四半期分析空運業2027/3期 Q1

ANAホールディングス(9202) 財務健全化5期からの反転、自己資本比率35.6%をどう読むか

2026/08/30 公開2026/08/30 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

ANAホールディングス株式会社

東証プライム 9202 ・ 3月期決算

2026/08/28 時点

株価

3,068円

時価総額

14,858億円

配当利回り

1.96%

年間60円

PER

8.6倍

PBR

1.11倍

ROE

12.9%

ROA

5.8%

経常利益ベース

自己資本比率

35.6%

有利子負債

11,931億円

D/Eレシオ

0.85倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は増収減益。売上高6,727億円(前年同期比+22.6%)に対し、営業利益208億円(同△43.5%)・経常利益225億円(同△37.3%)・純利益194億円(同△15.4%)。主因は燃油費の増加で、航空事業単体の営業利益は354億円から181億円(△48.7%)へほぼ半減した。
  • 自己資本比率は2022年3月期24.8%から2026年3月期37.7%まで5期連続で改善してきたが、2027年3月期第1四半期には37.7%から35.6%へ反転。四半期中に自己株式が約501億円分増加しており、大規模な自社株買いを実施したとみられる。D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本、当サイト算出)も約0.79倍から約0.85倍へ悪化した。
  • 2026年3月期の自己資本比率改善には、利益の積み上げに加えて固定配当年率3.500%のハイブリッド証券(第1回社債型種類株式、1,500億円)の発行も寄与しており、内部留保の積み上がりとは性質が異なる点に注意が必要。
  • 2027年3月期の配当予想は年間60円で、前期実績65円から5円の減配。コロナ禍後の配当再開(2024年3月期50円)以降で初めての減配予想であり、同時にANA史上初の中間配当(30円)を導入する予定でもある。
  • 財務健全化を優先してきた局面から株主還元を優先する局面へ転換しつつあるのか、それとも一時的な動きにとどまるのかが、次の四半期以降を見るうえでの分かれ目になる。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 財務健全化5期からの反転をどう読むか
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月28日時点で、ANAホールディングス(9202)の株価は3,068円、PER8.56倍(2026年3月期実績EPS358.37円ベース)、PBR1.11倍(2026年6月末BPS2,753.77円ベース)、ROE12.9%・ROA5.8%(いずれも2026年3月期実績。ROA総資産経常利益率)、予想配当利回りは1.96%(2027年3月期予想配当年60円ベース)です。

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算は、売上高6,727億円(前年同期比+22.6%)に対して営業利益208億円(同△43.5%)、経常利益225億円(同△37.3%)、純利益194億円(同△15.4%)という増収減益でした。原因は燃油費の増加で、主力の航空事業だけを見ると営業利益は354億円から181億円へほぼ半減しています。

この記事でもう一つ扱いたいのが、財務体質の変化です。自己資本比率は2022年3月期の24.8%から2026年3月期の37.7%まで5期連続で改善してきましたが、2027年3月期第1四半期には37.7%から35.6%へ反転しました。同じ時期に自己株式が約501億円分増加しており、大規模な自社株買いを実施したとみられます。配当も2026年3月期実績65円から2027年3月期予想60円へと、コロナ禍後の配当再開以来初めての減配予想になりました。財務健全化を優先してきた5期から、株主還元を優先する局面へ転換しつつあるのかが、この記事で扱う中心的な論点です(詳しくは4節)。

2. 会社概要とビジネスモデル

ANAホールディングスは全日本空輸(ANA)を中核とする航空持株会社です。傘下にLCCのPeach Aviation、貨物専業のNCA(日本貨物航空、2025年に連結子会社化)を持ち、航空事業(国内線・国際線の旅客収入、国際線中心の貨物収入)が売上の9割超を占めます。残りは、整備受託・機内食などの航空関連事業、空港免税店「ANA DUTY FREE SHOP」などの商社事業、旅行事業といった非航空事業です。

2027年3月期第1四半期のセグメント別営業利益を見ると、事業ポートフォリオの重心がよく分かります。航空事業181億円に対し、航空関連事業49億円(前年同期比+54.3%)・商社事業10億円・旅行事業1億円(前年同期は2億円の赤字から黒字転換)・その他6億円でした。非航空事業の合計は航空事業の3分の1程度の規模ですが、航空事業が燃油高で大きく落ち込む局面でも相対的に安定していることが見て取れます。

