四半期分析不動産(総合デベロッパー)2027/3期 Q1

三井不動産(8801) Q1純利益-39%も賃貸・マネジメントは増益、分譲反動減の中身

2026/08/27 公開2026/08/27 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

三井不動産株式会社

東証プライム 8801 ・ 3月期決算

2026/08/07 時点

ROE

8.7%

ROA

3.1%

経常利益ベース

自己資本比率

31.4%

配当性向

35.0%

有利子負債

50,788億円

D/Eレシオ

1.57倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は売上高616,930百万円(前年同期比-23.1%)・経常利益89,493百万円(同-37.9%)・純利益75,818百万円(同-39.0%)と大幅な減益だった。ただしセグメント別の事業利益では賃貸+13.1%・マネジメント+13.8%・施設営業+4.5%といずれも増益で、減益は分譲セグメントの事業利益が124,710百万円→34,519百万円(-72.3%)まで落ち込んだことがほぼ全てを説明する。
  • 分譲セグメントの落ち込みは、前年同期に計上されていた固定資産売却益26,493百万円(特別利益)が今期はゼロになったことなど、一時的な要因の剥落が大きい。分譲事業は物件の引き渡し時期によって四半期ごとの業績が大きく振れる性質があり、この反動減自体は不動産デベロッパーに一般的な季節性の範囲と見ることもできる。
  • 会社の通期業績予想(売上高+3.3%・営業利益+3.1%・経常利益+0.5%・純利益+2.3%)はQ1決算と同時に発表されたが修正されておらず、会社はQ1の大幅減益を通期計画の範囲内と見ていることがうかがえる。配当予想も37.00円(前期比+2円、+5.7%)で据え置かれた。
  • 一方、自己資本比率は32.4%(2026年3月末)から31.4%(2026年6月末)へ低下し、有利子負債はおよそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍に達している。杭問題の求償訴訟も控訴審に移っており先行きが不透明で、これらは強気材料と釣り合う弱気材料として押さえておく必要がある。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. Q1大幅減益の中身:分譲の反動減と、増益が続く賃貸・マネジメント・施設営業
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月7日に開示された三井不動産の2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)決算短信では、売上高616,930百万円(前年同期比-23.1%)・営業利益103,507百万円(同-35.4%)・経常利益89,493百万円(同-37.9%)・親会社株主に帰属する四半期純利益75,818百万円(同-39.0%)と、数字だけを見ると大幅な減益でした。

ただし、この記事で扱う中心的な論点は、この「大幅減益」という見出しの裏側です。セグメント別に見ると、賃貸事業利益は前年同期比+13.1%、マネジメント事業利益は+13.8%、施設営業事業利益は+4.5%と、いずれも増益でした。連結全体の減益は、分譲セグメントの事業利益が124,710百万円から34,519百万円へ72.3%も落ち込んだことがほぼ全てを説明しており、その主因は前年同期にあった固定資産売却益という一時的な要因の剥落です(詳細は4節)。会社は2027年3月期の通期業績予想(売上高+3.3%・純利益+2.3%など)を修正しておらず、配当予想も前期比+2円の増配のまま据え置いています。

同時に、自己資本比率が32.4%(2026年3月末)から31.4%(2026年6月末)へ低下し、有利子負債もおよそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍まで積み上がっている点、横浜市のマンション杭施工不具合問題をめぐる求償訴訟が控訴審に進んでいる点も、あわせて確認しておく必要があります。

2. 会社概要とビジネスモデル

三井不動産は、賃貸(オフィスビル・商業施設)、分譲(マンション・戸建て住宅の開発販売)、マネジメント(他社物件の運営受託・仲介等のフィービジネス)、施設営業(ホテル・商業施設等の運営)、その他の5つの事業区分で構成される総合不動産デベロッパーです。2027年3月期第1四半期の売上高(外部顧客向け)は、賃貸241,385百万円(構成比39.1%)・分譲123,179百万円(同20.0%)・マネジメント127,787百万円(同20.7%)・施設営業65,969百万円(同10.7%)・その他58,607百万円(同9.5%)でした。ただし分譲は物件の引き渡し時期によって四半期ごとの構成比が大きく変わるため、この比率はあくまでQ1時点のものです。

