四半期分析医薬品2027/3期 Q1

ツムラ(4540) 経常利益+57.8%の中身は為替差益、自己資本比率横ばいの裏で借入急増

2026/08/20 公開2026/08/20 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

株式会社ツムラ

東証プライム 4540 ・ 3月期決算

2026/08/20 時点

株価

3,817円

時価総額

2,845億円

配当利回り

4.14%

年間158円

PER

10.1倍

PBR

0.88倍

ROE

8.7%

ROA

7.6%

経常利益ベース

自己資本比率

54.3%

配当性向

39.4%

有利子負債

1,387億円

D/Eレシオ

0.42倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は売上高497億04百万円(前年同期比+15.3%)・営業利益78億81百万円(同+2.1%)・経常利益97億53百万円(同+57.8%)・純利益64億57百万円(同+47.8%)。売上と経常利益・純利益の伸びに対して、営業利益の伸びだけが+2.1%にとどまっている。
  • 経常利益+57.8%(増加額35億72百万円)の主因は、海外子会社への貸付金にかかる為替差損益の改善(前年同期は為替差損17億円、当期は為替差益21億円で、差引スイングは約38億円)。営業利益の増加額(1億62百万円)を大きく上回っており、事業の実力を示す数字ではない。
  • 自己資本比率は54.3%で前期末から変わっていないが、内実は前回記事で扱った財務悪化の延長にある。短期借入金は33億円から158億円へ約4.7倍に増え、設備投資も前年同期比+318%(23億73百万円→99億33百万円)に加速した。比率が横ばいに見えるのは、円安による為替換算調整勘定の増加(+46億円)が純資産側を押し上げたため。
  • 通期の会社予想(2026年5月13日公表)は据え置き。配当予想も年間158円で修正なし、株価3,817円に対する予想利回りは4.14%。
  • 進捗率は売上高23.3%・営業利益21.0%・経常利益27.5%・純利益24.6%。経常利益と純利益だけが四半期の目安(25%)を上回っているのは、この期に計上された為替差益の影響が大きい。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 経常利益+57.8%の中身と、横ばいに見える自己資本比率の裏側
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月20日時点で、ツムラはPER10.14倍(実績EPS376.28円ベース)・PBR0.88倍(実績BPS4,315.86円ベース)・予想配当利回り4.14%(会社予想158円、株価3,817円)という水準です。

前回記事(2026年3月期通期決算)では、設備投資の拡大にともなって自己資本比率が64.7%から54.3%へ10ポイント低下したことを扱いました。今回、2026年8月6日に開示された2027年3月期第1四半期決算短信では、この自己資本比率は54.3%のまま変わっていません

一見すると財務の悪化は止まったように見えます。しかし中身を見ると、短期借入金は33億円から158億円へおよそ4.7倍に増え、設備投資も前年同期比+318%とむしろ加速していました。それでも比率が動かなかったのは、円安による為替換算調整勘定の増加が純資産側を押し上げたためです。

同じ第1四半期決算では、経常利益が前年同期比+57.8%という大きな伸びも示されました。ただしこれも、海外子会社への貸付金にかかる為替差益という一過性の要因が主因で、本業の伸び(営業利益+2.1%)とは大きく性格が異なります。この2つの「見かけの改善」の中身をどう読むかが、今回の記事の論点です(詳細は4節)。

2. 会社概要とビジネスモデル

ツムラは医療用漢方製剤の専業メーカーです。医師が処方する医療用漢方製剤129処方を扱い、この分野で国内シェアの大半を占めます。売価は薬価として国が定め、原則として引き下げ方向にしか改定されないため、値上げによる利益確保という選択肢が構造的に存在しません。一方で、生薬の調達・品質管理から製剤化までの一貫体制が必要な事業であり、新規参入はほとんどありません。原料生薬の大半は中国からの調達に依存しており、近年は中国国内での飲片(生薬を刻んだ製品)販売事業も拡大させています。

強みと弱みの整理

強み

  • 数量ベースの成長が底堅い

    第1四半期の医療用漢方製剤129処方合計の実売数量(医療機関への納入ベース)は前年同期比+3.4%。薬価改定という逆風のなかでも、需要そのものは伸びています。

  • 中国事業が黒字転換

    中国事業の営業利益は前年同期の△2億61百万円から3億82百万円へ黒字転換しました。上海虹橋中薬飲片有限公司の連結や、平安・深セン津村薬業の原料生薬・飲片販売の伸長が寄与しています。

