東京海上(8766) 2027年3月期Q1は海外(北米)シフト鮮明、国内損保は採算悪化で減益
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
東京海上ホールディングス株式会社
2026/08/12 時点
株価
7,751円
時価総額
149,904億円
配当利回り
3.16%
年間245円
PER
17.5倍
PBR
1.83倍
ROE
7.1%
ROA
1.6%
純利益ベース
自己資本比率
24.3%
配当性向
55.5%
有利子負債
1,303億円
D/Eレシオ
0.02倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は保険収益が前年同期比+12.3%、税引前四半期利益が同+11.5%の増益で着地した。ただし増益の中身は、International(海外、主に北米)の修正純利益+9.2%とJapan(国内損保・生保)の-14.9%が綱引きした結果で、グループ修正純利益に占めるInternationalの比率は55.5%から62.9%へ上昇している。
- 国内損保のコンバインドレシオは86.6%から88.7%へ2.1ポイント悪化しており、保険引受採算の悪化が国内セグメント減益の一因とみられる。ただしこの悪化幅だけで修正純利益の減益幅(-14.9%)のすべてを説明できるわけではなく、要因の一部は本資料からは特定できなかった。
- 2027年3月期の配当予想245円(前期比+12.4%)は据え置かれ、配当性向は前期78.0%から55.5%へ低下する見込みである。自己資本比率は24.1%から24.3%に上昇し、有利子負債(130,282百万円、2026年6月末)も総資産・保険負債の規模に対してごく小さく、財務面での逼迫感は無い。
- この海外(特に北米)シフトを、収益源の多角化・成長エンジンの獲得と見るか、特定地域への依存度が高まるリスクと見るかで評価が分かれる。決算短信に記載の「ROE」7.1%(2026年3月期実績)と、会社が主要指標とする「修正ROE」予想13.0%は定義が異なる数字である点にも注意が必要である。
目次11項目
1. 概要
東京海上ホールディングス(8766)は、2026年8月12日時点で株価7,751円・予想PER17.54倍・実績PBR1.83倍という水準にあります。決算短信に記載された「ROE」は7.1%(2026年3月期実績)ですが、会社が主要な経営指標として重視する独自の「修正ROE」の2027年3月期予想は13.0%と、同じ「ROE」でも算出の元になる利益の定義によって数字がまったく異なります。この点は本文でも改めて整理します。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は、保険収益が前年同期比+12.3%、税引前四半期利益が同+11.5%の増益で着地しました。一見すると順調な決算ですが、内訳を見ると増益の中身は一様ではありません。会社が経営指標として重視する「修正純利益」を第1四半期のセグメント別に見ると、International(海外保険事業、主に北米)は前年同期比+9.2%の増益である一方、Japan(国内損保・生保の合算)は同-14.9%の減益でした。この結果、グループの修正純利益に占めるInternationalの比率は55.5%から62.9%へと上昇しています。
海外(特に北米)へのシフトがどこまで進み、それが何によって支えられ、国内側で何が起きているのか。この記事では、この構図を中心に整理します(→§4)。
2. 会社概要とビジネスモデル
東京海上ホールディングスは、東京海上日動火災保険を中核とする国内損害保険最大手グループの持株会社です。事業は大きく3つの報告セグメントに再編されています。国内の火災保険・自動車保険・傷害保険等を扱う「国内損保事業」、北米を中心にSpecialty P&C(専門損害保険)やEmployee Benefits(福利厚生保険)等を展開する「International(海外保険事業)」、アセットマネジメント等を手がける「Solution」です。これに国内生命保険事業を加えたグループ全体で保険引受と資産運用による収益を上げています。
会社は各事業の収益力を測る独自の経営指標として「修正純利益」を採用しています。これは親会社の所有者に帰属する当期利益から、金融収益・費用のうちキャピタル関連・ALM(資産負債管理)関連・非経常項目を控除した実質利益で、IFRS上の会計上の利益とは定義が異なります。会社はこの修正純利益を配当・ROE目標の基準にしています。
強みと弱みの整理
強み
International(海外、主に北米)の増益基調