強みと弱みの整理

強み

  • 賃貸事業を中心に循環収益セグメントが底堅い

    賃貸事業利益は前年同期比+13.1%(45,764百万円→51,771百万円)、マネジメント事業利益は+13.8%(17,453百万円→19,859百万円)、施設営業事業利益は+4.5%(14,405百万円→15,047百万円)と、いずれも景気変動の影響を受けにくいリカーリング収益中心のセグメントが増益でした。

  • 5期連続の増配実績

    1株配当は2022年3月期18.33円から2027年3月期予想37.00円まで(株式分割調整後)5期連続で増配が続いています。2027年3月期は前年同期比大幅減益の決算と同時に発表された予想でも、前期比+2円の増配予想は据え置かれました。

  • 通期業績予想は無修正

    2027年3月期の通期業績予想(売上高+3.3%・営業利益+3.1%・経常利益+0.5%・純利益+2.3%)はQ1決算の発表と同時に示されましたが、修正されていません。会社はQ1の大幅減益を通期計画の範囲内の動きと見ていることがうかがえます。

弱み

  • 分譲セグメントの利益は一時要因で大きく振れる

    分譲セグメントの事業利益は124,710百万円から34,519百万円へ-72.3%と急減しました。前年同期に計上されていた固定資産売却益26,493百万円が今期はゼロになったことなど、一時的な要因の影響が大きく、四半期ごとの振れ幅が大きい事業です。

  • 自己資本比率の低下と有利子負債の積み上がり

    自己資本比率は2026年3月末の32.4%から2026年6月末の31.4%へ低下しました。有利子負債はおよそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍で、長期金利が上昇局面に転じれば借入コストの増加に直結します。

  • 杭問題の求償訴訟が控訴審に係属中

    連結子会社が分譲したマンションの杭施工不具合問題をめぐる求償訴訟で、2026年6月17日の一審判決を不服として会社側が控訴しました。会社自身、現時点で影響額の合理的な見積りは困難としており、先行きは不透明です。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00750,000125,0001,500,000250,0002,250,000375,0003,000,000500,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20304034.132.832.831.932.4
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/032,100,870245,000224,940176,986271,46934.1%
2023/032,269,103305,400265,358196,998297,70832.8%
2024/032,383,289339,700267,890224,647241,69732.8%
2025/032,625,363372,700290,262248,799599,25231.9%
2026/032,709,747397,800313,319278,684145,27032.4%
2027/03会社予想2,800,000410,000315,000285,000
単位:百万円。出典:決算短信・有価証券報告書(第114期)、営業利益はIR BANK集計を補完

読み取れることは3つあります。

売上高・経常利益は5期連続で増加傾向にある。 売上高は2022年3月期2,100,870百万円から2026年3月期2,709,747百万円まで、経常利益は224,940百万円から313,319百万円まで、いずれも右肩上がりで推移してきました。2027年3月期の会社予想は売上高2,800,000百万円(前期比+3.3%)・経常利益315,000百万円(同+0.5%)で、増収は続く一方、経常利益の伸び率は直近5期のなかで最も低い水準にとどまる見込みです。

純利益の伸びが経常利益の伸びを上回る期がある。 2026年3月期は経常利益313,319百万円(前期比+7.9%)に対し、純利益278,684百万円(同+12.0%)と、純利益の伸びが経常利益の伸びを上回りました。特別損益(投資有価証券売却益・固定資産売却損益等)の影響が純利益段階でさらに上乗せされたためで、これは4節で見るQ1の一時要因剥落と表裏一体の現象です。

自己資本比率は緩やかに低下傾向にある。 2022年3月期の34.1%から2026年3月期の32.4%まで、事業拡大に伴って自己資本比率は緩やかに低下してきました(2027年3月期第1四半期末はさらに31.4%)。なお、三井不動産は2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しており、本記事のEPS・配当はすべて分割調整後(現在の株数基準)の金額です。他サイトの過去データと比較する際は基準が揃っているか注意してください。

4. Q1大幅減益の中身:分譲の反動減と、増益が続く賃貸・マネジメント・施設営業

この記事の中心的な論点は、連結の大幅減益(経常利益-37.9%、純利益-39.0%)という見出しと、セグメント別に見た実態のギャップです。

連結損益の分解

項目前第1四半期当第1四半期増減率
売上高802,316百万円616,930百万円-23.1%
営業利益160,112百万円103,507百万円-35.4%
事業利益(会社独自指標)187,709百万円104,583百万円-44.3%
経常利益144,005百万円89,493百万円-37.9%
親会社株主に帰属する四半期純利益124,232百万円75,818百万円-39.0%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「連結経営成績(累計)」

