セクター比較通信2027/3期 Q1

通信3社(NTT・KDDI・ソフトバンク)比較 — 利回りの順位と収益性の順位は逆になる

2026/08/22 公開2026/08/22 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

この記事の結論

  • 2026年8月上旬時点の予想配当利回りはソフトバンク3.85% > NTT 3.40% > KDDI 2.82%の順だが、2026年3月期の営業利益率はKDDI 18.1% > ソフトバンク14.8% > NTT 11.8%と、順位がほぼ逆になっている。利回りの高さは事業の稼ぐ力の順位を表していない。
  • 逆転の出どころは配当性向と自己資本の厚みの差にある。配当性向はソフトバンク75.8%に対しNTT 44.6%・KDDI 42.8%で、ソフトバンクだけが利益の4分の3を配当に回している。自己資本比率もソフトバンク15.1% < NTT 20.8% < KDDI 26.6%の順で最も薄い。
  • ソフトバンクのROE 19.32%は3社で最高だが、これは自己資本が薄いことの裏返しでもある。同じ利益でも自己資本が小さければROEは高く出るため、ROEの高さを収益性の高さと読み替えることはできない。
  • NTTの自己資本比率20.8%は、2025年3月末の34.0%から1年余りで低下したもので、NTTデータグループへの株式公開買付(1兆3,472億円、借入2兆7,772億円で実施)が背景にある。3社のなかで唯一、財務構造が直近で大きく動いた会社である。
  • 3社とも3月期決算で、権利確定月は中間が9月末・期末が3月末で共通する。100株あたりの年間配当(会社予想・税引前)はNTT 540円、KDDI 8,400円、ソフトバンク880円で、必要な投資額が大きく異なる点は利回りだけを見ると見落としやすい。
目次11項目
  1. 1. 通信セクターは何で稼いでいるか
  2. 2. 対象銘柄と、なぜこの3社か
  3. 3. 横比較 — 規模と収益性
  4. 4. どこで差がつくのか — 利回りの順位と収益性の順位は逆になる
  5. 5. 横比較 — 財務の安全性
  6. 6. 横比較 — 株主還元
  7. 7. このセクターで構造的に決まっていること
  8. 8. セクター全体に効く外部要因
  9. 9. 各社の詳細
  10. 10. このセクターを見るときのリスク
  11. 11. まとめ — 何を重視するかで見る銘柄が変わる

1. 通信セクターは何で稼いでいるか

国内の通信キャリアは、契約者から毎月受け取る通信料が収益の土台という点で共通しています。契約が積み上がるほど収益が安定する一方、基地局・伝送路といった設備を先に用意しなければサービスを提供できないため、先行投資が重く、その資金を借入で賄う度合いが高いという構造も共通します。

この「安定した収入」と「重い設備投資」の組み合わせが、通信3社を高配当銘柄として見られやすくしている一方、財務レバレッジ(自己資本に対してどれだけ借りているか)の差を生む原因にもなっています。本記事が最終的に扱うのは、その差です。

近年は3社とも通信以外(金融・決済・法人IT・エネルギーなど)の比重を高めており、「通信会社」という括りだけでは損益の動きを説明できなくなりつつある点も、比較するうえで前提になります。

2. 対象銘柄と、なぜこの3社か

当サイトで分析記事を公開している通信セクターの銘柄は次の3社です。いずれも東証プライム上場・3月期決算で、決算期が揃っているため横比較しやすい組み合わせになっています。

コード会社名立ち位置
9432日本電信電話(NTT)国内最大手・持株会社
9433KDDI収益性で先行
9434ソフトバンク高利回り・高レバレッジ

楽天モバイルを擁する楽天グループ(4755)は含めていません。 当サイトにまだ分析記事が無く、一次情報を確認していない銘柄を比較表に並べないためです。また、ソフトバンクグループ(9984)は投資持株会社であり、携帯キャリア事業を中核とする9434とは事業モデルが異なるため対象外としています。

指標はすべて各社の分析記事から引いています。 その記事はいずれも決算短信を一次情報としており、出典は本記事末尾に記載しました。株価に連動する指標のスナップショット時点は、NTTとKDDIが2026年8月7日、ソフトバンクが2026年8月10日です。

3. 横比較 — 規模と収益性

まず2026年3月期(通期実績)の損益を並べます。単位は百万円です。

NTT(9432)KDDI(9433)ソフトバンク(9434)
売上14,409,1216,071,9157,038,680
営業利益1,706,2211,099,1251,042,576
純利益1,037,032707,112550,759
営業利益率11.8%18.1%14.8%
純利益率7.2%11.7%7.8%