2027年3月期第1四半期の修正純利益は前年同期比+9.2%(1,505億円→1,643億円)。通期の会社予想でも前期比+26%と、グループの利益成長を牽引する計画になっています。
増配と配当性向の低下が同時に進む
2026年3月期の配当は期初予想210円から218円へ増額して着地。2027年3月期の会社予想は245円(前期比+12.4%)で、配当性向は前期の78.0%から55.5%へ低下する見込みです。利益成長が配当の伸びを上回るペースになっています。
財務健全性の高さ
自己資本比率は2026年3月末24.1%から2026年6月末24.3%へ上昇。有利子負債は130,282百万円(2026年6月末)にとどまり、自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.02倍と極めて低い水準です。
弱み
国内損保セグメントの採算悪化
国内損保のコンバインドレシオは前年同期の86.6%から88.7%へ2.1ポイント悪化。Japanセグメントの修正純利益は第1四半期で前年同期比-14.9%、通期の会社予想でも前期比-32%という大幅減益が見込まれています。
海外(北米)への依存度上昇によるリスク集中
Internationalの構成比が6割を超えて上昇し、その中でも北米がInternationalの業務量(Total Business Volume)の67.6%を占めます。米国の保険市場サイクル・自然災害・金利動向の影響を、以前より強く受ける構造になりつつあります。
包括利益の振れ幅の大きさ
第1四半期の包括利益は前年同期の184,878百万円から375,382百万円へ、2026年3月期通期でも113,521百万円から1,535,853百万円へと大きく変動しています。保有有価証券の評価差額など金融市場要因の影響を受けやすい構造です。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 3,887,821 | — | 567,413 | 420,484 | — |
| 2023/03 | 4,469,989 | — | 503,907 | 376,447 | — |
| 2024/03 | 4,824,986 | — | 842,576 | 695,808 | — |
| 2025/03 | 7,396,221 | — | — | 450,423 | 23.2% |
| 2026/03 | 7,693,560 | — | — | 531,255 | 24.1% |
上の表で営業利益の列が空欄になっているのは、保険会社の決算短信には銀行と同様に「営業利益」という区分が無いためです。また2025年3月期以降は経常利益の列も空欄にしています。同社は2026年3月期からIFRS(国際財務報告基準)を任意適用しており、IFRSには経常利益という概念が無いため、決算短信でも開示されていません(2025年3月期はIFRS基準で比較再表示された数値です)。
読み取れることは3つあります。
収益の水準は拡大基調だが、2025年3月期の伸びは会計基準の変更を含んでいる。 J-GAAP基準の正味収入保険料は、2022年3月期の3,887,821百万円から2023年3月期に4,469,989百万円へ、前期比+15.0%拡大しました。2024年3月期は4,824,986百万円で、前期比+7.9%です。2025年3月期からはIFRS基準の「保険収益」に指標が切り替わっており、7,396,221百万円という水準には事業拡大だけでなく計上基準の変更も反映されています。この基準変更をまたいだ増減率を単純に語ることはできません。IFRS基準どうしで比較できる2025年3月期から2026年3月期にかけては、保険収益が前期比+4.0%でした。
経常利益はJ-GAAP時代、年によって大きく振れていた。 2023年3月期の経常利益は503,907百万円で、前期比-11.2%の減少でした。2024年3月期の経常利益は842,576百万円で、前期比+67.2%の急回復です。この振れの要因は本資料の範囲では特定できませんでした。2025年3月期以降はIFRSへの移行で経常利益という区分自体が無くなり、税引前当期利益(2025年3月期596,330百万円から2026年3月期750,700百万円に拡大)という異なる概念に置き換わっています。
