四半期分析自動車部品2027/3期 Q1

デンソー(6902) Q1は増収でも営業▲21.5%、借入で自社株を買う還元の持続性を読む

2026/10/04 公開2026/10/04 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

株式会社デンソー

東証プライム 6902 ・ 3月期決算

2026/10/02 時点

株価

1,809円

時価総額

52,630億円

配当利回り

4.09%

年間74円

PER

12.1倍

PBR

0.89倍

ROE

7.4%

自己資本比率

58.1%

配当性向

49.3%

有利子負債

13,532億円

D/Eレシオ

0.26倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期の会社予想は、売上収益が前期比+2.8%の7兆7,500億円に対し、営業利益は▲9.5%の5,000億円、EPSは▲7.9%の150.08円と「増収減益」です。Q1の営業利益も84,178百万円(▲21.5%)で、銅・アルミ等の部材費高騰と成長投入、欧州の品質費用が重なっています。
  • 還元の資金源は変わりました。Q1に自己株式を3,136億円取得(前年同期1,186億円)し、配当支払942億円と合わせると4,078億円で、Q1営業CF2,390億円を上回りました。差額は借入・社債(調達5,283億円)で埋められ、有利子負債は3月末8,113億円から6月末1兆3,532億円、持分比率は62.9%から58.1%に動いています。一方で現金1.43兆円、その他の金融資産(非流動)1.69兆円があり、財務余力が大きいことも事実です。
  • 配当は67円から74円(+10.4%)へ増配予想ですが、予想純利益が減るため配当性向は約49%に上がります。1株配当は株数の減少が支える構造で、利益が減る局面でこの水準を保てるかは、通期営業利益5,000億円の達成と原材料高の吸収にかかっています。
  • 割安度はPBR0.89倍・予想PER12.1倍・予想利回り4.09%ですが、予想ROEは約7.4%(前期実績8.5%)です。ROEが資本コストを上回ると見るならPBR1倍割れは割安、届かないと見るなら妥当な水準です。分かれ目は、営業利益率が今期予想の約6.5%から回復するか、還元が借入に頼る局面が続くかです。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 利益が減る今期に、還元は何で賄われているのか — 自社株買いと有利子負債の増加
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年7月31日、デンソーは2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)決算を発表しました。売上収益は1兆9,139億円で前年同期比+9.1%の増収でしたが、営業利益は842億円で同▲21.5%の減益でした。親会社帰属の四半期利益は679億円(同▲14.4%)、基本EPSは25.51円(前年同期28.50円)です。会社は同日、通期の売上収益予想を7兆6,700億円から7兆7,500億円へ上方修正しましたが、営業利益予想は5,000億円(前期比▲9.5%)に据え置いています。

2026年10月2日時点(IR BANK表示)の株価は約1,809円で、PBRは0.89倍(2026年6月末の親会社持分÷自己株式を除く株数で試算したBPS約2,039円)、PERは12.1倍(会社予想EPS150.08円ベース)、配当利回りは4.09%(会社予想の年間配当74円ベース)です。予想ROEは約7.4%(予想EPS÷BPS)で、前期実績の8.5%より下がります。自己資本比率にあたる親会社所有者帰属持分比率は58.1%(2026年3月末62.9%)、有利子負債は1兆3,532億円、負債資本比率(有利子負債÷親会社持分)は0.26倍です。

この記事の中心的な論点は、利益が減る今期に、会社が自社株買いと増配をどう賄っているかです。 Q1の自己株式の取得は3,136億円と前年同期(1,186億円)の2.6倍で、その資金の多くを借入・社債に頼りました。第4節で、この動きを強気・弱気の両面から整理します。なお、デンソーはIFRSを採用しているため日本基準の経常利益に相当する開示はなく、本記事では売上収益・営業利益・親会社帰属当期利益の3段階で読みます。