事業利益(営業利益+持分法投資損益+固定資産売却損益という会社独自の指標)の減少幅(-44.3%)が、営業利益の減少幅(-35.4%)や経常利益の減少幅(-37.9%)より大きいことは、セグメント要因の中身を見るとよくわかります。

セグメント別に見ると、増益基調のセグメントの方が多い

セグメント事業利益:前第1四半期事業利益:当第1四半期増減率
賃貸45,764百万円51,771百万円+13.1%
分譲124,710百万円34,519百万円-72.3%
マネジメント17,453百万円19,859百万円+13.8%
施設営業14,405百万円15,047百万円+4.5%
その他53百万円△194百万円
調整額△14,679百万円△16,419百万円
合計187,709百万円104,583百万円-44.3%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「セグメント情報

賃貸・マネジメント・施設営業という、テナント賃料や運営受託フィーを中心とするリカーリング収益系の3セグメントは、いずれも前年同期比で増益(それぞれ+13.1%・+13.8%・+4.5%)でした。これに対し、分譲セグメントの事業利益は124,710百万円から34,519百万円へと72.3%も落ち込んでおり、連結の事業利益の減少額(83,126百万円)のほとんどを分譲セグメント単独の減少額(90,191百万円)が占めています。つまり、連結の大幅減益は分譲セグメント1つの反動減でほぼ説明できる一方、賃貸・マネジメント・施設営業という中核の収益基盤はむしろ増益基調が続いていました。

分譲セグメントの売上高も331,772百万円から123,179百万円へ-62.9%と大きく減少しており、事業利益の落ち込みは単なる利益率の悪化ではなく、引き渡し件数・引き渡しタイミングの減少そのものを反映しています。加えて、損益計算書の特別損益を見ると、前年同期は固定資産売却益26,493百万円と投資有価証券売却益7,815百万円の合計34,309百万円を特別利益として計上していましたが、当第1四半期は投資有価証券売却益24,232百万円のみで、固定資産売却益はゼロでした。この26,493百万円の一時要因剥落は、経常利益より下の段階(純利益)での減益幅をさらに広げる方向に働いています。

会社自身の通期予想が、Q1の減益を「想定内」と位置づけている

Q1と同時に発表された2027年3月期の通期業績予想は、次のとおり修正されていません。

項目2026年3月期実績2027年3月期会社予想前期比
売上高2,709,747百万円2,800,000百万円+3.3%
営業利益397,800百万円410,000百万円+3.1%
事業利益450,000百万円+1.1%
経常利益313,319百万円315,000百万円+0.5%
親会社株主に帰属する当期純利益278,684百万円285,000百万円+2.3%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「業績予想」

当第1四半期だけで純利益は前年同期比-39.0%落ち込みましたが、通期の純利益予想はそれでも前期比+2.3%の増益です。Q1の進捗率は売上高22.0%・営業利益25.2%・純利益26.6%で、単純な4等分(25%)と比べて営業利益・純利益はむしろ高めの進捗です。不動産デベロッパーは物件の引き渡し時期によって四半期ごとの業績が大きく振れる業態のため、この進捗率だけで通期の上振れ・下振れを判断するのは適切ではありませんが、会社が通期予想を修正しなかったこと自体が、Q1の大幅減益を「分譲の反動減による一時的なもの」と見ていることを示唆しています。

配当は据え置きのまま増配予想

利益がこれだけ大きく振れても、配当予想は変わっていません。2027年3月期の配当予想は年間37.00円(中間18.50円・期末18.50円)で、前期(2026年3月期)実績の35.00円から+2円(+5.7%)の増配です。この予想はQ1決算の発表と同時に示されましたが、修正はありませんでした。

まとめると、Q1の大幅減益を見るときに押さえておくべきは2点です。減益のほぼ全ては分譲セグメントの反動減(前年同期の固定資産売却益剥落を含む)によるものであり、賃貸・マネジメント・施設営業という中核の収益基盤はむしろ増益基調が続いていること。そして、会社自身がこの減益を通期業績予想・配当予想のいずれにも反映させていないこと。 Q1の減益率だけを見て通期の見通しを引き延ばして考えると、実態を見誤ります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/0318.33円29.8%
2023/0320.67円29.8%
2024/0328円34.9%
2025/0331円34.7%
2026/0335円34.6%
2027/03会社予想37円37円35.0%
  • 2024/03:2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施。本記事の配当・EPSはすべて分割調整後(現在の株数基準)の金額。
  • 2027/03:直近の開示(2027年3月期第1四半期決算短信)から修正なし。前期比+2円(+5.7%)の増配予想。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」・有価証券報告書(配当は株式分割調整後)