強みと弱みの整理

強み

  • 国内最大の規模と路線網

    国内線・国際線の双方で国内最大手の運航規模を持ち、2025年に日本貨物航空(NCA)を連結子会社化して国際線貨物収入も上乗せしました。当第1四半期の国際線貨物収入は583億円(+37.9%)まで伸びています。

  • 5期連続で進んだ財務体質の改善

    自己資本比率は2022年3月期24.8%から2026年3月期37.7%まで5期連続で改善し、有利子負債(会社定義)も1兆7,500億円から1兆1,717億円まで圧縮されました。コロナ禍で毀損したバランスシートの復元が進んでいます。

  • 5期連続の増収基調

    売上高は2022年3月期の1兆203億円から2026年3月期の2兆5,392億円まで5期連続で伸び、2027年3月期も+9.1%の増収予想です。国際線旅客・貨物需要の回復が続いていることを示します。

弱み

  • 燃油費・為替に業績が直撃される構造

    2027年3月期第1四半期は売上高が+22.6%伸びたにもかかわらず、燃油費の増加で営業利益は△43.5%の減益になりました。航空事業単体の営業利益は354億円から181億円へほぼ半減しています。

  • 有利子負債は依然1兆円超

    5期連続で圧縮が進んだとはいえ、2026年6月末の有利子負債(会社定義)は1兆1,931億円と、なお大きな水準です。機材(航空機)への投資は巨額かつ長期であり、借入への依存を完全には排除できません。

  • 財務健全化のペースに一服感

    2027年3月期第1四半期には自己資本比率が37.7%から35.6%へ反転しました。四半期中に約501億円分の自己株式が増加しており、株主還元と財務健全化のどちらを優先するかという新しい論点が生じています。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00750,00075,0001,500,000150,0002,250,000225,0003,000,000300,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)10254024.825.629.331.237.7
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/031,020,324-173,127-184,935-143,62824.8%
2023/031,707,484120,030111,81089,47725.6%
2024/032,055,928207,911207,656157,09729.3%
2025/032,261,856196,639200,086153,02731.2%
2026/032,539,233217,437219,651169,07537.7%
2027/03会社予想2,770,000150,000137,00096,000
単位:百万円。出典:決算短信(2022年3月期〜2026年3月期実績、2027年3月期は会社予想)

この表で読み取れることは3つあります。

第一に、売上高は5期連続で増加し、2027年3月期も増収が続く見通しです。1兆203億円(2022年3月期)から2兆5,392億円(2026年3月期)まで、コロナ禍からの需要回復と運賃・貨物単価の上昇が積み上がってきました。

第二に、利益の振れ幅は売上高よりはるかに大きいという点です。2022年3月期は営業利益△1,731億円、経常利益△1,849億円、純利益△1,436億円という大幅な赤字でしたが、翌2023年3月期には3利益とも黒字転換。さらに2024年3月期には営業利益+73.2%・経常利益+85.7%・純利益+75.6%という急回復を見せ、2026年3月期には売上高・営業利益・経常利益・純利益のいずれも過去最高を更新しました。座席という在庫が効かない商売の性質上、需要の増減がそのまま利益の増減として跳ね返る、高い操業レバレッジが表れています。

第三に、2027年3月期は再び増収減益の予想です。会社予想は売上高2兆7,700億円(+9.1%)に対し、営業利益1,500億円(△31.0%)・経常利益1,370億円(△37.6%)・純利益960億円(△43.2%)。売上の伸びを上回るペースで燃油費が業績を押し下げる構図が、通期でも続く見通しになっています。

4. 財務健全化5期からの反転をどう読むか

ANAホールディングスの財務体質は、コロナ禍で大きく毀損した後、5期連続で回復してきました。自己資本比率は2022年3月期24.8%→2023年3月期25.6%→2024年3月期29.3%→2025年3月期31.2%→2026年3月期37.7%という推移です。有利子負債(会社定義。無利子のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を含む)も、2022年3月期の1兆7,500億円(前期末比較値からの推定)から2026年3月期の1兆1,717億円まで、5期で約5,800億円圧縮されました。