2. 会社概要とビジネスモデル

デンソーは、トヨタグループの中核を担う世界大手の自動車部品メーカーです。熱管理(エアコン等)、パワートレイン、電動化、先進運転支援(ADAS)やセンサ・半導体などの電子部品を、完成車メーカー向けに開発・製造しています。決算短信の地域別セグメントは「日本」「北米」「欧州」「アジア」「その他」の5区分で、2027年3月期Q1の各セグメントの売上(セグメント間取引を含む)は日本1兆1,100億円、北米5,381億円、アジア4,892億円、欧州1,988億円でした。この合計は連結売上収益を上回ります(セグメント間の内部取引を含むため)。

部品メーカーは、完成車メーカーの生産台数と車種構成に売上が連動し、原材料価格や為替の影響を直接受けます。今期のQ1は、まさにその構造が表面化した四半期でした。

強みと弱みの整理

強み

  • 手元資金と保有金融資産が厚い

    2026年6月末の現金は1兆4,291億円(3月末1兆1,891億円)、その他の金融資産(非流動)は1兆6,853億円(同1兆7,997億円)で、総資産8兆7,960億円に対して合わせて3兆円超です。借入が増えても、返済能力の面では余力が大きいと言えます。

  • 営業キャッシュフローは回復している

    Q1の営業CFは2,390億円で、前年同期の1,644億円から+45.4%増えました。営業利益が減る局面でも、キャッシュの創出は前年を上回っています。

  • 1株あたりの配当は増える見込み

    2027年3月期の年間配当は67円から74円(+10.4%)の予想で、2025年3月期の64円、2026年3月期の67円に続く増配となる見通しです。期中平均株式数は前年同期から4.3%減っており、株数の減少が1株あたりの指標を下支えしています。

弱み

  • 増収でも営業利益率が低下している

    Q1の営業利益率は4.4%(前年同期6.1%)で、通期予想でも6.5%と前期実績7.3%を下回ります。売上が増えても、部材費等の高騰と成長投入が利益を削る構図です。

  • 欧州が赤字に転落している

    欧州セグメントの営業利益は△86億円(前年同期は+52億円)で、品質費用の発生が要因とされています。日本も76億円(前年同期比▲43.3%)と大きく落ち込んでいます。

  • 還元に借入を使い、財務の余裕が薄くなっている

    有利子負債は3月末の8,113億円から6月末に1兆3,532億円へ増え、持分比率は62.9%から58.1%へ低下しました。営業CFを超える還元を続ければ、この傾向は続きます。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
002,000,000150,0004,000,000300,0006,000,000450,0008,000,000600,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)50607062.9
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/035,520,000341,200—263,900395,600—
2023/036,400,000426,100—314,600602,700—
2024/037,140,000380,600—312,800961,800—
2025/037,161,777518,953—419,081758,743—
2026/037,539,975552,538—443,755511,02562.9%
2027/03会社予想7,750,000500,000—382,000——
単位:百万円。出典:2025年3月期・2026年3月期は決算短信(百万円)、2022年3月期〜2024年3月期はIR BANK集計(億円表記を百万円に換算した近似値で±1億円程度の丸めを含む)、2027年3月期は2026年7月31日公表の会社予想

IFRSのため経常利益の列はありません(本記事の表は売上収益・営業利益・親会社帰属当期利益の3段階)。この6期を並べて読み取れることは3つあります。

売上は4期で約37%増えた。 2022年3月期の5兆5,200億円から2026年3月期の7兆5,400億円へ増え、2027年3月期の会社予想は7兆7,500億円(+2.8%)です。増収基調は続く見込みですが、伸びは鈍っています。

営業利益は2025年3月期に大きく跳ねたあと、今期は初めて減益予想。 2024年3月期の3,806億円(IR BANK)から2025年3月期の5,190億円、2026年3月期の5,525億円(+6.5%)と伸びましたが、2027年3月期は5,000億円(▲9.5%)の予想です。営業利益率は2026年3月期の7.3%から6.5%に下がります。

