あすか製薬HD(4886)進捗11.5%でも通期据え置き、配当は累進方針で説明つくか
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
あすか製薬ホールディングス株式会社
2026/09/04 時点
株価
2,049円
時価総額
581.84億円
配当利回り
3.17%
年間65円
PER
12.1倍
PBR
0.83倍
ROE
6.9%
ROA
5.4%
経常利益ベース
自己資本比率
62.5%
配当性向
38.4%
有利子負債
114億円
D/Eレシオ
0.16倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は減収減益(売上高17,384百万円・前年同期比△1.5%、営業利益711百万円・同△51.4%、経常利益817百万円・同△48.7%、純利益533百万円・同△57.5%)で、通期予想に対する進捗率は売上高23.8%に対し営業利益11.5%・経常利益13.4%・純利益11.1%と、暦按分の目安である25%を大きく下回りました。
- 会社は2026年8月4日開示の決算短信で、この進捗未達について言及もコメントもせず、通期の業績予想(営業利益+6.3%等)をそのまま据え置いています。据え置きの根拠が開示されていない点は、この記事の中心的な論点です。
- 一方で配当予想65円(前期比+5円)の据え置きには、業績とは別の説明が付きます。2026年5月11日、会社は配当方針を「連結配当性向30%目安・下限年間30円」から「総還元性向40%目安・累進配当(原則減配を行わない)」へ転換しており、2027年3月期はこの新方針のもとでの最初の予想です。**業績の短期的な変動と配当を切り離す方針そのものが、配当据え置きの理由**になっています。ただしこの方針は、純利益が計画通り減益(前期比△11.5%)で着地した場合でも配当性向を押し上げ続ける方向に働くという副作用も伴います。
- **業績予想は開示された根拠なく据え置かれた**と見るなら、中間決算で進捗率が回復するかどうかを注視する必要があります。**自己資本比率62.5%・D/Eレシオ0.16倍という財務体力の厚さを重視する**なら、多少の進捗遅れは吸収できる範囲と見ることもできます。分かれ目は、医薬品事業の原価上昇や海外事業の原薬調達難といった第1四半期の減益要因が、下期にかけて構造的に続くか一時的にとどまるかです。
目次11項目
1. 概要
2026年9月4日時点で、あすか製薬ホールディングスはPER12.12倍(2027年3月期会社予想EPS169.11円ベース)・PBR0.83倍(2026年3月期実績BPS2,464.89円ベース)・予想配当利回り3.17%(会社予想65円、株価2,049円)という水準です。自己資本比率は62.5%、有利子負債は114億34百万円でD/Eレシオは0.16倍と、財務体力は厚い部類に入ります。
2026年8月4日に開示された2027年3月期第1四半期決算短信では、売上高が前年同期比△1.5%の減収にとどまったのに対し、営業利益は△51.4%、経常利益は△48.7%、純利益は△57.5%と大幅な減益になりました。通期予想に対する進捗率も、売上高23.8%に対して営業利益11.5%・経常利益13.4%・純利益11.1%しかなく、四半期の単純な目安である25%を大きく下回っています。
それにもかかわらず、会社は通期の業績予想(営業利益+6.3%等)をそのまま据え置き、配当予想も年間65円(前期比+5円)を維持しました。この決算短信には、進捗未達についての言及や説明のコメントが一切ありません。この「進捗未達なのに据え置き」をどう読むか、そして配当据え置きだけは別の理由で説明できるのかが、今回の記事の論点です(詳細は4節)。
2. 会社概要とビジネスモデル
あすか製薬ホールディングスは、医療用医薬品を中心に、アニマルヘルス(動物用医薬品・飼料添加物)、海外事業(ベトナム子会社Ha Tay Pharmaceuticalなど)、その他(臨床検査・医療機器等)を手掛ける持株会社です。第1四半期の売上構成比(実績ベース)を見ると、医薬品事業が全体の83.3%(144億84百万円)を占め、アニマルヘルス事業が11.2%(19億52百万円)、海外事業が5.2%(9億08百万円)、その他事業が0.2%(38百万円)と続きます。
