東日本旅客鉄道(9020) 定期収入増の半分は運賃改定、不動産減益は物件売却の反動
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
東日本旅客鉄道株式会社
2026/08/28 時点
株価
3,578円
時価総額
40,589億円
配当利回り
2.35%
年間84円
PER
15.8倍
PBR
1.32倍
ROE
8.3%
ROA
2.4%
純利益ベース
自己資本比率
29.1%
配当性向
37.2%
有利子負債
50,001億円
D/Eレシオ
1.63倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(累計)は営業収益772,721百万円(前年同期比+8.0%)、営業利益125,544百万円(同+9.4%)、経常利益106,898百万円(同+8.0%)の増収増益だったが、純利益は68,017百万円(同△13.6%)の減益。投資有価証券売却益が22,171百万円から6,473百万円に減少したことが主因で、営業段階の増益と純利益の減益を分けて見る必要がある。
- セグメント利益が最も伸びたのは運輸事業(+23.7%)で、当初の論点仮説(定期収入の頭打ちと非鉄道事業の伸び)とは逆に、不動産・ホテル事業はセグメント利益が△32.9%の減益だった。この減益は、前1Qに計上されていた不動産販売(売上45億円・利益40億円)が当1Qにゼロだったことでほぼ説明でき、オフィス賃貸・SC・ホテルなど中核事業は堅調だった。
- 定期収入は1,114億円から1,214億円へ+9.0%増加したが、会社開示の内訳では運賃改定効果が+55億円、鉄道利用そのものの増加は+45億円(実質+4%程度)にとどまる。定期収入の伸びを実需の回復と見るか、値上げによる見かけの増収と見るかで評価が分かれる。
- 通期の会社予想(営業利益429,000百万円、前期比+3.6%)は据え置かれたが、1Qの営業利益成長率+9.4%はこれを大きく上回っており、残り3四半期でペースが鈍化する前提になっている。
目次11項目
1. 概要
2026年8月28日時点の株価3,578円をもとにすると、PER15.85倍(会社予想EPS225.85円ベース)、PBR1.32倍(自己資本から算出したBPS2,712円ベース)、予想配当利回りは2.35%(年間配当84円)です。ROEは8.33%、ROA(純利益ベース)は2.42%、自己資本比率は29.1%(2027年3月期第1四半期末)となっています。
2027年3月期第1四半期(累計、2026年4-6月)の決算は、営業収益772,721百万円(前年同期比+8.0%)、営業利益125,544百万円(同+9.4%)、経常利益106,898百万円(同+8.0%)と増収増益でした。会社は「営業収益は6期連続の増収かつ、第1四半期決算としては過去最高」とコメントしています。一方で純利益は68,017百万円(同△13.6%)の減益で、営業段階の伸びとは方向が異なります。
この記事を書くにあたっての当初の論点仮説は「定期収入の構造的な頭打ちと非鉄道事業(駅ナカ・不動産)の伸び」というものでした。しかし実際のセグメント別の内訳を確認すると、この仮説はそのままでは成立しません。 利益が最も伸びたのは運輸事業で、むしろ不動産・ホテル事業がセグメント利益で減益になっていたためです。何が起きていたのかは4節で詳しく整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
東日本旅客鉄道(JR東日本)は、首都圏の通勤・通学輸送と東北・上越・北陸の各新幹線を中核事業とする鉄道会社です。運輸事業のほか、駅を核にした流通・サービス事業(エキナカ商業施設等)、不動産・ホテル事業(オフィスビル・商業施設・ホテルの開発・賃貸)、その他事業(ICカード関連事業等)を展開しています。2027年3月期1Qの外部顧客への売上高構成比は、運輸事業が約68%、流通・サービス事業が約13%、不動産・ホテル事業が約15%、その他事業が約4%です。
近年はTAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)やOIMACHI TRACKS(大井町)といった大規模な駅周辺開発を進めており、運輸事業以外の収益基盤の積み増しを図っています。
強みと弱みの整理
強み
首都圏を中心とした圧倒的な鉄道網と6期連続の増収基調