EPSは今期、株数減を織り込んでも減る。 2026年3月期のEPSは162.96円(+12.4%)で、純利益の伸び(+5.9%)を株数の減少が上乗せしていました。2027年3月期の予想は150.08円(▲7.9%)で、親会社帰属利益の減少率(▲13.9%)より小さい減少にとどまります。ここでも株数の減少が効いています。

営業キャッシュフローは2024年3月期の9,618億円(IR BANK)をピークに、2025年3月期7,587億円、2026年3月期5,110億円と減少しています。この推移は第4節の還元の原資の議論で使います。

4. 利益が減る今期に、還元は何で賄われているのか — 自社株買いと有利子負債の増加

当初、この記事のテーマは「自己株TOB・豊田自動織機株の売却による特別利益を除いた、実力の利益」としていました。しかし、特別利益は個別決算の項目であり、連結の営業利益には影響しません。連結ベースで株式売却益や評価損益がどこに計上されているか(損益かその他の包括利益か)は、今回確認できた短信の抜粋からは特定できませんでした。そこで、一次情報から実際に確認できる「還元の原資」を軸に整理します。

4-1. Q1は営業CFを超える還元を、借入で埋めた

2027年3月期Q1のキャッシュフローは次のとおりです。

項目2026年4〜6月前年同期
営業活動CF2,390億円1,644億円
投資活動CF△1,068億円+606億円
財務活動CF+927億円△567億円
うち借入調達4,476億円—
うち社債発行807億円—
うち自己株式の取得△3,136億円△1,186億円
うち配当支払△942億円—

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(前年同期の借入・社債・配当支払の内訳は今回確認した資料に無く空欄)

読み取れることは3つあります。

第1に、還元額が営業CFを上回った。 自己株式の取得3,136億円と配当支払942億円の合計は4,078億円で、営業CF2,390億円を1,688億円上回ります。さらに、この4,078億円は通期の親会社帰属利益予想3,820億円(▲13.9%)を超えています。Q1だけで通期利益予想を上回る還元を実行した計算です。

第2に、不足分は借入と社債で調達した。 借入調達4,476億円と社債発行807億円で合計5,283億円です。有利子負債(社債及び借入金)は、3月末の8,113億円(流動2,374億円+非流動5,739億円)から、6月末は1兆3,532億円(流動3,281億円+非流動1兆251億円)へ5,419億円増えました。負債資本比率(有利子負債÷親会社持分)は、3月末の0.15倍から6月末の0.26倍に上がっています。この借入の使途が還元だけなのか、他の資金需要も含むのかは、短信の抜粋からは特定できませんでした。

第3に、財務の余力は大きい。 現金は3月末の1兆1,891億円から6月末には1兆4,291億円に増えています。借入の一部は手元に積み上がっており、その他の金融資産(非流動)1兆6,853億円も保有しています。現金(1兆4,291億円)は有利子負債(1兆3,532億円)を上回っており、差し引きでは現金が多い状態です。

4-2. 持分比率は4.8ポイント低下

自己株式の累計は、3月末の4,372億円から6月末の7,503億円へ増えました。保有株数は2億1,904万株から4億394万株へ約1億8,490万株増え、発行済2,910,979,691株の約13.9%に当たります。親会社持分は5兆4,927億円から5兆1,129億円へ3,798億円減り、持分比率は62.9%から58.1%に下がりました。

Q1の親会社帰属利益(679億円)を足し、自己株取得(3,136億円)と配当支払(942億円)を引くと約3,399億円の減少で、実際の減少幅3,798億円との差約399億円の内訳は短信の抜粋からは特定できませんでした(為替換算差額等のその他の変動とみられますが、確認できていません)。

4-3. 総還元性向は2期連続で90%台、配当性向は上昇へ

IR BANKによると、総還元性向(配当と自社株買いの合計÷純利益)は2025年3月期に91%、2026年3月期に98.2%でした。自社株買いは2024年3月期2,000億円、2025年3月期1,966億円、2026年3月期2,534億円と高水準が続いています。一方、営業CFは2024年3月期の9,618億円から2026年3月期の5,110億円まで低下しています。2026年3月期の財務CFは△3,550億円で、営業CF5,110億円の範囲に収まっていましたが、今期Q1は財務CFがプラス(+927億円)に転じました。

