四半期分析電子部品・電線2027/3期 Q1

日本電子材料(6855) 通期上方修正は中間の上乗せ分のみ、増資で薄まる利益成長

2026/09/23 公開2026/09/23 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

日本電子材料株式会社

東証スタンダード 6855 ・ 3月期決算

2026/09/18 時点

株価

7,190円

時価総額

1,054.77億円

配当利回り

1.39%

年間100円

PER

15.7倍

PBR

2.27倍

ROE

15.0%

ROA

14.6%

経常利益ベース

自己資本比率

78.2%

配当性向

18.8%

有利子負債

72億円

D/Eレシオ

0.16倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は売上高96億41百万円(前年同期比+77.3%)・営業利益30億94百万円(同+109.7%)・経常利益31億92百万円(同+126.6%)・親会社株主に帰属する四半期純利益21億69百万円(同+119.4%)と大幅増収増益。半導体検査用部品関連事業(売上構成比99.5%)のメモリー向けプローブカード需要拡大が主因。
  • 会社は同日、通期予想を営業利益74億50百万円→94億50百万円(+20億円)へ上方修正したが、この増額幅は中間期(H1)予想の増額幅(+20億円)と完全に一致しており、計算上は下期(H2)の予想自体を据え置いたまま、1Q〜2Qで確認できた上振れ分をそのまま通期に足しただけと読める。会社自身も修正理由で「下期は公表時の想定のまま」としている。この据え置きを保守的なだけと見るか、会社の季節性(前期はQ2単独の利益がQ1より少なかった)を踏まえた妥当な計画と見るかで評価が分かれる。
  • 親会社株主に帰属する四半期純利益は+119.4%伸びた一方、1株当たり四半期純利益(EPS)の伸びは+89.2%にとどまった。差の主因は2026年2〜3月に実施した公募増資(発行済株式数が+15.9%増加)による希薄化で、年間を通じて増資後の株式数がフルに効く2027年3月期で初めて表れた影響。
  • 調達資金は主に2028年8月竣工予定の尼崎新工場(Mタイププローブカードの生産体制強化)に充てられる計画で、今回のQ1増益そのものは増資前からの既存工場の高稼働率によるもの。増資による希薄化と、その資金が生む将来の増産効果は、まだ天秤にかけられる段階にない。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 通期上方修正の中身——中間の上乗せ分のみ、下期は据え置き
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年9月18日終値(7,190円、直近営業日)を基準にすると、PER15.72倍(2027年3月期の会社予想EPS457.42円ベース)・PBR2.27倍(2026年6月末実績BPS3,170.10円ベース、後述のとおり自分で算出)・予想配当利回り1.39%(会社予想の年間配当100.00円ベース)・ROE15.0%・ROA14.6%(いずれも2026年3月期実績、ROAは総資産経常利益率ベース)・自己資本比率78.2%(2026年6月末実績)という水準です。

日本電子材料は、生成AI向けデータセンター需要の拡大を受けたメモリー半導体需要の急拡大を追い風に、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)に売上高96億41百万円(前年同期比+77.3%)・営業利益30億94百万円(同+109.7%)・親会社株主に帰属する四半期純利益21億69百万円(同+119.4%)という大幅増収増益となりました。会社は同じ2026年8月7日、通期の業績予想と配当予想を上方修正しています(年間配当は80.00円から100.00円へ)。

ここで注目したいのは2つの点です。1つは、通期予想の上方修正の中身です。増額幅を分解すると、修正されたのは中間期(H1)までの見通しだけで、下期(H2)の予想は実質的に据え置かれていました。もう1つは、純利益が+119.4%伸びた一方でEPSの伸びは+89.2%にとどまっている点です。この背景には2026年の公募増資による希薄化があります。この2つを第4節で詳しく見ていきます。

2. 会社概要とビジネスモデル

日本電子材料株式会社(東証スタンダード、本社大阪)は、半導体検査用プローブカード(半導体のウエハ検査工程で使う検査治具)を主力とするメーカーです。とりわけメモリー半導体向けで、MEMS技術を用いたMタイププローブカードを強みとしています。

事業構成は「半導体検査用部品関連事業」が売上の99.5%を占め、残り0.5%は電子管部品関連事業(レガシー事業で、2027年3月期第1四半期は前年同期比△12.9%の縮小基調)です。事実上、業績はプローブカード事業の需要動向にほぼ連動する構造になっています。