読み取れることは2つです。

NTTの売上はKDDIの約2.4倍ですが、営業利益の差は約1.55倍にとどまります。 規模の大きさがそのまま利益に結びついていません。持株会社としてグループ全体を抱えるNTTと、通信事業への集中度が高いKDDIとで、利益率の出方が違うことがここに表れています。

3社のなかで売上が最小のKDDIが、営業利益率・純利益率ともに最も高いという点も押さえておく必要があります。後の節で見るように、配当利回りの順位はこれと逆になります。

4. どこで差がつくのか — 利回りの順位と収益性の順位は逆になる

ここが本記事の中心です。株価に連動する指標を並べると、収益性の順位と利回りの順位が入れ替わります。

NTT(9432)KDDI(9433)ソフトバンク(9434)
株価159円2,981円228.4円
予想配当利回り3.40%2.82%3.85%
配当性向44.6%42.8%75.8%
自己資本比率20.8%26.6%15.1%
ROE9.94%14.0%19.32%
ROA(純利益ベース)2.06%3.71%2.98%
PER13.15倍15.19倍19.50倍
PBR1.31倍2.24倍3.75倍

営業利益率が最も高いKDDIの利回りが最も低く、営業利益率が2番手のソフトバンクの利回りが最も高い。 この逆転は、次の2つで説明がつきます。

1つ目は配当性向です。 ソフトバンクは利益の75.8%を配当に回しており、NTT 44.6%・KDDI 42.8%のおよそ1.7倍の水準です。同じ利益を稼いでいても、配当に回す割合が高ければ利回りは高く出ます。裏を返すと、利益が減ったときに配当を維持する余地はソフトバンクが最も小さいということでもあります。

2つ目は自己資本の厚みです。 自己資本比率はソフトバンク15.1% < NTT 20.8% < KDDI 26.6%の順で、ソフトバンクが最も薄くなっています。ROE 19.32%という3社最高の数字も、この薄さと表裏の関係にあります。ROEは利益を自己資本で割った値なので、分母が小さければ同じ利益でも高く出るためです。実際、総資産に対する利益率であるROAで見ると順位は変わり、順位はKDDI 3.71% > ソフトバンク2.98% > NTT 2.06%となります。

ROEとROAの差が何を意味するかはROEとROA — 同じ会社でも数字が違って見える理由で扱っています。ROEの高さを「効率よく稼いでいる」と読み替えると、財務レバレッジの高さを収益力と取り違えることになります。

なお、PERPBRはNTTが3社で最も低い水準です。割安に見える理由は次の節の財務構造と切り離せません。

5. 横比較 — 財務の安全性

自己資本比率の推移を見ると、NTTだけが直近で大きく動いています。

2025年3月末2026年3月末2026年6月末
NTT(9432)34.0%20.8%20.8%
KDDI(9433)30.1%26.6%
ソフトバンク(9434)17.0%16.0%15.1%

NTTの自己資本比率は1年余りで34.0%から20.8%へ低下しました。 背景にあるのはNTTデータグループへの株式公開買付(1兆3,472億円)で、これを2兆7,772億円の借入で実施しています。2027年3月期第1四半期の金融費用が前年同期比+44.3%(492億円→711億円)と急増していることとも整合します。

この財務構造の変化は、NTTのPER 13.15倍・PBR 1.31倍という3社で最も低い水準と無関係ではありません。 増収増益で着地した第1四半期に対して、通期予想は売上収益+4.5%・営業利益+0.2%の増収増益ながら当期利益は-5.5%の減益が据え置かれています。

一方ソフトバンクは、もともと自己資本比率が15〜17%台で推移している会社です。有利子負債は2026年6月末で7,421,354百万円、D/Eレシオは2.55倍でした。NTTのように直近で急変したのではなく、通信インフラ投資を借入で賄う財務方針が継続している、という読み方になります。

ここには当サイト側の制約があります。 3社のうち有利子負債とD/Eレシオを記事に記載しているのはソフトバンクだけで、NTTとKDDIについては自己資本比率までしか揃っていません。そのため、負債の絶対額での横比較はできていません。 次回の更新時に3社そろえることを課題として残します。