純利益もJ-GAAP時代は大きく振れており、包括利益はさらに振れ幅が大きい。 純利益(親会社所有者帰属)はJ-GAAP時代、2023年3月期に前期比-10.5%、2024年3月期に前期比+84.9%と振れました。IFRS基準どうしで比較できる2025年3月期から2026年3月期にかけては、純利益が前期比+17.9%(450,423百万円→531,255百万円)でした。一方、包括利益は2023年3月期にマイナス116,412百万円、2024年3月期に1,874,295百万円、IFRS移行後の2026年3月期も前年同期の113,521百万円から1,535,853百万円へと、純利益よりはるかに大きく振れています。保有有価証券の評価差額など金融市場要因(FVOCI評価等)の影響とみられ、2027年3月期第1四半期の包括利益も前年同期の184,878百万円から375,382百万円へと、同じ傾向が続いています。
4. 海外(北米)シフトの加速と、国内損保の採算悪化
2027年3月期第1四半期の決算で最も特徴的なのは、グループの利益がどこで生まれているかという構成比の変化です。
会社が主要指標として開示するセグメント別の修正純利益を見ると、2027年3月期第1四半期のInternational(海外保険事業、主に北米)は1,643億円で、前年同期の第1四半期(1,505億円)から+9.2%増加しました。同じ第1四半期において、Japan(国内損保・生保の合算)の修正純利益は988億円で、前年同期の1,161億円から-14.9%の減益です。グループ全体の第1四半期修正純利益は2,613億円で、前年同期比-3.6%とわずかな減益にとどまりましたが、その中身はInternationalの増益とJapanの減益が綱引きした結果です。
この結果、グループ修正純利益に占めるInternationalの比率は、前年同期の55.5%(1,505億円÷2,710億円)から、今期は62.9%(1,643億円÷2,613億円)へと上昇しました。会社の通期予想でも、この傾向はさらに強まる見通しです。2027年3月期の通期修正純利益予想9,500億円(前年同期に対して+8%)のうち、Internationalは6,340億円(+26%)、Japanは3,050億円(-32%)と、Internationalがグループの利益成長のほぼすべてを担う計画になっています。
International内の内訳を見ると、北米(North America)が業務量の中心です。第1四半期のInternational全体のTotal Business Volume(収入保険料等)は9,347億円で、前年同期の8,014億円に対して+16.6%(現地通貨ベースでは+11.5%)でした。うち北米は6,321億円で、前年同期の5,476億円に対して+15.4%(現地通貨ベースでは+9.4%)であり、Internationalの67.6%を北米が占めています。北米の内訳はSpecialty P&C(専門損害保険、4,463億円)とEmployee Benefits(福利厚生保険、1,857億円)が中心です。
一方、国内損保の減益要因のひとつとして、保険引受採算の悪化が確認できます。国内損保のコンバインドレシオ(保険料収入に対する保険金支払いと事業費の比率で、100%を下回るほど引受採算が良いことを示す)は、前年同期の86.6%から今期は88.7%へ、2.1ポイント悪化しました。損害率の悪化傾向がうかがえますが、具体的にどの自然災害・事象が影響したかは、本資料からは特定できませんでした。なお、International側のコンバインドレシオは88.9%(前年同期88.8%)とほぼ横ばいで、健全性を維持しています。
ただし、コンバインドレシオの悪化幅(2.1ポイント)だけで、Japanセグメントの修正純利益の減益幅(-14.9%)のすべてを説明できるわけではありません。保険引受収支の悪化以外にも、投資収益や税負担、生保事業の動向など複数の要因が国内セグメントの減益に寄与している可能性があり、この記事では「保険引受採算の悪化が減益要因のひとつ」という範囲にとどめておきます。
まとめると、東京海上グループの足元の増益は、国内の苦戦を海外(特に北米)の伸びが相殺し、なお全体としてはプラスに寄与している構図です。この海外シフトを、収益源の多角化・成長エンジンの獲得と見るか、特定地域(北米)への依存度が高まるリスクと見るかは、読者によって評価が分かれるところだと考えられます。
5. 配当の推移
会社が開示している2027年3月期の配当予想は、中間122.50円・期末122.50円の合計245.00円です。前期(2026年3月期)の実績配当218円と比べると、期初の時点から+12.4%の増配を見込んだ予想になっています。株価7,751円に対する予想配当利回りは3.16%です。
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2026/03 | 210円 | 218円 | +8円 | 78.0% |
