アズーム(3496) 7期上げ続けた営業利益率が初めて下がる予想。会社は「コスト先行」と説明している
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
株式会社アズーム
2026/08/23 時点
株価
4,805円
時価総額
593億円
配当利回り
2.62%
年間126円
PER
31.3倍
PBR
9.39倍
ROE
34.7%
ROA
36.1%
経常利益ベース
自己資本比率
73.9%
配当性向
70.3%
有利子負債
1億円
D/Eレシオ
0.01倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2020年9月期から2025年9月期までの5年間で、売上高は3,814百万円から13,479百万円へ3.5倍になり、営業利益率は5.9%から19.4%へ13.5ポイント上がった。増収率は毎期27〜30%の範囲に収まっており、単年の跳ねではない。
- この利益率の上昇は、ほぼ全部が販管費率の低下で説明できる。2022年9月期から2025年9月期にかけて売上高販管費率は28.8%から22.9%へ5.9ポイント下がり、営業利益率は13.7%から19.4%へ5.7ポイント上がった。同じ期間の売上総利益率は42.5%から42.3%でほぼ動いていない。稼ぐ力そのものではなく、固定費を売上で薄めてきたことが利益率上昇の中身である。
- 2026年9月期の会社予想は、この関係が初めて逆を向く。増収率+26.1%に対して営業増益率は+20.5%で、営業利益率は18.5%へ0.9ポイント下がる。会社は決算説明資料で「一時的な成長率の落ち着きは、中計達成に向けた営業人員強化・新規受託台数前倒しによるコスト先行のため」と説明している。
- ただし第3四半期累計の費目の内訳は、その説明と正確には一致しない。販管費率は前年同期の23.9%から23.6%へむしろ改善しており、下がったのは売上総利益率のほう(41.4%→41.1%)である。採用コストが販管費に計上されているなら販管費率が上がるはずで、そうなっていない。原価と販管費のどちらに営業人員の人件費が入るかは決算短信からは特定できなかった。
- 成長の中身は台数の増加でほぼ説明できる。サブリース台数(稼働台数)は前年同期末の31,128台から39,530台へ+27.0%、遊休資産活用事業の売上高は+26.4%で、伸び率がほぼ一致する。稼働台数1台あたりの月額売上は概算で36.8千円から37.0千円とほぼ横ばいで、単価が上がって伸びているわけではない。
目次11項目
1. 概要 — 何をしている会社で、なぜ伸びているか
アズーム(3496)は、月極駐車場のポータルサイト「CarParking」を運営し、駐車場オーナーから空き区画を一括で借り上げて(マスターリース)利用者に転貸する(サブリース)会社です。2026年9月期第3四半期決算短信によれば、遊休資産活用事業の売上高は12,062百万円で、連結売上高12,265百万円の98.3%を占めます。実質的に一本足の会社です。
伸びは期待ではなく実績として出ています。2020年9月期の売上高3,814百万円が2025年9月期には13,479百万円と3.5倍になり、その間の増収率は毎期+27〜30%の範囲に収まっています。単年の跳ねではなく、6期続けて同じペースで伸びています。
同時に、営業利益率が5.9%(2020年9月期)から19.4%(2025年9月期)まで一貫して上がってきました。増収と利益率改善が重なるため、営業利益は224百万円から2,613百万円へ11.7倍になっています。
2026年9月期の会社予想は、売上高17,000百万円(+26.1%)・営業利益3,150百万円(+20.5%)です。増収率は変わらない一方で、営業増益率が増収率を下回るのは、確認できる範囲では初めてです。営業利益率は18.5%と、前期から0.9ポイント下がる計算になります。この記事は、その1点を検証します。
2. ビジネスモデルと収益構造
決算短信の記載によれば、遊休資産活用事業は2つのサービスからなります。1つはポータルサイト経由で駐車場を紹介する「月極駐車場紹介サービス」(仲介手数料型のフロー収入)、もう1つがオーナーから一括で借り上げて転貸する「月極駐車場サブリースサービス」(毎月の賃料差額が積み上がるストック収入)です。決算説明資料では、紹介サービスの比率は今後も低下を想定すると明記されています。伸びているのはサブリースのほうです。