  • 増配路線を維持

    2027年3月期の配当予想は年間158円で、2026年8月6日開示の第1四半期決算時点でも期初予想から修正されていません。過去に期初予想を下回ったことがない開示姿勢と合わせ、予想の信頼度は引き続き高いと考えられます。

弱み

  • 原価率の上昇が続いている

    第1四半期の売上原価率は52.4%から54.5%へ上昇し、営業利益率は17.9%から15.9%へ低下しました。為替影響に加え、原価率が相対的に高い中国事業の売上構成比が上がったことが要因です。

  • 国内事業は減益

    国内事業の営業利益は79億81百万円から74億98百万円へ、前年同期比-6.0%の減益。増収増益をけん引しているのは中国事業で、国内の稼ぐ力自体は改善していません。

  • 経常利益の急増は一過性要因に依存

    経常利益+57.8%の大部分は、海外子会社向け貸付金にかかる為替差益(21億43百万円)という一過性の要因によるものです。円相場が反転すれば、同じ規模の差損が生じるリスクと表裏一体です。

3. 業績の推移

過去5期の実績と、会社が示した2027年3月期の予想です。第1四半期決算でもこの通期予想に修正はありませんでした。

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
0075,00012,500150,00025,000225,00037,500300,00050,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)40557068.363.563.264.754.3
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/03129,54622,37625,90418,83668.3%
2023/03140,04320,91623,45316,48263.5%
2024/03150,84520,01723,49316,70763.2%
2025/03181,09340,12542,44632,42864.7%
2026/03192,61535,21940,03628,11754.3%
2027/03会社予想213,60037,50035,50026,200
単位:百万円。出典:決算短信、およびIR BANK集計による過年度実績

この表で読み取れることは3つあります。

売上は一貫して伸びている。 2022年3月期の1,295億円から2026年3月期には1,926億円まで4期で伸び、2027年3月期も会社予想では+10.9%の増収を見込みます。事業そのものの規模は拡大が続いています。

利益は2025年3月期が突出している。 営業利益は2024年3月期の200億円からほぼ倍増して2025年3月期に401億円となり、2026年3月期は352億円(前期比-12.2%)へ戻しました。2025年3月期の急増は生薬の調達コストが一時的に落ち着いた局面と重なっており、これを基準値と考えるべきではありません。

2027年3月期の会社予想は、営業利益と経常利益で方向が逆になっている。 通期の会社予想は営業利益375億円(+6.5%)と増益を見込む一方、経常利益は355億円(-11.3%)・純利益262億円(-6.8%)と減益予想です。借入増加にともなう支払利息など、営業外の負担が効いてくる想定になっています。今回の第1四半期は、この構図とは逆に経常利益(+57.8%)が営業利益(+2.1%)を大きく上回る決算でした。理由は4節で説明します。

4. 経常利益+57.8%の中身と、横ばいに見える自己資本比率の裏側

経常利益急増の主因は、為替差益という一過性要因

まず第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結業績です。

項目2026年3月期Q12027年3月期Q1前年同期比
売上高430億94百万円497億04百万円+15.3%
営業利益77億19百万円78億81百万円+2.1%
経常利益61億81百万円97億53百万円+57.8%
純利益43億67百万円64億57百万円+47.8%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月6日)

売上高・純利益の伸びも大きいですが、際立っているのは経常利益の+57.8%です。営業利益の伸びが+2.1%(増加額1億62百万円)にとどまっているのに対し、経常利益は35億72百万円も増えています。この差はどこから来るのか、決算短信の営業外損益の内訳を見ると分かります。

項目2026年3月期Q12027年3月期Q1
為替差益0百万円21億43百万円
為替差損16億98百万円0百万円
支払利息1億47百万円5億47百万円
営業外収益合計3億34百万円24億75百万円
営業外費用合計18億71百万円6億02百万円

出典:同決算短信「営業外収益及び営業外費用」

前年同期は為替差損16億98百万円を計上していたのに対し、今期は為替差益21億43百万円を計上しました。差し引きで約38億41百万円のスイングが生じており、これだけで経常利益の増加額35億72百万円のほとんどを説明できます。 決算短信自身も「海外子会社への貸付金に係る為替差益を計上したことにより、前年同期と比べ57.8%増加し」と、この点を増益の要因として明記しています。

支払利息は1億47百万円から5億47百万円へ4億00百万円増えました。後述する借入の増加を反映したもので、経常利益にとってはわずかながらマイナス要因です。つまり経常利益+57.8%は、事業が良くなったことの証拠ではなく、為替相場の動きと、それによって生じる評価損益の反動で説明できる数字です。 円相場が反転すれば、中間期以降に同じ規模の差損が生じてもおかしくありません。

