四半期分析空運業2027/3期 Q1

日本航空(9201) 主力FSC事業が8億円の赤字転落、それでも自己資本比率42.9%に上昇した理由

2026/08/31 公開2026/08/31 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

日本航空株式会社

東証プライム 9201 ・ 3月期決算

2026/08/31 時点

株価

3,012円

時価総額

13,166億円

配当利回り

3.19%

年間96円

PER

9.8倍

PBR

1.21倍

ROE

12.2%

ROA

4.3%

純利益ベース

自己資本比率

42.9%

配当性向

42.2%

有利子負債

8,279億円

D/Eレシオ

0.57倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は増収減益。売上収益5,237億円(前年同期比+11.2%)に対し、EBIT127億円(同△72.1%)・親会社の所有者に帰属する四半期利益53億円(同△80.2%)。主因は航空燃油費の急騰(940億円→1,488億円、+58.4%)で、主力のフルサービスキャリア(FSC)事業のEBITは307億円の黒字から8億円の赤字に転落した。
  • グループ全体が黒字を維持できたのは、非航空のマイル/金融・コマース事業がEBIT120億円(同+17.6%)を稼ぎ、FSC・LCC両事業の落ち込みを吸収したため。当第1四半期のグループ利益は、実質的にこの1事業に支えられた形になっている。
  • 自己資本比率は2026年3月期末の40.3%から2026年6月末には42.9%へ改善し、有利子負債も8,759億円から8,279億円へ減少した。ただしこの改善は、2026年6月に発行した「第1回社債型種類株式」というハイブリッド資本の計上が大きく寄与しており、利益の積み上げだけによるものではない。
  • 同業のANAホールディングス(2026年6月末時点で自己資本比率35.6%)と比べると、日本航空の財務体質は数値上なお優位にある。ただし両社とも、直近の自己資本比率改善にハイブリッド資本の発行が寄与している点は共通しており、「利益による強化」と「資本調達による強化」を区別して見る必要がある。
  • 2027年3月期の配当予想は年間96円で前期実績から据え置き。内訳を中間48円・期末48円へ均等化した。2023年3月期の配当再開以降、一度も減配していない。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 主力事業の赤字転落と、財務体質改善の中身をどう読むか
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月31日時点で、日本航空(9201)の株価は3,012円、PER9.81倍(2026年3月期実績EPS306.96円ベース)、PBR1.21倍(2026年6月末BPS2,499.09円ベース)、ROE12.2%・ROA4.3%(いずれも純利益基準。ROEは2026年3月期実績、ROAは同期の親会社帰属純利益÷総資産で当サイトが算出)、予想配当利回りは3.19%(2027年3月期予想配当年96円ベース)です。

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算は、売上収益5,237億円(前年同期比+11.2%)に対してEBIT(財務・法人所得税前利益、同社が業績評価の主指標とする独自指標)127億円(同△72.1%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益53億円(同△80.2%)という増収減益でした。主因は航空燃油費の急騰(前年同期比+58.4%)で、主力のフルサービスキャリア(FSC)事業だけを見るとEBITは307億円の黒字から8億円の赤字へ転落しています。

それでも財務体質は改善方向に動いています。自己資本比率は2026年3月期末の40.3%から2026年6月末には42.9%へ、有利子負債は8,759億円から8,279億円へ減少しました。ただしこの改善には2026年6月発行のハイブリッド資本(社債型種類株式)が大きく寄与しており、「主力事業の稼ぐ力が落ちる一方で、財務体質の指標は改善している」という一見矛盾した状況の中身が、この記事で扱う中心的な論点です(詳しくは4節)。2010年の経営破綻を経た同社にとって、財務体質の評価は特に重要な論点であるため、同業のANAホールディングスとの比較も交えて読み解きます。

2. 会社概要とビジネスモデル

日本航空(JAL)は2010年に会社更生法の適用を申請し、2012年に再上場した航空会社です。国内線・国際線を運航するフルサービスキャリア(FSC)事業を中核に、国際線中長距離LCCのZIPAIR・中国路線中心のスプリング・ジャパンによるLCC事業、JALカード事業・JALUXなどによるマイル/金融・コマース事業を展開しています。

