四半期分析通信2027/3期 Q1

ソフトバンク(9434)は9984と別会社、2027年3月期Q1増収増益と5期ぶり増配を読む

2026/08/10 公開2026/08/10 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

ソフトバンク株式会社

東証プライム 9434 ・ 3月期決算

2026/08/10 時点

株価

228.4円

時価総額

109,672億円

配当利回り

3.85%

年間8.8円

PER

19.5倍

PBR

3.75倍

ROE

19.3%

ROA

3.0%

純利益ベース

自己資本比率

15.1%

配当性向

75.8%

有利子負債

74,214億円

D/Eレシオ

2.55倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は売上高が前年同期比+9.4%、営業利益が同+4.0%、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同+3.3%と増収増益で着地し、いずれも過去最高を更新した。コンシューマ・エンタープライズ・ディストリビューション・メディア&EC・ファイナンスの5segmentすべてが増収し、特にPayPay等を含むファイナンス事業と非支配持分側の増益が大きい。
  • 配当予想は2022年3月期から2026年3月期まで5期連続で1株8.6円のまま据え置かれていたが、2027年3月期は8.8円へ5期ぶりに増額された。これを株主還元姿勢の転換と見るか、+2.3%という増額幅を小幅な調整と見るかは分かれる。
  • 「ソフトバンク」で検索してこの記事にたどり着いた場合、投資持株会社のソフトバンクグループ株式会社(9984)と混同していないか改めて確認してほしい。9434は携帯キャリア事業を中核とする事業会社であり、投資先の株式価値変動が業績を左右する投資持株会社の9984とは事業モデル・配当方針が根本的に異なる別の上場銘柄である。
  • 親会社所有者持分比率は2026年6月末時点で15.1%、有利子負債は同時点で7,421,354百万円・D/Eレシオ2.55倍と、通信インフラ投資を背景に負債活用度の高い財務構造にある。これを通信キャリアとして通常の姿と見るか、財務面の弱さと見るかで判断が分かれる。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 「ソフトバンク」9434と9984は別の会社
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

ソフトバンク株式会社(9434)は、2026年8月10日時点で株価228.4円・予想PER19.50倍・実績PBR3.75倍という水準にあります。発行済株式数が約480億株と非常に多いため、EPS(予想11.71円)やBPS(実績60.87円)は1株あたりの絶対値としては小さく見えますが、これは株数の多さによるものであり、企業規模の小ささを意味するものではありません。

2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は、売上高が前年同期比+9.4%の1,814,722百万円、営業利益が同+4.0%の302,298百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同+3.3%の150,070百万円と、いずれも過去最高を更新する増収増益で着地しました。コンシューマ・エンタープライズ・ディストリビューション・メディア&EC・ファイナンスの5segmentすべてが増収です。

配当については、2022年3月期から2026年3月期まで5期連続で1株8.6円に据え置かれてきましたが、2027年3月期の会社予想では8.8円へと5期ぶりに増額されました。予想配当利回りは3.85%です。

この記事では、この決算の中身に加えて、検索で最も混同されやすいポイント――投資持株会社であるソフトバンクグループ株式会社(9984)との違い――を§4で整理します。

2. 会社概要とビジネスモデル

ソフトバンク株式会社は、携帯電話サービスを中核とする通信キャリア事業会社です。事業は大きく5つのsegmentに分かれます。個人向け携帯電話サービスを提供するコンシューマ事業、法人向けICTソリューションを手がけるエンタープライズ事業、携帯端末等の卸売を担うディストリビューション事業、Yahoo!やLINEを含むメディア&EC事業、そしてPayPayを中心とするファイナンス事業です。

2027年3月期第1四半期は、この5segmentすべてが増収となりました。特にファイナンス事業とエンタープライズ事業が業績を牽引した一方、メディア&EC事業のセグメント利益だけは、この第1四半期において前年同期比-5.7%の減益でした。全体としては増収基調にあるものの、事業ごとの明暗も存在します。

強みと弱みの整理

強み

  • 増収増益基調と過去最高の更新

    2027年3月期第1四半期は売上高+9.4%・営業利益+4.0%・親会社所有者帰属利益+3.3%で、いずれも過去最高を更新しました。5segmentすべてが増収です。

  • 非支配持分側(PayPay・LINEヤフー等)の高い増益率

    非支配持分帰属利益は前年同期比+39.0%の51,400百万円。決算短信によれば主因はPayPay・LINEヤフーグループの増益で、グループ全体の収益基盤が広がっています。