配当は2022年3月期の18.33円から2027年3月期予想37.00円まで、株式分割調整後のベースで5期連続の増配です。三井不動産は2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しており、本記事に記載した配当・EPSはすべて分割調整後(現在の株数基準)の金額に統一しています。IR BANKの生データ(分割調整前の系列)には、これとは前提が異なる過去の1株配当額が混在しているため、他サイトの数値と比較する際は基準を必ず確認してください。

会社は2027年3月期の配当を37.00円(中間18.50円・期末18.50円)と明示的に予想しており、Q1決算の発表時点でこの予想は修正されていません。配当性向は2022年3月期の29.8%から2026年3月期の34.6%、2027年3月期予想の35.0%まで緩やかに上昇しており、利益の伸びよりもやや速いペースで配当を増やしてきた形です。本記事で参照した資料には過去期の期初配当予想(会社が期初に示した見込み額)が含まれていないため、期初予想からの修正有無の履歴までは確認できませんでした。

6. 会社の現状と直近の動き

財政状態:有利子負債およそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍

2026年6月30日(Q1末)時点の総資産は10,341,413百万円(2026年3月末10,103,474百万円から増加)、純資産は3,347,662百万円(同3,384,844百万円から減少)、自己資本は3,244,188百万円(同3,277,508百万円から減少)でした。自己資本比率は32.4%から31.4%へ低下しています。

決算短信の四半期連結貸借対照表から有利子負債の内訳を合算すると、短期借入金1,074,774百万円・コマーシャル・ペーパー200,000百万円・社債1,091,300百万円・長期借入金2,370,466百万円・ノンリコース長期借入金291,944百万円・ノンリコース社債50,298百万円の合計でおよそ5,078,782百万円です(決算短信に単一の「有利子負債」合計値の開示は無いため、この金額は各項目を合算して算出しました)。自己資本3,244,188百万円に対するD/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は1.57倍です。有利子負債の前期末比の増減額や、その具体的な使途(設備投資・M&A等)については、本記事で参照した決算短信の記載からは特定できませんでした。

現金及び預金は82,354百万円(2026年3月末)から237,949百万円(2026年6月末)へ増加しています。発行済株式数(自己株式を含む)は2,755,914,511株(2026年3月末)から2,718,535,953株(2027年3月期第1四半期末)へ減少しており、自己株式数も38,378,428株から27,250,106株へ減少していることから、自己株式の取得・消却が進んだことがうかがえます。

横浜市マンション杭施工不具合問題の求償訴訟

連結子会社の三井不動産レジデンシャルが分譲したマンションの杭施工不具合問題(2016年発覚、2021年に建替え完了)に関連し、同社が施工会社3社に対して起こしていた求償訴訟について、2026年6月17日に東京地裁が施工会社3社に対し約13億円の支払いを命じる第一審判決を下しました。同社はこれを不服として2026年6月30日に東京高裁へ控訴しています(請求額は約505億円)。当第1四半期末までの仮払い額は流動資産に計上済みですが、会社は今後の進捗次第で連結業績に影響する可能性があるとしつつ、現時点で影響額の合理的な見積りは困難と開示しています。控訴審の判断がどう出るかは、この記事では予想しません。

7. 業界とセクターの状況

不動産デベロッパー業界では、賃貸事業(オフィス・商業施設のテナント賃料)が安定収益の土台となり、これに分譲住宅の販売益や物件・有価証券の売却益が加わる収益構造が一般的です。今回のQ1決算が示したとおり、売却益・引き渡し益は期によって金額が大きく振れるため、増減益の要因を賃貸・マネジメント等の経常的な収益と、分譲・売却益という非経常的な要因に分けて見る必要があります。 これはこの業界に共通する読み方で、三井不動産固有の癖ではありません。

自己資本比率についても、この業界に共通する構造があります。不動産の取得を借入で賄うのが一般的なビジネスモデルであるため、自己資本比率は他業種より低めに出るのが通常です。 三井不動産の31.4%(2026年6月末)を製造業などと単純比較して「財務が弱い」と判断するのは適切ではありませんが、業界内での相対水準までは本記事で確認できていません。