当第1四半期のセグメント別売上収益(セグメント間消去前)は、FSC事業4,202億円(前年同期比+13.8%)・LCC事業324億円(同+6.7%)・マイル/金融・コマース事業563億円(同+13.3%)でした。FSC事業が全体の8割前後を占める構造は変わっていませんが、後述のとおり利益面ではマイル/金融・コマース事業の存在感が急速に高まっています。

強みと弱みの整理

強み

  • 2010年の経営破綻を経た軽量な財務体質

    会社更生法の適用に伴う債務免除・資本再構成を経て再上場した経緯から、自己資本比率は2022年3月期の33.7%を底に、コロナ禍の落ち込みが同業のANAホールディングス(同時期24.8%)より小幅にとどまりました。

  • マイル/金融・コマース事業という第3の収益源

    当第1四半期のマイル/金融・コマース事業はEBIT120億円(前年同期比+17.6%)を稼ぎ、燃油高で落ち込んだFSC・LCC事業を吸収する規模に育っています。JALカード会員基盤と海外金融事業者との提携拡大が背景にあります。

  • 5期連続の増収基調

    売上収益は2022年3月期の6,827億円から2026年3月期の2兆125億円まで5期連続で増加し、2027年3月期も会社予想で+4.1%の増収を見込んでいます。

弱み

  • 主力事業が燃油費に直撃される構造

    当第1四半期はFSC事業の売上収益が+13.8%伸びたにもかかわらず、航空燃油費の急騰でEBITは307億円の黒字から8億円の赤字に転落しました。座席という在庫が効かない商売の性質上、コスト増をすぐには価格転嫁しきれません。

  • 財務体質改善の中身がハイブリッド資本頼み

    2026年3月期の自己資本比率改善(34.9%→40.3%)は、公募永久劣後債(1,777億円)の発行が主因の一つです。2026年6月にも社債型種類株式を追加発行しており、利益の積み上げだけによる改善ではありません。

  • 有利子負債は依然8,000億円超

    2026年6月末の有利子負債は8,279億円で、5期前(2022年3月期末9,285億円)からの圧縮ペースは緩やかです。機材(航空機)への投資は巨額かつ長期であり、借入への依存を完全には排除できません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00750,00075,0001,500,000150,0002,250,000225,0003,000,000300,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20355033.732.434.334.940.3
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/03682,713-234,767-177,55133.7%
2023/031,375,58965,05934,42332.4%
2024/031,651,890140,93295,53434.3%
2025/031,844,095168,605107,03834.9%
2026/032,012,515207,349137,60440.3%
2027/03会社予想2,095,000110,000
単位:百万円。出典:決算短信(2022年3月期〜2026年3月期実績、2027年3月期は会社予想。IFRS採用のため経常利益は掲載していない)

この表で読み取れることは3つあります。

第一に、売上収益は5期連続で増加しています。6,827億円(2022年3月期)から2兆125億円(2026年3月期)まで、コロナ禍からの需要回復と運賃・貨物単価の上昇が積み上がってきました。2022年3月期はコロナ禍で前年同期の落ち込みからの回復途上にあったため、翌2023年3月期にかけて売上収益は+101.5%という大幅増収でした。

第二に、利益の回復ペースは売上高よりはるかに大きいという点です。2022年3月期は営業損失2,348億円・純損失1,776億円という大幅な赤字でしたが、翌2023年3月期には営業利益650億円・純利益344億円と黒字転換。2024年3月期には純利益+177.5%、2025年3月期+12.0%、2026年3月期+28.6%と増益が続き、2026年3月期には売上収益・営業利益・純利益のいずれも過去最高を更新しました。

第三に、2027年3月期は増収減益の予想です。会社予想は売上収益2兆950億円(+4.1%)に対し、EBIT1,800億円(△17.4%)・純利益1,100億円(△20.1%)。当第1四半期の実績(純利益△80.2%)を踏まえると、通期予想の達成には第2四半期以降の挽回が前提になります。

4. 主力事業の赤字転落と、財務体質改善の中身をどう読むか

2027年3月期第1四半期の決算で最も目を引くのは、主力のフルサービスキャリア(FSC)事業のEBITが、前年同期の307億円の黒字から8億円の赤字へ転落したことです。当第1四半期のFSC事業の売上収益自体は4,202億円(前年同期比+13.8%)と伸びており、需要が弱いわけではありません。原因は営業費用側にあります。当第1四半期の営業費用は5,168億円(前年同期比+18.7%)で、このうち航空燃油費は940億円から1,488億円へ+58.4%も急増しました。中東情勢の緊迫化に伴う燃油価格の急騰と円安基調が、コスト面を直撃した形です。

