持分8,767,744百万円、比率42.1%)と比べると、3か月で総資産はわずかに減少した一方、親会社所有者持分は拡大し、比率も42.1%から43.3%へ改善しました。

有利子負債については、今回参照した決算短信・IR BANKの範囲ではグロスの総額を確認できませんでした。ニュース報道等では「ネット有利子負債」(総額から現金等を差し引いた純額)への言及が見られるものの、これは決算短信本文で確認できる総額ベースの有利子負債とは異なる概念であり、定義の異なる数値を混在させると読者の判断を誤らせるため、本記事では有利子負債の絶対額・D/Eレシオともに記載を見送っています。

2027年3月期の通期予想は、親会社帰属当期利益920,000百万円(+10.3%)・EPS予想324.54円で据え置かれています。加えて、Q1決算と同日の2026年8月4日、上限2,000億円の自己株式取得も発表されました。増配予想と自己株式取得の両方が同時に打ち出されている点は、Q1の会計上の増益とは別に、株主還元そのものを積極化させる意思の表れと見られます。

7. 業界とセクターの状況

総合商社という業態には、個社の努力だけでは変えられない構造的な特徴がいくつかあります。

第一に、資源価格・為替という外部環境への感応度です。天然ガスや金属資源をはじめとする資源権益からの収益、持分法適用会社からの投資損益は、国際的な商品市況や為替レートの変動によって大きく振れます。三井物産のQ1決算で持分法投資損益が+183億円拡大した背景に「資源価格上昇」があったことも、この構造を象徴しています。

第二に、IFRS採用による損益計算書の構成です。総合商社の多くはIFRSを採用しており、日本基準の「営業利益」「経常利益」に相当する中間段階の区分を単体では開示しません。事業投資リターンを重視するビジネスモデル上、単一の「営業利益」という指標では経営成果を測りにくいことの表れであり、業界に共通する特徴です。

第三に、事業投資モデルの深化と、それに伴う会計上の変動要因の増加です。かつての総合商社は商品の売買仲介による収益(トレーディング収益)が中心でしたが、近年は出資先企業の経営に関与し、持分法による投資損益や、出資先のIPO時のFVTPL評価損益までを取り込むモデルへの転換が業界全体で進んでいます。この転換は中長期的な収益基盤の多様化につながる一方、三井物産のQ1決算が示すように、四半期ごとの決算数値が特定の投資先の資本市場イベント(IPO・持分売却)の有無に大きく左右されるようになるという副作用も伴います。同じ2027年3月期第1四半期に大幅増益となった三菱商事(8058)でも一過性要因(豪州石炭事業の売却関連益)が寄与しており、増益の質を一過性要因と経常要因に切り分けて見る視点は、総合商社セクター全体を見る際に共通して必要になります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

Q1の親会社帰属四半期利益+53.4%のうち、一過性のIPO関連評価益を除いた実力ベースの増益が中間時点でも確認できるかが焦点。過去の発表時期からの推定。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

据え置かれている通期予想(親会社帰属当期利益920,000百万円、+10.3%)が上方修正・下方修正・据え置きのいずれで着地するかが確定する。過去の発表時期からの推定。

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

第2四半期以降の発表日は、過去の傾向からの推定です。確定日は必ず同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 中間決算発表両面

Q1の増益(+53.4%)のうち一過性のIPO関連評価益を除いた部分がどの程度残るかが最初の確認材料。CIM Group関連の評価益が反転(評価損化)する可能性もある。

2027年5月中旬(予定)通期予想の修正判断両面

通期の親会社帰属当期利益予想920,000百万円は据え置かれたまま。Q1の四半期利益294,052百万円は通期予想に対して単純計算で約32.0%の進捗率だが、一過性要因を含むため上方修正の有無は現時点では確認できない。

随時自己株式取得(上限2,000億円)の進捗上振れ

2026年8月4日にQ1決算と同時に発表。取得の進捗によっては1株当たり指標の押し上げ要因になる。

随時CIM Group(米国不動産関連事業)の追加IPO・持分売却の動向両面

Q1の増益の主因となったCIM Group関連のFVTPL評価益・有価証券損益は、同社の追加的な資本市場イベント(IPO・持分売却)の有無に左右される。今後同様の益が続くとは限らない。

10. 想定されるリスク

§2で挙げた強みと同じだけ、リスクとして押さえておくべき点があります。

増益の中身が一過性の評価益に依存している。 Q1の増益額約1,025億円のうち、549億円超はCIM Group関連事業のIPOに伴うFVTPL評価益、142億円は金属資源区分での海外エネルギー資産IPO関連評価益でした。同様の資本市場イベントが今後も同じペースで発生するとは限りません。