サブリースは、売上と原価の構造が単純です。利用者から受け取る賃料が売上、オーナーへ支払う借上げ賃料が原価で、その差が売上総利益になります。2025年9月期の売上総利益率は42.3%でした。
このモデルには構造的な時間差があります。借り上げた時点で賃料の支払いは始まりますが、利用者が決まるまで売上は立ちません。 決算短信の貸借対照表では、この先払い分が前払費用として計上されており、2025年9月期末の999百万円から2026年9月期第3四半期末には1,181百万円へ増えています。受託を前倒しで増やすほど、この先払いは膨らみます。
埋まり具合を示すのが稼働率(稼働台数÷受託台数)です。2026年9月期第3四半期末は受託42,432台に対して稼働39,530台で93.2%。決算説明資料によれば、この指標は2021年9月期の92%以降、90.7%〜93.2%の範囲で安定しています。借りた駐車場は9割以上が埋まる、というのがこの会社の実力値です。
3. 成長の実績
決算短信から取った通期業績の推移です。単位は百万円です。
| 期 | 売上高 | 増収率 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020年9月期 | 3,814 | — | 224 | 5.9% | 139 | 50.3% |
| 2021年9月期 | 4,974 | +30.4% | 507 | 10.2% | 326 | 51.9% |
| 2022年9月期 | 6,417 | +29.0% | 878 | 13.7% | 597 | 57.6% |
| 2023年9月期 | 8,273 | +28.9% | 1,282 | 15.5% | 878 | 64.1% |
| 2024年9月期 | 10,541 | +27.4% | 1,828 | 17.3% | 1,288 | 67.1% |
| 2025年9月期 | 13,479 | +27.9% | 2,613 | 19.4% | 1,831 | 76.7% |
| 2026年9月期(会社予想) | 17,000 | +26.1% | 3,150 | 18.5% | 2,200 | — |
増収率は6期にわたって+26〜30%の範囲に収まっており、営業利益率は毎期上がっています。ここまでは、成長株として教科書的な形です。
1株当たり利益の推移を単純に並べてはいけない点に注意が必要です。 同社は2022年12月27日と2025年10月1日の2回、いずれも1株を2株にする株式分割を行っています。決算短信のEPSはその期の開示時点の株数を前提にしているため、2023年9月期の149.22円と2024年9月期の109.07円を並べると減益に見えますが、これは分割による見かけの動きです。本記事のfinancialsでは、現在の株数を前提に算定されている2024年9月期以降のEPS(109.07円→153.62円→会社予想179.27円)だけを載せています。
直近の第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)は、売上高12,265百万円(前年同期比+26.4%)・営業利益2,151百万円(同+26.6%)・純利益1,529百万円(同+26.8%)です。通期予想に対する進捗率は売上高72.1%・営業利益68.3%・純利益69.5%で、会社は通期予想を据え置いています。
4. ★成長は何に支えられているか
伸びているのは台数で、単価ではない
まず売上の伸びを分解します。決算短信に載っている台数と売上を並べます。
| 2025年9月期3Q末 | 2026年9月期3Q末 | 伸び | |
|---|---|---|---|
| 受託台数(マスターリース) | 33,456台 | 42,432台 | +26.8% |
| 稼働台数(サブリース) | 31,128台 | 39,530台 | +27.0% |
| 稼働率 | 93.0% | 93.2% | +0.2pt |
| 遊休資産活用事業 売上高 | 9,546百万円 | 12,062百万円 | +26.4% |