グループ全体を支えたのは非航空事業

FSC事業が赤字に転落し、LCC事業もEBIT△1億円(前年同期は+42億円)とマイナスに沈むなかで、グループ全体の四半期利益(親会社帰属、53億円)を黒字に保ったのは、マイル/金融・コマース事業でした。同事業のEBITは120億円(前年同期比+17.6%)で、単独でFSC・LCC両事業のマイナス分を上回る規模に育っています。JALカード事業のカード取扱高の伸びや、Capital One・Bilt Rewardsといった海外金融事業者との提携拡大、JALUXの航空機エンジン部品取引の好調が寄与しました。

言い換えると、当第1四半期のグループ利益は、実質的にマイル/金融・コマース事業という1つの非航空セグメントに支えられていたことになります。この構図が今後も続くのか、それとも燃油高が一巡すればFSC事業が再び利益の柱に戻るのかは、次の四半期以降を見るうえでの重要な確認点です。

自己資本比率の改善は、どこから来ているか

一方で、財務指標だけを見ると改善が進んでいます。

項目2026年3月期末2026年6月末(Q1末)増減
自己資本比率40.3%42.9%+2.6pt
親会社所有者に帰属する持分1,289,639百万円1,447,338百万円+157,699百万円
有利子負債875,917百万円827,915百万円-48,002百万円
D/Eレシオ(当サイト算出)約0.68倍約0.57倍-0.11倍

出典:決算短信の開示数値から当サイトが算出。

自己資本比率が2026年3月期末から2026年6月末にかけて改善した背景には、2026年6月3日に発行した「第1回社債型種類株式」があります。この四半期中に資本剰余金が2,705億円から4,648億円へ、差額にして約1,943億円分増加しており、これが主因です。会社はこの資金をエアバスA350型機やボーイング737-8型機など、最新鋭機材購入に係る設備投資の一部に充てるとしています。

さらに遡ると、2026年3月期の自己資本比率改善(34.9%→40.3%、+5.4pt)自体も、その多くが「公募永久劣後債」の発行によるものでした。決算短信は「資本は、配当金の支払い等で減少したものの、公募永久劣後債の発行によるその他の資本性金融商品の計上および親会社の所有者に帰属する当期利益による利益剰余金の増加により…」と説明しており、貸借対照表を見ると、その他の資本性金融商品はゼロ(2025年3月期末)から1,777億円(2026年3月期末)へ計上されています。

ANAホールディングスとの比較

同業のANAホールディングスも、同じ2027年3月期第1四半期で対照的な動きを見せています。ANAホールディングスの自己資本比率は2026年3月期末37.7%から2026年6月末35.6%へ反転して悪化しました(自社株買いによる自己資本の圧縮が主因)。同じ四半期に、日本航空は40.3%→42.9%と改善しているため、両社の自己資本比率の差は7.3ポイントまで開いています。

項目(2026年6月末)日本航空ANAホールディングス
自己資本比率42.9%35.6%
D/Eレシオ(当サイト算出)約0.57倍約0.85倍
直近四半期の自己資本比率の方向改善(+2.6pt)悪化(-2.1pt)

出典:日本航空・ANAホールディングス各社の決算短信の開示数値から当サイトが算出。

ただし、この差を単純に「日本航空の方が財務体質が健全」と読むのは早計です。両社とも、直近の自己資本比率の動きにハイブリッド資本(日本航空は公募永久劣後債・社債型種類株式、ANAホールディングスは2026年3月期に発行した社債型種類株式)の発行・償還が絡んでおり、利益の積み上げによる「地力の改善」と、資本調達による「見た目の改善」を区別して見る必要があるという点は共通しています。日本航空については2010年の経営破綻の経緯から財務体質を厚めに保つ経営姿勢が続いており、その延長線上でハイブリッド資本を活用していると解釈することもできます。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2022/030円
2023/0325円31.7%
2024/0340円75円+35円34.3%
2025/0380円86円+6円35.1%
2026/0392円96円+4円31.3%
2027/03会社予想96円96円42.2%
  • 2022/03:新型コロナウイルス感染拡大に伴う最終赤字を受けて無配(2021年度も無配)。
  • 2023/03:コロナ禍後、初めて配当を再開。前期(2022年3月期)決算短信の時点では次期配当予想欄が空欄で、期初予想自体が非開示だった。
  • 2024/03:期初予想40円から35円増額(ほぼ倍増)。業績の急回復(純利益+177.5%)を反映。
  • 2025/03:期初予想80円から6円増額。
  • 2026/03:期初予想92円から4円増額。
  • 2027/03:前期実績96円から据え置き。内訳は中間46円→48円・期末50円→48円で、中間と期末をほぼ均等にする形に変更。配当性向42.2%は会社開示値。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2022年3月期〜2027年3月期予想)