| 2027/03会社予想 | 245円 | 245円 | — | 55.5% |
- 2026/03:中間105.50円・期末112.50円で合計218円。期初予想210円から期末に増額して着地(期初予想比+3.8%)。
- 2027/03:中間122.50円・期末122.50円の会社予想。2026年8月12日発表の第1四半期決算でも据え置かれている。
2026年3月期は、期初予想の中間105.50円・期末105.00円(合計210円)に対し、期末を112.50円に増額して合計218円で着地しました(期初予想比+3.8%)。期末に増額修正する傾向がある会社であることがわかります。2027年3月期の予想245円は、この第1四半期決算の発表時点でも据え置かれています。
配当性向の推移にも触れておきます。IR BANKの集計によれば、配当性向は2025年3月期74.3%、2026年3月期78.0%と上昇したあと、2027年3月期の会社予想では55.5%へ大きく低下する見込みです。これは配当の絶対額が減るという意味ではなく、通期の修正純利益予想9,500億円(前期に対し+8%)という利益成長のペースが、配当の伸び(+12.4%)を上回ると会社が見込んでいることを反映しています。
6. 会社の現状と直近の動き
2027年3月期第1四半期の連結業績は、保険収益2,047,134百万円(前年同期比+12.3%)、税引前四半期利益378,167百万円(同+11.5%)、四半期利益(合計)286,886百万円(同+7.6%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益264,300百万円(同+3.3%)でした。基本的1株当たり四半期利益は138.25円(前年同期133.49円)です。
一方、会社が主要指標とする修正純利益は261,351百万円で、前年同期の271,061百万円から-3.6%の減益でした。IFRS上の親会社株主帰属四半期利益は前年同期比+3.3%の増益であるのに対し、修正純利益は減益という、方向が逆になっている点に注意が必要です。この差は、金融収益・費用のうちキャピタル関連・ALM関連・非経常項目(修正純利益の計算で控除される部分)が、今期と前年同期とで異なる影響を与えたことによるものです。決算短信に記載された「ROE」7.1%(2026年3月期実績)と、会社が予想する「修正ROE」13.0%(2027年3月期予想)が大きく異なるのも、同じ理由によります。同じ「ROE」という言葉でも、単純な親会社株主帰属利益を使うか、資本市場変動要因等を除いた修正純利益を使うかで、数字はまったく異なるものになります。
四半期包括利益は375,382百万円(前年同期184,878百万円、+103.0%)でした。保有有価証券の評価差額等、金融市場要因による押し上げがあったとみられますが、正確な内訳科目までは本資料からは確認できませんでした。
貸借対照表面では、2026年6月末の総資産は33,676,978百万円(2026年3月末33,002,651百万円)、親会社所有者帰属持分は8,197,310百万円(同7,955,554百万円)、自己資本比率相当は24.3%(同24.1%)でした。自己株式は1,042,558百万円で、2026年3月末の1,096,601百万円からわずかに減少していますが、減少の理由(消却・処分等)は本資料からは特定できませんでした。
有利子負債にも触れておきます。連結財政状態計算書の該当科目から見ると、有利子負債は2026年3月末128,939百万円から2026年6月末130,282百万円へとわずかに増加しました。この数値はIR BANKが集計する2026年3月期の有利子負債(128,939百万円)と一致しており、決算短信の該当科目を正しく特定できたことを確認しています。自己資本(親会社所有者帰属持分)に対する比率(D/Eレシオ)は0.02倍程度で、増加の理由は本資料からは特定できませんでしたが、絶対額としては総資産(33.7兆円)や保険契約負債(20.5兆円)の規模に対してごく小さく、財務レバレッジの観点で懸念すべき水準ではありません。保険会社の負債の大宗は、有利子負債ではなく将来の保険金支払いに備える保険契約負債(20,543,844百万円、2026年6月末)である点が、一般事業会社との構造的な違いです。
7. 業界とセクターの状況
損害保険業の業績は、個社の努力だけでは動かせない外部要因に強く規定されます。
第一に、自然災害です。台風・地震・豪雨等による保険金支払いは、発生の有無・規模によって年ごと・四半期ごとに業績を大きく左右します。今回の国内損保のコンバインドレシオ悪化(86.6%→88.7%)も、こうした自然災害・損害率の動向を反映していると考えられますが、個社が事前にコントロールできる要素ではありません。