自己資本比率は横ばい。しかし財務構造は変わり続けている

前回記事では、2026年3月期に自己資本比率が64.7%から54.3%へ10ポイント低下したことを扱いました。今回の第1四半期末(2026年6月30日)は54.3%で、数字の上では変化がありません

項目2026年3月期末2027年3月期Q1末増減
総資産5,927億66百万円6,021億48百万円+93億82百万円
純資産3,716億03百万円3,788億46百万円+72億43百万円
自己資本比率54.3%54.3%変化なし
短期借入金33億29百万円157億94百万円約4.7倍
為替換算調整勘定260億71百万円301億86百万円+46億22百万円

出典:同決算短信「財政状態」、貸借対照表

短期借入金は33億29百万円から157億94百万円へ、124億65百万円増えました。この増加額は、財務キャッシュ・フローの内訳にある「短期借入れによる収入12,465百万円」とぴったり一致しており、返済を伴わない純粋な借入の積み増しであることが分かります。決算短信の貸借対照表に載っている短期借入金・1年内償還予定の社債・社債・長期借入金を合計すると、有利子負債は前期末の1,257億83百万円から当期末の1,386億97百万円へ、129億14百万円増加しました(なお1年内償還予定の社債15,000百万円は、固定負債に計上されていた社債45,000百万円のうち一部が振り替わったもので、社債の総額自体は45,000百万円のまま変わっていません。実質的な増加要因は短期借入金です)。この有利子負債を自己資本比率から逆算した自己資本(概算3,270億円程度)で割ったD/Eレシオは、前期末の概算0.39倍から当期末は概算0.42倍へ上昇しています。

投資面でも、設備投資額(有形固定資産の取得による支出)は前年同期の23億73百万円から99億33百万円へ、前年同期比+318%に拡大しました。前回記事で扱った「3期で倍増した設備投資」の勢いは、今期に入ってさらに加速しています。

それでも自己資本比率が動かなかったのは、為替換算調整勘定が46億22百万円増えたためです。これは円安によって在外子会社の資産・負債を円換算した際に生じる評価差額で、事業の実力とは無関係な会計上の項目です。純資産の増加分72億43百万円のうち、6割以上をこの為替換算調整勘定が占めています。

つまり、自己資本比率54.3%という「横ばい」の数字は、財務の悪化が止まったことを意味しません。 短期借入金の急増と設備投資の加速という前回記事からの流れは継続・加速しており、それが比率に表れなかったのは、たまたま円安がもう1つの分子(純資産)を押し上げたからです。円相場が逆に振れれば、同じ理由で比率は今度こそ低下方向に動く可能性があります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2022/0364円64円0円26.0%
2023/0364円64円0円29.7%
2024/0364円85円+21円38.7%
2025/03136円136円0円31.8%
2026/03136円147円+11円39.4%
2027/03会社予想158円158円45.0%
  • 2023/03:2014年3月期から10期連続で年間64円の据え置きだった、その最後の期。
  • 2024/03:10年据え置いた配当をこの期から引き上げに転じた。
  • 2026/03:期中に144円へ上方修正し、着地は147円。
  • 2027/03:中間79円・期末79円。2026年8月6日開示の第1四半期決算短信の時点でも、5月13日の期初予想から修正はない。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の予想・修正・実績

配当政策の転換点は前回記事で扱ったとおりです。2014年3月期から2023年3月期まで10年間64円で据え置かれていた年間配当は、2024年3月期に85円へ引き上げられて以降、136円→147円→158円(予想)と毎期増配が続いています。

2027年3月期の158円という予想は、第1四半期決算が開示された2026年8月6日の時点でも修正されていません。 中間79円・期末79円という内訳も変わらず、同社が過去に期初予想を下回ったことがない実績と合わせると、この158円の信頼度は引き続き高いと考えられます。会社予想ベースで計算した予想利回りは、株価3,817円で4.14%です。

一方で、配当性向は2026年3月期実績の39.4%から2027年3月期予想では45.0%へ上昇する見込みです。今回の第1四半期で経常利益が急増したのは一過性の為替差益によるものであり、この利益の伸びを根拠に配当余力が増したと見るのは早計です。 配当の原資として意識すべきは、会社自身が減益を予想している通期の純利益262億円であり、Q1の経常利益+57.8%ではありません。

