四半期分析通信2027/3期 Q1

KDDI(9433) 純利益+22.1%の増収増益、分割後「配当45%減」に見える罠

2026/08/08 公開2026/08/08 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

KDDI株式会社

東証プライム 9433 ・ 3月期決算

2026/08/07 時点

株価

2,981円

配当利回り

2.82%

年間84円

PER

15.2倍

PBR

2.24倍

ROE

14.0%

ROA

3.7%

純利益ベース

自己資本比率

26.6%

配当性向

42.8%

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、収益が前年同期比+5.1%、営業利益が同+21.1%、税引前利益が同+20.2%、親会社所有者帰属当期利益が同+22.1%という増収増益の決算だった。会社は同日、通期(2027年3月期)の業績予想・配当予想(年間84.00円)をいずれも修正せず据え置いた。
  • 2025年4月の株式分割(1株を2株に)により、年間配当は決算短信の生の数値だけを見ると2025年3月期の145.00円から2026年3月期の80.00円へ45%減ったように見える。しかし分割調整後ベースでは72.50円→80.00円で実質+10.3%の増配であり、配当金総額でも+4.9%増えている。2027年3月期予想の84.00円も増配計画で、KDDIが掲げる「増配23期連続」の記録は途切れていない。
  • 一方、自己資本比率は2025年3月末の30.1%から2026年3月末には26.6%まで低下している(2026年6月末は27.2%へやや持ち直し)。総資産が1年で14.1%増加した一方、自己資本はほぼ横ばいだったことが背景だが、その資産増加の具体的な内訳は決算短信の主要ページからは特定できなかった。
  • PER15.19倍・PBR2.24倍という水準は、2010年以降のレンジ(PER6.81〜18.04倍、PBR0.83〜2.54倍)の上寄りにある。増収増益・増配基調を評価するか、バリュエーションの上振れと自己資本比率の低下を割高・財務リスクとして重く見るかで、判断が分かれる。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 株式分割で「配当45%減」に見えるが、実質は増配
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年8月7日、KDDIは2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表しました。収益は前年同期比+5.1%、営業利益は同+21.1%、税引前利益は同+20.2%、親会社所有者帰属当期利益は同+22.1%、EPSは同+27.6%という増収増益の内容です。会社は同日、通期(2027年3月期)の業績予想・配当予想(年間84.00円)をいずれも修正せず据え置いています。

2026年8月7日終値2,981円をもとにすると、PER15.19倍(2027年3月期会社予想EPS196.29円ベース)・PBR2.24倍(2026年3月末BPS1,333.50円ベース)・ROE14.0%・ROA3.71%(純利益ベース)・自己資本比率26.6%(2026年3月末)・予想配当利回り2.82%(会社予想の年間配当84.00円ベース)という水準です。

この記事で扱うもう一つの論点は、2025年4月に実施した株式分割によって、決算短信の生の数値だけを見ると年間配当が45%も減ったように見えることです。 2025年3月期の145.00円から2026年3月期の80.00円への変化は、分割の影響を除けば実質+10.3%の増配であり、KDDIが掲げる「増配23期連続」の記録も途切れていません。詳しくは第4節で扱います。

2. 会社概要とビジネスモデル

KDDIは「au」ブランドの携帯通信事業を中核とする総合通信会社です。個人向け(パーソナル)・法人向け(ビジネス)の通信サービスを収益の中核に据えつつ、au PAY・auじぶん銀行などの金融事業、auでんきなどのエネルギー事業といった非通信領域へ展開しています。2026年3月期の決算短信の収益内訳には金額で3,481,279百万円(前期比+4.1%)と2,590,636百万円(同+4.0%)の2区分が記載され、合計が連結収益6,071,915百万円と一致しますが、区分の正式名称は一次資料の文字化けにより確定できませんでした。断定的な紐付けは避け、以下では公開情報で広く知られている定性的な事業構造の説明にとどめます。

国内の固定・移動通信インフラを担う規制業種としての側面と、金融・エネルギーなど非通信領域への展開を併せ持つ点が、この会社の特徴です。

強みと弱みの整理

強み

  • 増収増益基調が継続

    2027年3月期第1四半期は収益+5.1%・営業利益+21.1%・純利益+22.1%の増収増益でした。通期(2027年3月期)の会社予想も収益+5.6%・営業利益+10.1%・純利益+3.4%の増収増益を見込んでいます。

