四半期分析鉄道2027/3期 Q1

東海旅客鉄道(9022) 万博反動の本番はこれから 1Q減益の先にある通期予想15%減益をどう読むか

2026/08/29 公開2026/08/29 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

東海旅客鉄道株式会社

東京証券取引所プライム市場 9022 ・ 3月期決算

2026/08/28 時点

株価

3,935円

時価総額

39,396億円

配当利回り

0.81%

年間32円

PER

8.4倍

PBR

0.72倍

ROE

8.6%

ROA

4.1%

純利益ベース

自己資本比率

48.0%

配当性向

6.8%

有利子負債

48,073億円

D/Eレシオ

0.93倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は営業収益492,716百万円(前年同期比+3.0%)の増収に対し、営業利益219,165百万円(同△0.9%)・純利益142,658百万円(同△1.8%)の小幅な減益にとどまった。一方で会社の通期予想は営業利益702,000百万円(前期比△15.4%)と大幅な減益を見込む。
  • 会社は2026年4月28日公表の通期予想を、2027年3月期第1四半期決算(2026年7月31日発表)でも据え置いた。大阪・関西万博の反動は1Qより2Q以降(2026年7-9月)に強く出る可能性があり、次の中間決算(2026年11月上旬予定)が通期予想の妥当性を判断する試金石になる。
  • 自己資本比率は48.0%(1Q末)と一見健全だが、有利子負債4,807,256百万円のうち62%を占めるのはリニア中央新幹線建設のための長期借入金3兆円で、D/Eレシオは0.93倍。ただしこの借入は財政投融資を活用した長期・低利のもので、通常の借入と単純比較はできない。
  • 配当は2027年3月期も年間32円(予想)を据え置き。配当性向はわずか6.8%で、内部留保を優先してリニア中央新幹線への投資に充てる方針が数値に表れている。
  • 2023年9月30日を基準日に1株→5株の株式分割を実施しているため、単純な過去の配当額比較には注意が必要(分割後ベースでは2025年3月期31円→2026年3月期32円と増配基調)。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 万博反動の本番はこれから――1Qの小幅減益は通期△15.4%減益予想の前触れか
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月28日時点の株価3,935円をもとにすると、PER8.37倍(会社予想EPS470.05円ベース)、PBR0.72倍(自己資本から算出したBPS5,456円ベース)、予想配当利回りは0.81%(年間配当32円)です。ROEは8.62%、ROA(純利益ベース)は4.14%、自己資本比率は48.0%(2027年3月期第1四半期末)となっています。

2027年3月期第1四半期(2026年4-6月)の決算は、営業収益が492,716百万円(前年同期比+3.0%)と増収になった一方、営業利益は219,165百万円(同△0.9%)、純利益は142,658百万円(同△1.8%)とわずかな減益でした。しかし会社が示している通期予想は、営業利益702,000百万円(前期比△15.4%)という大幅な減益です。

1Qの小幅な減益と、通期予想の大幅な減益との落差をどう読むかが、この記事の主題です。 その背景には、2025年に開催された大阪・関西万博による増収効果の反動があります(詳しくは4節)。あわせて、リニア中央新幹線という総工事費11.0兆円規模の巨大投資が、この会社の財務構造(有利子負債・自己資本比率・配当性向)をどう規定しているかも整理します。

2. 会社概要とビジネスモデル

東海旅客鉄道(JR東海)は、東京・名古屋・大阪を結ぶ東海道新幹線を中核事業とする鉄道会社です。運輸業のほか、駅を核にした流通業(駅ナカ商業施設など)・不動産業(オフィスビル・ホテル等の賃貸)・その他事業(旅行業等)を展開しています。2026年3月期の収益・利益は運輸業が大半を占め、流通業・不動産業・その他事業がこれを補完する構造です。

同社は現在、東京(品川)・名古屋間を結ぶリニア中央新幹線の建設を進めています。総工事費は当初7.04兆円と見積もられていましたが、2025年10月の公表で11.0兆円に増加する見通しとなりました(2026年3月期決算短信に記載)。この巨大プロジェクトが、後述する財務構造・配当政策に大きな影響を与えています。