首都圏の通勤・通学需要と新幹線網を中核に、代替の効きにくい鉄道網を持ちます。2027年3月期1Qの営業収益は772,721百万円で、会社は「営業収益は6期連続の増収かつ、第1四半期決算としては過去最高」とコメントしています。
非鉄道事業(流通・サービス、不動産・ホテル)による収益の多角化
エキナカ商業施設やTAKANAWA GATEWAY CITY・OIMACHI TRACKSなどのオフィス・商業施設開発により、運輸事業以外の収益源を積み上げています。2027年3月期1Qは流通・サービス事業のセグメント利益が前年同期比+7.6%、その他事業が+89.4%と伸びました(ただし不動産・ホテル事業は一時的に減益。詳しくは4節)。
増配基調が続く配当方針
2024年4月1日の1株→3株の株式分割を挟みつつ、分割後ベースの年間配当は46.67円相当(2024年3月期)→60円(2025年3月期)→74円(2026年3月期)→84円(2027年3月期予想)と一貫して増加しています。
弱み
財務レバレッジの高さ
有利子負債は5,000,108百万円(2027年3月期1Q末)で、自己資本に対するD/Eレシオは1.63倍です。自己資本比率は29.1%にとどまり、同業のJR東海(D/Eレシオ0.93倍、自己資本比率48.0%)と比べても財務レバレッジは高い水準にあります。
定期収入の伸びの半分は運賃改定によるもの
当1Qの定期収入は1,114億円から1,214億円へ前年同期比+9.0%増えましたが、会社開示の内訳では運賃改定効果が+55億円、鉄道利用そのものの増加は+45億円にとどまります。実質的な利用者数の伸びは+4%程度で、値上げという下駄を外した実力はやや慎重に見る必要があります(詳しくは4節)。
純利益は特別損益の増減に左右されやすい
当1Qは営業利益・経常利益が増益だったにもかかわらず、投資有価証券売却益の減少(22,171百万円→6,473百万円)と固定資産除却損の増加などにより、純利益は68,017百万円(前年同期比△13.6%)の減益となりました。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 1,978,900 | -153,938 | -179,501 | -94,948 | — | — |
| 2023/03 | 2,405,500 | 140,628 | 110,910 | 99,232 | — | — |
| 2024/03 | 2,730,100 | 345,161 | 296,631 | 196,449 | — | — |
| 2025/03 | 2,887,500 | 376,786 | 321,564 | 224,285 | 732,251 | 28.1% |
| 2026/03 | 3,084,600 | 414,258 | 351,645 | 247,846 | 765,072 | 28.2% |
| 2027/03会社予想 | 3,295,000 | 429,000 | 353,000 | 255,000 | — | — |
読み取れることは3つあります。
コロナ禍からの回復が業績の起点になっている。 2022年3月期は営業利益△153,938百万円・経常利益△179,501百万円・純利益△94,948百万円という赤字でした。ここから2023年3月期に黒字転換し(売上高+21.6%)、2024年3月期も増収増益基調が続きました(売上高+13.5%、営業利益+145.4%)。
2024年3月期から2026年3月期にかけて、4段階すべてで増収増益が続いた。 2026年3月期は売上高3,084,600百万円(前期比+6.8%)、営業利益414,258百万円(同+9.9%)、経常利益351,645百万円(同+9.4%)、純利益247,846百万円(同+10.5%)と、いずれの段階でも利益の伸び率が売上高の伸び率を上回りました。装置産業らしく、輸送量の増加が固定費に対してレバレッジをかけている状態です。
2027年3月期の会社予想は、増収率を維持する一方で利益の伸び率がはっきり鈍化する。 会社予想は売上高3,295,000百万円(前期比+6.8%)に対し、営業利益429,000百万円(同+3.6%)、経常利益353,000百万円(同+0.4%)、純利益255,000百万円(同+2.9%)です。売上高の伸び率は前期と変わらないのに利益の伸び率だけが大きく鈍化するという予想は、それ自体が1つの論点です(後述するとおり、1Qの実績はこの予想よりかなり強い伸びを示しています)。
4. 定期収入増の半分は運賃改定、不動産・ホテル減益は物件売却の反動