もう1点、PBRの読み方にも業界特有の注意点があります。PBR(簿価ベース)は保有不動産の含み益(時価と簿価の差)を反映しません。 三井不動産は日本橋・東京駅前などの都心部で取得から長期間が経過した不動産を多く保有しており、簿価と時価の差が大きい可能性がありますが、本記事では株価データを確認できていないためPBRの水準自体は扱っていません。

さらに、長期金利(借入コストと不動産の還元利回りの基準)、東京都心のオフィス空室率・賃料相場、マンション市況(用地取得コスト・販売価格)は、いずれも個社の努力では動かせない外部要因です。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

分譲セグメントの事業利益がQ1並みの反動減から回復基調に転じるか、通期の事業利益予想(450,000百万円)に対する進捗を確認する最初の機会。過去の発表時期からの推定であり確定日ではない。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

会社予想(経常利益315,000百万円・純利益285,000百万円)に対する最終着地。杭問題の求償訴訟(東京高裁)の進捗にも言及される可能性がある。過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

次の決算(中間期)は、分譲セグメントの反動減がQ1限りだったのか、上期を通じて尾を引くのかを確認する最初の機会になります。発表日は過去の傾向からの推定であり、確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算両面

分譲セグメントの事業利益がQ1の反動減(-72.3%)からどこまで回復するか、通期の事業利益予想(450,000百万円)に対する進捗率が焦点。

随時賃貸・マネジメント・施設営業のリカーリング収益セグメントの増益基調の継続両面

Q1にいずれも増益(賃貸+13.1%・マネジメント+13.8%・施設営業+4.5%)だったこの3セグメントが、今後も景気変動の影響を受けにくい底堅さを維持できるか。

随時長期金利の動向両面

有利子負債およそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍を抱えるため、金利上昇は借入コストの増加に直結する。

未定(東京高裁の審理次第)横浜市マンション杭施工不具合問題の求償訴訟(控訴審)の判断下振れ

2026年6月17日の一審判決(施工会社3社に約13億円の支払い命令)を不服として会社側が控訴。会社は影響額の合理的な見積りは困難としており、高裁判断次第で追加の損失計上リスクがある。

2027年5月中旬(予定)2027年3月期 通期決算両面

会社予想(純利益285,000百万円・EPS105.77円)に対する最終着地。Q1の進捗率は純利益で26.6%。

10. 想定されるリスク

分譲セグメントの反動減が続くリスク。 Q1の-72.3%が一時的な反動減ではなく、マンション市況の悪化や販売・引き渡しペースの構造的な鈍化を反映している場合、通期予想の下方修正につながります。

自己資本比率の低下と有利子負債の積み上がりが続くリスク。 自己資本比率は32.4%から31.4%へ低下し、有利子負債はおよそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍まで積み上がっています。長期金利が上昇局面に転じれば、借入コストの増加という形で経常利益を圧迫します。

杭問題の求償訴訟が長期化・不利化するリスク。 一審判決(約13億円の支払い命令)を会社側が不服として控訴しており、高裁の判断次第では会社にとってより不利な内容になる可能性があります。会社自身、影響額の合理的な見積りは困難としています。

賃貸・マネジメント・施設営業の増益基調が反転するリスク。 本記事では「中核の収益基盤は底堅い」と整理していますが、これらのセグメントが今後減益に転じた場合、この整理自体が成り立たなくなります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

三井不動産の2027年3月期第1四半期決算は、経常利益-37.9%・純利益-39.0%という、見出しだけを見れば厳しい内容でした。一方で、その減益はほぼ全てが分譲セグメントの反動減(前年同期の固定資産売却益剥落を含む)によるもので、賃貸・マネジメント・施設営業という中核の収益基盤はむしろ増益基調が続いていました。会社自身、通期業績予想・配当予想のいずれも修正しておらず、Q1の減益幅を計画の範囲内と見ていることがうかがえます。

同時に、自己資本比率の低下、有利子負債の積み上がり、杭問題の求償訴訟という弱気材料も実際に存在します。

判断の分かれ目は、Q1の大幅減益を「分譲事業のタイミングによる一時的な反動減」と見るか、「事業環境の変化を映した実力の低下の始まり」と見るかです。 前者であれば、賃貸・マネジメント・施設営業が支える中核収益は据え置かれた通期予想どおり底堅く推移すると考えられますが、後者であれば、次の中間決算で分譲セグメントの回復度合いが焦点になります。この記事では株価や配当利回りの水準までは確認できていないため、それらを踏まえた割安・割高の判断は読者自身の情報収集に委ねます。