  • 5期ぶりの増配

    2022年3月期から2026年3月期まで1株8.6円で据え置かれていた配当が、2027年3月期予想では8.8円(+2.3%)へ増額されました。

弱み

  • 親会社所有者持分比率の低さ

    2026年6月末時点で15.1%(2026年3月末は16.0%)にとどまります。通信インフラ投資を背景に、負債を活用した資本構成になっています。

  • 有利子負債の増加とD/Eレシオの上昇

    有利子負債は2026年3月末6,484,582百万円から2026年6月末7,421,354百万円へ3か月で+14.4%増加し、D/Eレシオも2.19倍から2.55倍に上昇しました。

  • メディア&EC事業の減益

    2027年3月期第1四半期は、メディア&EC事業のセグメント利益だけが前年同期比-5.7%の減益でした。5segmentすべてが好調というわけではありません。

3. 業績の推移

ソフトバンクはIFRS(国際財務報告基準)を採用しており、日本基準の「経常利益」に相当する区分がありません。そのため以下の表では経常利益の列を省き、売上高・営業利益・純利益の3段階で示しています。

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
002,000,000500,0004,000,0001,000,0006,000,0001,500,0008,000,0002,000,0002022/032023/032024/032025/032026/03単位:百万円
自己資本比率(%)0102015.015.215.317.016.0
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2022/035,690,000970,000517,10015.0%
2023/035,910,0001,060,000531,40015.2%
2024/036,080,000880,000489,10015.3%
2025/036,540,000990,000526,10017.0%
2026/037,038,6801,042,576550,75916.0%
単位:百万円。出典:決算短信(2026年3月期・2027年3月期第1四半期)、およびIR BANK集計による過年度実績

読み取れることは3つあります。

売上高は5期を通じて一貫して増収が続いている。 2022年3月期の5,690,000百万円から2026年3月期には7,038,680百万円まで拡大し、直近の2026年3月期も前期比+7.6%でした。減収に転じた期は1期もありません。

営業利益・純利益は一本調子ではない。 2024年3月期には営業利益が前期比-17.0%の880,000百万円、純利益が同-8.0%の489,100百万円まで落ち込みました。その後は営業利益が2025年3月期+12.5%、2026年3月期+5.4%、純利益が2025年3月期+7.6%、2026年3月期+4.7%と回復基調にあります。この2024年3月期の落ち込みの具体的な要因は、本資料の範囲では特定できませんでした。

親会社所有者持分比率は上下しながら緩やかに切り上がっている。 2022年3月期の15.0%から2025年3月期には17.0%まで上昇した後、2026年3月期は16.0%へやや低下しています。2026年6月末時点ではさらに15.1%まで下がっており、この水準の推移は§6・§10で改めて扱います。

4. 「ソフトバンク」9434と9984は別の会社

「ソフトバンク」で検索してこの記事にたどり着いた読者の中には、投資持株会社であるソフトバンクグループ株式会社(9984、東証プライム)を思い浮かべている方も少なくないはずです。まず整理しておくべきは、9434と9984は別の上場銘柄だということです。

ソフトバンク株式会社(9434、本記事の対象)は、携帯電話サービスを中核とする事業会社です。コンシューマ・エンタープライズ・ディストリビューション・メディア&EC・ファイナンスの5segmentから成る通信キャリアであり、配当利回りの高さから個人投資家に「定番の高配当株」として選ばれることが多い銘柄です。2027年3月期の予想配当利回りは3.85%で、2022年3月期から2026年3月期までは1株8.6円のまま据え置かれ、2027年3月期にようやく8.8円へ増額されました。

一方、ソフトバンクグループ株式会社(9984)は、孫正義氏が率いる投資持株会社です。半導体設計大手のArmや、ソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとする投資ファンドを保有し、投資先の株式価値の変動が業績・株価に直結する事業モデルを持ちます。9984は9434の親会社(大株主)にあたりますが、上場銘柄としては別個の会社であり、事業内容・収益構造・配当方針はいずれも大きく異なります。

9434は通信インフラという比較的安定したキャッシュフローを持つ事業会社であるのに対し、9984は投資先の評価損益によって業績が大きく振れる投資持株会社です。この事業モデルの違いから、株価の値動きの性質も異なる傾向があるとされ、投資家の間で両銘柄が混同されることもしばしば指摘されます。ただし、この点を具体的な数値で裏付けたデータは本記事では確認できていません。