医薬品事業の主力は、子宮筋腫治療剤レルミナや月経困難症治療剤ドロエチといった産婦人科領域の製品、および甲状腺ホルモン剤チラーヂン・抗菌薬リフキシマといった内科領域の製品です。2026年3月期は、これら主力品の伸長に加え、チラーヂン・リフキシマの薬価改定が追い風となり、さらに前期に持分法適用会社だったベトナムのHa Tay Pharmaceuticalを連結子会社化したことで増収となりました。この結果、会社が掲げていた中期経営計画2025の目標(売上高700億円・営業利益率8%・ROE8%)を達成・超過しています。
強みと弱みの整理
強み
主力製品の伸長と薬価改定の追い風
産婦人科領域のレルミナ・ドロエチ、内科領域のチラーヂン・リフキシマといった主力品が伸び、2026年3月期は中期経営計画2025の目標(売上高700億円・営業利益率8%・ROE8%)を達成・超過しました。
財務体力が厚い
自己資本比率は62.5%(2026年3月期末)、有利子負債は114億34百万円でD/Eレシオは0.16倍にとどまります。多少の業績のブレを吸収できる余地があります。
累進配当方針への転換
2026年5月11日、配当方針を「連結配当性向30%目安・下限年間30円」から「総還元性向40%目安・累進配当(原則減配を行わない)」へ変更しました。方針が維持される限り、業績の短期変動が配当減額に直結しにくくなります。
弱み
利益のブレが大きい
2027年3月期第1四半期は営業利益が前年同期比△51.4%。過去にも2024年3月期の純利益+78.0%、2025年3月期の純利益△32.4%など、年度ごとの振れ幅が大きい実績があります。
海外・アニマルヘルス事業が外部要因に弱い
第1四半期は、海外事業が中東からの原薬調達難でセグメント損失(前年同期は利益58百万円)に転落し、アニマルヘルス事業も円安や地政学リスクによる飼料添加物の仕入価格上昇でセグメント利益が△65.4%となりました。いずれも自社の努力だけでは制御しにくい要因です。
累進配当は配当性向の上昇と表裏一体
配当性向は2023年3月期の10.7%から2027年3月期予想の38.4%まで一貫して上昇しています。純利益予想が前期比△11.5%の減益計画であるにもかかわらず配当を増やす計画のため、利益が伸びなければ配当性向はさらに切り上がる構造です。ROEも6.86%とスクリーニングの目安(8%以上)を下回ります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 56,607 | 4,795 | 4,880 | 4,290 | 58.7% |
| 2023/03 | 60,461 | 5,108 | 5,232 | 4,238 | 62.6% |
| 2024/03 | 62,843 | 6,500 | 6,522 | 7,545 | 68.2% |
| 2025/03 | 64,139 | 5,331 | 5,107 | 5,101 | 62.6% |
| 2026/03 | 71,127 | 5,834 | 5,665 | 5,424 | 62.5% |
| 2027/03会社予想 | 73,000 | 6,200 | 6,100 | 4,800 | — |
この表で読み取れることは3つあります。
売上高は一貫して増加している。 2022年3月期の566億07百万円から2026年3月期には711億27百万円まで、4期で+25.7%伸びました。2027年3月期の会社予想も+2.6%の増収を見込んでおり、増収基調そのものは続いています。
利益は年度ごとの振れが大きい。 2024年3月期は純利益が前期比+78.0%と急伸した一方、経常利益の伸びは+24.6%にとどまっており、経常利益の伸びを上回る純利益の伸びには特別損益が寄与している可能性があります(内訳までは確認できていません)。翌2025年3月期は一転して営業利益△18.0%・経常利益△21.7%・純利益△32.4%と全項目が落ち込み、2026年3月期に回復しています。2026年3月期は投資有価証券売却益14億74百万円・固定資産処分益96百万円などの特別利益と、投資有価証券評価損2億44百万円の特別損失を計上しており、この期も純利益の水準を読む際には特別損益の存在を踏まえる必要があります。
2027年3月期の会社予想は、営業利益・経常利益の増益予想に対して純利益だけが減益予想になっている。 通期の会社予想は営業利益+6.3%・経常利益+7.7%と増益を見込む一方、純利益は△11.5%の減益予想です。この差の理由は、決算短信から確認できませんでした。
自己資本比率について一点補足します。2025年3月期の自己資本比率は、2026年3月期決算短信での開示で65.0%から62.6%へ遡及修正されています。 企業結合(Ha Tay Pharmaceuticalの子会社化)に係る暫定的な会計処理が確定したことによるもので、親会社株主に帰属する自己資本額・1株当たり純資産(BPS)自体は修正されていません。上のグラフは修正後の数値を採用しています。