第二に、保険引受収支の指標であるコンバインドレシオです。保険料収入に対する保険金支払いと事業費の比率で、100%を下回るほど引受採算が良いことを示します。国内は自然災害の発生状況に、海外(特に北米)は現地の保険料率(レート)サイクルに強く影響を受けます。北米の保険市場は、大規模な自然災害の後に保険料率が引き上げられる「ハードマーケット」と、競争激化で料率が下がる「ソフトマーケット」を繰り返す傾向があり、これも個社の努力だけでは動かせない構造です。
第三に、保険負債の積立という会計構造です。保険会社は収入保険料に対して将来の保険金支払いに備える保険契約負債を積み立てるため、負債の大宗が有利子負債ではなく保険契約負債になります。このため、自己資本比率や有利子負債・D/Eレシオといった一般事業会社向けの指標を、同じ基準で単純比較することはできません。
第四に、会計基準の移行です。同社は2026年3月期からIFRSを任意適用しており、経常利益という区分が無くなるなど、期間比較の難度が上がっています。これは同社固有の事情というより、国際的な事業展開を持つ日本の大手保険グループに共通する過渡期の課題です。
同社は国内損害保険最大手グループの一角ですが、同業他社(MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングス等)との詳細な指標比較は本記事では扱っていません。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定。Internationalの増益とJapanの減益という第1四半期の構図が続くかが焦点。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定。配当245円・修正純利益9,500億円という会社予想の着地を確認する回。
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定。
第2四半期以降の発表日は、過去の傾向からの推定です。確定日は必ず同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
Internationalの増益とJapanの減益という第1四半期の構図が中間決算でも続くか、Japanのコンバインドレシオが改善に向かうかが焦点になる。
台風・豪雨等の自然災害が増えれば国内損保のコンバインドレシオがさらに悪化し、保険金支払いが利益を押し下げる可能性がある。
Specialty P&C・Employee Benefitsの保険料水準や、運用資産をめぐる金利環境がInternationalの収益性を左右する。
第1四半期時点では通期予想は据え置かれている。中間決算で上方修正されるか、国内減益を理由に下方修正されるかが次の判断材料になる。
10. 想定されるリスク
強気材料と同じ重さで、リスク要因を整理します。
国内損保の採算悪化が続くリスク。 コンバインドレシオは86.6%から88.7%へ悪化しており、自然災害の発生状況次第では、さらに悪化する可能性があります。Japanセグメントの通期修正純利益予想(前期に対し-32%)は、この悪化がすでにある程度織り込まれた計画ですが、想定を超える悪化があれば下振れ余地があります。
海外(北米)への依存度上昇に伴う集中リスク。 Internationalの構成比が6割を超え、その中でも北米が業務量の67.6%を占めています。米国の保険市場サイクル、自然災害(ハリケーン等)、金利動向、為替変動の影響を、以前より強く受ける構造になりつつあります。特定地域への依存度が上がるほど、その地域固有のショックが業績全体に与える影響も大きくなります。
「修正純利益」という会社独自指標に依存した業績評価の難しさ。 会社が重視する修正純利益は、IFRS上の純利益とは異なる定義で、今回のように両者の増減方向が逆になることもあります(IFRS純利益+3.3% vs 修正純利益-3.6%)。会社発表の数字をどちらの定義で読むかによって、業績の見え方が変わる点には注意が必要です。
包括利益の振れ幅の大きさ。 前年同期比+103.0%(第1四半期)、2026年3月期通期では113,521百万円から1,535,853百万円という振れ幅は、金融市場(金利・株式)の変動によって生じているとみられます。市場環境が反転すれば、同じ方向で逆に振れる可能性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