  • 分割調整後ベースで増配基調が続いている

    2025年4月の株式分割を調整すると、2025年3月期の72.50円から2026年3月期は80.00円(+10.3%)、2027年3月期予想は84.00円(+5.0%)と増配が続いています。KDDI公式IRサイトは「増配23期連続」を掲げています。

  • 非通信領域への展開

    au PAY・auじぶん銀行などの金融事業、auでんきなどのエネルギー事業を通じて、通信以外の収益源を積み上げています。具体的なセグメント別の金額は一次資料からは確定できませんでしたが、事業構造としては通信一本足ではありません。

弱み

  • 自己資本比率が低下基調

    自己資本比率は2025年3月末の30.1%から2026年3月末には26.6%まで低下しました(2026年6月末は27.2%へやや持ち直し)。総資産が1年で14.1%増加した一方、自己資本はほぼ横ばいだったことが背景です。

  • 営業利益の変動が過去にあった

    2024年3月期に営業利益が前期比▲12.9%落ち込んだ実績があります。2025年3月期には+19.2%で回復しましたが、この凹凸の理由は一次資料からは特定できませんでした。

  • バリュエーションはレンジの上寄り

    現在のPER15.19倍・PBR2.24倍は、2010年以降のレンジ(PER6.81〜18.04倍、PBR0.83〜2.54倍)の上限に近い水準にあります。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
001,750,000500,0003,500,0001,000,0005,250,0001,500,0007,000,0002,000,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)10254030.126.6
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/035,446,7001,060,500672,486
2023/035,630,0001,046,900651,391
2024/035,699,700912,031600,281
2025/035,835,5251,087,4681,073,418655,41630.1%
2026/036,071,9151,099,1251,117,904707,11226.6%
2027/03会社予想6,410,0001,210,000731,000
単位:百万円。出典:2022年3月期〜2024年3月期はIR BANK集計(概算値)、2025年3月期・2026年3月期は決算短信、2027年3月期は会社予想(2026年5月12日公表、2026年8月7日のQ1決算でも据え置き)

表の「経常利益」列には、KDDIもIFRSを採用しており日本基準の経常利益に対応する概念が無いため、2025年3月期以降は税引前利益を代わりに記載しています。2022年3月期〜2024年3月期は出所(IR BANK)に該当する数値の記載が無く空欄です。

この6期を並べて読み取れることは3つあります。

収益は6期を通じて一貫して増加している。 前期比で見ると2023年3月期+3.4%、2024年3月期+1.2%、2025年3月期+2.4%、2026年3月期+4.1%、2027年3月期(会社予想)+5.6%と、伸び率には差があるものの、減収になった期はありません。

営業利益は2024年3月期に落ち込み、2025年3月期に回復している。 営業利益は前期比で2023年3月期▲1.3%、2024年3月期▲12.9%と2期連続で減少した後、2025年3月期は+19.2%、2026年3月期は+1.1%と回復・横ばいで推移しました。2027年3月期(会社予想)は+10.1%の増益計画です。純利益も同様に、2023年3月期▲3.1%、2024年3月期▲7.8%と2期連続で減少した後、2025年3月期+9.2%、2026年3月期+7.9%で回復し、2027年3月期(会社予想)は+3.4%を見込んでいます。この2024年3月期の落ち込みと2025年3月期の回復の理由は、一次資料の該当ページが読み取れなかったため特定できていません。

自己資本比率は2025年3月期末の30.1%から2026年3月期末の26.6%へ低下している。 同じ期間に総資産は16,714,708百万円から19,063,364百万円へ14.1%増加した一方、自己資本(親会社所有者帰属持分)は5,032,495百万円から5,076,738百万円へ+0.9%とほぼ横ばいでした。総資産が何によって増えたのかは一次資料の該当ページ(セグメント別・投資活動の内訳)が読み取れず特定できていません。

4. 株式分割で「配当45%減」に見えるが、実質は増配

KDDIは2025年4月1日付で普通株式1株を2株にする株式分割を実施しました。この分割の前後で、決算短信の「配当の状況」に載る生の数値をそのまま追うと、配当は大きく減ったように見えます。