強みと弱みの整理

強み

  • メモリー向けプローブカード需要の急拡大を取り込んでいる

    2027年3月期第1四半期の半導体検査用部品関連事業は売上高95億93百万円(前年同期比+78.3%)・セグメント利益36億24百万円(同+88.9%)。生成AI・データセンター向けメモリー半導体の需要拡大と国内工場の高い稼働率が増益の主因です。

  • 通期予想を上方修正し、進捗率も前年より高い

    2026年8月7日、通期営業利益予想を74億50百万円から94億50百万円へ引き上げました。1Q時点の進捗率は32.7%(前年同期は20.3%)で、前年より高い水準で通期予想に対する進捗が進んでいます。

  • 実質無借金に近い財務基盤で、D/Eレシオも低下傾向

    2026年6月末の自己資本比率は78.2%(前期末76.7%)、有利子負債72億30百万円(前期末75億43百万円)、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は0.156倍(前期末0.168倍)まで低下しています。

弱み

  • 公募増資による希薄化がQ1で明確に表れた

    2026年2〜3月の公募増資で発行済株式数は+15.9%増加しました。2027年3月期第1四半期は純利益+119.4%に対しEPSの伸びは+89.2%にとどまっており、増資後の株式数が年間を通じてフルに効く今期から希薄化の影響がはっきり出ています。

  • 下期(H2)予想は据え置きで、上振れが確証されたわけではない

    通期予想の増額幅は中間期(H1)予想の増額幅とちょうど一致しており、計算上は下期の予想自体を動かしていません。1Qの高い伸びがそのまま年間を通じて続くと決まったわけではありません。

  • 過去に急激な落ち込みを経験しており、業績はブレやすい

    2024年3月期は営業利益が前期比△72.8%まで落ち込みました。半導体市況に業績が大きく左右される構造は、今回の急拡大局面でも変わっていません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
0010,0002,50020,0005,00030,0007,50040,00010,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)60708076.7
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/0323,5994,9535,0923,802—
2023/0320,7813,2053,3382,612—
2024/0317,4618701,007622—
2025/0323,8294,5854,6403,454—
2026/0329,3667,2497,1775,45176.7%
2027/03会社予想36,4009,4509,3006,700—
単位:百万円。出典:決算短信の実額(2022年3月期〜2026年3月期は実績、2027年3月期は会社予想)

読み取れることは3つあります。

1つ目は、2024年3月期に大きく落ち込んだ後、2025年3月期・2026年3月期と2期連続で急回復していることです。営業利益は2023年3月期の32億5百万円から2024年3月期には8億70百万円(前期比△72.8%)まで落ち込み、2025年3月期に45億85百万円(同+427.0%)、2026年3月期に72億49百万円(同+58.1%)まで回復しました。2024年3月期の落ち込みの個社固有の理由は、今回参照した決算短信の記載範囲では特定できませんでした。

2つ目は、経常利益と営業利益の水準がほぼ近いことです(2026年3月期は営業利益72億49百万円に対し経常利益71億77百万円)。営業外損益の影響は相対的に小さく、段階利益の質を見るうえでは純利益との差のほうが目立ちません。

3つ目は、2027年3月期の会社予想(2026年8月7日修正後)が売上高364億円(前期比+23.9%)・営業利益94億50百万円(同+30.4%)・経常利益93億円(同+29.6%)・純利益67億円(同+22.9%)と、前期に続きさらに増収増益の計画になっていることです。1Q実績(営業利益+109.7%)と比べると計画上の年間の伸び率(+30.4%)はかなり控えめで、この落差が次節のテーマです。

4. 通期上方修正の中身——中間の上乗せ分のみ、下期は据え置き

増額幅を分解すると、下期(H2)の予想は動いていない

会社は2026年8月7日、1Q決算発表と同時に「2027年3月期第2四半期連結累計期間及び通期連結業績予想並びに剰余金の配当予想の修正に関するお知らせ」を開示しました。中間期(H1)予想と通期予想の修正額は次の通りです。

項目H1予想(修正前→修正後)通期予想(修正前→修正後)
売上高160億円→194億円(+34億円)330億円→364億円(+34億円)
営業利益34億円→54億円(+20億円)74億50百万円→94億50百万円(+20億円)
経常利益33億円→53億円(+20億円)73億円→93億円(+20億円)
純利益24億円→36億円(+12億円)55億円→67億円(+12億円)