有利子負債を自己資本で割ったD/Eレシオ負債資本比率)に換算すると、この変化はより鮮明になります。この換算値は決算短信に直接の記載がなく、開示された有利子負債と自己資本の実額から当サイトが算出した値です。2022年3月期は自己資本比率24.8%・有利子負債1兆7,500億円(推定)という水準から概算で約2.2倍、2026年3月期は有利子負債1,171,700百万円÷自己資本1,491,999百万円で約0.79倍まで低下しています。

自己資本比率改善の中身にも注意が必要

ただし、2026年3月期の改善はすべてが利益の積み上げによるものではありません。同期に「成長投資資金の確保や資本構成の最適化を目的とした第1回社債型種類株式」(固定配当年率3.500%、発行総額1,500億円)を発行しており、これも純資産の増加要因になっています。会計上は自己資本に算入されますが、実質的には利払い(配当)を伴う資金調達である点で、内部留保が積み上がるのとは性質が異なります。

2027年3月期第1四半期に生じた反転

2027年3月期第1四半期(2026年6月末)の財務指標は、次のとおりです。

項目2026年3月期末2026年6月末(Q1末)増減
自己資本比率37.7%35.6%-2.1pt
自己資本1,491,999百万円1,397,356百万円-94,643百万円
有利子負債(会社定義)1,171,700百万円1,193,100百万円+21,400百万円
D/Eレシオ(当サイト算出)約0.79倍約0.85倍+0.06倍

出典:決算短信の開示数値から当サイトが算出。

自己資本比率が5期ぶりに悪化方向へ振れた背景として、決算短信からは次の2つが読み取れます。

ひとつは自社株買いです。 貸借対照表の自己株式は、前期末の△101,564百万円から当第1四半期末には△151,741百万円へ、差額にして約501億円分増加しました。発行済株式数484,293,561株のうち期末自己株式数も30,518,740株から48,307,550株へ急増しており、四半期中に相応の規模の自社株買いを実施したとみられます。自社株買いは自己資本(純資産)を直接減らすため、有利子負債がほぼ横ばいでも自己資本比率とD/Eレシオを押し下げます。

もうひとつは燃油費高騰による減益です。 当第1四半期の純利益は194億円にとどまり、自己資本を押し上げる力そのものが弱まっています。

どう評価するか

見方は2つに分かれます。

前向きに見るなら、自己資本比率35.6%・D/Eレシオ約0.85倍は、5期前(2022年3月期、自己資本比率24.8%・D/Eレシオ約2.2倍)と比べればなお健全な水準です。5期かけて積み上げた余力の範囲内で株主還元を強化した、1四半期分の動きにすぎないという評価も成り立ちます。

慎重に見るなら、財務健全化のペースが一服したのは事実で、しかも燃油費高騰による減益が同時に進行しています。自社株買いが今後も続けば、財務健全化と株主還元強化を同時に進める余地は狭まっていきます。

配当予想の減配(65円→60円)と、ANA史上初の中間配当導入が同時に起きていることも、この転換点を象徴しています。財務健全化を優先する局面から株主還元を優先する局面へ転換しつつあるのか、それとも一時的な動きにとどまるのかが、この記事で最も重要な論点です。次の四半期以降、自己資本比率とD/Eレシオがどちらの方向に動くかが、この論点への答えになります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2022/030円
2023/030円
2024/0350円
2025/0350円60円+10円18.4%
2026/0360円65円+5円18.1%
2027/03会社予想60円60円28.7%
  • 2022/03:新型コロナウイルス感染拡大に伴う最終赤字を受けて無配(2021年度も無配)。
  • 2023/03:3利益とも黒字転換した期だが、配当は無配を継続。
  • 2024/03:コロナ禍後、初めて配当を再開。前期(2023年3月期)決算短信の時点では次期配当予想欄が空欄で、期初予想自体が非開示だった。
  • 2025/03:期初予想50円から10円増額。配当金総額282億円。
  • 2026/03:期初予想60円から5円増額。配当性向18.1%は開示されたEPS358.37円と配当65円から当サイトが算出した値(決算短信の配当性向欄には記載なし)。
  • 2027/03:前期実績65円から5円の減配予想。第81回定時株主総会(2026年6月26日開催)での定款一部変更の承認を前提に、ANA史上初めて中間配当(30円)を実施する予定。配当性向28.7%は会社予想EPS209.26円から当サイトが算出した値。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(2022年3月期〜2027年3月期予想)