次の確認ポイントは、2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算です。分譲セグメントの事業利益がQ1並みの落ち込みから回復するかどうかが、この論点の最初の答え合わせになります。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期以降も分譲セグメントの事業利益が前年同期比で大幅な減少を続け、それでも会社が通期の事業利益予想(450,000百万円)・純利益予想(285,000百万円)を下方修正しなかった場合。反動減という整理が誤りで、分譲事業の実力そのものが低下している可能性がある。
  • 逆に、2027年3月期の通期業績予想(売上高2,800,000百万円・営業利益410,000百万円・経常利益315,000百万円・純利益285,000百万円)が下方修正された場合。Q1の大幅減益が「一時的な反動減」ではなく、通期計画そのものの見直しにつながる実態だったことになる。
  • 賃貸・マネジメント・施設営業という増益が続いていた3セグメントが、次回以降の決算で減益に転じた場合。「中核の収益基盤は底堅い」という本記事の整理の前提が崩れる。
  • 自己資本比率が2026年6月末の31.4%からさらに継続的に低下し、有利子負債(およそ5,078,782百万円・D/Eレシオ1.57倍)がさらに拡大した場合。財務健全性の評価を見直す必要がある。
  • 横浜市マンション杭施工不具合問題の求償訴訟で、東京高裁が一審(約13億円)から大きく離れた判断(会社側により不利な内容)を示し、それに伴う損失計上で通期の純利益予想(285,000百万円)に具体的な影響が生じた場合。
  • 2027年3月期の配当予想37.00円(前期比+2円)が減額修正された場合。業績変動があっても配当方針は維持されるという前提が崩れる。

よくある質問

三井不動産の配当は100株でいくらになりますか?
2027年3月期の会社予想は年間37.00円(中間18.50円・期末18.50円)です。100株保有の場合、税引前で年間3,700円(中間1,850円・期末1,850円)になります。前期(2026年3月期)実績の35.00円からは2円の増配予想です。
なぜ経常利益が-37.9%も減益なのに、通期の業績予想は据え置かれているのですか?
Q1の減益は、分譲セグメントの事業利益が前年同期の124,710百万円から34,519百万円へ急減(-72.3%)したことがほぼ全てを説明しています。この落ち込みには、前年同期に計上されていた固定資産売却益26,493百万円が今期はゼロになったという一時的な要因が含まれます。一方、賃貸・マネジメント・施設営業という循環収益中心の3セグメントはいずれも増益で、会社は通期予想(純利益+2.3%など)を修正していません。会社自身がQ1の減益幅を想定内の動きと見ていることがうかがえます。
三井不動産は2024年に株式分割をしましたか?
はい。2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しています。本記事に記載しているEPS・BPS・配当はすべて分割調整後(現在の株数基準)の金額です。他サイトの過去データと比較する際は、分割前後どちらの基準かを必ず確認してください。

参考文献・引用元

  1. 01

    三井不動産株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    連結経営成績(累計)、損益計算書の内訳(営業外損益・特別損益・法人税等)、セグメント別事業利益・売上高、配当の状況、通期業績予想、四半期連結貸借対照表(有利子負債の内訳の算出根拠)、偶発債務(横浜市マンション杭施工不具合問題の求償訴訟)の記載を参照。 / 2026/08/07 開示

  2. 02

    三井不動産株式会社「第114期(2026年3月期)有価証券報告書」

    2022年3月期〜2026年3月期の5期分の連結経営指標(EPS・BPS・配当は株式分割調整後)、2024年4月1日付の株式分割(1株につき3株)の実施記載を参照。

  3. 03
    IR BANK「三井不動産(8801) 業績」

    二次情報。2022年3月期〜2026年3月期の連結業績・財務状況・キャッシュ・フローの時系列を参照。営業利益(決算短信ベース)はこのページの数値を採用した。

  4. 04
    IR BANK「三井不動産(8801) 配当」

    二次情報。分割調整前の生データ(例: 分割前の株数を前提にした過去の1株配当額)が混在するため、本記事では有価証券報告書に基づく分割調整済みの配当系列に統一した。