生の数値だけを見ると「45%減配」

決算期年間配当(生の数値)配当金総額配当性向
2025年3月期(実績、分割前ベース)145.00円290,296百万円44.8%
2026年3月期(実績、分割後ベース)80.00円304,566百万円43.6%

出典:2026年3月期決算短信(2026年5月12日開示)「配当の状況」

145.00円から80.00円への変化は、単純に引き算すると▲45%です。株式分割を知らずにこの数字だけを見ると、大幅な減配が起きたように読めます。

株式分割を調整すると実質+10.3%の増配

しかし2025年4月の株式分割は1株を2株に分割するものなので、分割前の配当を株数ベースで比較可能にするには2で割る必要があります。IR BANKが計算した分割調整後ベースでは次のとおりです。

決算期年間配当(分割調整後)前期比
2025年3月期72.50円
2026年3月期80.00円+10.3%
2027年3月期(会社予想)84.00円+5.0%

出典:IR BANK「KDDI(9433) 配当金の推移」

分割調整後で見ると、2026年3月期は前期比+10.3%の増配であり、2027年3月期の会社予想(84.00円)もさらに増配の計画です。 上の配当金総額の表を見ても、290,296百万円から304,566百万円へ+4.9%増えており、株式分割の影響を受けない配当金総額ベースでも支払いは増えています。KDDIの公式IRサイト(kddi.com/corporate/ir/)は「増配23期連続」という表示をしており、今回の決算でもこの連続増配の記録は途切れていません。2027年3月期の会社予想配当84.00円は、2026年8月7日のQ1決算時点でも据え置かれています。

配当性向はむしろ低下している

配当性向は2025年3月期の44.8%から2026年3月期は43.6%、2027年3月期予想は42.8%へと、緩やかに低下する計画です。これは配当そのものが減っているのではなく、EPSの伸び(2026年3月期+13.4%)が配当の伸び(分割調整後+10.3%)を上回っているためです。増配を続けながらも、利益の伸びに対しては配当を抑制的に配分している格好です。

この記事の指標(dividendYield 2.82%)は、分割調整後の会社予想配当84.00円を基準に計算しています。 決算短信の生の数値(145.00円→80.00円)をそのまま使うと配当政策の実態を見誤るため、読者が自分で配当の推移を確認する際は、株式分割の有無を必ず確認することをおすすめします。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当配当性向
2025/03145円44.8%
2026/0380円43.6%
2027/03会社予想84円84円42.8%
  • 2025/03:2025年4月1日付の株式分割(1株を2株に分割)前の実績値。分割後の株数ベースに換算すると72.50円に相当する(IR BANK集計)。
  • 2026/03:2025年4月1日付の株式分割後の実績値。分割前基準の2025年3月期(145.00円)と単純比較すると45%の減配に見えるが、分割調整後ベースでは72.50円→80.00円で実質+10.3%の増配(IR BANK集計)。配当金総額でも290,296百万円→304,566百万円と+4.9%増えており、株数の変化を除いても支払総額は増えている。
  • 2027/03:2026年8月7日の第1四半期決算時点でも据え置き。KDDI公式サイトが掲げる「増配23期連続」の記録が途切れない計画。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」(生の数値)。分割調整後の推移は第4節を参照

上表の年間配当は決算短信に記載された生の数値です。2025年3月期の145.00円は2025年4月の株式分割前の株数を基準とした金額で、2026年3月期の80.00円は分割後の株数を基準とした金額のため、両者を単純比較すると45%の減配に見えますが、第4節で見たとおり分割調整後ベースでは実質+10.3%の増配です。

2027年3月期の会社予想配当は84.00円で、期初(2026年5月12日の通期決算短信)公表時点から2026年8月7日のQ1決算時点まで金額に変更はありません。決算短信からは2025年3月期・2026年3月期それぞれの期初予想配当額を確認できなかったため、上表の「期初予想」欄は2027年3月期のみ埋めています。

会社予想ベースの配当利回りは2.82%(株価2,981円、年間配当84.00円ベース)です。この利回りは会社が明示している予想にもとづくもので、そのまま参考にできます。