有利子負債は2026年3月期末時点で114億34百万円、これを自己資本で割ったD/Eレシオは0.16倍です。自己資本比率62.5%という高さと整合的な、借入への依存度が低い財務構成といえます。ただし、この有利子負債・D/Eレシオの過去期からの推移や増減の理由については、今回参照した決算短信からは特定できませんでした。
4. 進捗率11.5%でも据え置かれた通期予想と、累進配当という「説明」
進捗未達なのに、通期予想は無修正
まず第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結業績です。
| 項目 | 2027年3月期第1四半期実績 | 前年同期比 | 通期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 173億84百万円 | △1.5% | 730億00百万円 | 23.8% |
| 営業利益 | 7億11百万円 | △51.4% | 62億00百万円 | 11.5% |
| 経常利益 | 8億17百万円 | △48.7% | 61億00百万円 | 13.4% |
| 純利益 | 5億33百万円 | △57.5% | 48億00百万円 | 11.1% |
出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月4日)
売上高の進捗率23.8%は暦按分の目安である25%にほぼ沿っていますが、営業利益・経常利益・純利益の進捗率は11%台〜13%台と、目安を10ポイント以上下回っています。それにもかかわらず、この決算短信には進捗未達についての言及や説明のコメントが一切なく、通期の業績予想は前回(2026年5月11日公表の期初予想)から一切修正されていません。
減益の中身はセグメントごとに異なる
セグメント別に見ると、減益の要因は事業ごとに異なります。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 医薬品事業 | 144億84百万円 | △0.2% | 11億32百万円 | △33.3% |
| アニマルヘルス事業 | 19億52百万円 | +6.1% | 44百万円 | △65.4% |
| 海外事業 | 9億08百万円 | △25.9% | △35百万円(前年同期は58百万円の利益) | — |
| その他事業 | 38百万円 | △33.4% | △8百万円 | — |
出典:同決算短信「セグメント情報」
医薬品事業は売上高がほぼ横ばい(△0.2%)ながら、セグメント利益は△33.3%です。決算短信は、原材料価格等の上昇による売上原価の増加と、臨床試験進捗に伴う研究開発費の増加を要因に挙げています。アニマルヘルス事業は増収(+6.1%)にもかかわらず利益が△65.4%に落ち込んでおり、円安や地政学リスクによる飼料添加物の仕入価格上昇が要因とされています。海外事業(前期に持分法適用会社から連結子会社化されたベトナムのHa Tay Pharmaceuticalを含む)は、中東からの原薬調達難によって前年同期の58百万円の利益から35百万円の損失へ転落しました。
いずれの要因も、決算短信の記載だけでは一時的か構造的かを判断できません。とりわけ、海外事業の地政学リスク由来の原薬調達難と、アニマルヘルス事業の円安由来の仕入価格上昇は、通期で解消する見通しが決算短信からは読み取れない点に注意が必要です。
配当は「累進配当方針」で説明できるが、通期の利益予想は説明されていない
一方、配当予想65円(前期比+5円)の据え置きには、業績の進捗率とは別の理由があります。会社は2026年5月11日、通期決算発表と同時に「剰余金の配当(増配)および配当方針の変更に関するお知らせ」を公表し、配当方針を「連結配当性向30%目安・下限年間30円」から「総還元性向40%目安・累進配当(原則減配を行わない)」へ変更しました。2027年3月期は、2027年3月期を初年度とする中期経営計画2028に合わせたこの新方針のもとでの最初の年間予想にあたります。
つまり、配当予想が据え置かれていること自体は、この累進配当方針によって短期的な業績変動から切り離されていると説明できます。 会社が「原則減配を行わない」とコミットしている以上、四半期の進捗率の遅れだけを理由に配当を減額する動機は乏しいと考えられます。