data/universe.json に記録されていたこの記事の当初の論点仮説は「定期収入の構造的な頭打ちと非鉄道事業(駅ナカ・不動産)の伸び」でした。しかし2027年3月期第1四半期(累計)のセグメント別実績を確認すると、この仮説はそのままでは成立しません。
セグメント利益が最も伸びたのは運輸事業だった
| セグメント | 前1Q売上高 | 当1Q売上高 | 前1Qセグメント利益 | 当1Qセグメント利益 | 利益前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸事業 | 485,299百万円 | 526,408百万円 | 67,772百万円 | 83,821百万円 | +23.7% |
| 流通・サービス事業 | 94,538百万円 | 98,947百万円 | 14,220百万円 | 15,306百万円 | +7.6% |
| 不動産・ホテル事業 | 110,539百万円 | 116,471百万円 | 28,412百万円 | 19,074百万円 | △32.9% |
| その他 | 24,972百万円 | 30,894百万円 | 3,480百万円 | 6,591百万円 | +89.4% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2027年3月期第1四半期より、海外関連事業の一部を「流通・サービス事業」から「その他」に区分変更。前年同期も変更後の区分で再表示)
セグメント利益の伸びが最も大きいのは運輸事業(+23.7%)で、当初の仮説が想定していた「非鉄道事業の伸び」どころか、不動産・ホテル事業はセグメント利益が△32.9%の減益でした。定期収入が頭打ちで非鉄道事業が伸びるという単純な図式は、少なくとも当1Qの実態とは異なります。
不動産・ホテル事業の減益は、物件売却の期ズレでほぼ説明できる
不動産・ホテル事業の減益(284億円→190億円、△93億円)の内訳を会社の決算補足説明資料で見ると、次のとおりです。
| 前1Q実績 | 当1Q実績 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1,105億円 | 1,164億円 | +59億円 |
| うち不動産販売 | 45億円 | 0億円(ー) | △45億円 |
| 営業利益 | 284億円 | 190億円 | △93億円(うち不動産販売△40億円) |
不動産販売という一過性項目だけで、減益幅93億円のうち40億円を占めます。会社は不動産・ホテル事業について「オフィス賃貸収入やSC・ホテルの売上などが増加したものの、不動産販売の利益減などにより増収減益」と説明しており、TAKANAWA GATEWAY CITYの全面開業やOIMACHI TRACKSの開業に伴うオフィス賃貸収入の増加、SC・ホテルの売上増という中核事業はむしろ堅調でした。ホテルの客室稼働率は79.9%(前年同期比+0.7pt)、客室単価は20,544円(同+5%)、駅ビル店舗売上は+7%と、いずれも改善しています。
つまりこの減益は、事業の実力低下ではなく、物件売却の計上時期がずれたことによる一過性の要因である可能性が高いということです。 実際、会社の通期予想では不動産販売収入が730億円から1,000億円へ+269億円増加する見込みで、1Qにゼロだったのは期ズレであり、通期ではむしろ増加を見込んでいます。
定期収入は増えているが、半分は運賃改定効果
もう1つの論点は、「定期収入の構造的な頭打ち」という仮説の妥当性です。会社開示の鉄道運輸収入の内訳は次のとおりです。
| 前1Q実績 | 当1Q実績 | 増減 | 主な増減事由 | |
|---|---|---|---|---|
| 定期 | 1,114億円 | 1,214億円 | +100億円 | 運賃改定:+55億円、鉄道利用の増:+45億円 |
| 定期外 | 3,345億円 | 3,626億円 | +281億円 | 新幹線・在来線とも利用増、運賃改定、インバウンド需要 |
| 合計 | 4,459億円 | 4,840億円 | +381億円 |
定期収入は前年同期比+9.0%増加しており、頭打ちどころか増収です。ただし会社開示の内訳では、その半分以上(+100億円のうち+55億円)が運賃改定によるもので、鉄道利用そのものの増加は+45億円(率にして+4%程度)にとどまります。「定期収入は構造的に頭打ち」という当初の見立ては、運賃改定という一時的な下駄を外すと再検討の余地がある論点として位置づけるのが妥当で、単純に「増えている/減っている」のどちらか一言で片付けられるものではありません。