配当政策の転換点は2つあります。

ひとつは2023年3月期の配当再開です。2020年度・2021年度(コロナ禍)の無配を経て、2023年3月期に年間25円で配当を再開しました。この時点では次期(2024年3月期)予想として40円を示していましたが、前期(2022年3月期)決算短信の時点では次期予想欄自体が空欄で、期初予想は開示されていませんでした(ANAホールディングスも同様のパターンをたどっています)。

もうひとつは、配当再開後の急速な増額です。2024年3月期は期初予想40円に対して実績75円と、ほぼ倍増しました。以降も2025年3月期(期初予想80円→実績86円)、2026年3月期(期初予想92円→実績96円)と、期初予想を上回る増額修正が3期連続で続いています。「期初は保守的に置き、業績が上振れれば期末に増額する」という癖が明確に表れています。

2027年3月期の会社予想は年間96円で、前期実績から据え置きです。内訳は中間46円・期末50円(2026年3月期実績)から、中間48円・期末48円へと変更されており、中間と期末の配当をほぼ均等にする形になっています。配当性向は会社開示で42.2%と、2026年3月期実績(31.3%)から上昇する見込みです。これは配当額を据え置く一方、当第1四半期の減益を踏まえた通期純利益予想(1,100億円、前期比△20.1%)に対する比率として算出されているためです。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算を、もう少し分解します。

輸送実績を見ると、国際線の有償座席利用率は86.1%から84.9%へ低下、有償旅客数も1,955,922人から1,947,506人へ減少しました。それでも国際線旅客収入が1,849億円から2,116億円(+14.4%)へ伸びたのは、燃油サーチャージの引き上げと、中東における外国航空会社の運休に伴う需給ひっ迫を捉えたレベニューマネジメントにより、単価が大きく上昇したためです。国内線旅客収入も1,342億円から1,390億円(+3.6%)、国際貨物郵便収入は355億円から541億円(+52.4%)と伸びています。つまり「数量は伸びていないが単価は上がっている」というのが、この四半期の需要側の実態です。

キャッシュ・フローは、営業CF978億円(前年同期810億円)、投資CF△665億円(前年同期△242億円、固定資産取得が主因)、財務CF+1,141億円(前年同期+1,457億円、社債型種類株式の発行が主因)で、現金及び現金同等物は1兆101億円から1兆1,574億円へ増加しました。手元流動性はこれに加えて未使用のコミットメントライン1,500億円を確保しています。

通期の会社予想は2026年4月30日公表分から変更ありません。 売上収益2兆950億円(+4.1%)、EBIT1,800億円(△17.4%)、純利益1,100億円(△20.1%)。当第1四半期の直近に公表されている業績予想からの修正の有無は「無」と明記されており、会社は当第1四半期の燃油高を一時的な逆風と位置づけているとみられます。この前提が崩れるかどうかは、次の四半期の燃油費・為替動向次第です。

7. 業界とセクターの状況

航空業界は、座席という在庫が効かない商品を、燃油費という為替・原油価格に連動する変動費の上で売る産業です。需要が座席供給を上回れば利用率と単価が上がり、下回れば一気に赤字化する高い操業レバレッジを持ちます。日本航空の当第1四半期(増収にもかかわらずFSC事業がEBIT赤字に転落)は、まさにこの構造どおりの動きです。

燃油費と為替は、個社の努力だけでは吸収しきれない外部要因です。燃料はドル建てで調達するため、原油価格そのものに加えて為替も業績を左右します。日本航空はANAホールディングスのように具体的な原油価格の前提を決算短信で開示していませんが、「中東情勢の緊迫化に伴う需給変化や燃油価格急騰など、ボラティリティの極めて高い外部環境」という表現で、同様の構造的リスクに触れています。