しかし、これは配当予想が据え置かれた理由の説明にはなっても、営業利益・経常利益の通期予想そのものが無修正である理由の説明にはなりません。 累進配当方針は「配当を減らさない」という約束であって、「業績予想を据え置いてよい」という約束ではないためです。進捗率11.5%という数字と、通期予想を無修正のまま維持するという判断の間に、決算短信からは根拠を読み取れないというのが、この記事で指摘したい本当の論点です。
なお、配当性向は2023年3月期の10.7%から2024年3月期15.0%、2025年3月期30.6%、2026年3月期31.4%、2027年3月期予想38.4%へと一貫して上昇しています。純利益予想が前期比△11.5%の減益計画であるにもかかわらず配当を増やす計画のため、累進配当方針は今後も配当性向を切り上げ続ける方向に働きます。 自己資本比率62〜64%・D/Eレシオ0.16倍という財務体力の厚さがこの上昇を当面吸収できるとしても、利益が伸びなければ配当性向の上昇は構造的に続きます。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 15円 | — | 5.3% |
| 2023/03 | — | 16円 | — | 10.7% |
| 2024/03 | 20円 | 40円 | +20円 | 15.0% |
| 2025/03 | 50円 | 55円 | +5円 | 30.6% |
| 2026/03 | 55円 | 60円 | +5円 | 31.4% |
| 2027/03会社予想 | 65円 | 65円 | — | 38.4% |
- 2024/03:期初は20円だったが、期中に40円へ倍増修正した。
- 2026/03:期初は55円だったが、2026年5月11日の通期決算発表と同時に33円(期末)へ増額修正し、合計60円で着地した。同日、配当方針そのものも「連結配当性向30%目安・下限年間30円」から「総還元性向40%目安・累進配当(原則減配を行わない)」へ変更している。
- 2027/03:新方針のもとで最初の年間予想。2026年8月4日開示の第1四半期決算短信の時点でも、5月11日の期初予想から修正はない。
期初予想から実績への増額修正が2024年3月期以降ずっと続いています。2024年3月期は期初20円だった予想が期中に40円へ倍増し、2025年3月期は期初50円から実績55円へ、2026年3月期は期初55円から実績60円へ、それぞれ上振れて着地しました。2026年3月期の33円(期末)への増額修正は、2026年5月11日の通期決算発表と同時に、配当方針の変更(累進配当への転換)とセットで公表されたものです。
2027年3月期の65円(中間32円・期末33円)という予想は、新しい累進配当方針のもとで最初に示された年間予想です。 2026年8月4日開示の第1四半期決算短信の時点でも、5月11日の期初予想から修正はありません。会社予想ベースで計算した予想配当利回りは、株価2,049円で3.17%です。
一方で、この予想の配当性向は38.4%と、過去5期のどの水準よりも高くなります。配当予想自体の信頼度は、累進配当という明確なコミットメントによって過去よりむしろ高いと考えられますが、その原資となる純利益は前期比△11.5%の減益予想であり、かつ第1四半期時点の進捗率は11.1%にとどまっていることは、5節の数字だけからは見えない部分として押さえておく必要があります。
6. 会社の現状と直近の動き
2026年3月期は、あすか製薬ホールディングスにとって中期経営計画2025の目標(売上高700億円・営業利益率8%・ROE8%)を達成・超過した年でした。成長要因は、産婦人科領域の主力品(レルミナ・ドロエチ)の伸長、内科領域の甲状腺ホルモン剤チラーヂン・抗菌薬リフキシマの薬価改定による追い風、そしてベトナム子会社Ha Tay Pharmaceuticalの連結子会社化(前期は持分法適用会社)による増収です。同期には特別利益として投資有価証券売却益14億74百万円・固定資産処分益96百万円、特別損失として投資有価証券評価損2億44百万円を計上しており、純利益の水準にはこうした特別損益も影響しています。
これに続く2027年3月期第1四半期は、4節で見たとおり減収減益となりました。医薬品事業の原価上昇と研究開発費増加、アニマルヘルス事業の仕入価格上昇、海外事業の原薬調達難という3つの要因が重なった形です。会社は通期予想を据え置いていますが、この判断の妥当性を裏付ける説明は決算短信に見当たりません。次の中間決算で、これらの要因が解消に向かっているのか、それとも累積して下期以降の下振れにつながるのかが焦点になります。
7. 業界とセクターの状況