投資判断にあたっては、まず自分が調べているのがどちらの銘柄かを取り違えないことが最初の一歩になります。「配当利回りが高い通信株」を探しているなら9434、「孫正義氏が率いる投資会社」を調べたいなら9984、というのが両者を見分ける最も簡単な目印です。

5. 配当の推移

会社が開示している2027年3月期の配当予想は、中間4.40円・期末4.40円の合計8.80円です。前期(2026年3月期)の実績配当8.60円と比べると、期初の予想時点ですでに0.20円(+2.3%)の増配を見込んでいます。株価228.4円に対する予想配当利回りは3.85%です。

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2023/038.6円8.6円0円76.4%
2024/038.6円8.6円0円83.4%
2025/038.6円8.6円0円
2026/038.6円8.6円0円75.8%
2027/03会社予想8.8円8.8円
  • 2025/03:配当性向は出典データで欠落しており不明。
  • 2026/03:2022年3月期から5期連続で1株8.6円の据え置き。
  • 2027/03:5期ぶりの増配(8.6円→8.8円、+2.3%)。中間4.40円・期末4.40円の会社予想。2026年8月4日発表の第1四半期決算でも据え置かれている。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の実績・配当性向

この表から読み取れるのは、2022年3月期から2026年3月期までの5期連続で、年間配当が1株8.6円のまま据え置かれてきたという点です。増配でも減配でもない「横ばい」を5期続けたのち、2027年3月期にようやく8.8円へ引き上げられました。増額幅自体は+2.3%とわずかであり、これを「株主還元姿勢の明確な転換」と見るか、「小幅な調整にとどまる」と見るかは意見が分かれます。

配当性向は2023年3月期76.4%、2024年3月期83.4%、2026年3月期75.8%と、75〜83%程度の高い水準で推移しています(2025年3月期は出典データで配当性向の記載が欠落しており不明です)。配当性向がすでに高水準にあることを踏まえると、今後さらに配当を積み増すペースは、純利益そのものの伸びに大きく依存すると考えられます。

6. 会社の現状と直近の動き

2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、売上高1,814,722百万円(前年同期比+9.4%)、営業利益302,298百万円(同+4.0%)、税引前四半期利益281,165百万円(同+4.0%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益150,070百万円(同+3.3%)でした。調整後EBITDAは508,100百万円(同+7.9%)です。

一株当たり利益(EPS)は基本3.09円・希薄化後3.07円で、前年同期(3.00円/2.97円)から拡大しています。ここでもEPSの絶対値が数円という小さな水準にとどまるのは、発行済株式数が約480億株という大きさによるものです。

注目すべきは非支配持分帰属利益で、前年同期比+39.0%の51,400百万円でした。決算短信によれば、この主因はPayPay・LINEヤフーグループの増益です。ソフトバンク自身の持分に加え、こうした子会社の少数株主持分側の増益も、グループ全体の収益基盤拡大を示す材料といえます。

セグメント別には、コンシューマ・エンタープライズ・ディストリビューション・メディア&EC・ファイナンスの5segmentすべてで増収となりました。ファイナンス事業とエンタープライズ事業が牽引役である一方、メディア&EC事業のセグメント利益だけは、この第1四半期において前年同期比-5.7%の減益でした。

財務面では、2026年6月末の総資産は19,342,584百万円、資本合計4,638,510百万円、親会社の所有者に帰属する持分は2,912,232百万円で、持分比率は15.1%です。2026年3月末(総資産18,502,175百万円、持分比率16.0%)と比べると、総資産・持分とも増加していますが、比率としては15.1%へやや低下しています。

有利子負債は2026年3月末の6,484,582百万円から2026年6月末には7,421,354百万円へ、3か月で+14.4%増加しました。これに伴いD/Eレシオ(有利子負債÷親会社所有者持分)も2.19倍から2.55倍に上昇しています。この3か月間の増加が具体的に何によるものか(設備投資の実行タイミング、資金調達の前倒しなど)は、本資料の範囲では特定できませんでした。

2027年3月期の通期予想は、売上高7,500,000百万円(+6.6%)・営業利益1,100,000百万円(+5.5%)・親会社所有者帰属当期利益560,000百万円(+1.7%)・EPS11.54円で据え置かれています。Q1時点の親会社所有者帰属利益150,070百万円は、この通期予想に対して約26.8%の進捗率です。単純に4倍すれば通期予想を上回る計算になりますが、四半期ごとの利益が均等に発生するとは限らないため、この時点で上振れを断定することはできません。