配当面では、年間74円(+10.4%)の予想で、配当性向は約49%(74円÷150.08円)と、前期の41.1%から上がります。純利益が減る中での増配なので、配当性向は自然に上昇します。株数の減少が1株配当の維持・増加を支えている構造です。

4-4. 割安度はROEとセットで読む

PBR0.89倍、予想PER12.1倍、予想利回り4.09%という水準は、予想ROE約7.4%(前期実績8.5%)と併せて読む必要があります。PBRはPER×ROEで表されるため、ROEが下がる局面ではPBRも上がりにくくなります。ROEが資本コストを上回ると市場が見れば、PBR1倍割れは割安という見方になります。逆に、今期の営業利益率の低下(6.5%予想)が続き、ROEが7%台にとどまるなら、現在のPBRは妥当という見方も成り立ちます。ここは断定できません。

なお、デンソーの時価総額5兆2,630億円は発行済株式数(自己株式を含む)ベースで、自己株式を除いた株数(約25.07億株)で計算すると約4兆5,350億円です。自己株式が増えるほど、この差は広がります。

4-5. 減益の要因は特定できる範囲で3つ

会社は、円安の増益影響はあるものの、部材費等の高騰と将来成長に向けた投入強化が上回ったと説明しています。通期予想では「第1四半期に発生した銅・アルミ等の高騰」を明記しており、売上増と円安による増益分を、銅・アルミ等の高騰が相殺して営業利益が据え置きになっている構図です。もう1つは欧州セグメントの品質費用で、△86億円の赤字(前年同期+52億円)の要因とされています。それぞれの金額は短信の抜粋から特定できませんでした。

なお、税引前利益は1,126億円で営業利益842億円を284億円上回っています。2026年3月期も税引前利益6,173億円が営業利益5,525億円を上回っており、営業利益に表れない金融収益等の寄与があるとみられますが、内訳は特定できませんでした。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2022/03—41.25円—
2023/03—46.25円—
2024/03—55円—
2025/03—64円44.1%
2026/03—67円41.1%
2027/03会社予想74円74円49.3%
  • 2022/03:株式分割調整後の1株配当(IR BANK)。期初予想は確認できた資料の範囲では不明のため省略。
  • 2023/03:株式分割調整後(IR BANK)。期初予想は不明のため省略。
  • 2024/03:株式分割調整後(IR BANK)。期初予想は不明のため省略。
  • 2025/03:期初予想は確認できた資料の範囲では不明のため省略。
  • 2026/03:中間32円・期末35円。期初予想は不明のため省略。
  • 2027/03:2026年7月31日のQ1決算時点でも配当予想は修正なし(期初から74円のまま)。配当性向は74円÷予想EPS150.08円の単純計算。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2025年3月期以降)、IR BANK(2022年3月期〜2024年3月期、株式分割調整後)

年間配当は2022年3月期の41.25円から2026年3月期の67円まで、毎期増えています(株式分割調整後)。2027年3月期は中間37円・期末37円の合計74円(+10.4%)の予想で、2026年7月31日のQ1決算時点でも修正はありません。

配当性向(連結)は2025年3月期44.1%、2026年3月期41.1%で、2027年3月期は予想EPS150.08円に対し約49%(単純計算)です。会社予想が出ているため、4.09%の予想利回りは会社の開示に基づく数値として扱えます。ただし、期初予想と着地の関係は、確認できた資料の範囲では2027年3月期(期初・現在とも74円)以外が不明のため、「期初予想の癖」は本記事では判断していません。

配当の原資という点では、2026年3月期の配当金総額は1,808億円でした。Q1の営業CF2,390億円を年換算すれば配当の原資として足りますが、自社株買いと合わせた還元は第4節で見たとおり、営業CFを超えています。