強みと弱みの整理

強み

  • 東海道新幹線という圧倒的な事業基盤

    東京・名古屋・大阪という日本最大の都市圏を結ぶ大動脈で、代替となる高速交通機関は限定的です。2026年3月期の連結営業利益率は41.4%(830,167百万円÷2,006,218百万円)と、装置産業としては高水準です。

  • 内部留保を重視した安定配当方針

    配当性向はわずか6.8%(2027年3月期予想)にとどまり、稼いだ利益の大半を内部留保として蓄積しています。目先の株主還元より、中央新幹線という巨大プロジェクトの自己資金比率を高める方針の表れです。

  • 非運輸事業への多角化

    流通業・不動産業・その他事業を展開し、運輸業への依存を部分的に緩和しています。2026年3月期はその他事業のセグメント利益が前期比+57.0%と大きく伸び、多角化事業の拡大が進んでいます。

弱み

  • 東海道新幹線への収益集中

    運輸業セグメントが売上・利益の大半を占め、突発的な需要ショック(感染症拡大、大規模災害等)の影響を強く受けます。2021年3月期・2022年3月期はコロナ禍で経常利益・純利益とも赤字に沈みました(2022年3月期経常利益△673億円、純利益△519億円)。

  • リニア中央新幹線に伴う有利子負債の増加

    有利子負債は4,807,256百万円(2027年3月期1Q末)に達し、自己資本に対するD/Eレシオは0.93倍です。総工事費は当初7.04兆円から11.0兆円に増加する見通しで、さらなる増額のリスクも残ります。

  • 資本集約型ゆえの低いROE

    ROE(予想)は8.62%にとどまり、総資産10,804,237百万円という巨大な資産規模に対して、利益水準がまだ十分に追いついているとは言えません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00750,000225,0001,500,000450,0002,250,000675,0003,000,000900,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)30405044.646.6
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/03940,0001,710-67,300-51,900
2023/031,400,000374,500307,500219,400
2024/031,710,000607,400546,900384,400
2025/031,831,847702,794649,294458,423624,50044.6%
2026/032,006,218830,167780,914552,871748,10046.6%
2027/03会社予想1,993,000702,000653,000447,000
単位:百万円。出典:決算短信、およびIR BANK集計による過年度実績

読み取れることは3つあります。

コロナ禍からの回復が業績の起点になっている。 2022年3月期は営業利益がほぼゼロ(17億円)まで落ち込み、経常利益△673億円・純利益△519億円という赤字でした。ここから2023年3月期に黒字転換(売上高+48.9%)、2024年3月期も増収増益基調が続き(売上高+22.1%、営業利益+62.2%)、2025年3月期・2026年3月期と回復軌道を伸ばしてきました。

2026年3月期は大阪・関西万博の効果で全指標が大きく伸びた。 売上高2,006,218百万円(前期比+9.5%)、営業利益830,167百万円(同+18.1%)、経常利益780,914百万円(同+20.3%)、純利益552,871百万円(同+20.6%)と、4段階すべてで2桁の伸びを記録しました。輸送人キロは前期比+9.2%で、会社は大阪・関西万博に対応した輸送を完遂したと説明しています。

2027年3月期は一転して4段階すべてで減益予想になっている。 会社予想は売上高1,993,000百万円(前期比△0.7%)、営業利益702,000百万円(同△15.4%)、経常利益653,000百万円(同△16.4%)、純利益447,000百万円(同△19.1%)です。売上高の落ち込みが小さいのに営業利益以下の落ち込みが大きいのは、万博対応で膨らんだ輸送量分の増収が剥落する一方、人件費・修繕費などの固定費は下がらないためです。

4. 万博反動の本番はこれから――1Qの小幅減益は通期△15.4%減益予想の前触れか

2027年3月期第1四半期(2026年4-6月)の実績は次のとおりです。

項目前1Q(2025年4-6月)当1Q(2026年4-6月)前年同期比
営業収益478,283百万円492,716百万円+3.0%
営業利益221,225百万円219,165百万円△0.9%
経常利益207,532百万円208,548百万円+0.5%
純利益145,211百万円142,658百万円△1.8%