稼働台数の伸び(+27.0%)と売上の伸び(+26.4%)がほぼ一致します。 つまり成長のほぼ全量が台数の増加によるもので、1台あたりの単価が上がって伸びているわけではありません。
念のため単価も概算しておきます。遊休資産活用事業の四半期累計売上を9か月と期中の平均稼働台数で割ると、2026年9月期第3四半期は約37.0千円/台/月、前年同期は約36.8千円/台/月です(前年同期の平均台数の算出には、決算説明資料の稼働率91.5%から逆算した2024年9月期末の稼働台数26,526台を使っているため概算値です)。ほぼ横ばいで、単価の寄与は無視できる大きさです。
一方で需要の入口を見ると、駐車場問い合わせ件数は第3四半期累計で351,346件(前年同期291,609件、+20.5%)です。台数の伸び(+26.8%)が問い合わせの伸び(+20.5%)を上回っています。 引き合いの増加より速く台数を積んでいることになり、この差が営業人員の増加によるものか、成約効率の改善によるものかは開示からは分かれません。
利益率の上昇は、稼ぐ力ではなく固定費の希薄化だった
次に、利益率の上昇が何で起きていたのかを費目に割ります。決算短信の連結損益計算書から、売上総利益率と販管費率を計算します。
| 期 | 売上総利益率 | 販管費率 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 2022年9月期 | 42.5% | 28.8% | 13.7% |
| 2023年9月期 | 42.4% | 26.9% | 15.5% |
| 2024年9月期 | 41.9% | 24.6% | 17.3% |
| 2025年9月期 | 42.3% | 22.9% | 19.4% |
売上総利益率は42%前後でほとんど動いていません。 動いているのは販管費率だけで、4期で28.8%から22.9%へ5.9ポイント下がりました。同じ期間の営業利益率の上昇は5.7ポイントです。ほぼ一致します。
つまり、この会社の利益率上昇は「1台あたりの儲けが厚くなった」からではなく、売上が増えても販管費が同じペースでは増えなかったからです。ストック型の売上が積み上がる一方で本社機能や広告費の増加が緩やかであれば、こうなります。健全な形ではありますが、意味するところは重要です。売上総利益率が動かない以上、利益率をさらに上げる余地は販管費率をどこまで下げられるかだけにかかっています。
会社の説明と、費目の動きが一致しない
会社は決算説明資料で、2026年9月期の減速をこう説明しています。「一時的な成長率の落ち着きは、中計達成に向けた営業人員強化・新規受託台数前倒しによるコスト先行のため」。実際、同資料には第3四半期に過去最大となる約100名の採用を行い、リーシング営業部門を中心に組織を強化したと書かれています。
この説明が正しければ、増えたコストは人件費なので販管費率が上がるはずです。第3四半期累計の実績を前年同期と比べます。
| 2025年9月期3Q累計 | 2026年9月期3Q累計 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 売上総利益率 | 41.4% | 41.1% | ▲0.3pt |
| 販管費率 | 23.9% | 23.6% | ▲0.3pt |
| 営業利益率 | 17.5% | 17.5% | ±0.0pt |
販管費率は上がっておらず、むしろ0.3ポイント改善しています。下がっているのは売上総利益率のほうです。 営業利益率が横ばいにとどまった直接の理由は、原価側の悪化です。
決算短信は売上原価の内訳を開示していないため、営業人員の人件費が売上原価と販管費のどちらに計上されているかは特定できませんでした。サブリース事業では、客付け(リーシング)に関わる人件費が売上原価に含まれる会計処理もありえます。その場合は会社の説明と数字は矛盾しません。
ただし、原価側が悪化する説明はもう1つあります。借上げ賃料の上昇と、稼働までの空室期間です。 受託を前倒しで増やせば、埋まる前の駐車場に対する支払いが先に原価へ乗ります。前払費用が999百万円から1,181百万円へ増えているのは、その動きと整合します。稼働率が93.2%と高水準を保っている以上「埋まらない駐車場が積み上がっている」わけではありませんが、新規に借り上げた分の賃料が売上に変わるまでのタイムラグは、成長を加速するほど大きくなります。