7. 業界とセクターの状況

通信キャリア事業には、個社の努力だけでは変えられない構造的な制約がいくつかあります。

第一に、電気通信事業法による規制です。携帯電話料金や接続条件は、公共インフラとしての性格上、行政の監督を受けます。過度な値上げには制約があり、価格転嫁による増収は限定的にならざるを得ません。

第二に、電波(周波数)という有限な資源への依存です。事業に使う周波数は総務省からの割当によって決まり、新規参入や増強のペースは会社の意思だけではコントロールできません。

第三に、設備投資負担の重さです。5Gをはじめとする通信インフラは巨額の投資を継続的に必要とし、この資金需要が有利子負債に依存した資本構成につながりやすい構造にあります。今回確認した有利子負債7,421,354百万円・D/Eレシオ2.55倍という水準も、この業界特有の構造を映した数字であり、一般事業会社の目安(当サイトのスクリーニング条件を含む)とは単純に比較できません。

一方で、通信サービスは生活・企業活動に不可欠な性質上、需要そのものが景気変動の影響を受けにくく、これがキャッシュフローの安定性と株主還元の継続性につながりやすい業界でもあります。近年は各社ともデータセンターやシステムインテグレーションなど非通信領域への投資を拡大しており、大型M&Aに伴う有利子負債の増減が財務構造の変化として表れやすい局面にあります。今回確認した2026年3月末から2026年6月末にかけての有利子負債の増加が、この非通信領域への投資拡大と関係しているかどうかは、本資料の範囲では特定できませんでした。

同社は、投資持株会社であるソフトバンクグループ(9984)を親会社に持つという点で、NTTドコモやKDDIなど他の通信キャリアとは株主構造がやや異なります。同業他社との詳細な指標比較は本記事では扱っていません。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

Q1の増収+9.4%・営業増益+4.0%のペースが中間時点でも続くかが最初の確認材料。発表日は過去の傾向からの推定。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

据え置かれている通期予想(親会社所有者帰属利益5,600億円)が上方修正されるかどうかが確定する。過去の発表時期からの推定。

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定。

第2四半期以降の発表日は、過去の傾向からの推定です。確定日は必ず同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 中間決算発表両面

Q1の増収+9.4%・営業増益+4.0%のペースが中間時点でも続くか、5segmentすべての増収が維持されているかが最初の確認材料。

2027年5月中旬(予定)通期予想の上方修正判断上振れ

2027年3月期の通期予想(親会社所有者帰属利益5,600億円)はQ1決算発表後も据え置かれたまま。Q1時点の進捗率は約26.8%(150,070/560,000)で、単純に4倍すれば通期予想を上回る計算だが、四半期ごとの利益が均等に発生するとは限らないため、上方修正の有無は現時点では確認できない。

随時ファイナンス事業(PayPay等)・メディア&EC事業の増益持続両面

非支配持分帰属利益は前年同期比+39.0%とPayPay・LINEヤフーグループの増益が大きい一方、メディア&EC事業のセグメント利益は同-5.7%の減益だった。事業間の明暗がどう推移するかが焦点。

随時有利子負債・D/Eレシオの増加ペース下振れ

有利子負債は2026年3月末6,484,582百万円から2026年6月末7,421,354百万円へ3か月で+14.4%増加し、D/Eレシオも2.19倍から2.55倍に上昇した。この増加ペースが続くかどうかが財務体質面のリスク焦点になる。

10. 想定されるリスク

§2で挙げた強みと同じだけ、リスクとして押さえておくべき点があります。

親会社所有者持分比率の低さ。 2026年6月末時点で15.1%(2026年3月末は16.0%)と、通信インフラ投資を背景に負債活用度の高い資本構成です。株価下落や大型投資の失敗が起きた場合、資本の柔軟性という点では制約が大きくなります。

有利子負債の増加ペース。 2026年3月末の6,484,582百万円から2026年6月末には7,421,354百万円へ、3か月で+14.4%増加しました。D/Eレシオも2.19倍から2.55倍に上昇しています。この増加が一時的な資金繰りによるものか、継続的な投資拡大によるものかは、本資料の範囲では特定できませんでした。

メディア&EC事業の減益。 2027年3月期第1四半期は、メディア&EC事業のセグメント利益だけが前年同期比-5.7%の減益でした。5segmentすべてが好調というわけではありません。