出典:2027年3月期第1四半期決算短信

会社は1Q決算のポイントとしてこう説明しています。

「当社の運輸収入は、前年度の大阪・関西万博の開催に伴う増収効果がなくなった一方で、ビジネス、観光に加え、訪日外国人のご利用が増加したことにより増収となった。さらに、グループ会社についても増収となり、営業収益は増加。当社及びグループ会社における労務費等の上昇により営業費が増加したことなどから、営業利益、親会社株主に帰属する四半期純利益は減益。」(決算補足説明資料より)

つまり第1四半期の段階では、万博反動による減収分をビジネス・観光・訪日外国人需要の増加が相殺し、営業収益自体はむしろ増えました。減益の主因は労務費関連コストの増加(単体ベースで人件費+24億円、修繕費+40億円、業務費+32億円)で、万博反動そのものはまだ営業利益を大きく押し下げていません。

なぜ1Qの減益幅は小さいのか

ここで注意すべきは、大阪・関西万博の会期です。万博は2025年4月13日から10月13日まで開催されており、2026年3月期第1四半期(2025年4-6月、つまり前年同期)の段階でもすでに開幕していました。しかし来場者数が最も伸びたのは、夏休みを含む2025年7-9月から閉幕にかけての期間とみられます。2026年3月期通期の輸送人キロが前期比+9.2%という急増を記録した背景には、この夏以降の来場者集中があります。

つまり、前年同期(2025年4-6月)の比較対象自体が、まだ万博効果のピークに達していなかった可能性が高いということです。この記事の見立てでは、万博反動が最も強く出るのは1Qではなく、2026年7-9月(2Q)にかけてです。

会社は2026年4月28日の通期決算発表時点で、2027年3月期の業績予想として営業利益△15.4%の減益を示しました。そして今回の1Q決算(2026年7月31日発表)でも、短信本文で「通期の業績予想については、2026年3月期決算発表時から変更はありません」と明記し、この予想を据え置きました。1Q実績を見てもなお上方修正しなかったという事実は、会社自身が反動の本番はこれからだと見ている可能性を示唆します。

次の中間決算(2026年11月上旬発表予定)で、営業利益の減益幅が1Qの△0.9%からどこまで拡大するかが、通期予想△15.4%の妥当性を判断する試金石になります。減益幅がほとんど拡大しなければ通期予想は保守的すぎたことになりますし、大きく拡大すれば会社予想どおりの反動が起きていることになります。

巨大投資が財務構造を規定している

万博反動という短期的な論点とは別に、この会社の財務構造を長期的に規定しているのがリニア中央新幹線です。

品川・名古屋間の総工事費は、当初見積もりの7.04兆円から11.0兆円へ増加する見通しが2025年10月に公表されました。この資金の一部を賄うため、同社は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)から3兆円の長期借入(中央新幹線建設長期借入金)を実施しています。

2027年3月期第1四半期末の有利子負債は4,807,256百万円で、このうち中央新幹線建設長期借入金3兆円が62%を占める最大項目です。有利子負債を自己資本(5,183,898百万円)で割ったD/Eレシオは0.93倍で、自己資本とほぼ同額の有利子負債を抱えている計算になります。

ただし、この3兆円の借入は財政投融資を活用した長期・低利のもので、通常の社債・銀行借入とは条件が大きく異なります。 一般的な事業会社の有利子負債と単純に同列に扱い、D/Eレシオの高さだけで財務リスクが高いと判断するのは適切ではありません。とはいえ総額が大きいことに変わりはなく、金利変動時の感応度は無視できません。

自己資本比率は48.0%(1Q末)で、一見すると健全な水準に見えます。しかし自己資本比率だけを見ていると、自己資本とほぼ同額の有利子負債を抱えているという実態が見えません。 自己資本比率とD/Eレシオを併せて見る必要がある典型的な例です。