この記事の整理をまとめると、次のようになります。
2027年3月期第1四半期は、保険収益+12.3%・税引前四半期利益+11.5%という増益決算でした。しかしその中身は一様ではなく、International(海外、主に北米)が修正純利益+9.2%と伸びる一方、Japan(国内損保・生保)は-14.9%の減益でした。グループ修正純利益に占めるInternationalの比率は55.5%から62.9%へ上昇し、会社の通期予想でもこの傾向はさらに強まる計画です。
国内損保のコンバインドレシオ悪化(+2.1ポイント)は減益要因のひとつと考えられますが、それだけで減益幅のすべてを説明できるわけではありません。また、決算短信の「ROE」7.1%と会社が重視する「修正ROE」予想13.0%が大きく異なるように、この銘柄の業績を読む際にはどの利益指標を基準にしているかを意識する必要があります。
判断が分かれるのは、この海外(特に北米)シフトを、収益源の多角化と成長エンジンの獲得と見るか、それとも特定地域への依存度が高まるリスクと見るかという1点です。次の確認ポイントは2026年11月の中間決算で、Internationalの増益基調とJapanの採算悪化がそれぞれ同じペースで続くか、あるいは変化の兆しが見えるかが焦点になります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月の中間決算で、Internationalセグメントの修正純利益の伸び率が大きく鈍化した場合(例えば一桁台前半まで低下するなど)。海外シフトが成長エンジンとして機能しなくなったことを意味する。
- 国内損保のコンバインドレシオが88.7%からさらに悪化し、90%を超えるなど、引受採算の悪化が一時的でなく構造的だと判明した場合。
- 2027年3月期の配当予想(合計245円)が据え置かれず減額された場合、または通期の修正純利益予想(9,500億円)・修正ROE予想(13.0%)が下方修正された場合。
- 自己資本比率が24.3%から大きく低下する方向に動いた場合(大規模な自然災害による保険金支払いの急増、大型M&A、格付けの引き下げなど)。
参考文献・引用元
- 01東京海上ホールディングス「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年8月12日開示。連結経営成績、四半期包括利益の内訳、連結財政状態計算書(資産・負債・資本の各科目)、配当の状況、通期業績予想を参照。有利子負債(130,282百万円、2026年6月末)は連結財政状態計算書の負債の部から特定した。 / 2026/08/12 開示
- 02東京海上ホールディングス「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年6月26日開示。通期の保険収益・税引前当期利益・当期利益・包括利益・自己資本比率・BPS・キャッシュフローを参照。2025年3月期はIFRS任意適用に伴う比較再表示値。 / 2026/06/26 開示
- 03東京海上ホールディングス「2026年度(2027年3月期) 第1四半期 決算説明資料」
セグメント別(International/Japan/Solution)修正純利益、地域別Total Business Volume、コンバインドレシオを参照。 / 2026/08/12 開示
- 04東京海上ホールディングス IR資料
通期会社予想(修正純利益9,500億円、修正ROE13.0%、配当245円)のサマリーを参照。二次的にトップページの記載を確認した。
- 05IR BANK「東京海上ホールディングス(8766) 会社業績・財務状況」
二次情報。2022年3月期〜2024年3月期のJ-GAAP時代の正味収入保険料・経常利益・当期純利益・包括利益の集計値、および有利子負債の時系列(2026年3月期128,939百万円)を参照した。この値が決算短信の連結財政状態計算書上の該当科目と一致することを確認したうえで、2026年6月末の値(130,282百万円)を同じ科目から特定した。
- 06IR BANK「東京海上ホールディングス(8766) 配当金の推移」
二次情報。配当性向の推移(2025年3月期74.3%→2026年3月期78.0%→2027年3月期予想55.5%)を参照した。
- 07Yahoo!ファイナンス「東京海上ホールディングス(8766) 株価情報」
2026年8月12日15:30時点の株価・時価総額・PER(予想)・PBR(実績)・EPS(予想)・BPS(実績)・配当利回り(会社予想)のスナップショットを参照した。 / 2026/08/12 開示