純利益の減益は営業段階とは別の話
最後に、当1Q(累計)の純利益が減益(68,017百万円、前年同期比△13.6%)になった理由も、運輸・不動産とは別の要因です。営業利益・経常利益は増益なのに純利益が減益になったのは、特別利益に含まれる投資有価証券売却益が22,171百万円から6,473百万円に減少し、特別損失(固定資産除却損205百万円→9,374百万円を含む)が9,568百万円から19,586百万円に増加したためです。利益の質を見るときは、経常利益までの段階と、特別損益を含む純利益とを区別して見る必要があります。
以上をまとめると、当1Qの実態は「定期収入の構造的な頭打ちと非鉄道事業の伸び」という単純な図式ではなく、運輸事業が運賃改定を交えながら利益を牽引し、不動産・ホテル事業は物件売却の期ズレで一時的に減益、純利益は特別損益の振れで減益、という3つの異なる論点が重なった1Qだったということです。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2024/03 | — | 140円 | — |
| 2025/03 | — | 60円 | 30.3% |
| 2026/03 | — | 74円 | 33.7% |
| 2027/03会社予想 | 84円 | 84円 | 37.2% |
- 2024/03:2024年4月1日を効力発生日として1株を3株に分割する前の実額。分割後の株数換算では合計46.67円相当となり、2025年3月期以降と連続比較する場合はこちらを使う。
- 2025/03:株式分割後で初めて一貫比較できる期。分割調整後ベースでは前期の46.67円相当から増配。
- 2027/03:2026年7月31日発表の第1四半期決算でも据え置き(修正なし)。
まず押さえておきたいのは、2024年4月1日を効力発生日として1株を3株に分割していることです。分割前の2024年3月期の実績配当は中間55円・期末85円・合計140円ですが、分割後の株数換算では合計46.67円相当になります(詳しくは末尾のFAQ)。
分割後で一貫して比較できる期間で見ると、2025年3月期60円→2026年3月期74円→2027年3月期84円(予想、修正なし)と、増配基調が続いています。分割調整後の46.67円(2024年3月期)を起点にしても、一貫して増加していることが分かります。
配当性向も緩やかに上昇しています。2025年3月期30.26%(60円÷EPS198.29円)→2026年3月期33.73%(74円÷EPS219.42円)→2027年3月期予想37.2%(84円÷会社予想EPS225.85円)と、利益成長に応じて還元も拡大している形です。2027年3月期の配当予想は、2026年7月31日発表の第1四半期決算でも据え置かれました(修正なし)。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態は次のとおりです。総資産10,536,066百万円(前期末10,820,726百万円)、純資産3,074,785百万円(前期末3,060,091百万円)、自己資本3,061,398百万円(前期末3,047,109百万円)、自己資本比率29.1%(前期末28.2%)です。
有利子負債は5,000,108百万円(前期末4,860,080百万円)で、前期末から140,028百万円増加しました。D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は1.63倍(前期末1.60倍)とわずかに上昇しています。有利子負債が増加した具体的な使途(設備投資か借換かなど)は、今回の一次情報からは特定できませんでした。 同業のJR東海はD/Eレシオ0.93倍・自己資本比率48.0%で、JR東日本より財務レバレッジが低く見えますが、JR東海の有利子負債の多くはリニア中央新幹線向けの財政投融資という特殊な条件の借入であり、JR東日本の有利子負債の性質はこの資料からは特定できないため、単純にどちらが健全と優劣をつけることはできません。
セグメント別の状況は4節で見たとおりです。運輸事業は新幹線・在来線とも利用増と運賃改定の効果で増収増益、流通・サービス事業はエキナカ店舗の売上増で増収増益、不動産・ホテル事業はオフィス賃貸収入やSC・ホテル売上が増加したものの不動産販売の利益減で増収減益、その他事業はICカード事業関連売上の増加などで増収増益でした。