6. 会社の現状と直近の動き

2026年8月7日に発表された2027年3月期第1四半期(4〜6月)決算では、収益1,487,316百万円(前年同期比+5.1%)・営業利益314,248百万円(同+21.1%)・税引前利益308,466百万円(同+20.2%)・親会社所有者帰属当期利益195,465百万円(同+22.1%)・EPS51.34円(同+27.6%)という実績でした。増収の伸び以上に利益が伸びている点が、この四半期の特徴です。

財政状態は2026年6月末時点で総資産18,854,231百万円と、2026年3月末の19,063,364百万円からわずかに減少しました。自己資本比率は26.6%から27.2%へやや回復し、親会社所有者帰属持分は5,127,098百万円となっています。第3節で見た「自己資本比率が1年で30.1%から26.6%へ低下した」という流れの中では、直近四半期はやや持ち直した形です。

会社は同日、通期(2027年3月期)の業績予想(収益6,410,000百万円・営業利益1,210,000百万円・親会社所有者帰属当期利益731,000百万円・EPS196.29円)、配当予想(年間84.00円)のいずれも修正しませんでした。増収増益のQ1実績にもかかわらず通期予想を据え置いたのは、第1四半期の好調がそのまま通期に単純に4倍されるとは会社自身が見ていないか、あるいは保守的な運営方針によるものと考えられますが、会社がその理由を明示的に説明しているわけではありません。

7. 業界とセクターの状況

通信セクターは、電気通信事業法などの規制の下で料金・設備投資・相互接続の条件が一定程度コントロールされる、公共インフラに近い性格を持ちます。国内の人口動態を背景に契約者数そのものの伸びしろは限られる一方、通信サービスは生活・企業活動に不可欠なため、需要そのものが景気変動の影響を受けにくく、キャッシュフローの安定性と株主還元の継続性につながりやすい構造です。KDDIの増配23期連続という実績は、この構造的な安定性を裏付けています。

一方で、契約者数の伸びが頭打ちに近い国内通信市場だけでは成長を続けにくいため、通信各社は金融・エネルギー・データセンターなど非通信領域への投資を拡大しています。KDDIにとってのau PAY・auじぶん銀行(金融)、auでんき(エネルギー)への展開は、この業界共通の流れに沿った動きです。個社の努力で通信料金や規制の枠組みを変えられない一方、非通信領域への投資規模や配分は各社の経営判断に委ねられており、この記事で扱った配当政策や自己資本比率の変化は、そうした経営判断の結果の一部として表れています。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年3月期第1四半期決算は、本記事の執筆時点(2026年8月8日)ですでに2026年8月7日に発表済みです。第1節・第6節の内容がその実績です。表には、まだ発表日が確定していない第2四半期以降の決算のみを記載しています。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬2027年3月期 第2四半期(中間)決算両面

配当予想(84.00円)が据え置かれるか増額修正されるか、自己資本比率が2026年6月末の27.2%からさらに回復するかを確認する最初の機会。

随時自己株式取得の進捗上振れ

自己株式取得はIR BANK集計で2025年3月期の約3,000億円から2026年3月期は約4,000億円へ拡大している。配当と合わせた株主還元総額がさらに拡大するかが焦点。

中長期非通信領域(金融・エネルギー等)の収益寄与両面

au PAY・auじぶん銀行・auでんきなど非通信領域の定量的な収益貢献は一次資料から確認できていない。今後の開示でセグメント別の実態が見えてくるかが焦点。

中長期自己資本比率の推移両面

2025年3月末30.1%から2026年3月末26.6%への低下要因が特定できていない。低下傾向が再度強まるか、2026年6月末の27.2%を起点に回復が続くかで財務健全性の評価が変わる。

10. 想定されるリスク

自己資本比率がさらに低下するリスク。 2025年3月末の30.1%から2026年3月末には26.6%まで低下しており(2026年6月末は27.2%へやや持ち直し)、この低下の要因は一次資料からは特定できていません。要因が特定できないまま低下傾向が再び強まれば、財務レバレッジの余裕がさらに薄くなる可能性があります。

営業利益・純利益の増加ペースが鈍化するリスク。 Q1は営業利益+21.1%・純利益+22.1%という高い伸びでしたが、通期会社予想はそれぞれ+10.1%・+3.4%にとどまります。過去には2024年3月期に営業利益が▲12.9%落ち込んだ実績もあり、四半期ごとの伸び率にはばらつきが出る可能性があります。