評価益と表裏の評価損がすでに発生している。 Q1の為替差損益は△363億円のマイナス寄与で、主因はCIM Groupのコール・オプションの評価損でした。CIM Group関連の損益は評価益・評価損の両方向に振れうる性質を持っています。

通期予想が据え置かれたまま。 2027年3月期の通期予想(親会社帰属当期利益920,000百万円、+10.3%)は、Q1の好調な決算発表後も変更されていません。Q1の伸び率(+53.4%)がそのまま通期に続く保証はなく、会社自身も一過性要因を織り込んでいないと読める水準にとどまっています。

有利子負債の総額を確認できておらず、財務レバレッジの評価に限界がある。 親会社所有者持分比率は改善傾向にありますが、有利子負債の絶対額・D/Eレシオが不明なままでは、自己資本の増加が実質的な財務健全性の改善を意味するのか、総資産・負債側の増減と合わせた全体像を確認できていません。

資源価格・為替変動の影響を受けやすい構造そのものは変わっていない。 持分法投資損益の伸び(+183億円)は資源価格上昇によるものであり、外部環境が悪化すれば同じ変動が逆方向に働く可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

この記事の整理をまとめると、次のようになります。

2027年3月期第1四半期は、親会社帰属四半期利益+53.4%という大幅増益で着地しました。しかし増益額約1,025億円のうち3分の2前後は、CIM Group関連事業のIPOに伴う一過性のFVTPL評価益によるものであり、経常的な持分法投資損益の伸び(+183億円)は増益全体からすると相対的に小さい部分にとどまっています。配当は前期比+21.7%の増配予想、上限2,000億円の自己株式取得も同時に発表されており、株主還元の姿勢そのものは明確です。

判断が分かれるのは、Q1の増益を額面通りに「増益基調への転換」と見るか、一過性要因を除いた実力ベースでは経常利益の伸びは限定的だったと見るかという1点です。通期予想(親会社帰属当期利益920,000百万円、+10.3%)がQ1のペースをそのまま延長していないことは、後者に近い会社の見方を示唆しています。次の確認ポイントは2026年11月の中間決算で、一過性要因を除いた実力ベースの増益がどの程度確認できるか、そしてCIM Group関連の評価益が反転していないかが焦点になります。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月の中間決算で、一過性のIPO関連評価益を除いた実力ベースの増益が確認できない場合(例えば中間期の親会社帰属利益の伸び率がQ1の+53.4%から大きく鈍化し、一桁台以下にとどまるなど)。
  • 通期の親会社帰属当期利益予想920,000百万円(+10.3%)が、中間決算・第3四半期決算を通過しても上方修正されないまま据え置かれ続けた場合、あるいは下方修正された場合。
  • CIM Group関連の評価益が今後反転し、FVTPL評価損として計上された場合。Q1の為替差損益が△363億円(CIM Groupのコール・オプション評価損)とマイナス寄与だったことは、その逆方向の振れがすでに一部発生していることを示している。
  • 配当予想(中間70.00円・期末70.00円・合計140.00円)が減額修正された場合。前期比+21.7%の増配路線が転換したことを意味する。

参考文献・引用元

  1. 01
    三井物産株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月4日開示。収益・税引前利益・四半期利益・親会社の所有者に帰属する四半期利益・EPS・増減要因の内訳(売上総利益・販管費・有価証券損益・固定資産評価損益・為替差損益・受取利息・支払利息・持分法投資損益・法人所得税・非支配持分帰属)・セグメント別四半期利益・総資産・資本合計・親会社所有者持分・配当の状況(実績・予想)・通期業績予想・自己株式取得(上限2,000億円)の発表を参照した。 / 2026/08/04 開示

  2. 02
    三井物産株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年3月期通期の収益・税引前利益・当期利益の実績値を参照した。

  3. 03
    IR BANK「三井物産(8031) 会社業績」

    2022年3月期〜2026年3月期の収益・親会社帰属当期利益の時系列を二次情報として参照した。

  4. 04
    IR BANK「三井物産(8031) 財務状況(詳細)」

    2022年3月期〜2026年6月末(Q1)の親会社所有者持分比率の時系列を二次情報として参照した。有利子負債の列は同ページでは全期間空欄であり、グロスの有利子負債額は一次情報でも確認できなかったため、本記事の metrics には含めていない。

  5. 05
    IR BANK「三井物産(8031) 配当金の推移」

    2022年3月期〜2027年3月期(予)の配当実績・予想を二次情報として参照した。2024年7月の株式分割(1株→2株)をまたぐため、分割調整列は不整合があり使用せず、生の実績値のみを参照した。

  6. 06
    Yahoo!ファイナンス「三井物産(8031) 株価情報」

    2026年8月10日時点の株価・時価総額・PER・PBR・EPS・BPS・ROE・自己資本比率のスナップショットを参照した。 / 2026/08/10 開示