医薬品セクターは、売価が薬価制度によって公定され、原則として引き下げ方向にしか改定されないという構造的な制約を持ちます。値上げによる増収という手段が構造的に存在しないため、数量の成長、原価低減、新製品や適応拡大で薬価改定分を打ち返せるかが利益の分かれ目になります。あすか製薬ホールディングスの2026年3月期の増収は、まさにこの打ち返し(主力品の伸長と薬価改定の追い風)がうまく効いた例です。
一方で、今回の第1四半期決算は、この薬価制度という構造的制約に加えて、海外展開の拡大にともなう為替・地政学リスクへの感応度が高まりつつあることを示しています。ベトナム子会社の連結子会社化やアニマルヘルス事業の原材料調達は、円相場や中東地域の情勢といった、個社の努力だけではコントロールしきれない外部要因に業績が左右される場面を増やします。研究開発費が発生時に費用計上される会計処理も、臨床試験の進捗次第で四半期ごとの利益を動かしやすくする要因です。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
第1四半期に見られた医薬品事業の原価上昇・研究開発費増加、アニマルヘルス事業の仕入価格上昇、海外事業の原薬調達難が中間期にも続くか、逆に解消方向へ向かうかを確認する機会。通期予想(営業利益62億円等)が据え置かれたままかどうかも焦点。過去の発表時期からの推定であり、確定日ではない。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
通期予想(売上高730億円・営業利益62億円・経常利益61億円・純利益48億円)に対する最終着地、および2028年3月期の配当方針(累進配当)に基づく新たな予想の確認。過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日は前年実績からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
第1四半期の進捗未達(営業利益進捗率11.5%)が中間期にどこまで解消するかの確認機会。通期予想(営業利益62億円)が据え置かれたままなら、下期に大幅な巻き返しを織り込んでいることになる。
ベトナム子会社Ha Tay Pharmaceuticalが含まれる海外事業は、第1四半期に中東からの原薬調達難でセグメント損失(△35百万円、前年同期は58百万円の利益)に転落した。決算短信からは通期での解消時期を読み取れない。
アニマルヘルス事業は円安や地政学リスクによる飼料添加物の仕入価格上昇でセグメント利益が前年同期比△65.4%となった。円相場の方向次第で仕入コストの重さが変わる。
配当性向は10.7%(2023/3)から38.4%(2027/3予想)まで一貫して上昇している。純利益予想が前期比△11.5%の減益計画である中で配当を増やす計画のため、利益が伸びなければ配当性向はさらに切り上がる。
10. 想定されるリスク
通期予想の下方修正リスク。 第1四半期の進捗率は営業利益11.5%・経常利益13.4%・純利益11.1%と、四半期の目安(25%)を大きく下回っています。会社は通期予想を据え置いていますが、下期にこの遅れを取り戻せなければ、中間決算または期末にかけて下方修正が発生する可能性があります。
海外・アニマルヘルス事業の外部要因が長期化するリスク。 海外事業のセグメント損失(原薬調達難)とアニマルヘルス事業の利益減少(仕入価格上昇)は、いずれも地政学リスクや円相場という会社の努力だけでは制御できない要因が背景にあります。決算短信からは、これらが下期に解消するかどうかを読み取れません。
配当性向の構造的な上昇リスク。 配当性向は2023年3月期の10.7%から2027年3月期予想の38.4%まで上昇を続けています。累進配当方針のもとで、純利益が計画(前期比△11.5%)どおり、あるいはそれ以上に減益となった場合、配当性向はさらに切り上がり、株主還元と利益成長のバランスが崩れる可能性があります。
利益のブレの大きさそのもの。 2024年3月期の純利益+78.0%、2025年3月期の△32.4%、そして今回の第1四半期の△57.5%と、年度・四半期を問わず利益の振れ幅が大きい実績が続いています。ROEも6.86%とスクリーニングの目安(8%以上)を下回っており、収益性の水準自体も高いとは言えません。
11. まとめ:どう判断材料にするか
今回の第1四半期決算は、2つの異なる論点を含んでいます。1つは、進捗率11.5%という大幅な未達にもかかわらず、通期の業績予想が根拠の説明なく据え置かれていること。もう1つは、配当予想65円の据え置きは、2026年5月11日に転換した累進配当方針によって一定の説明が付くことです。