貸借対照表には「中央新幹線建設資金管理信託」という専用の分別管理口座があり、1Qだけで849,581百万円から655,912百万円へ、193,669百万円が取り崩されています。これは工事が実際に進捗していることの財務的な裏付けといえます。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2023/03130円135円+5円
2024/0385円
2025/0330円31円+1円6.7%
2026/0332円32円0円5.6%
2027/03会社予想32円32円6.8%
  • 2023/03:株式分割(2023年9月30日基準日、1株→5株)前の実績。期末配当を期初予想65円から70円へ5円上方修正した。
  • 2024/03:2023年9月30日を基準日として1株→5株の株式分割を実施。中間配当70円は分割前の株数、期末配当15円は分割後の株数が基準のため、単純合計85円は1株当たりの分母が期中で5倍違い、実質的な増減率の比較には使えない(分割調整後の実質値はIR BANK推計で約29円相当)。
  • 2025/03:分割後で一貫して比較できる最初の通期。期末配当を期初予想15円から16円へ1円上方修正した。
  • 2026/03:期初予想(中間16円・期末16円、合計32円)どおりに着地。
  • 2027/03:2026年4月28日公表の期初予想を、2027年3月期第1四半期決算(2026年7月31日発表)でも据え置き。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の予想・修正・実績

まず押さえておきたいのは、2023年9月30日を基準日として1株を5株に分割していることです。分割前後で1株当たり配当の水準が大きく変わって見えるため、比較には注意が必要です(詳しくは末尾のFAQ)。

分割後で一貫して比較できる期間で見ると、2025年3月期31円(期初予想30円から1円上振れ)→2026年3月期32円(期初予想どおり)→2027年3月期32円(予想、据え置き)と、緩やかな増配・維持基調です。

配当性向はきわめて低い水準にとどまっています。 2027年3月期予想の配当性向は6.8%(32円÷会社予想EPS470.05円)で、稼いだ利益の9割以上を内部留保として蓄積している計算です。これは会社が公表している配当方針とも整合します。

「社会的使命の強い鉄道事業を経営の柱としていることから、長期にわたる安定的な経営基盤の確保・強化に取り組むとともに中央新幹線計画等の各種プロジェクトを着実に推進するため内部留保を確保し、配当については安定配当を継続することを基本方針としています。」(2026年3月期決算短信より)

つまりこの会社にとって配当は、利益成長に連動して増やす性質のものというより、リニア中央新幹線への投資を優先しながら、水準を維持し続けるものとして位置づけられています。予想利回り0.81%という数字は、成長期待を織り込んだ低さというより、内部留保優先の配当方針そのものを反映した数字です。

6. 会社の現状と直近の動き

セグメント別(1Q連結累計)の内訳は次のとおりです。

セグメント前1Q収益当1Q収益前1Qセグメント利益当1Qセグメント利益
運輸業396,251百万円401,134百万円209,323百万円204,381百万円
流通業41,156百万円44,515百万円3,209百万円4,293百万円
不動産業12,935百万円13,775百万円6,902百万円7,139百万円
その他27,940百万円33,291百万円2,336百万円3,669百万円

出典:2027年3月期第1四半期決算短信

運輸業の収益は前年同期に比べ+1.2%増えた一方、セグメント利益は△2.4%の減益でした。流通業・不動産業・その他事業はいずれも増収増益で、特にその他事業はセグメント利益が前年同期に比べ+57.1%と大きく伸びています。ただし運輸業が収益・利益の大半を占める構造は変わっておらず、非運輸事業の伸びだけで全体の減益を打ち消すには至っていません。

費用面では、単体ベースで人件費が470億円から494億円へ(ベースアップによる増)、修繕費が254億円から295億円へ(労務単価の上昇による増)、業務費が465億円から497億円へ(システム関連経費の増)それぞれ増加しました。また法人税等は610億円から634億円へ増えましたが、これは防衛特別法人税の適用開始という制度要因によるものです。

輸送実績は、東海道新幹線が輸送人キロベースで前年同期に比べ+0.4%、在来線が+0.1%と、いずれも小幅な伸びにとどまりました。運輸収入の内訳(単体)は新幹線が3,566億円から3,609億円へ(+42億円)、在来線が265億円から269億円へ(+3億円)で、伸びの中心は新幹線です。