すべての項目で、通期の増額幅はH1の増額幅と完全に一致しています。これは検算でも確認できます。営業利益で見ると、修正前の下期(H2)予想は「通期74億50百万円-H1 34億円=40億50百万円」、修正後は「通期94億50百万円-H1 54億円=40億50百万円」で、どちらも40億50百万円のまま変わりません。つまり今回の上方修正は、1Q〜2Qで確認できた上振れ分をそのまま通期に積み増しただけで、下期そのものの見通しを強気に変えたわけではないということです。会社自身、修正理由の開示文で「下期の業績予想につきましては、公表時の想定のまま据え置き」と明記しています。

さらに、この修正後のH2予想(営業利益40億50百万円)を前期の実績と比べると、前期(2026年3月期)のH2実績は「通期72億49百万円-H1実績26億57百万円=45億92百万円」でした。つまり修正後の今期H2予想は、前期のH2実績を下回る計算になります。1Qの伸び率(+109.7%)だけを見ると強気な数字が続きそうに見えますが、会社が織り込んでいる下期の水準は前期実績より保守的という、一見矛盾した組み合わせになっています。

進捗率は前年より明確に高い

項目1Q実績通期会社予想(修正後)進捗率前年同期の進捗率
売上高96億41百万円364億円26.5%18.5%(前年同期54億37百万円÷前期実績293億66百万円)
営業利益30億94百万円94億50百万円32.7%20.3%(前年同期14億75百万円÷前期実績72億49百万円)
経常利益31億92百万円93億円34.3%19.6%(前年同期14億8百万円÷前期実績71億77百万円)
純利益21億69百万円67億円32.4%18.1%(前年同期9億88百万円÷前期実績54億51百万円)

いずれの項目も進捗率は前年同期より10ポイント以上高く、Q1だけを見れば会社予想に対する上振れ余地があるようにも読めます。それでも会社が下期予想を据え置いた背景には、季節性がある可能性があります。前期(2026年3月期)はQ1営業利益が14億75百万円だったのに対し、中間期累計は26億57百万円で、Q2単独では11億82百万円とQ1より少なくなっていました。この会社は必ずしも「Q1が最も稼げる四半期」というわけではなく、四半期ごとの水準がある程度上下する傾向があるとすれば、Q1の高い伸び率をそのまま年間に引き延ばすのは早計とも言えます。この点は本記事では断定せず、次の中間決算で確認すべき論点として示すにとどめます。

純利益+119.4%でもEPSは+89.2%――2026年公募増資の希薄化

もう一つの論点は、利益の伸びと1株当たり指標の伸びの差です。2027年3月期第1四半期の1株当たり四半期純利益(EPS)は148.08円で、前年同期78.26円から+89.2%の伸びでした。純利益の伸び+119.4%と比べると、明確に低い伸び率です。

原因は2026年2〜3月に実施した公募増資(新株式発行及び株式売出し、2026年2月25日公表・3月10日発行価格決定・3月25日第三者割当分確定)です。2026年3月期の決算短信の株主資本等変動計算書によれば、この増資により資本金が30億74百万円から92億5百万円へ(+61億31百万円)、資本剰余金も同額増加し、新株発行による株主資本の増加額は合計122億62百万円(キャッシュ・フロー計算書上の「株式の発行による収入」は121億49百万円)でした。期末発行済株式数(自己株式を含む)は2025年3月期末の1,264万7,416株から2026年3月期末には1,466万3,510株へ、+201万6,094株(+15.9%)増加しています。

一方、2026年3月期の期中平均株式数は1,263万763株から1,279万8,268株への小幅な増加にとどまりました。増資が期末近くに実行されたため、2026年3月期のEPS成長率自体はこの増資の希薄化をほとんど受けていません。しかし2027年3月期は年間を通じて増資後の株式数がフルに効くため、今回のQ1で希薄化の影響がはっきりと表れた形です。

この調達資金の使途は、2026年2月に決議した兵庫県尼崎市の新工場建設(2028年8月竣工予定)です。Mタイププローブカードの生産体制強化・生産効率向上、次世代半導体向けプローブカードの開発が目的とされています。つまり、増資は今すでに起きている急拡大の直接の原資ではなく、2028年8月竣工予定の新工場という将来投資の原資であり、今回のQ1の大幅増益そのものは、決算短信が増益要因として挙げる「国内工場の高い稼働率」、すなわち増資前からの既存設備によるものです。増資による希薄化と、その資金が生むはずの将来の増産効果は、現時点ではまだ天秤にかけられる段階にありません。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/03—40円12.9%
2023/03—40円19.3%
2024/03—40円81.1%
2025/03—70円25.6%
2026/03—80円18.8%
2027/03会社予想80円100円21.9%
  • 2024/03:純利益が6億22百万円に落ち込んだ期。配当を40.00円に据え置いたため配当性向が一時的に跳ね上がった。
  • 2025/03:期末配当40.00円の内訳は普通配当35.00円+創立70周年記念配当5.00円。
  • 2027/03:2026年5月14日公表の期初予想(年間80.00円)を、2026年8月7日の第1四半期決算発表と同時に年間100.00円へ上方修正。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2022年3月期〜2026年3月期は実績、2027年3月期は会社予想)