バリュエーションが既に相応の期待を織り込んでいるリスク。 現在のPER15.19倍・PBR2.24倍は、2010年以降のレンジ(PER6.81〜18.04倍、PBR0.83〜2.54倍)の上限に近い水準です。増収増益や増配基調が既に株価へ織り込まれている可能性があります。

規制業種ゆえの料金・制度リスク。 電気通信事業法などの枠組みの見直し次第では、通信料金や事業運営の自由度に影響が及ぶ可能性があります。これは個社の努力では変えられない外部要因です。

11. まとめ:どう判断材料にするか

KDDIは、2027年3月期第1四半期の収益・営業利益・税引前利益・純利益がいずれも二桁を含む伸びを示した増収増益の決算でした。配当については、2025年4月の株式分割によって決算短信の生の数値だけを見ると45%の減配に見えますが、分割調整後ベースでは実質+10.3%の増配であり、増配23期連続の記録も続いています。PER15.19倍・PBR2.24倍という水準は、過去レンジと比べるとやや上寄りにあります。

判断の分かれ目は、増収増益・増配基調という業績面の実績を評価するか、自己資本比率の低下(30.1%→26.6%、要因未特定)とバリュエーションの上振れをリスクとして重く見るかです。

増収増益・増配基調を重視するなら、Q1の高い伸び率と据え置かれた通期予想・配当予想は前向きな材料として読めます。一方、自己資本比率の低下やバリュエーションの水準を重く見るなら、現在の株価には既に相応の期待が織り込まれており、財務体質の変化が今後どう推移するかを見極める必要があります。

次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期決算です。営業利益・純利益の伸び率がQ1の水準(+21.1%/+22.1%)からどう推移するか、自己資本比率が2026年6月末の27.2%からさらに回復するかを確認してください。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 会社が2027年3月期の配当予想(年間84.00円)を減額修正した場合。分割調整後ベースで確立してきた「増配23期連続」の記録が途切れることを意味する。
  • 自己資本比率が2026年6月末の27.2%からさらに大きく低下し、2025年3月末の30.1%からの低下傾向が再び強まった場合。資金調達コストの上昇や格付け見直しなど、財務健全性への懸念が具体的な形で表面化すれば見立ての前提が崩れる。
  • 2027年3月期第2四半期以降、営業利益・純利益の前年同期比増加率がQ1の+21.1%/+22.1%から大きく減速し、通期会社予想の伸び率(営業利益+10.1%・純利益+3.4%)を下回るペースになった場合。
  • 自己株式取得の規模が縮小し、配当と合わせた株主還元の総額が減少に転じた場合。増配基調と並行して拡大してきた株主還元姿勢の転換を意味する。

参考文献・引用元

  1. 01
    KDDI株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月7日開示。連結経営成績(収益・営業利益・税引前利益・親会社所有者帰属当期利益・EPS、前年同期比)、連結財政状態(総資産・自己資本比率・親会社所有者帰属持分)、2027年3月期通期業績予想・配当予想(据え置き)を参照。 / 2026/08/07 開示

  2. 02
    KDDI株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年5月12日開示。2026年3月期の通期実績(収益・営業利益・税引前利益・純利益・ROE・売上高営業利益率)、財政状態の期末比較、キャッシュ・フローの状況、配当の状況(2025・2026年3月期実績、2027年3月期予想)を参照。 / 2026/05/12 開示

  3. 03
    IR BANK「KDDI(9433) 決算まとめ」

    二次情報。2022年3月期〜2024年3月期の通期業績(売上高・営業利益・純利益・EPS)は決算短信に直接の記載が無いためIR BANK集計の概算値を参照した。2025年3月期以降は決算短信の実数と整合することを確認済み。

  4. 04
    IR BANK「KDDI(9433) 配当金の推移」

    二次情報。2025年4月の株式分割(1株を2株に)の調整後ベースでの配当推移、自己株式取得額の推移を参照。

  5. 05
    IR BANK「KDDI(9433)」

    二次情報。株価・PER/PBRの過去レンジ(2010年以降)との整合確認に用いた(本文の数値は決算短信から独自に計算したものを使用)。