6. 横比較 — 株主還元

2027年3月期の会社予想にもとづく配当は次のとおりです。3社とも3月期決算で、権利確定は中間が9月末・期末が3月末で共通します。

NTT(9432)KDDI(9433)ソフトバンク(9434)
1株配当(予想)5.40円84.00円8.8円
中間 / 期末2.70円 / 2.70円42.00円 / 42.00円4.40円 / 4.40円
100株あたり(税引前)540円8,400円880円
予想配当利回り3.40%2.82%3.85%

利回りが同じでも必要な投資額はまったく違います。 1株あたりの株価がNTT 159円・KDDI 2,981円・ソフトバンク228.4円と大きく異なるためで、100株(1単元)を買うのに必要な金額はKDDIがNTTの約19倍になります。利回りだけを並べると、この違いは見えません。

配当の履歴には各社の性格が出ています。NTTは分割調整後ベースで2022年3月期の4.60円から2027年3月期予想の5.40円まで5期連続で増配しており、期初予想からの減額修正は一度もありません。ソフトバンクは逆に、2022年3月期から2026年3月期まで5期連続で1株8.6円の据え置きが続き、2027年3月期に8.8円へ5期ぶりに増額されました。増額幅は+2.3%です。これを還元姿勢の転換と見るか、小幅な調整と見るかは分かれます。

7. このセクターで構造的に決まっていること

個社の努力では変えにくい制約が3つあります。

契約者数の頭打ち。 国内の携帯電話契約は普及が一巡しており、契約数の純増だけで収益を伸ばす余地は限られます。3社が金融・決済・法人ITなど通信以外の領域を伸ばそうとしているのは、この制約への対応です。

設備投資の重さ。 通信品質の維持と次世代規格への対応には継続的な投資が必要で、支出を止めるという選択肢が実質的にありません。これが借入依存度を押し上げ、金利上昇局面では金融費用として損益に効いてきます。

料金への政策的な関与。 携帯料金は過去に政府の値下げ要請が業績に影響した経緯があり、価格決定が完全に各社の裁量にあるわけではありません。

これらはいずれもセクター全体に等しく効くため、3社の優劣を分ける要因にはなりません。 差がつくのは、この共通の制約のもとで、どれだけ利益率を保ち、どれだけの財務レバレッジを取り、利益のどれだけを配当に回すか、という選択のほうです。

8. セクター全体に効く外部要因

金利の動向が3社に共通して効きます。いずれも借入依存度が高いため、金利上昇は金融費用の増加として損益に現れます。自己資本比率が最も薄いソフトバンクと、直近で借入を大きく増やしたNTTは、この影響を受けやすい位置にあります。

非通信領域の採算も共通の論点です。決済・金融事業は先行投資が続く期間が長く、セグメント別の開示でこれらが黒字化しているかどうかが、各社の利益率の差につながります。

次の決算発表は3社とも2026年11月上旬(第2四半期・中間期)が見込まれます。中間期は通期業績予想と配当予想の修正が出やすいタイミングです。

9. 各社の詳細

指標の背景と、その会社固有の論点は個別の記事で扱っています。

日本電信電話(9432)— 増収増益でも通期減益予想、自己資本比率20.8%の背景 第1四半期は増収増益ながら通期は減益予想が据え置かれています。その背景にある財務構造の変化を扱っています。→ 銘柄ページ

KDDI(9433)— 純利益+22.1%の増収増益、分割後「配当45%減」に見える罠 株式分割の影響で配当が大幅に減ったように見える読み方の問題を扱っています。→ 銘柄ページ

ソフトバンク(9434)— 9984と別会社、2027年3月期Q1増収増益と5期ぶり増配を読む 投資持株会社のソフトバンクグループ(9984)との違いと、5期ぶりの増配の評価を扱っています。→ 銘柄ページ

10. このセクターを見るときのリスク

高い利回りが減配で失われる可能性。 配当性向が高い会社ほど、利益が減ったときに配当を維持する余地が小さくなります。本記事の比較では、その余地が最も小さいのはソフトバンクです。

金利上昇が3社すべてに効くこと。 借入依存度が高い業種なので、金利が上がれば金融費用として損益を押し下げます。分散のつもりで通信3社を並べて持っても、この要因に対しては同じ方向に動きます。

指標が特定時点のスナップショットであること。 本記事の株価連動指標は2026年8月7日および8月10日時点のもので、株価が動けば利回り・PER・PBRの順位は変わります。