6. 会社の現状と直近の動き

セグメント別に見ると、国内事業と中国事業で明暗が分かれています。

項目2026年3月期Q12027年3月期Q1前年同期比
売上高・国内事業388億71百万円414億75百万円+6.7%
売上高・中国事業42億23百万円82億28百万円+94.8%
営業利益・国内事業79億81百万円74億98百万円-6.0%
営業利益・中国事業△2億61百万円3億82百万円黒字転換

出典:同決算短信「セグメント情報」に相当する経営成績の説明(単一セグメントのため、国内・中国は社内管理区分としての内訳)

中国事業の売上は上海虹橋中薬飲片有限公司の連結や、平安・深セン津村薬業における原料生薬・飲片販売の伸長により、前年同期比+94.8%とほぼ倍増しました。営業利益も黒字に転換しています。一方、国内事業は増収(+6.7%)ながら営業利益は-6.0%の減益で、増収増益をけん引しているのは中国事業であることが分かります。

会社は原価率上昇の要因として為替影響と中国事業の売上比率上昇を挙げています。売上原価率は52.4%から54.5%へ、営業利益率は17.9%から15.9%へそれぞれ低下しました。中国事業の構成比が上がるほど、この原価率上昇圧力は構造的に続きやすいと考えられます。

通期予想(売上高2,136億円・営業利益375億円・経常利益355億円・純利益262億円)に対する第1四半期の進捗率は、売上高23.3%・営業利益21.0%・経常利益27.5%・純利益24.6%です。単純に四半期の目安を25%とすると、経常利益と純利益だけがこれを上回っていますが、その要因が4節で見た為替差益であることを踏まえると、この進捗率の高さをそのまま「順調」と読むのは適切ではありません。

キャッシュ・フローも投資フェーズの継続を裏付けています。営業キャッシュ・フローは△11億68百万円から△44億44百万円へ悪化し、投資キャッシュ・フローも△30億57百万円から△107億71百万円へ拡大しました。財務キャッシュ・フローは短期借入れによる収入(124億65百万円)を主因に+66億11百万円のプラスで、現金及び現金同等物の期末残高は822億01百万円から712億05百万円へ減少しています。

7. 業界とセクターの状況

医療用漢方製剤は、売価が薬価として公定され、改定のたびに引き下げ方向にしか動かないという構造的な制約を持つセクターです。新薬開発のような大型の研究開発投資に依存しない代わりに、爆発的な利益成長も起きにくいビジネスです。前回記事ではこの点を、比較対象は他の製薬会社よりも「売価を自由に決められない規制価格下の製造業」に近いと整理しました。

今回の決算はこれに加え、海外展開の拡大にともなって、為替感応度という新しい構造的要因が加わりつつあることを示しています。中国事業の連結範囲拡大と、海外子会社向け貸付金の残高が増えるほど、円相場の変動が営業外損益を通じて経常利益を直接動かすようになります。これは薬価改定と同様、個社の努力だけではコントロールしきれない外部要因であり、今後は生薬の調達コストだけでなく、円相場そのものの動きにも業績が左右される場面が増える可能性があります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

会社の中間累計予想(経常利益164億円等)に対する着地の確認機会。第1四半期の経常利益急増を支えた為替差益が中間期も続くか、逆に円相場が反転して差損に転じるかが焦点。過去の発表時期からの推定であり、確定日ではない。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

通期予想(営業利益375億円・経常利益355億円・純利益262億円)に対する最終着地。過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日は前年実績からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬2027年3月期 第2四半期(中間)決算両面

中間累計の会社予想(経常利益164億円)に対する着地確認。第1四半期の経常利益急増が為替差益という一過性要因だったことを踏まえると、中間期は営業利益の実力(+2.1%ペース)に近い数字に収れんするかが焦点。

随時円相場(ドル円・人民元円)の変動両面

海外子会社向け貸付金の為替差損益が経常利益に直接反映される構造。円安が続けば再び差益が乗るが、円高に転じれば差損として経常利益を押し下げる。中国事業の拡大に伴い、この感応度は今後さらに高まる可能性がある。

随時生薬相場と中国事業の原価動向両面

第1四半期の売上原価率は52.4%から54.5%へ上昇し、営業利益率を押し下げた。中国事業の売上構成比が上がるほど、原価率が構造的に上がりやすい面がある。

2027年3月期中設備投資の消化ペースと有利子負債の増減両面

第1四半期の設備投資は前年同期比+318%(99億33百万円)で、前回記事で扱った投資フェーズが継続・加速している。この投資が一巡すればフリーキャッシュフローと自己資本比率は改善方向に向かう。