どちらの説明が正しいかは、この四半期の開示だけでは決められません。決め手になるのは次の通期以降の売上総利益率です。採用コストが原因なら42%台に戻り、借上げ賃料の構造変化なら41%台に留まります。これを watchpoints に置いています。
会社予想は第4四半期のさらなる利益率低下を織り込んでいる
もう1つ、通期予想の中身に注意すべき点があります。第3四半期までの実績と通期予想の差から、第4四半期に必要な数字を逆算します。
- 必要な売上高:17,000 − 12,265 = 4,735百万円(前年同期3,773百万円に対して+25.5%)
- 必要な営業利益:3,150 − 2,151 = 999百万円(前年同期915百万円に対して+9.2%)
- その場合の第4四半期の営業利益率:21.1%(前年同期24.3%)
会社自身が、第4四半期に営業利益率が3.2ポイント下がる前提を置いています。 通期予想は据え置かれていますが、その中身は「売上は変わらず伸びるが、利益率は下がる」というものです。上振れの余地とも読めますし、コスト先行が第4四半期にさらに強く出る想定とも読めます。11月中旬の通期決算が最初の答え合わせになります。
5. 黒字化・利益率のシナリオ
同社は営業黒字であり、営業赤字を許容する枠(/method の成長株の基準における例外条件)には該当しません。したがって黒字化のタイムラインという論点はありません。論点は利益率の水準です。
決算説明資料の中期経営計画2030では、2030年9月期に営業利益率25%を掲げています。2025年9月期の19.4%から5.6ポイントの上積みです。§4で見たとおり売上総利益率がほぼ一定である以上、この5.6ポイントは販管費率を22.9%から17%台まで下げることで作る計算になります。
会社が示している手段は、AI活用(プロジェクトSYNAPSE)による1人あたり生産性の2〜3倍への引き上げと、それに伴う人員配置の最適化です。生産性が実際に2倍になれば、売上あたりの人件費は理屈のうえでは半分になります。ただし、これは現時点では計画であり、実績で確認できるものではありません。2026年9月期はその第1年目にあたり、会社予想の営業利益率は前期より下がります。 計画の初年度に指標が逆を向いている、という事実は押さえておく必要があります。
6. 財務とキャッシュ
2026年9月期第3四半期末の財政状態です。
- 総資産8,538百万円、純資産6,319百万円、自己資本比率73.9%(2025年9月期末は76.7%)
- 現金及び預金4,670百万円
- 有利子負債は1年内返済予定の長期借入金35百万円+長期借入金38百万円の計74百万円
実質無借金で、ネットキャッシュは約46億円です。 自己資本の1%程度しか借りておらず、D/Eレシオは0.01倍です。時価総額593億円に対してネットキャッシュが46億円あります。
営業キャッシュ・フローは2020年9月期の366百万円から2025年9月期の1,948百万円まで、6期連続でプラスかつ増加基調です。2025年9月期の投資キャッシュ・フローは△459百万円で、営業CFの4分の1以下にとどまります。駐車場を「買う」のではなく「借りる」モデルなので、成長に大きな設備投資を必要としません。 これが、後述する高い還元方針を成り立たせている土台です。
希薄化の状況です。期中平均株式数は2025年9月期第3四半期の11,831,579株から2026年9月期第3四半期の12,298,529株へ+3.9%増えています(いずれも2025年10月1日の株式分割を遡及適用した株数)。貸借対照表の新株予約権は2025年9月期末の7,740千円から第3四半期末には計上が無くなっており、資本金は300百万円から316百万円へ増えています。ストックオプションの行使が進んだ形です。潜在株式調整後1株当たり四半期純利益は124.01円で、調整前の124.37円との差は0.3%にとどまります。現時点で残っている希薄化余地は小さいと読めます。
なお2025年9月期には、プライム市場への市場区分変更に伴う新株式発行と自己株式の処分により現預金が26億円増えています。自己資本比率が67.1%から76.7%へ上がったのは主にこの資金調達によるものです。