配当政策には明確な転換点が2つあります。

ひとつは2024年3月期の配当再開です。2020年度・2021年度(コロナ禍)の無配を経て、2024年3月期に年間50円で配当を再開しました。この時点では次期(2025年3月期)予想として50円を示していましたが、前期(2023年3月期)決算短信の時点では次期予想欄自体が空欄で、期初予想は開示されていませんでした。

もうひとつは2027年3月期の減配です。2024年3月期の再開以降、配当は50円→60円→65円と3期連続で増額されてきましたが、2027年3月期の会社予想は60円で、前期実績65円から5円の減配です。会社は「安定配当を継続する方針」という表現を維持しつつ、中東情勢による原油高を理由に減益・減配を見込んでいます。「安定配当」を掲げていても、業績が悪化する局面では減配し得ることを、会社自身がこの予想で示した形です。

同時に、2027年3月期からANA史上初めて中間配当(30円)を導入する予定です。第81回定時株主総会(2026年6月26日開催)で中間配当制度導入のための定款一部変更が承認されたことが前提になっています。年間配当は減る一方で支払いの回数は増えるという、還元方法の多様化と減配が同時に起きている点は押さえておく必要があります。

配当性向(1株配当÷EPS)で見ると、2025年3月期の18.4%(会社開示)から、2026年3月期は算出値で18.1%程度、2027年3月期予想は会社予想EPS209.26円に対して算出値で28.7%程度まで上昇します。実質的には減配ですが、それでも配当性向自体は切り上がる計算になります。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算を、もう少し分解します。

当第1四半期のセグメント別営業利益(前年同期比)は、航空事業181億円(△48.7%)、航空関連事業49億円(+54.3%)、旅行事業1億円(前年同期は△2億円の赤字から黒字転換)、商社事業10億円(△19.8%)、その他6億円(+24.3%)でした。減益の中心は航空事業で、非航空事業はむしろ改善している事業もあります。

旅客・貨物の内訳を見ると、国際線旅客収入は2,476億円(+20.0%、利用率85.1%)、国内線旅客収入は1,636億円(+1.1%、利用率75.6%)、国際線貨物収入は583億円(+37.9%)でした。国際線旅客・貨物ともに二桁の増収で、単価・利用率ともに底堅く推移しています。2025年にNCA(日本貨物航空)を連結子会社化した効果も、国際線貨物収入の伸びに寄与しています。

キャッシュ・フローは、営業CF892億円(前年同期944億円)、投資CF+1,751億円(前年同期△478億円、有価証券償還収入が主因)、財務CF△636億円(前年同期+216億円)で、フリーキャッシュフローは2,643億円の黒字でした。投資CFのプラスは有価証券の償還によるもので、事業投資そのものが縮小したことを意味するわけではありません。

通期の会社予想は2026年4月30日公表分から変更ありません。 売上高2兆7,700億円(+9.1%)、営業利益1,500億円(△31.0%)、経常利益1,370億円(△37.6%)、純利益960億円(△43.2%)。前提となるドバイ原油は第1四半期130ドル/バレル→第2四半期100ドル→下期75ドルで、中東情勢が2026年6月末までに収束することを前提としています。この前提が崩れれば、通期予想そのものが崩れます。

7. 業界とセクターの状況

航空業界は、座席という在庫が効かない商品を、燃油費という為替・原油価格に連動する変動費の上で売る産業です。需要が座席供給を上回れば利用率と単価が上がり、下回れば一気に赤字化する高い操業レバレッジを持ちます。ANAホールディングスの業績推移(2022年3月期の大幅赤字から2026年3月期の過去最高益まで)は、まさにこの構造どおりの動きです。

燃油費と為替は、個社の努力だけでは吸収しきれない外部要因です。燃料はドル建てで調達するため、原油価格そのものに加えて為替も業績を左右します。会社が業績予想の前提として原油価格(ドバイ原油)と為替レートを明記しているのはこのためで、その前提が崩れれば予想も崩れます。2027年3月期の会社予想が「中東情勢が2026年6月末までに収束する」ことを前提にしているのは、この産業ならではの開示です。