通期予想が据え置かれたまま。 2027年3月期の通期予想(親会社所有者帰属当期利益5,600億円)は、Q1の好調な決算発表後も変更されていません。会社自身がQ1のペースを通期の実力とまだ見なしていない可能性があります。

ソフトバンクグループ(9984)との混同によるボラティリティ。 §4で整理したとおり、9434と9984は別の銘柄ですが、投資家の間でこの2銘柄が混同され、9984側の値動きが9434の株価に影響するとの指摘がしばしば見られます。ただし、この点を具体的な数値で裏付けたデータは本記事では確認できていません。

11. まとめ:どう判断材料にするか

この記事の整理をまとめると、次のようになります。

2027年3月期第1四半期は、売上高+9.4%・営業利益+4.0%・親会社所有者帰属利益+3.3%の増収増益で、いずれも過去最高を更新しました。5segmentすべてが増収となり、配当も5期ぶりに8.6円から8.8円へ増額されています。

一方で、通期予想(親会社所有者帰属当期利益5,600億円)は据え置かれたままで、親会社所有者持分比率は15.1%、有利子負債はこの3か月で+14.4%増加してD/Eレシオも2.55倍まで上昇しました。増収増益という足元の勢いを、そのまま通期の実力と見なしてよいかどうかは、まだ判断がつきません。

判断が分かれるのは、この増収増益基調と5期ぶりの増配を株主還元姿勢の転換と見るか、通期予想が据え置かれたままである以上まだ様子見の段階と見るかという1点です。次の確認ポイントは2026年11月の中間決算で、増収ペースが持続しているか、通期予想が上方修正されるかどうかが焦点になります。

なお、この記事で扱っているのは携帯キャリア事業会社のソフトバンク株式会社(9434)であり、投資持株会社のソフトバンクグループ株式会社(9984)ではありません。銘柄を選ぶ際は、この点を今一度確認してください。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月の中間決算で、売上高の増収率が大きく鈍化した場合(例えば前年同期比一桁台前半まで低下するなど)。第1四半期の+9.4%増収が一過性だったことを意味する。
  • 2027年3月期の通期予想(親会社所有者帰属当期利益5,600億円、EPS11.54円)が、中間決算・第3四半期決算を通過しても上方修正されないまま据え置かれた場合。会社自身がQ1の伸びを通期の実力と見なしていないことになる。
  • 有利子負債の増加ペースがさらに加速し、D/Eレシオが2026年6月末の2.55倍から明確に悪化する方向(例えば3倍超)に進んだ場合。
  • 配当予想が2027年3月期の中間4.40円・期末4.40円・合計8.80円から減額修正された場合。5期ぶりの増配路線が転換したことを意味する。

参考文献・引用元

  1. 01
    ソフトバンク株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」

    2026年8月4日開示。売上高・営業利益・税引前四半期利益・親会社の所有者に帰属する四半期利益・非支配持分帰属利益・調整後EBITDA・EPS・総資産・資本・自己資本比率・配当の状況(据え置き)・通期業績予想・セグメント情報を参照。前年同期(2026年3月期第1四半期)の実績値も本短信内の比較列を参照した。 / 2026/08/04 開示

  2. 02

    ソフトバンク株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」の実績数値

    2026年3月期通期の売上高7,038,680百万円・営業利益1,042,576百万円・親会社所有者帰属当期利益550,759百万円・配当(中間4.30円・期末4.30円・合計8.60円)を参照した。今回は個別のPDFを直接取得せず、上記の2027年3月期第1四半期決算短信内に記載された前期比較列を出典として使用した。

  3. 03
    IR BANK「ソフトバンク(9434) 会社業績」

    2022年3月期〜2026年3月期の売上高・営業利益・親会社所有者帰属当期利益・自己資本比率・配当(期初予想・実績・配当性向)の時系列を二次情報として参照した。ただし同ページの「有利子負債」列は2018年3月期から数値が更新されていない不自然な値だったため使用していない。

  4. 04
    IR BANK「ソフトバンク(9434) 財務状況(詳細)」

    2026年3月末・2026年6月末時点の有利子負債および有利子負債比率を二次情報として参照した。

  5. 05
    Yahoo!ファイナンス「ソフトバンク(9434) 株価情報」

    2026年8月10日15:30時点の株価・時価総額・PER・PBR・EPS・BPS・ROE・自己資本比率のスナップショットを参照した。 / 2026/08/10 開示