設備投資(機材)が巨額かつ長期であるため、有利子負債と自己資本比率の推移が財務体質を測る中心的な指標になります。日本航空・ANAホールディングスともに、直近の自己資本比率改善にハイブリッド資本(劣後債・種類株式)を活用している点は、機材調達に多様な資金調達手段を使う業界の特徴を反映しています。

株主還元の面では、両社とも感染症拡大局面で無配に転じた実績があるとおり、「安定配当」を掲げていても業績変動に応じて増減配されるのがこの業界の実態です。日本航空は2023年3月期の配当再開以降、一度も減配していない一方、ANAホールディングスは2027年3月期に配当再開後初めての減配予想を出しており、同じ燃油高という逆風のなかでも両社の配当政策には差が出ています。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日は前年実績からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算・初回中間配当(48円予定)の確定両面

通期の会社予想(EBIT1,800億円、純利益1,100億円)を据え置けるかの最初の確認点。当第1四半期の会社予想は2026年4月30日公表分から変更なし。

随時中東情勢の帰趨と航空燃油価格の動向両面

当第1四半期の減益は航空燃油費が前年同期比+58.4%と急騰したことが主因。燃油高が長期化すれば、通期予想(EBIT1,800億円)の下振れ余地が大きい。

随時マイル/金融・コマース事業の増益ペース両面

当第1四半期はEBIT120億円(+17.6%)でFSC・LCC事業の減益を吸収した。この事業の成長が続くかどうかが、グループ全体の利益の下支えを左右する。

2027年3月期中追加のハイブリッド資本調達・自社株買いの有無両面

当第1四半期に第1回社債型種類株式を発行済み(資本剰余金が約1,943億円増加)。追加調達や株主還元強化の動きが出るかを注視する必要がある。

10. 想定されるリスク

燃油費・為替リスク。 当第1四半期の減益は航空燃油費の+58.4%という急騰が主因でした。中東情勢が長期化し燃油価格が高止まりした場合、通期予想(EBIT1,800億円)の下振れ余地は大きくなります。

主力事業(FSC)の収益力低下リスク。 FSC事業のEBITが翌四半期以降も赤字圏で推移した場合、当第1四半期の落ち込みが一時的な燃油ショックではなく、構造的な収益力低下であることを示唆します。

財務体質改善の「質」に関するリスク。 直近の自己資本比率改善はハイブリッド資本の発行によるところが大きく、利益の積み上げが伴わなければ、資本コスト(配当・利払い)だけが積み上がる可能性があります。

非航空事業への依存リスク。 当第1四半期のグループ利益は、実質的にマイル/金融・コマース事業1事業に支えられていました。同事業の成長が鈍化・減速した場合、グループ全体の減益幅がより大きくなる可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

日本航空は、2010年の経営破綻を経て再上場した会社です。2027年3月期第1四半期は、主力のフルサービスキャリア(FSC)事業が燃油費急騰でEBIT赤字に転落するという、業績面では厳しい四半期でした。それでも自己資本比率は40.3%から42.9%へ改善し、有利子負債も減少しています。

この改善を「財務体質が着実に強化されている」と見るなら、ANAホールディングス(自己資本比率35.6%、同じ四半期に悪化)との差はさらに開いており、破綻を経た会社としての規律が数字に表れていると評価できます。マイル/金融・コマース事業という、燃油費の影響を受けにくい収益源が育っていることも、業績のボラティリティを下げる要因です。

「財務指標の改善はハイブリッド資本という資本調達によるところが大きく、利益の積み上げによる地力の改善ではない」と見るなら、この改善はやや慎重に受け止めるべきです。主力のFSC事業が赤字に転落したという事実自体は、資本調達では埋められません。