以上を踏まえると、1Qの時点では会社の説明どおり増収減益が実態であり、通期予想が見込む大幅な減益はまだ表面化していません。

7. 業界とセクターの状況

鉄道事業は、巨額の固定資産(路線・車両・駅設備)を長期にわたって保有し続ける装置産業です。設備投資は一度行うと数十年単位で回収する構造で、需要が急に落ち込んでも固定費(減価償却費・人件費・保守費)はすぐには減らせません。

運賃は国土交通省の認可を要するため、企業が自由に価格改定できる範囲は限定的です。原材料費や人件費が上がったからといって即座に運賃へ転嫁できる業種ではなく、値上げのタイミングと幅は規制の枠内に収まります。

需要面では、沿線人口の増減や都市間移動需要(出張・観光)が業績を左右します。多くの鉄道会社が、運輸業単体の成長余地が限られるなかで、駅を核にした流通業・不動産業・ホテル業へ多角化しているのは、この構造的な制約への対応という側面があります。

また、鉄道は感染症や大規模災害のような突発的な需要ショックの影響を強く受ける産業でもあります。新型コロナウイルス感染拡大時には、鉄道各社が軒並み大幅な減収・赤字を経験しました。一方で需要が回復した局面では固定費の重さが逆に働き、増収が利益に直結しやすいという特性もあります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日は過去の発表時期からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 中間決算(2Q累計)の発表両面

万博反動の減益幅が1Qの△0.9%からどこまで拡大するかを確認できる最初の機会。通期予想△15.4%の妥当性を判断する試金石になる。

随時訪日外国人・国内観光需要のさらなる増加上振れ

1Q決算補足説明資料では訪日外国人の利用増加が増収要因として挙げられている。インバウンド需要の伸びが万博反動を部分的に相殺する可能性がある。

2026年度中(想定)中央新幹線 静岡工区の着工再開・進捗両面

着工が進めば全線開業時期の見通しが明確になる一方、遅延が続けば開業時期がさらに後ずれするリスクがある。

随時中央新幹線の総工事費のさらなる見直し下振れ

総工事費は当初7.04兆円から11.0兆円へすでに増加している。資材費・人件費の上昇が続けば、さらなる増額修正の可能性がある。

10. 想定されるリスク

万博反動が2Q以降に想定以上に強く出るリスク。 会社の通期予想どおり営業利益が△15.4%まで落ち込めば、直近2期(2025年3月期・2026年3月期)で拡大してきた利益水準は大きく後退します。

運輸業への収益集中リスク。 事業の大半を東海道新幹線という単一路線に依存しているため、感染症の再拡大や大規模災害など突発的な需要ショックが起きた場合の影響が大きくなります。2021年3月期・2022年3月期の赤字はその実例です。

リニア中央新幹線の投資リスク。 総工事費はすでに当初計画から7.04兆円→11.0兆円へ増加しています。さらなる増額修正があれば、有利子負債(現時点4,807,256百万円)がさらに膨らみ、財務健全性の前提が揺らぎます。また静岡工区(南アルプストンネル)の着工遅延が続いており、全線開業時期そのものが不透明です。

低ROE・資本集約構造のリスク。 ROE(予想)8.62%・ROA(純利益ベース、予想)4.14%は、総資産10,804,237百万円という巨大な資産規模に対する利益水準としては高くありません。リニア投資が期待どおりの収益を生まない場合、資本効率はさらに低下する可能性があります。

労務費・修繕費など固定費上昇のリスク。 1Qはベースアップによる人件費増・労務単価上昇による修繕費増が減益要因になりました。人手不足を背景にした賃上げ圧力が今後も続けば、運輸収入の増加分をコスト増が上回る局面が繰り返される可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

この記事で確認した事実は次のとおりです。1Qは増収減益にとどまりましたが、通期予想は営業利益△15.4%という大幅な減益を見込んでいます。会社はその予想を1Q決算後も据え置きました。自己資本比率は48.0%と一見健全ですが、リニア中央新幹線向けの長期借入3兆円を含む有利子負債は4,807,256百万円に達し、D/Eレシオは0.93倍です。配当性向はわずか6.8%で、内部留保を優先しています。