6. 会社の現状と直近の動き

セグメント別(営業利益)のQ1は次のとおりです。

セグメント2027年3月期Q1 営業利益前年同期比
日本76億円▲58億円(▲43.3%)
北米253億円+27億円(+12.1%)
欧州△86億円前年同期+52億円の黒字から赤字へ
アジア418億円▲58億円(▲12.2%)
その他73億円—

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(セグメント間の消去等を含むため、各地域の合計は連結営業利益と一致しない)

北米だけが増益で、日本・欧州・アジアが減益または赤字です。最大の悪化は日本(▲58億円)とアジア(▲58億円)で、欧州は黒字から赤字への転換(約138億円の悪化)です。

通期予想は2026年7月31日に修正されました。売上収益は7兆6,700億円から7兆7,500億円(前期比+2.8%)に引き上げられたものの、営業利益は5,000億円(▲9.5%)、親会社帰属当期利益は3,820億円(▲13.9%)、EPS150.08円(期初146.95円から上方修正)です。為替前提は2Q以降1ドル=153円、1ユーロ=180円です。売上と円安による増益分を、銅・アルミ等の高騰が相殺し、営業利益は据え置かれました。EPS予想が期初から上がった理由について、会社の説明は今回確認した資料からは特定できませんでした(株数減少の寄与が考えられますが、断定はしません)。

財政状態は、総資産が8兆7,960億円(3月末8兆7,309億円)とほぼ横ばいで、資本合計が5兆3,133億円(同5兆7,158億円)に減り、持分比率が58.1%に下がりました。有利子負債の増加と自己株式の取得が、その背景です(詳細は第4節)。

7. 業界とセクターの状況

自動車部品メーカーは、構造的に次の制約を受けます。

価格決定力が限られる。 部品の価格は完成車メーカーとの契約・交渉で決まります。銅・アルミ等の原材料が高騰しても、すぐに販売価格に転嫁できるとは限りません。今期のQ1はまさにこの構造が表れ、売上収益が+9.1%増えても営業利益は▲21.5%減りました。会社が通期予想で銅・アルミの高騰を織り込んだのも、この制約があるためです。

完成車メーカーの生産台数に連動する。 部品の売上は、完成車メーカーの生産計画に左右されます。個社の努力で台数そのものを変えることはできません。

為替の影響が大きい。 会社予想の為替前提は1ドル=153円、1ユーロ=180円で、円安は海外売上の円換算額を押し上げます。円高に振れれば、増益効果は薄れます。

品質・リコール費用が突発的に発生する。 欧州の品質費用のように、一度発生すれば短期間で利益を押し下げ、発生時期をあらかじめ見通すのは困難です。

このほか、EVシフトの速度による製品構成の変化も、各社の収益性を左右します。自動車部品全体でこうした外部要因に左右されやすいため、PERやROEが同業と比べて高い・低いという水準は、一時点の市況で動く性質があります。デンソーのPER12.1倍・予想ROE約7.4%も、原材料高が続く期間は低めに出る可能性があります。

8. 今後のスケジュール

2026年10月下旬〜末(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表日が毎年10月28日〜31日であることからの推定。会社の公表日ではない

2027年1月下旬〜2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年4月下旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

前期の通期決算が2026年4月28日だったことからの推定

2027年7月下旬〜末(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

今期のQ1決算が2026年7月31日だったことからの推定

次回の第2四半期(中間)決算は、過去の発表日が毎年10月28日〜31日であることから、2026年10月下旬〜末になる見込みです(会社が公表した日付ではありません)。上期(4〜9月)の営業利益、通期予想の修正の有無、中間配当(37円)が確認できます。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年10月下旬〜末2027年3月期 第2四半期(中間)決算高両面

通期営業利益5,000億円の据え置きが維持されるか、銅・アルミ等の高騰を価格転嫁・コスト低減で吸収できているか、欧州の営業赤字(Q1は△86億円)が止まるかを確認する最初の機会。