株主還元
2025年11月13日に配当方針を変更し、DOE(連結株主資本配当率)20%以上の水準維持と累進配当を基本方針としました。2026年9月期の予想配当は年間126円(中間63円・期末63円)、予想配当性向は70.3%です。
年率26%で増収する会社の配当性向が70%というのは、成長株としては異例の高さです。§6で見たとおり成長に設備投資をほとんど必要としないモデルなので、理屈のうえでは両立します。ただし成長投資と還元のどちらかを選ぶ局面が来たときに、累進配当という約束が制約になる可能性は残ります。
配当の推移を読むときは株式分割に注意が必要です。2025年9月期の212円は分割前の金額(うち80円は市場区分変更の記念配当)で、分割後に換算すると106円です。2026年9月期予想の126円は分割後の金額なので、記念配当を含めた前期比では+18.9%、記念配当を除いた普通配当ベース(分割後66円)との比較では+90.9%になります。
7. 競合と参入障壁 — この成長を誰が止めうるか
このビジネスで守りになりうるものは、決算短信・決算説明資料から読み取れる範囲では次の3つです。
1つはポータルサイト「CarParking」への集客です。決算短信は「従来は店舗型の不動産仲介業者にて月極駐車場を探していたユーザーが、当社が運営するポータルサイトを通じてインターネット経由で流入するケースがより増えてきております」と記しています。検索流入が積み上がるほど、後発が同じ規模の引き合いを集めるコストは上がります。
2つめは受託台数そのものです。42,432台という規模は、オーナー側から見れば「実績のある相手」であることの証明になります。分譲マンションやオフィスビルの附置義務駐車場という、1件あたりの区画数が多い物件を取れているのはその効果と考えられます。
3つめは周辺サービスの束ね方です。連結子会社の株式会社鉄壁が月極駐車場に特化した賃料保証を提供しており、保証委託契約数は28,000件を突破しています。滞納リスクの引き受けまで含めて提供できることは、単なる仲介との差になります。
一方で、参入障壁を過大評価すべきではありません。マスターリースとサブリースという仕組み自体に特許性はなく、必要なのは資本ではなく営業人員です。 大手不動産管理会社が本気で同じことを始めれば、既存の管理物件をそのまま供給源にできる分だけ有利な立場にあります。同社の優位は「先に手をつけて、集客と実績を積んだこと」であって、構造的に模倣できないものではありません。
なお、規模の実感として、遊休資産活用事業のセグメント利益率は第3四半期累計で17.65%(前年同期17.92%)です。セグメント利益の伸び(+24.4%)が売上の伸び(+26.4%)を下回っており、主力事業の段階でも利益率はわずかに低下しています。§4で見た全社の傾向と一致します。
もう一方のビジュアライゼーション事業(3DCG・VR)は第3四半期累計の売上高206百万円と全社の1.7%にとどまりますが、前年同期のセグメント損失10百万円からセグメント利益24百万円へ黒字転換しています。規模が小さいため全社の利益率への寄与は限定的です。
8. バリュエーションの前提
2026年8月21日終値4,805円、時価総額593億円を前提にした指標です。
- 実績PER:31.3倍(2025年9月期EPS 153.62円)
- 予想PER:26.8倍(2026年9月期会社予想EPS 179.27円)
- PBR:9.4倍(第3四半期末BPS 511.7円)
- 予想配当利回り:2.62%(年間126円)
PBR9.4倍は、資産を持たないビジネスなので水準としての意味は薄く、実質的にはPERで見ることになります。予想PER26.8倍は、会社予想の増益率+20.1%とほぼ同じ水準です。
中期経営計画2030の営業利益125億円が達成された場合、現在の時価総額593億円はその4.7倍にあたります。逆に言えば、今の株価は「中計がある程度は実現する」ことを前提にしていません。むしろ、2026年9月期の会社予想に対しては素直な水準です。