業績予想の据え置きを額面どおり信頼できないと見るなら、中間決算で進捗率がどこまで回復するかを確認するまで、通期予想の達成可能性には留保をつけるべきという整理になります。自己資本比率62.5%・D/Eレシオ0.16倍という財務体力の厚さと、累進配当という明確なコミットメントを重視するなら、多少の業績のブレは吸収できる範囲であり、株主還元の姿勢自体は評価できるという整理にもなります。
判断の分かれ目は、医薬品事業の原価上昇・研究開発費増加、アニマルヘルス事業の仕入価格上昇、海外事業の原薬調達難という第1四半期の3つの減益要因が、下期にかけて構造的に続くか、一時的なものにとどまるかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算です。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、営業利益・経常利益の進捗率が中間期の目安(累計50%)に対して依然として大きく下回り続けた場合。第1四半期の未達が一時的ではなく、通期予想(営業利益62億円等)の達成可能性そのものが揺らいでいることになる。
- 配当予想65円(中間32円・期末33円)が期中に減額修正された場合。2026年5月11日に打ち出した「累進配当(原則減配を行わない)」方針が、公表からわずか1年程度で早くも後退したことを意味する。
- 海外事業(ベトナム子会社Ha Tay Pharmaceutical)のセグメント損失が中間期以降も続き、通期で黒字転換できなかった場合。第1四半期のセグメント損失35百万円(前年同期は58百万円の利益)が一時的な原薬調達難ではなく、構造的な問題であることになる。
- 自己資本比率が62%台から明確に低下した場合(例えば60%を割り込む)。有利子負債の急増や大型投資・M&Aなど、財務体力の前提が変わったことを意味する。
- 通期の純利益予想48億円(前期比△11.5%)に対し、配当性向がさらに38.4%を上回って上昇し続けた場合。累進配当方針が、利益の裏付けを欠いたまま配当だけを積み増す形になっていることになる。
参考文献・引用元
- 01
株式会社あすか製薬ホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月4日開示。連結経営成績・セグメント別売上高及びセグメント利益・通期業績予想(据え置き)を参照。 / 2026/08/04 開示
- 02
株式会社あすか製薬ホールディングス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月11日開示。2027年3月期の期初業績予想・配当予想、企業結合(Ha Tay Pharmaceutical子会社化)に係る暫定的な会計処理の確定にともなう2025年3月期の総資産・純資産・自己資本比率の遡及修正、特別利益・特別損失の内訳、配当の状況を参照。 / 2026/05/11 開示
- 03
株式会社あすか製薬ホールディングス「剰余金の配当(増配)および配当方針の変更に関するお知らせ」
2026年5月11日開示。配当方針を「連結配当性向30%目安・下限年間30円」から「総還元性向40%目安・累進配当(原則減配を行わない)」へ変更した根拠を参照。 / 2026/05/11 開示
- 04
株式会社あすか製薬ホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年5月12日開示。2025年3月期実績(遡及修正前の自己資本比率65.0%を含む)と2026年3月期の期初予想を参照。 / 2025/05/12 開示
- 05
株式会社あすか製薬ホールディングス「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年5月10日開示。2024年3月期実績と2025年3月期の期初予想を参照。 / 2024/05/10 開示
- 06
株式会社あすか製薬ホールディングス「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年5月11日開示。2023年3月期実績を参照。 / 2023/05/11 開示
- 07IR BANK「あすか製薬ホールディングス(4886) 決算まとめ/配当金の推移」
過年度の通期業績・配当の期初予想/修正/実績の履歴を、決算短信を集計した二次情報として参照した。数値は上記の決算短信一次情報で裏を取っている。