年間配当は2022年3月期から2024年3月期まで40.00円で据え置かれた後、2025年3月期に70.00円(中間30.00円・期末40.00円)へ増配し、2026年3月期は80.00円(中間30.00円・期末50.00円)とさらに増配しました。2025年3月期の期末配当40.00円の内訳は、普通配当35.00円に創立70周年記念配当5.00円を加えたもので、通常の配当水準としては35.00円である点に注意が必要です。

配当性向は2024年3月期に81.1%まで跳ね上がっています。これは純利益が6億22百万円に落ち込んだにもかかわらず、配当額を40.00円に維持したためで、業績悪化局面での株主還元姿勢の表れという面が大きく、性向の高さ自体を割高感の材料と見るのは適切ではありません。2025年3月期・2026年3月期は純利益の回復に伴って性向はそれぞれ25.6%・18.8%まで低下しています。

2027年3月期は、2026年5月14日公表の期初予想(年間80.00円)を、2026年8月7日の1Q決算発表と同時に年間100.00円(中間60.00円・期末40.00円)へ上方修正しました。この予想は会社が明示した最新の数字であるため、予想配当利回り1.39%(7,190円に対して)はそのまま使える数字です。会社予想EPS457.42円に対する配当性向は約21.9%で、直近数期の中でも低めの計画です。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期の連結損益を段階別に見ると、売上原価は50億81百万円(前年同期26億39百万円)、売上総利益は45億60百万円(同27億97百万円)、販管費は14億66百万円(同13億22百万円、うち研究開発費は4億3百万円で前年同期4億36百万円からやや減少)でした。営業外損益では為替差益1億18百万円を計上しており(前年同期は為替差損75百万円)、経常利益の伸び率(+126.6%)が営業利益の伸び率(+109.7%)を上回る一因になっています。

セグメント別に2027年3月期第1四半期を見ると、半導体検査用部品関連事業が売上高95億93百万円(前年同期比+78.3%)・セグメント利益36億24百万円(同+88.9%)と全社を牽引した一方、電子管部品関連事業は売上高48百万円(同△12.9%)・セグメント利益1百万円(同△42.8%)と縮小が続いています。全社費用調整額は△5億31百万円でした。

財政状態は、2026年6月末で総資産593億87百万円(前期末584億76百万円)、負債合計129億52百万円(前期末135億97百万円、6億45百万円減少)、純資産464億34百万円(前期末448億78百万円)、自己資本比率78.2%(前期末76.7%)です。有利子負債は72億30百万円で、前期末の75億43百万円から3億13百万円減少しました。内訳は1年内償還予定の社債1億円、1年内返済予定の長期借入金12億49百万円、社債27億円、長期借入金31億81百万円です。D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は0.156倍(前期末0.168倍)まで低下しており、実質無借金に近い財務基盤がさらに強まっています。前述の公募増資(2026年2〜3月)で自己資本が大きく積み増された一方、有利子負債はむしろ減少しているため、この期の自己資本比率上昇は増資による分母(自己資本)の拡大が主因と考えられます。

なお、2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」について、決算短信では人的被害はなく、事業所の建物・設備にも大きな損害は確認されておらず、現時点で業績への影響は限定的と判断している旨が明記されています。

7. 業界とセクターの状況

日本電子材料が属する電子部品セクターは、最終製品を持たず、半導体メーカーなど納入先の設備投資・生産サイクルに業績が連動する部材サプライヤー群です。この銘柄の場合、直接の顧客は半導体メーカーそのものというより、ウエハ検査工程を担う工程であり、メモリー半導体(特に生成AI・データセンター向けの需要拡大が続く分野)の増産投資の有無に業績が強く左右されます。増産投資が続く局面では検査治具であるプローブカードの需要も拡大しますが、半導体メーカー側が在庫調整局面に入れば、検査工程への発注も比較的早い段階で鈍化しうる構造です。