判断の分かれ目は、中期計画の前提である受託台数12万台にどれだけ近づけるかです。2026年9月期第3四半期末が42,432台、期初計画の年間純増が+8,000台以上ですから、2030年9月期に12万台へ届かせるには2027年9月期以降に年平均およそ19,000台の純増が必要になります。現在の計画ペースの2倍以上です。この差をAIによる生産性向上と人員増でどこまで埋められるかが、計画の現実味を決めます。本記事は株価の到達水準を予想しません。 判断材料として、この台数のギャップを提示するにとどめます。
9. 経営陣と株主構成
決算短信の表紙によれば、代表者は代表取締役社長CEOの菅田洋司氏、問合せ先責任者は取締役専務執行役員CFOの馬場涼平氏です。2025年9月期決算短信は「創業以来『不動産×IT』を掲げ、遊休不動産の問題をITの力で解決することで上場以来増収増益を実現してまいりました」と記しており、創業以来の経営方針が継続していることが会社自身の言葉で確認できます。
大株主の持株比率については、本記事では一次情報(有価証券報告書)を確認できていません。 創業者が筆頭株主付近に残っているかどうかは成長株を見るうえで重要な項目ですが、確認できていない以上、ここでは判断材料として提示しません。次回の経過観察までに有価証券報告書で確認する項目とします。
海外拠点として、ベトナムに子会社2社(AZOOM VIETNAM INC.およびCGWORKS VIETNAM INC.)を置き、システム開発とグラフィックデータ制作を担わせています。国内の人件費上昇に対する備えとして機能しうる構成です。
10. リスク
原価側の悪化が構造的なものだった場合。 §4で見たとおり、第3四半期累計で下がったのは売上総利益率です。借上げ賃料の相場が上がっているのであれば、これは景気や不動産市況に連動する外部要因であり、同社の努力では止められません。売上総利益率が1ポイント下がると、2026年9月期の売上規模では営業利益が約170百万円削られます。
中期計画の台数目標との乖離。 2030年9月期の12万台以上に必要な年平均純増(約19,000台)に対し、2026年9月期の計画は+8,000台以上です。計画の初年度から2倍以上の開きがあり、後半での加速を前提にした計画になっています。
成長のほぼ全量が台数の増加に依存していること。 単価はほぼ横ばいなので、台数の純増が鈍ればそのまま増収率に響きます。台数を積むのは営業人員なので、採用と育成が止まれば成長も止まります。過去最大の約100名という採用がそのまま戦力化するかどうかは、次期以降の1人あたり成約台数で判定されます。
問い合わせ件数の伸びの鈍化。 第3四半期累計の問い合わせ件数は+20.5%で、受託台数の伸び+26.8%を下回っています。需要の入口の伸びが台数の伸びに追いつかない状態が続けば、いずれ台数の伸びも入口に引き戻されます。
単一事業への集中。 遊休資産活用事業が売上の98.3%を占めます。月極駐車場という市場に対する需要変動(都心部の自動車保有台数の減少、カーシェアの普及など)が、そのまま全社の業績になります。
高い還元方針の制約。 DOE20%以上・累進配当は、業績が計画から下振れした局面でも配当を維持することを意味します。成長投資と還元が競合したときに、方針が制約として働く可能性があります。
バリュエーションの前提が崩れたときの下落幅。 予想PER26.8倍・PBR9.4倍は、増収率25%前後の継続を前提にした水準です。増収率が10%台に落ちれば、利益の減少とバリュエーションの切り下げが同時に起こります。
11. まとめ — 何を追跡すれば見立ての正否がわかるか
この記事の見立ては次のとおりです。アズームの成長は台数の積み上げによる実体のあるもので、稼働率93%前後という高い水準も安定しています。ただし7期にわたる利益率の上昇は販管費の希薄化で説明できるもので、売上総利益率はほとんど動いていません。 そして2026年9月期は、会社予想でも第3四半期実績でも、その上昇が初めて止まっています。会社は一時的なコスト先行と説明していますが、実際に下がっているのは販管費率ではなく売上総利益率であり、説明と費目の動きは正確には一致していません。
答え合わせをするための追跡項目は、frontmatter の watchpoints に5件置いています。要点は次の3つです。
- 2027年9月期の営業利益率が19.4%を回復するか。 回復しなければ「一時的なコスト先行」という説明は2期にわたって裏づけを欠きます。