10. 想定されるリスク

投資回収のリスク。 設備投資は前年同期比+318%とさらに加速しており、前回記事で指摘した「投資が先行し、成果がまだ出ていない」状態は続いています。有利子負債は1,386億97百万円まで積み上がっており、この投資が数年後に利益として返ってこなければ、財務悪化だけが残ります。

為替相場の反転リスク。 経常利益+57.8%を支えた為替差益21億43百万円は、円相場が反転すれば同じ規模の差損に転じうる項目です。中国事業の拡大にともない、この為替感応度は今後さらに高まる可能性があります。

自己資本比率の「見かけの安定」が崩れるリスク。 今回比率が横ばいだったのは為替換算調整勘定の増加という会計上の要因によるもので、事業の実力による改善ではありません。円安が一服すれば、短期借入金の増加分がそのまま比率の低下として表面化する可能性があります。

国内事業の収益力低下。 増収増益の中身は中国事業に依存しており、国内事業の営業利益は-6.0%の減益です。国内での薬価改定の逆風に対し、数量成長だけで補いきれなくなれば、中国事業の伸びが鈍化した際に業績全体が下押しされます。

11. まとめ:どう判断材料にするか

今回の第1四半期決算は、2つの「見かけの改善」を含んでいます。経常利益+57.8%は為替差益という一過性要因が主因で、営業利益の実力(+2.1%)とは切り離して見る必要があります。自己資本比率54.3%の横ばいも、短期借入金の急増(約4.7倍)と設備投資の加速(+318%)という財務悪化の流れが止まったことを意味せず、円安による為替換算調整勘定の増加がたまたま比率を下支えしただけです。

この決算を「一時的な会計要因を除けば、投資フェーズの継続そのものは前回記事どおりで、事業の実力(営業利益+2.1%、国内事業-6.0%)は依然として弱い」と見るなら、今回の経常利益急増や自己資本比率の横ばいを額面どおりに評価するのは慎重であるべきです。一方で、中国事業が黒字転換し、数量ベースの成長(実売数量+3.4%)も続いていることを重視するなら、投資フェーズの成果が徐々に表れ始めていると見ることもできます。

判断の分かれ目は、次の中間決算で経常利益が為替差益に頼らずに会社予想(164億円)の水準を維持できるか、そして短期借入金の増加が中間期以降も続くかどうかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算です。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、経常利益が中間累計の会社予想164億円を明確に下回った場合。第1四半期の為替差益が剥落し、営業利益ベースの実力(前年同期比+2.1%程度)に近い数字しか出ていないことになる。
  • 短期借入金がさらに拡大を続け、自己資本比率が54%を明確に割り込んだ場合(例えば50%台前半へ低下)。為替換算調整勘定による見た目上の下支えが効かなくなり、財務悪化が数字に表れ始めたことを意味する。
  • 設備投資が通期でも第1四半期のペース(単純に4倍換算で400億円弱)を上回って拡大を続け、営業キャッシュ・フローで賄えない状態(フリーキャッシュフローのマイナス)が2027年3月期も定着した場合。
  • 国内事業の営業利益の減益(第1四半期は前年同期比-6.0%)が中間期以降も続き、中国事業の黒字転換(第1四半期は営業利益3億82百万円)だけでは補えない場合。増収の中身が利益に結びついていないことになる。
  • 配当予想158円が期中に減額修正された場合。経常利益の急増が一過性の為替差益によるものであることを踏まえずに、配当方針の前提としていたことになる。

参考文献・引用元

  1. 01
    株式会社ツムラ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    TDnet開示、2026年8月6日。連結経営成績・セグメント別売上高及び営業利益・営業外損益の内訳・財政状態・キャッシュ・フローの状況・配当の状況・通期業績予想を参照。 / 2026/08/06 開示

  2. 02
    株式会社ツムラ「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年5月12日開示。2027年3月期の期初業績予想・配当予想(修正なしで据え置かれている数値の原典)、および前年同期(2026年3月期第1四半期)の比較対象数値を参照。 / 2026/05/12 開示

  3. 03
    株式会社ツムラ IR情報(業績・財務情報)

    決算ハイライト、決算関連資料を参照。

  4. 04
    IR BANK「ツムラ(4540) 決算まとめ/配当金の推移」

    過年度の通期業績・財政状態・配当の期初予想/修正/実績の履歴を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月20日時点の表示)。