当サイト側の情報の欠け。 前述のとおり、有利子負債とD/Eレシオが揃っているのはソフトバンクのみです。負債の絶対額での比較は本記事ではできていません。

11. まとめ — 何を重視するかで見る銘柄が変わる

3社の優劣を一列に並べることはできません。指標の順位が軸によって入れ替わるためです。

何を重視するか数字の上で該当するのは
事業の稼ぐ力(営業利益率・ROA)KDDI
表面的な配当利回りの高さソフトバンク
財務の厚み(自己資本比率)KDDI
株価指標の水準(PER・PBRの低さ)NTT
増配の継続実績NTT(5期連続増配・減額修正なし)

判断の分かれ目は、ソフトバンクの高い利回りを「配当性向が高いだけ」と見るか、「還元方針が明確」と見るか、そしてNTTの低いPER・PBRを「財務悪化を織り込んだ結果」と見るか、「一時的な低下で見直される余地がある」と見るかの2点に集約されます。本記事はどちらが正しいかを決めるものではなく、判断に必要な数字を並べることを目的としています。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • ソフトバンクの配当性向が低下し、増配が利益成長に裏づけられるようになった場合。本記事は「利回りの高さが配当性向の高さから来ている」という整理をしているが、その前提が崩れる。
  • NTTの自己資本比率が回復に転じ、金融費用の増加が一巡した場合。財務構造の変化を「直近で大きく動いた」と位置づけた整理が過去の話になる。
  • KDDIの営業利益率が低下し、3社の収益性の順位が入れ替わった場合。本記事の比較の軸そのものが成り立たなくなる。
  • 株価が大きく動いて利回り・PER・PBRの順位が変わった場合。本記事の指標は2026年8月7日(NTT・KDDI)および8月10日(ソフトバンク)時点のスナップショットであり、相場が動けば結論の前提も変わる。

よくある質問

通信3社(NTT・KDDI・ソフトバンク)で配当利回りが一番高いのはどれですか?
2026年8月上旬時点の予想配当利回りは、ソフトバンク3.85%、NTT 3.40%、KDDI 2.82%の順です。ただし利回りの高さは事業の稼ぐ力の順位とは一致しません。ソフトバンクの配当性向は75.8%とNTT 44.6%・KDDI 42.8%を大きく上回っており、利益の4分の3を配当に回すことで高い利回りが成立しています。
通信3社の株を100株買うと、配当はいくらもらえますか?
2027年3月期の会社予想にもとづく1株配当は、NTTが5.40円、KDDIが84.00円、ソフトバンクが8.8円です。100株あたりの年間配当(税引前)はそれぞれ540円、8,400円、880円になります。3社とも3月期決算で、権利確定月は中間が9月末・期末が3月末です。1株あたりの株価が大きく違うため、同じ利回りでも必要な投資額は大きく異なります。
ソフトバンク(9434)とソフトバンクグループ(9984)は同じ会社ですか?
別の上場会社です。9434は携帯キャリア事業を中核とする事業会社で、本記事が比較対象にしているのはこちらです。9984は投資持株会社で、投資先の株式価値の変動が業績を左右するため、事業モデルも配当方針も根本的に異なります。
ROEが一番高いソフトバンクが、一番効率よく稼いでいるということですか?
そうとは限りません。ROEは利益を自己資本で割った値なので、自己資本が薄いほど同じ利益でも高く出ます。ソフトバンクの自己資本比率は15.1%と3社で最も低く、ROE 19.32%はその裏返しでもあります。事業そのものの効率を見るなら、総資産に対する利益率(ROA)や営業利益率を併せて確認する必要があります。

参考文献・引用元

  1. 01
    日本電信電話株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月6日開示。売上収益・営業利益・親会社所有者帰属当期利益・自己資本比率・配当の状況・通期業績予想を参照。本記事のNTTの数値は、この短信を一次情報とする分析記事(9432-2027q1)から引いている。 / 2026/08/06 開示

  2. 02
    KDDI株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月7日開示。売上高・営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益・自己資本比率・配当の状況・通期業績予想を参照。本記事のKDDIの数値は、この短信を一次情報とする分析記事(9433-2027q1)から引いている。 / 2026/08/07 開示

  3. 03
    ソフトバンク株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月4日開示。売上高・営業利益・親会社の所有者に帰属する四半期利益・自己資本比率・有利子負債・配当の状況・通期業績予想(売上高7兆5,000億円・営業利益1兆1,000億円)を参照。本記事のソフトバンクの数値は、この短信を一次情報とする分析記事(9434-2027q1)から引いている。 / 2026/08/04 開示