為替の感応度も無視できません。2027年3月期第1四半期は為替差益1億18百万円を計上しており、円安基調が経常利益を押し上げる方向に働きました。逆に円高方向への反転は、経常利益の伸び率を営業利益の伸び率より押し下げる方向に働きます。

また、半導体製造装置・検査関連の業界では、大型設備投資は数年がかりの計画になりやすく、日本電子材料自身も2028年8月竣工予定の尼崎新工場という形で先行投資を進めています。個社の努力で変えられるのはこの投資判断のタイミングまでで、投資回収の前提となる半導体需要のサイクル自体は業界共通の構造的な変数です。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

次回の決算発表(2027年3月期第2四半期・中間決算)は、過去の発表時期からの推定で2026年11月上旬頃です(会社の正式な発表日はまだ確認できていません)。ここで、①下期(H2)予想が上方修正されるか据え置かれ続けるか、②Q2単独の営業利益がQ1(30億94百万円)に対してどう動くか(前期はQ2単独がQ1より少なかった)、の2点を確認することになります。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期第2四半期(中間)決算・通期業績予想の見直し中両面

据え置かれている下期(H2)予想が、1Q・2Qの実績を踏まえて上方修正されるか、このまま据え置かれるかを確認できる最初の機会。

随時生成AI・データセンター向けメモリー半導体の設備投資動向中両面

メモリーメーカーの増産投資が続く局面ではプローブカード需要の追い風が続くが、在庫調整局面に入ればウエハ検査工程への発注も鈍る可能性がある。

2028年8月(予定)尼崎新工場の竣工高上振れ

2026年の公募増資の主な使途。竣工・稼働後の生産能力増強は中期的な増収余地だが、2027年3月期の業績への直接寄与はまだ限定的。

直近で最も確認しやすいのは、2026年11月上旬(予定)の中間決算での通期予想の見直しの有無です。中長期では、生成AI・データセンター向けメモリー半導体の設備投資サイクルと、2028年8月竣工予定の尼崎新工場が中期的な生産能力にどう寄与するかが焦点になります。

10. 想定されるリスク

下期(H2)予想が据え置かれたままである、というリスク。 第4節の通り、通期予想の上方修正は中間期(H1)の上乗せ分がそのまま乗っただけで、下期の予想自体は動いていません。修正後のH2予想(営業利益40億50百万円)は、前期のH2実績(45億92百万円)を下回る計算です。1Qの伸びをそのまま延長できるという保証はありません。

希薄化の影響が通期を通じて続くリスク。 2026年の公募増資により発行済株式数は+15.9%増加しました。純利益が伸びてもEPSの伸びがそれを下回る構図(Q1は純利益+119.4%に対しEPS+89.2%)は、今後も年間を通じて続きます。

半導体市況・為替への感応度。 2024年3月期には営業利益が前期比△72.8%まで落ち込んだ実績があり、メモリー半導体需要の減速局面では業績が大きく振れうる構造です。また、2027年3月期第1四半期の経常利益の伸びには為替差益1億18百万円が寄与しており、円高方向への反転は経常利益の伸び率を押し下げる方向に働きます。

レガシー事業の縮小。 電子管部品関連事業は2027年3月期第1四半期の売上高が前年同期比△12.9%と縮小が続いています。売上構成比は0.5%と小さいため全社への影響は限定的ですが、縮小基調そのものは変わっていません。

11. まとめ:どう判断材料にするか

日本電子材料は、生成AI・データセンター向けメモリー半導体の需要拡大を追い風に、2027年3月期第1四半期に営業利益+109.7%・純利益+119.4%という大幅増益を記録し、通期予想も上方修正しました。自己資本比率78.2%・D/Eレシオ0.156倍という財務基盤も、増資後さらに強まっています。

判断の分かれ目の1つは、通期予想の据え置かれた下期(H2)をどう読むかです。会社が示した下期予想は前期実績を下回る保守的な水準ですが、これを「会社が実際に減速を織り込んでいる」と見るか、「1Qで稼いで下期は平年並みに戻るという、この会社の季節性を踏まえた妥当な計画」と見るかで評価が変わります。次の中間決算での修正の有無が、この分かれ目に対する最初の答え合わせになります。

もう1つの分かれ目は、公募増資による希薄化をどう評価するかです。純利益の伸び(+119.4%)だけを見れば力強く映りますが、EPSベースの伸び(+89.2%)はそれより穏やかです。増資の原資は2028年8月竣工予定の新工場という将来投資に向けられており、今の希薄化と将来の増産効果のどちらを重く見るかによって、現在のPER15.72倍・PBR2.27倍という水準の評価は変わってきます。