設備投資(機材)が巨額かつ長期であるため、有利子負債と自己資本比率の推移が財務体質を測る中心的な指標になります。ANAホールディングスの有利子負債(会社定義)が無利子の転換社債型新株予約権付社債を含む形で定義されているのも、機材調達に多様な資金調達手段を使っている業界の特徴です。

株主還元の面では、感染症拡大局面で無配に転じた実績があるとおり、「安定配当」を掲げていても業績変動に応じて増減配されるのがこの業界の実態です。自己資本比率の回復を優先する時期は自社株買いが抑制され、財務健全化が一巡すると株主還元に重心が移る傾向があり、ANAホールディングスが今まさにその転換点にいる可能性がある、というのが4節で扱った論点です。

同業では日本航空(JAL)が最大の競合ですが、本記事では個社比較のデータを持ち合わせていないため、指標の水準比較は今後の課題とします。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日は前年実績からの推定です。確定日は同社IRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算・初の中間配当(30円予定)の確定両面

通期の会社予想(営業利益1,500億円、経常利益1,370億円)を据え置けるかの最初の確認点。前提とするドバイ原油は第2四半期100ドル/バレルを想定しており、この水準からの乖離が収益に直結する。

随時中東情勢の帰趨とドバイ原油価格の動向両面

通期予想は中東情勢が2026年6月末(第1四半期末)までに収束し、下期にかけてドバイ原油が75ドル/バレルまで低下することを前提としている。この前提が崩れれば、通期の営業利益予想1,500億円自体が崩れる。

随時国際線旅客需要・インバウンド需要の強弱上振れ

当第1四半期の国際線旅客収入は2,476億円(+20.0%、利用率85.1%)と伸びている。訪日需要・海外渡航需要の回復が続けば、燃油高という逆風を数量でどこまで打ち返せるかの材料になる。

2027年3月期中自社株買いの継続有無の開示両面

当第1四半期に自己株式が帳簿価額で約501億円分増加したとみられる。この動きが単発なのか、株主還元強化として継続するのかは、今後の決算短信・適時開示で確認する必要がある。

10. 想定されるリスク

燃油費・為替リスク。 通期予想はドバイ原油が下期にかけて75ドル/バレルまで低下することを前提としています。中東情勢が長期化し、燃油価格がこの想定を上回って高止まりした場合、通期の営業利益1,500億円という予想は未達となる可能性があります。

財務健全化ペースの一服リスク。 自己資本比率は2027年3月期第1四半期に37.7%から35.6%へ反転しました。自社株買いが今後も続けば、5期かけて積み上げてきた財務体質改善の余力を取り崩す形になります。

減配・株主還元方針の転換リスク。 2027年3月期の配当予想は前期実績から5円の減配です。「安定配当」を掲げていても業績悪化局面では減配し得ることを、会社自身がこの予想で示しました。燃油高が長引けば、期中の下方修正・追加減配の可能性も排除できません。

インバウンド・国際線需要の反落リスク。 国際線旅客収入・貨物収入は現状好調ですが、訪日需要・海外渡航需要は為替水準や地政学リスク、感染症のような外生的なショックの影響を受けやすく、需要が反落すれば座席供給が過剰になり利用率・単価の双方が悪化します。

11. まとめ:どう判断材料にするか

ANAホールディングスは、5期連続で財務体質を改善させてきた会社です。自己資本比率24.8%(2022年3月期)から37.7%(2026年3月期)、有利子負債1兆7,500億円(推定)から1兆1,717億円へと、コロナ禍からの回復が着実に進んできました。

その一方で、2027年3月期第1四半期には自己資本比率が35.6%へ反転し、配当も65円から60円へ減配予想となりました。燃油費高騰による減益と、自社株買いによる自己資本の圧縮が重なった結果です。

この反転を「財務健全化が一段落し、株主還元を優先する局面に入った」と見るなら、自社株買いや中間配当導入は前向きな変化です。5期かけて積み上げた余力の範囲内での動きであり、D/Eレシオ約0.85倍は2022年3月期の約2.2倍と比べればなお健全な水準にあります。