判断の分かれ目は、次の四半期以降、FSC事業のEBITが黒字圏に戻るかどうか、そして自己資本比率の改善が利益の積み上げによるものへと質的に転換していくかどうかです。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、通期予想(EBIT1,800億円・純利益1,100億円)から大きく下振れる修正が入った場合。燃油価格が会社の想定を上回って高止まりしたことを示す。
  • 自己資本比率が2026年6月末の42.9%から反転し、2026年3月期末の40.3%を下回る水準まで低下した場合。ハイブリッド資本調達に頼らずとも改善が続いていたトレンドが途切れたことを意味する。
  • フルサービスキャリア(FSC)事業のEBITが翌四半期以降も赤字が続いた場合。当第1四半期の赤字が燃油急騰による一時的な落ち込みではなく、構造的な収益力低下であることを示す。
  • 2027年3月期の配当予想(年96円)が期中に減額修正された場合。同社は2023年3月期の配当再開以降、一度も減配していない。
  • マイル/金融・コマース事業のEBITが減速・減益に転じた場合。同事業がFSC・LCC事業の落ち込みを吸収する構図が崩れ、グループ全体の減益幅が拡大する。

よくある質問

日本航空の配当は2027年3月期でいくらになりますか?
会社予想は年間96円(中間48円・期末48円)で、前期(2026年3月期)実績の96円から据え置きです。2026年8月31日の株価3,012円で計算した予想配当利回りは3.19%。100株保有の場合、年間配当は9,600円(税引前)になります。
なぜ2027年3月期第1四半期は増収なのに大幅減益なのですか?
航空燃油費が前年同期比+58.4%と急騰したことが主因です。売上収益は+11.2%伸びましたが、主力のフルサービスキャリア(FSC)事業のEBITは前年同期の307億円の黒字から8億円の赤字に転落しました。グループ全体では、非航空のマイル/金融・コマース事業(EBIT+17.6%)が下支えし、辛うじて黒字(純利益53億円)を確保しています。
日本航空とANAホールディングス、財務体質はどちらが健全ですか?
自己資本比率は2026年6月末時点で日本航空42.9%、ANAホールディングス35.6%と、数値上は日本航空の方が高い水準にあります。ただし日本航空の直近の改善は、2026年3月期に発行した公募永久劣後債(1,777億円)と2026年6月に発行した社債型種類株式によるところが大きく、利益の積み上げだけによる改善ではありません。ANAホールディングスも2026年3月期にハイブリッド証券を発行しており、両社とも資本調達が自己資本比率を押し上げている点は共通しています。

参考文献・引用元

  1. 01
    日本航空「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月3日開示。売上収益・EBIT・税引前四半期利益・親会社の所有者に帰属する四半期利益、セグメント別業績(フルサービスキャリア・LCC・マイル/金融・コマース)、輸送実績、財政状態計算書、キャッシュ・フロー、配当・通期業績予想を参照。 / 2026/08/03 開示

  2. 02
    日本航空「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年4月30日開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、IR BANKがミラーしている同一PDFを参照。2026年3月期実績、自己資本比率の改善内容(公募永久劣後債の発行によるその他の資本性金融商品の計上)、配当実績・次期予想を参照。 / 2026/04/30 開示

  3. 03
    日本航空「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2025年5月2日開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、IR BANKがミラーしている同一PDFを参照。2025年3月期実績・配当実績(期初予想からの増額)を参照。 / 2025/05/02 開示

  4. 04
    日本航空「2024年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2024年5月2日開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、IR BANKがミラーしている同一PDFを参照。2024年3月期実績、配当の大幅増額(期初予想40円→実績75円)を参照。 / 2024/05/02 開示

  5. 05
    日本航空「2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2023年5月2日開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、IR BANKがミラーしている同一PDFを参照。2023年3月期実績(黒字転換)、配当再開の経緯(期初予想非開示)を参照。 / 2023/05/02 開示

  6. 06
    日本航空「2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2022年5月6日開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、IR BANKがミラーしている同一PDFを参照。2022年3月期実績(最終赤字・無配)を参照。 / 2022/05/06 開示

  7. 07
    ANAホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年7月29日開示。本記事でのANAホールディングスとの比較(自己資本比率・有利子負債)に用いた数値の一次情報。 / 2026/07/29 開示

  8. 08
    IR BANK「日本航空(9201)」

    通期業績・財務・配当の長期推移を、決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月31日時点の表示)。会社開示の指標定義と異なる場合があるため、本文の指標は会社開示値を優先した。

  9. 09
    株探(かぶたん)「日本航空(9201)」株の基本情報

    2026年8月31日時点の株価3,012.0円・時価総額・信用倍率を参照。PER・PBR・予想配当利回りは会社開示の指標から当サイトが算出した値を本文では優先した。