随時為替(円/米ドル・円/ユーロ)の変動中両面

会社予想の為替前提は2Q以降1ドル=153円・1ユーロ=180円。円高に振れれば増益寄与が薄れ、円安が続けば部材費高騰を相殺する余地が広がる。

随時自己株式取得の継続と有利子負債の水準中両面

Q1は自己株3,136億円を借入・社債中心で賄った。2Q以降も同ペースで取得が続くのか、借入の返済に回るのかで持分比率とD/Eレシオの方向が決まる。

2026年11月〜12月中間配当(37円)の支払い高上振れ

中間37円(前期32円)は据え置き予想。実際の支払いは第2四半期決算で確定する。

10. 想定されるリスク

原材料高が長引くリスク。 Q1に発生した銅・アルミ等の高騰が通期で続けば、据え置かれた営業利益5,000億円の達成が難しくなります。今回の見通しは、売上増と円安の増益分で相殺できるという前提に立っています。

円高のリスク。 会社予想の為替前提は2Q以降1ドル=153円・1ユーロ=180円です。これより円高が進めば、円安による増益効果が薄れ、部材費高騰を吸収できなくなります。

欧州の品質費用が追加で発生するリスク。 Q1に欧州は△86億円の赤字に転じました。費用の規模が一過性かどうかは短信の抜粋からは判断できません。追加で発生すれば、通期予想の下振れ要因になります。

借入に頼る還元が続くリスク。 有利子負債は3月末の8,113億円から6月末の1兆3,532億円へ増え、持分比率は58.1%に下がりました。財務余力は大きいものの、営業CFを超える還元を借入で続ければ、財務の余裕は薄くなります。強みの節で述べた現金1.43兆円・その他の金融資産1.69兆円という厚みが、このリスクの緩衝材ですが、後者は市況の変動を受ける資産でもあります(6月末は3月末から1,144億円減少)。減少の理由は短信の抜粋からは特定できませんでした。

利益減少下での配当性向上昇のリスク。 配当性向は前期の41.1%から約49%に上がります。通期のEPSが予想を下回れば、配当性向は一段と高まり、今後の増配余地が狭まります。

ROEが資本コストに届かないまま、PBRが低位にとどまるリスク。 予想ROE約7.4%は、資本コストを上回る水準かどうかを断定できません。利益率の回復が遅れれば、PBR1倍割れの状態が続く可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

デンソーの2027年3月期Q1は、増収(+9.1%)でも営業利益が▲21.5%、通期予想も営業利益▲9.5%・EPS▲7.9%の「増収減益」です。それでも年間配当は67円から74円へ+10.4%の増配が予想され、Q1には自社株買い3,136億円を実行しました。その結果、還元額4,078億円が営業CF2,390億円を上回り、差額は借入・社債(5,283億円)で埋められ、有利子負債は1兆3,532億円、持分比率は58.1%になりました。

PBR0.89倍・予想PER12.1倍・予想利回り4.09%は、予想ROE約7.4%とセットで読む必要があります。

判断の分かれ目は、今期の減益が一過性か、構造的な利益率の低下かという点です。 銅・アルミ等の高騰や欧州の品質費用が一時的で、現金1.43兆円・その他の金融資産1.69兆円という財務余力を背景に借入で還元を続けられると見るなら、現在のPBRやPERは割安と見る余地があります。逆に、部材費高が構造化して営業利益率が6%台にとどまり、還元が営業CFを超える状態が続くと見るなら、持分比率の低下と配当性向の上昇を考えると、現在の水準は妥当とも言えます。