「財務健全化がまだ道半ばで、燃油高という逆風のなかで還元を急いでいる」と見るなら、この反転は注意すべき兆候です。有利子負債はなお1兆円を超えており、通期の会社予想自体が中東情勢の収束という不確実な前提の上に立っています。

判断の分かれ目は、次の四半期以降、自己資本比率とD/Eレシオがどちらの方向に動くか、そして通期予想の前提であるドバイ原油75ドル/バレルという想定が実現するかどうかです。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)決算の時点で、通期予想(営業利益1,500億円・経常利益1,370億円)から大きく下振れる修正が入った場合。ドバイ原油が会社の想定(下期75ドル/バレル)を上回って高止まりしたことを示す。
  • 自己資本比率が2026年6月末の35.6%からさらに切り下がり、2026年3月期末の37.7%を大きく下回る水準(目安として30%台前半)まで低下した場合。自社株買いによる自己資本圧縮が一過性でなく、継続的な還元強化に転じたことを意味する。
  • 2027年3月期の配当予想60円が期中に減額修正された場合。同社は2025年3月期・2026年3月期と2期連続で期初予想を上回る増額修正を続けてきており、初めての下方修正は配当方針の質的な転換を示す。
  • 有利子負債(会社定義)が2026年6月末の1,193,100百万円からさらに増加し、D/Eレシオが1倍を超える水準まで悪化した場合。財務健全化から株主還元優先への転換が、一時的な動きではなく本格化したと判断できる。

よくある質問

ANAホールディングスの配当は2027年3月期でいくらになりますか?
会社予想は年間60円(中間30円・期末30円)です。前期(2026年3月期)実績の65円から5円の減配予想で、2026年8月28日の株価3,068円で計算した予想配当利回りは1.96%です。100株保有の場合、年間配当は6,000円(税引前)になります。
ANAホールディングスは減配したのですか?
2027年3月期の会社予想は、コロナ禍後に配当を再開した2024年3月期(50円)以降で初めての減配予想です(2026年3月期実績65円→2027年3月期予想60円)。会社は「安定配当を継続する方針」としつつ、中東情勢による原油高で減益を見込むことを理由に挙げています。同時に、2027年3月期からANA史上初めて中間配当(30円)を導入する予定です。
なぜ2027年3月期第1四半期は増収なのに大幅減益なのですか?
売上高は前年同期比+22.6%と伸びましたが、燃油費の増加により営業利益は同△43.5%の減益になりました。特に主力の航空事業だけで見ると、営業利益は354億円から181億円(△48.7%)へほぼ半減しています。座席供給という在庫が効かない商売の性質上、需要(売上)と利益の振れ幅が一致しない構造が背景にあります。

参考文献・引用元

  1. 01
    ANAホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年7月29日開示。売上高・各利益段階、セグメント別業績、旅客・貨物収入の内訳、キャッシュ・フロー、有利子負債、自己株式数、通期業績・配当予想の前提を参照。 / 2026/07/29 開示

  2. 02
    ANAホールディングス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2026年4月30日開示。2026年3月期実績、財政状態の指標推移(自己資本比率・時価ベース自己資本比率・債務償還年数・インタレスト・カバレッジ・レシオ)、第1回社債型種類株式の発行、配当実績・次期予想を参照。 / 2026/04/30 開示

  3. 03
    ANAホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2025年4月30日開示。2025年3月期実績・配当実績(期初予想からの増額)・次期予想を参照。 / 2025/04/30 開示

  4. 04
    ANAホールディングス「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2024年4月26日開示。2024年3月期実績、コロナ禍後の配当再開の経緯を参照。 / 2024/04/26 開示

  5. 05
    ANAホールディングス「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2023年4月27日開示。2023年3月期実績(黒字転換)、2022年3月期実績(最終赤字)、無配の経緯を参照。 / 2023/04/27 開示

  6. 06
    IR BANK「ANAホールディングス(9202)」

    通期業績・財務・配当・自社株買いの長期推移を、有価証券報告書および決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月28日時点の表示)。会社開示の指標定義と異なる場合があるため、本文の指標は会社開示値を優先した。

  7. 07

    Yahoo!ファイナンス「ANAホールディングス(9202)」株価情報

    2026年8月28日時点の株価・時価総額・PBR実績・52週高値安値を参照。