- 売上総利益率が42%台に戻るか。 戻れば採用コスト説、41%台に留まれば原価側の構造変化です。
- 受託台数の年間純増が12,000台に届くか。 2030年9月期の12万台には年平均19,000台が必要で、2027年9月期がその軌道に乗る最初の年になります。
最初の答え合わせは2026年11月中旬の通期決算です。そこで第4四半期の営業利益率(会社予想からの逆算では21.1%、前年同期24.3%)と、受託台数の年間純増(会社計画+8,000台以上)が確認できます。本格的な判定は2027年9月期の通期決算になります。
本記事は判断材料の提示であり、売買の推奨ではありません。銘柄の選び方と本記事が使った基準は /method に掲載しています。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年9月期の営業利益率が19.4%(2025年9月期の実績)を下回った場合。本記事は「利益率の低下は先行コストによる一時的なもの」という会社の説明を検証可能な仮説として扱っているが、2期続けて19.4%を回復できなければ、その説明は実績で否定されたことになる。
- 売上総利益率が41%を下回って定着した場合。本記事は「売上総利益率はほぼ一定で、利益率上昇の中身は販管費率の低下だった」という分解を前提にしている。原価側が構造的に悪化しているなら、販管費を薄める余地が残っていても営業利益率は上がらない。
- 期末稼働率が91%を下回った場合。受託台数を前倒しで増やす戦略は、稼働率が保たれる限りにおいて売上に変わる。稼働率の低下は、借り上げたまま埋まらない駐車場が積み上がっていることを意味し、その賃料は原価として先に出ていく。
- 受託台数の年間純増が2026年9月期の計画水準(+8,000台)から増えていかない場合。2030年9月期の売上高500億円は受託12万台以上を前提にしており、純増ペースが今のままなら台数も売上高も計画に届かない。
- 成長資金を公募増資や第三者割当で調達した場合。本記事はDOE20%以上・累進配当という高い還元方針と年率30%成長の両立を「成長に自己資本をあまり必要としないビジネスだから成り立つ」と読んでいる。増資はその前提を直接否定する。
- 月極駐車場のポータルサイト経由の流入が鈍り、駐車場問い合わせ件数の伸びが台数の伸びを下回り続けた場合。第3四半期累計の問い合わせ件数は351,346件(前年同期比+20.5%)で、すでに受託台数の伸び(+26.8%)を下回っている。需要の入口が細れば台数の積み上げは営業人員の増加だけに依存することになる。
よくある質問
- アズームはどんな会社ですか?
- 月極駐車場のポータルサイト「CarParking」を運営し、駐車場オーナーから空き駐車場を一括で借り上げ(マスターリース)て利用者に転貸する(サブリース)事業が主力です。2026年9月期第3四半期時点の受託台数は42,432台、稼働台数は39,530台で、遊休資産活用事業が連結売上高の98%を占めます。2018年に上場し、2025年6月24日に東証グロース市場から東証プライム市場へ市場区分を変更しました。
- アズームの営業利益率が下がるのはなぜですか?
- 2026年9月期の会社予想は営業利益率18.5%で、2025年9月期の実績19.4%から0.9ポイント下がります。会社は決算説明資料で、中期経営計画の達成に向けた営業人員の強化と新規受託台数の前倒しによるコスト先行だと説明しています。ただし第3四半期累計で実際に下がっているのは売上総利益率(41.4%→41.1%)で、販管費率はむしろ改善(23.9%→23.6%)しており、採用コストという説明と費目の動きは正確には一致していません。
- アズームの配当はいくらですか?
- 2026年9月期の会社予想は1株あたり年間126.00円(中間63.00円・期末63.00円)で、2026年8月21日終値4,805円に対する予想利回りは2.62%、予想配当性向は70.3%です。2025年11月13日に配当方針をDOE(連結株主資本配当率)20%以上の水準維持と累進配当へ変更しています。なお2025年9月期の212.00円は2025年10月1日の株式分割前の金額で、うち80.00円は市場区分変更の記念配当です。
- アズームの中期経営計画の目標は何ですか?