判断が分かれるのは、この2点をどう評価するかです。

「1Qの小幅減益は保守的な通期予想の裏返しで、実際の着地はもっとマイルドになる」と見るなら、現在の株価水準(PER8.37倍・PBR0.72倍)は割安寄りの評価になります。「1Qはまだ反動の入り口に過ぎず、2Q以降に本格的な減益が来る」と見るなら、通期予想どおりの減益を織り込んでおくのが妥当ということになります。

財務構造についても、「政策金融による長期・低利の資金でリニアという将来の収益基盤に投資している」と前向きに見るなら、D/Eレシオ0.93倍という数字を過度に警戒する必要はありません。「総工事費がすでに56%も増加しており、さらなる増額リスクが残る」と慎重に見るなら、有利子負債の絶対額そのものが重荷になります。

分かれ目になるのは、次の中間決算(2026年11月上旬予定)で営業利益の減益幅がどこまで拡大するかと、中央新幹線の総工事費・開業時期の見通しに新たな変更が出るかどうかです。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月上旬発表予定の2027年3月期中間決算(2Q累計)で、営業利益の減益幅が1Qの△0.9%からほとんど拡大せず、通期予想△15.4%に対して上振れ着地が濃厚になった場合。万博反動の想定が外れたことを意味する。
  • 通期の会社予想(売上高1,993,000百万円・営業利益702,000百万円・経常利益653,000百万円・純利益447,000百万円)が上方修正または下方修正された場合。
  • 中央新幹線の総工事費(現時点11.0兆円、当初7.04兆円)がさらに増額修正され、有利子負債・D/Eレシオ(現時点0.93倍)が一段と拡大した場合。
  • 静岡工区(南アルプストンネル)の着工遅延が解消せず、全線開業時期の見通しがさらに悪化した場合。

よくある質問

JR東海は減配したのですか?
いいえ。2023年9月30日を基準日に1株を5株に分割したため、分割をまたぐ2024年3月期は中間配当70円(分割前の株数基準)・期末配当15円(分割後の株数基準)となり、単純合計85円が見かけ上は前期実績を下回るように見えます。しかし分割の影響を除いた分割後ベースで比較すると、2025年3月期31円→2026年3月期32円→2027年3月期32円(予想)と、増配・維持基調が続いています。
JR東海の配当は100株でいくらになりますか?
2027年3月期の予想年間配当32円(中間16円・期末16円)で計算すると、100株保有で年間3,200円(税引前)です。
なぜ増収なのに営業利益は減益なのですか?
2025年開催の大阪・関西万博による増収効果の反動に加え、人件費・修繕費などの労務費関連コストの上昇が主因です。会社は1Q決算補足説明資料で、ベースアップによる人件費増(単体で+24億円)や労務単価上昇による修繕費増(同+40億円)を減益要因として挙げています。

参考文献・引用元

  1. 01
    東海旅客鉄道株式会社「2027年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    連結経営成績、財政状態、配当の状況、通期業績予想、四半期損益計算書、セグメント情報を参照。 / 2026/07/31 開示

  2. 02
    東海旅客鉄道株式会社「2027年3月期第1四半期 決算補足説明資料」

    1Q決算のポイント(会社コメント原文)、単体ベースの費用増減要因、運輸収入の内訳を参照。 / 2026/07/31 開示

  3. 03
    東海旅客鉄道株式会社「2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年3月期実績、2027年3月期業績予想、配当方針、キャッシュ・フロー、中央新幹線総工事費の見通しを参照。 / 2026/04/28 開示

  4. 04
    IR BANK「東海旅客鉄道(9022) 決算まとめ/配当金の推移/株価指標」

    二次情報。2022年3月期〜2024年3月期の過年度業績、配当の期初予想・修正・実績の履歴、PER・PBR等の株価指標(2026年8月28日時点の表示)を参照した。

  5. 05