7. 業界とセクターの状況
鉄道事業は、路線・車両・駅設備という巨額の固定資産を長期にわたって保有し続ける装置産業です。設備投資は数十年単位で回収する構造で、需要が急に落ち込んでも減価償却費・人件費・保守費といった固定費はすぐには減らせません。
運賃は国土交通省の認可を要するため、企業が自由なタイミング・幅で価格改定できるわけではありません。今回の決算で定期収入の増加要因として運賃改定が挙げられていますが、これも認可を経た改定の効果であり、需要動向とは別の制度的な要因として扱う必要があります。
需要面では、沿線人口の増減や都市間移動需要(出張・観光)、インバウンド需要が業績を左右します。多くの鉄道会社が、運輸事業単体の成長余地が限られるなかで、駅を核にした流通・不動産・ホテル事業へ多角化しているのは、この構造的な制約への対応という側面があります。JR東日本のTAKANAWA GATEWAY CITYやOIMACHI TRACKSといった駅周辺開発も、この文脈に位置づけられます。
また、鉄道は感染症や大規模災害のような突発的な需要ショックの影響を強く受ける産業でもあります。2022年3月期にJR東日本が経常利益△179,501百万円・純利益△94,948百万円という赤字を計上したのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。一方で需要が回復する局面では固定費の重さが逆に働き、増収が利益に直結しやすいという特性もあります(3節で見た2024〜2026年3月期の「利益の伸び率が売上高の伸び率を上回る」推移はこの表れです)。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日は過去の発表時期からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
定期収入の伸びのうち運賃改定効果を除いた実質利用者数の増加ペース、および不動産・ホテル事業の物件売却収入の計上時期を確認できる最初の機会。
通期の不動産販売収入は730億円から1,000億円(+269億円)に増加する見込み。1Qにゼロだった不動産販売収入が2Q以降どのタイミングで計上されるかが、通期のセグメント利益の姿を左右する。
1Q決算補足説明資料では、新幹線・在来線とも定期外収入の増加要因としてインバウンド需要の伸びが挙げられている。
流通・サービス事業とその他事業は当1Qにそれぞれセグメント利益+7.6%・+89.4%を記録した。非鉄道の周辺事業の伸びが続くかが焦点。
10. 想定されるリスク
財務レバレッジの高さ。 有利子負債5,000,108百万円、D/Eレシオ1.63倍、自己資本比率29.1%という水準は、同業のJR東海(D/Eレシオ0.93倍、自己資本比率48.0%)と比べても高いレバレッジです。有利子負債は前期末から140,028百万円増加しましたが、その具体的な使途は特定できていません。
定期収入の伸びの実態。 定期収入の伸び(+9.0%)のうち過半(+55億円/+100億円)は運賃改定によるもので、鉄道利用そのものの増加は+45億円(実質+4%程度)にとどまります。運賃改定という一時的な下駄がなければ、定期収入の伸びはより緩やかだった可能性があります。
純利益の変動性。 特別損益(投資有価証券売却益・固定資産除却損等)の増減で純利益が振れやすい構造です。当1Qも営業利益・経常利益は増益なのに純利益は△13.6%の減益でした。
通期見通しとのペースの差。 1Qの営業利益成長率+9.4%は通期予想+3.6%を大きく上回っており、残り3四半期でペースが鈍化する前提になっています。上振れの余地がある一方、1Qのペースをそのまま延長できる保証はありません。
不動産・ホテル事業の通期計画への依存。 通期予想は不動産販売収入が730億円から1,000億円に増加する前提です。この計上時期が想定より後ろ倒しになれば、通期のセグメント利益も1Q同様に伸び悩む可能性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
この記事で確認した事実は次のとおりです。当1Qは営業利益・経常利益が増益(それぞれ+9.4%・+8.0%)でしたが、純利益は投資有価証券売却益の減少で△13.6%の減益でした。セグメント利益が最も伸びたのは運輸事業(+23.7%)で、不動産・ホテル事業は物件売却の期ズレでセグメント利益が△32.9%の減益でした。定期収入は+9.0%増加しましたが、その半分以上は運賃改定によるものです。