次の確認ポイントは、2026年11月上旬(予定)の第2四半期(中間)決算です。下期予想が修正されるか、Q2単独の営業利益がQ1に対してどう動くかを確認してください。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、下期(H2)の業績予想が上方修正されずに据え置かれ続け、かつQ3以降の営業利益の前年同期比の伸びが1Q(+109.7%)・想定される2Q水準から大きく鈍化した場合。今回の据え置きが「保守的な計画」ではなく「会社が実際に想定している減速」だったことを意味する。
  • 生成AI・データセンター向けのメモリー半導体需要が急減速し、かつ為替が円高方向へ反転した場合。2027年3月期第1四半期の経常利益は為替差益118百万円(前年同期は為替差損75百万円)を含んでおり、円安基調が反転すれば経常利益の伸び率(+126.6%)は営業利益の伸び率(+109.7%)を下回る形に変わる可能性がある。
  • 尼崎新工場(2028年8月竣工予定)の投資負担が本格化し、自己資本比率が2026年6月末の78.2%から大きく低下する、または有利子負債が同時点の72億30百万円から大きく積み増される局面に転じた場合。現状は有利子負債・D/Eレシオともに減少傾向にあり、これが反転すれば財務面の前提が変わる。
  • 配当性向が会社予想の約21.9%を大きく超えるような減益局面に転じた場合。2024年3月期には純利益が6億22百万円に落ち込んだにもかかわらず配当を40.00円に維持し、配当性向が81.1%まで跳ね上がった実績があり、同様の急変が再び起きうることを示している。

よくある質問

日本電子材料の配当は100株でいくらになりますか?
2027年3月期の会社予想は年間100.00円(中間60.00円・期末40.00円)で、100株保有で年間10,000円です。この予想は2026年5月14日公表の期初予想(年間80.00円)から、2026年8月7日の第1四半期決算発表と同時に上方修正されたものです。予想配当利回りは2026年9月18日終値7,190円に対して1.39%です。
純利益が+119.4%伸びたのに、なぜ1株当たり利益(EPS)の伸びはそれより小さいのですか?
2026年2〜3月に実施した公募増資により、発行済株式数が2025年3月期末の1,264万7,416株から2026年3月期末には1,466万3,510株へ+15.9%増加したためです。増資が期末近くに実行されたため2026年3月期のEPS成長への影響は小さかったのですが、2027年3月期は年間を通じて増資後の株式数がフルに効くため、Q1では純利益+119.4%に対してEPSは+89.2%(78.26円→148.08円)にとどまりました。詳細は第4節で扱います。

参考文献・引用元

  1. 01
    日本電子材料 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

    2026年8月7日開示。連結経営成績・財政状態・セグメント情報・配当の状況を参照。

  2. 02
    日本電子材料「2027年3月期第2四半期連結累計期間及び通期連結業績予想並びに剰余金の配当予想の修正に関するお知らせ」

    2026年8月7日開示。中間期(H1)・通期の業績予想の修正額、修正理由(下期予想は据え置き)、配当予想の修正(年間80.00円→100.00円)を参照。

  3. 03
    日本電子材料 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

    2026年5月14日開示。通期の連結経営成績・株主資本等変動計算書(公募増資による資本金・資本剰余金の増加額)・発行済株式数の注記・期初の2027年3月期業績予想(年間配当80.00円)・尼崎新工場建設の決議を参照。

  4. 04
    日本電子材料 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

    2025年5月14日開示。2025年3月期の連結経営成績・配当の状況(創立70周年記念配当5.00円を含む期末配当の内訳)を参照。

  5. 05
    日本電子材料 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)

    2025年11月7日開示。2026年3月期第1四半期・中間期累計の営業利益(Q1実績とQ2単独の実績を比較するための季節性の参照用)を参照。

  6. 06
    日本電子材料 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

    2024年5月14日開示。2023年3月期・2024年3月期の連結経営成績(financials の当該期)を参照。

  7. 07
    日本電子材料 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

    2023年5月15日開示。2022年3月期・2023年3月期の連結経営成績(financials の当該期)を参照。

  8. 08
    日本電子材料 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

    2022年5月12日開示。2022年3月期の連結経営成績(financials の当該期)を参照。

  9. 09
    Yahoo!ファイナンス 日本電子材料(6855)株価

    2026年9月18日終値(直近営業日。9月19〜23日は土日・敬老の日(9/21)・国民の休日(9/22)・秋分の日(9/23)で休場)。株価・時価総額を参照。