次の確認ポイントは2026年10月下旬〜末の第2四半期決算です。通期営業利益5,000億円が据え置かれるか、有利子負債がさらに増えたか、欧州の赤字が続いたかを見てください。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 次回の第2四半期決算で、通期営業利益予想5,000億円(前期比▲9.5%)が引き下げられた場合。「部材費高騰は売上増と円安で相殺できる」という今回の見立ては外れ、EPS150.08円と配当性向約49%の前提も崩れます。
  • 有利子負債が6月末の1兆3,532億円からさらに増え、持分比率(6月末58.1%)が55%を下回った場合。Q1の借入増は一時的な資金繰りの動きで、財務余力は大きいとする見方が成り立たなくなります。
  • 上期の営業CFが自己株式取得と配当支払の合計を下回る状態が続き、手元現金が3月末の1兆1,891億円を割り込んだ場合。「現金・金融資産が厚いので借入による還元も許容できる」という整理は外れます。
  • 会社が配当予想(年間74円)を引き下げた場合、または通期EPS予想が140円を下回って配当性向が50%を超える水準で固定される場合。増配と還元の持続性を肯定的に読んだ部分が成り立たなくなります。
  • 欧州セグメントの営業赤字が第2四半期以降も続き、品質費用が追加で発生している旨が開示された場合。Q1の赤字(△86億円)を一過性とみなした整理が外れます。

よくある質問

デンソーの配当は100株でいくらになりますか?
2027年3月期の会社予想は年間74円(中間37円・期末37円)なので、100株なら年間7,400円です(税引前)。前期実績は67円(中間32円・期末35円)でした。株価約1,809円(2026年10月2日時点)に対する予想利回りは4.09%、配当性向は予想EPS150.08円に対して約49%です。
デンソーはなぜ増収なのに営業減益なのですか?
2027年3月期Q1は売上収益が+9.1%の1兆9,139億円だった一方、営業利益は▲21.5%の842億円でした。会社は円安の増益影響があるものの、部材費等の高騰と将来成長に向けた投入強化が上回ったとしています。通期予想では第1四半期に発生した銅・アルミ等の高騰を明記し、売上収益は上方修正したものの営業利益は5,000億円に据え置きました。セグメント別では欧州が品質費用の発生で赤字に転じています。それぞれの金額の内訳は短信の抜粋からは特定できませんでした。
デンソーは借金をして自社株買いをしているのですか?
Q1の財務キャッシュフローでは、借入調達4,476億円と社債発行807億円の合計5,283億円に対し、自己株式の取得が3,136億円、配当支払が942億円でした。有利子負債は3月末の8,113億円から6月末に1兆3,532億円へ増え、持分比率は62.9%から58.1%になっています。ただし現金は1.43兆円あり、借入が還元だけのためか、他の資金需要も含むのかは短信の抜粋からは特定できませんでした。

参考文献・引用元

  1. 01
    デンソー「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年7月31日開示。連結経営成績(売上収益・営業利益・税引前利益・四半期利益・親会社帰属四半期利益・基本EPS)、セグメント別営業利益、財政状態(資産・資本・持分比率・現金・社債及び借入金・自己株式)、Q1キャッシュ・フロー(財務活動の内訳)、株式数、配当の状況、2027年3月期通期業績予想の修正(為替前提を含む)を参照。 / 2026/07/31 開示

  2. 02
    デンソー「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年4月28日開示。2025年3月期・2026年3月期の通期実績(売上収益・営業利益・税引前利益・親会社帰属当期利益・EPS・ROE・BPS・総資産・親会社持分・各キャッシュフロー・配当性向)を参照し、financialsの2025/03・2026/03行に精密値として使用。 / 2026/04/28 開示

  3. 03
    IR BANK「デンソー(6902) 決算まとめ」

    二次情報。2022年3月期〜2024年3月期の売上収益・営業利益・親会社帰属当期利益・EPS(株式分割調整後)、有利子負債、営業CF、設備投資、自社株買い、総還元性向の時系列を参照(2026年10月2日時点の表示)。億円表示の値を百万円に換算しているため、2022/03〜2024/03の各値は±1億円程度の丸めを含む。2025/03以降は短信の値と一致することを確認。

  4. 04
    IR BANK「デンソー(6902) 配当金の推移」

    二次情報。株式分割調整後の1株配当、配当性向、2027年3月期予想配当の履歴を参照。株価(約1,809円)は同サイトの配当利回り4.09%と予想配当74円から逆算した値で、時価総額5兆2,630億円も同サイトの表示(発行済株式数ベース)。