判断が分かれるのは、この3つの論点をどう評価するかです。
定期収入の伸びを「値上げによる下駄」と厳しく見るなら、実質的な利用者数の増加は+4%程度にとどまり、構造的な頭打ちという当初の懸念が完全に払拭されたわけではないという評価になります。運賃改定を「利用実態に見合った適正化」と見るなら、定期・定期外とも増収基調にあるという前向きな評価になります。
不動産・ホテル事業についても、「物件売却の期ズレによる一過性の減益」と見るなら、通期予想どおり不動産販売収入が1,000億円まで積み上がることで年間では回復するはずだという評価になり、「1Qの弱さが中核事業にも及び始めている予兆」と慎重に見るなら、次の中間決算での回復度合いを注視すべきだという評価になります。
分かれ目になるのは、次の中間決算(2026年11月上旬予定)で、運賃改定効果を除いた定期収入の実質的な伸びがどうなるか、そして不動産・ホテル事業のセグメント利益が通期予想どおりに回復するかどうかです。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 次の中間決算(2026年11月上旬予定)で、定期収入の伸びのうち運賃改定効果を除いた実質的な利用者数の増加(当1Qでは+45億円、+4%程度)が横ばいまたは減少に転じた場合。定期収入の伸びを実需の回復と見る余地が小さくなる。
- 通期の不動産・ホテル事業のセグメント利益が、物件売却収入の期ズレ(通期予想では不動産販売収入730億円→1,000億円に増加見込み)を反映して回復せず、通期でも前期比減益が続いた場合。1Qの減益が一過性ではなく構造的な弱さだったことになる。
- 通期の会社予想(売上高3,295,000百万円・営業利益429,000百万円・経常利益353,000百万円・純利益255,000百万円)が上方修正または下方修正された場合。
- 有利子負債(現時点5,000,108百万円)・D/Eレシオ(現時点1.63倍)がさらに拡大し、自己資本比率(現時点29.1%)が一段と低下した場合。財務レバレッジへの懸念が強まる。
よくある質問
- JR東日本の配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の予想年間配当84円(中間42円・期末42円)で計算すると、100株保有で年間8,400円(税引前)です。
- JR東日本は2024年に減配したのですか?
- いいえ。2024年4月1日を効力発生日として1株を3株に分割したため、2024年3月期の実績配当140円(分割前の株数基準)は、分割後の株数換算では46.67円相当になります。そこから2025年3月期60円→2026年3月期74円→2027年3月期84円(予想)と、分割調整後ベースでは一貫して増配が続いています。
- なぜ営業利益・経常利益は増益なのに純利益は減益なのですか?
- 特別損益の増減が主因です。2027年3月期第1四半期は投資有価証券売却益が22,171百万円から6,473百万円に減少し、固定資産除却損などを含む特別損失が9,568百万円から19,586百万円に増加しました。営業利益・経常利益までは増益でも、純利益はこうした特別損益の振れに左右されます。
参考文献・引用元
- 01東日本旅客鉄道株式会社「2027年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
連結経営成績、財政状態、配当の状況、通期業績予想、セグメント情報、特別利益・特別損失の内訳を参照。 / 2026/07/31 開示
- 02東日本旅客鉄道株式会社「2027年3月期第1四半期 決算補足説明資料」
連結営業利益の増減要因、セグメント別の主な増減事由、鉄道運輸収入(定期・定期外)の内訳、ホテル関連KPI、会社コメント原文を参照。 / 2026/07/31 開示
- 03IR BANK「東日本旅客鉄道(9020) 決算まとめ/配当金の推移」
二次情報。2022年3月期〜2026年3月期の過年度業績・自己資本比率・営業キャッシュフロー、配当の実績推移を参照した(2026年8月28日時点の表示。値は億円単位表示を百万円に換算した概算値)。
- 04Yahoo!ファイナンス「東日本旅客鉄道(9020) 株価」
二次情報。2026年8月28日時点の株価3,578円、時価総額40,589億円を参照した。