- 2026年7月30日の決算説明資料で開示された中期経営計画2030では、2030年9月期に売上高500億円(2025年9月期からのCAGR30.0%)、営業利益125億円(同36.8%)、営業利益率25%、駐車場受託台数12万台以上、ROE40%の水準維持を掲げています。受託台数は2026年9月期第3四半期末で42,432台なので、12万台に届かせるには2027年9月期以降に年平均およそ19,000台の純増が必要になります。2026年9月期の期初計画は+8,000台以上です。
参考文献・引用元
- 01株式会社アズーム「2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年7月30日開示。1ページ目の連結経営成績(売上高12,265百万円・営業利益2,151百万円・経常利益2,144百万円・四半期純利益1,529百万円)、通期業績予想、2ページ目の期末発行済株式数12,335,600株・期中平均株式数12,298,529株、2ページ目(本文2ページ)のセグメント別業績と受託台数42,432台・稼働台数39,530台・問い合わせ件数351,346件、財政状態(総資産8,538,671千円・自己資本比率73.9%)、四半期連結貸借対照表(現金及び預金4,670,959千円・前払費用1,181,470千円・1年内返済予定の長期借入金35,641千円・長期借入金38,744千円)、四半期連結損益計算書(売上原価7,222,833千円・売上総利益5,042,522千円・販売費及び一般管理費2,891,311千円)を参照。 / 2026/07/30 開示
- 02株式会社アズーム「2026年9月期 第3四半期決算説明資料」
2026年7月30日開示。中期経営計画2030(2030年9月期に売上高500億円・営業利益125億円・営業利益率25%・受託台数12万台以上・ROE40%水準)、株主還元方針(DOE20%以上・累進配当)、受託台数と期末稼働率の推移(2021年9月期14,403台・92%〜2026年9月期第3四半期42,432台・93.2%)、サブリースARR167億円、期初計画の純増8,000台以上、約100名の採用、業績進捗率(売上高72.1%・営業利益68.3%・純利益69.5%)、および「一時的な成長率の落ち着きは、中計達成に向けた営業人員強化・新規受託台数前倒しによるコスト先行のため」という会社の説明を参照。 / 2026/07/30 開示
- 03株式会社アズーム「2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年11月13日開示。2024年9月期・2025年9月期の連結経営成績、営業利益率(17.3%・19.4%)・ROE(41.0%・34.7%)・総資産経常利益率(38.3%・36.1%)、自己資本比率(67.1%・76.7%)、キャッシュ・フロー、配当の状況(2024年9月期25.00円・2025年9月期212.00円のうち記念配当80.00円・2026年9月期予想126.00円)、2025年6月24日のグロース市場からプライム市場への市場区分変更、新株式発行及び自己株式の処分、2025年11月13日の配当方針変更(DOE20%以上・累進配当)、通期のセグメント別業績と受託台数35,381台・稼働台数32,883台、連結損益計算書(売上原価・売上総利益・販売費及び一般管理費)を参照。 / 2025/11/13 開示
- 04株式会社アズーム「2025年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年7月31日開示。前年同期の比較対象として、受託台数33,456台・稼働台数31,128台・問い合わせ件数291,609件、遊休資産活用事業の売上高9,546,585千円とセグメント利益1,710,980千円を参照。 / 2025/07/31 開示
- 05株式会社アズーム「2023年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年11月10日開示。2022年9月期・2023年9月期の連結経営成績、営業利益率(13.7%・15.5%)、自己資本比率、キャッシュ・フロー、配当の状況、連結損益計算書(売上原価・売上総利益・販売費及び一般管理費)を参照。売上総利益率と販管費率の時系列の起点はこの短信。 / 2023/11/10 開示
- 06株式会社アズーム「2021年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2021年11月11日開示。2020年9月期・2021年9月期の連結経営成績(営業利益率5.9%・10.2%)、自己資本比率、キャッシュ・フローを参照。financials の起点はこの短信。 / 2021/11/11 開示
- 07IR BANK「アズーム(3496)」
二次情報。2026年8月21日終値4,805円・時価総額592億7,255万円、および2018年9月期から株価データが始まること(=2018年上場)の確認に参照。本記事の財務数値はすべて上記の決算短信から取っており、IR BANK の表示値は使っていない。