日本電信電話(9432) 増収増益でも通期減益予想、自己資本比率20.8%の背景
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
日本電信電話株式会社
2026/08/07 時点
株価
159円
配当利回り
3.40%
年間5.4円
PER
13.2倍
PBR
1.31倍
ROE
9.9%
ROA
2.1%
純利益ベース
自己資本比率
20.8%
配当性向
44.6%
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益が前年同期比+10.9%、営業利益が同+4.9%、税引前利益が同+7.6%、親会社所有者に帰属する当期利益が同+5.8%という増収増益の決算だった。ただし増収の伸びに対して利益の伸びが鈍く、金融費用が前年同期比+44.3%(492億円→711億円)と急増している。
- 会社は同日、通期(2027年3月期)の業績予想を修正しなかった。その予想は売上収益+4.5%・営業利益+0.2%という増収増益を見込む一方、税引前利益は▲5.2%、親会社所有者に帰属する当期利益は▲5.5%という減益を見込んでおり、増収増益なのに最終段階で減益という珍しい構図が据え置かれている。
- 背景にあるとみられるのが、自己資本比率が2025年3月末の34.0%から2026年6月末の20.8%へ1年余りで急低下した財務構造の変化である。株式会社ドコモSMTBネット銀行の新規連結と、NTTデータグループへのTOB(株式公開買付、1兆3,472億円、借入2兆7,772億円で実施)による有利子負債の急増が、Q1の金融費用急増および通期減益予想と整合するストーリーになっている。
- 一方、配当は分割調整後ベースで2022年3月期の4.60円から2027年3月期予想の5.40円まで5期連続で増配しており、期初予想からの減額修正は一度もない。財務構造の変化と株主還元の安定性という、性質の異なる2つの動きが同時に進んでいる点が、この決算の判断材料になる。
目次11項目
1. 概要
2026年8月6日、日本電信電話(NTT)は2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表しました。売上収益は前年同期比+10.9%、営業利益は同+4.9%、税引前利益は同+7.6%、親会社所有者に帰属する当期利益は同+5.8%という増収増益の内容です。
2026年8月7日時点の株価159円をもとにすると、PER13.15倍(2027年3月期会社予想EPS12.10円ベース)・PBR1.31倍(2026年6月末BPS121.07円ベース)・ROE9.94%・ROA2.06%(純利益ベース)・自己資本比率20.8%・予想配当利回り3.40%(会社予想の年間配当5.40円ベース)という水準です。
この記事で扱う中心的な論点は、増収増益のQ1にもかかわらず、通期(2027年3月期)の会社予想が税引前利益▲5.2%・純利益▲5.5%という減益のまま据え置かれていることです。 この一見矛盾した予想の背景には、自己資本比率が2025年3月末の34.0%から2026年6月末の20.8%まで急低下したという財務構造の変化があります。株式会社ドコモSMTBネット銀行の新規連結と、NTTデータグループへの株式公開買付(TOB)に伴う有利子負債の急増が、Q1の金融費用急増(前年同期比+44.3%)を通じて通期の減益予想とつながっていると読めます。詳しくは第4節で扱います。
2. 会社概要とビジネスモデル
日本電信電話(NTT)は、NTTグループの持株会社です。事業はおおむね4つの区分に分かれます。NTTドコモを中核とする総合ICT事業、NTT東日本・NTT西日本による地域通信事業、NTTデータグループを中心とするグローバル・ソリューション事業、そして不動産・エネルギー等のその他です。2026年度第1四半期の決算説明会資料によれば、総合ICT事業の営業収益は1兆6,170億円で、連結全体の営業収益3兆6,177億円のうち4割超を占める規模です。
国内の固定・移動通信インフラを握る規制業種としての側面と、データセンターやシステムインテグレーションなど非通信領域への展開を併せ持つ点が、この会社の特徴です。2026年度は後者の象徴として、NTTデータグループに対するTOB(完全子会社化に向けた株式公開買付)を実施しています。
強みと弱みの整理
強み
規制業種としての安定した収益基盤
国内通信インフラは景気変動の影響を受けにくく、総合ICT事業・地域通信事業は安定したキャッシュフローの源泉になっています。2027年3月期第1四半期の連結営業収益は過去最高を更新しました。
5期連続増配、減額修正は一度もない
分割調整後ベースで2022年3月期の4.60円から2027年3月期予想の5.40円まで5期連続で増配しており、期初予想を下回って着地した期もありません。
非通信領域への展開(グローバル・ソリューション事業)
NTTデータグループを中心とするグローバル・ソリューション事業を通じて、データセンターやシステムインテグレーションなど成長領域への展開を進めています。2026年度はNTTデータグループへのTOBにより、この事業の取り込みをさらに進めました。
弱み
自己資本比率が1年で急低下した
自己資本比率は2025年3月末の34.0%から2026年6月末には20.8%まで低下しています。銀行子会社の新規連結とNTTデータグループへのTOBに伴う有利子負債の増加が主因で、財務レバレッジは以前より高まっています。
増収増益でも通期は税引前利益・純利益が減益予想
2027年3月期の会社予想は、売上収益+4.5%・営業利益+0.2%という増収増益を見込む一方、税引前利益▲5.2%・純利益▲5.5%という減益を見込んでいます。金融費用の増加が利益の伸びを圧迫しています。
規制業種ゆえの料金・制度リスク
電気通信事業法や旧NTT法の枠組みの下で、通信料金や事業運営に行政の関与が及びやすく、個社の努力だけでは変えられない制約があります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 12,200,000 | 1,770,000 | — | 1,180,000 | — |
| 2023/03 | 13,100,000 | 1,830,000 | — | 1,210,000 | — |
| 2024/03 | 13,400,000 | 1,920,000 | — | 1,280,000 | — |
| 2025/03 | 13,704,727 | 1,649,571 | 1,564,696 | 1,000,016 | 34.0% |
| 2026/03 | 14,409,121 | 1,706,221 | 1,581,923 | 1,037,032 | 20.8% |
| 2027/03会社予想 | 15,060,000 | 1,710,000 | 1,500,000 | 980,000 | — |
表の「経常利益」列には、NTTもIFRSを採用しており日本基準の経常利益に対応する概念が無いため、2025年3月期以降は税引前利益を代わりに記載しています。2022年3月期〜2024年3月期は出所(IR BANK)に該当する数値の記載が無く空欄です。またこの3期はIR BANK集計による概算値のため、2025年3月期以降の実数と並べたときの変動幅はあくまで目安として見てください。
この6期を並べて読み取れることは3つあります。
売上収益は6期を通じて一貫して増加している。 前期比で見ると2023年3月期+7.4%、2024年3月期+2.3%、2025年3月期+2.3%、2026年3月期+5.1%、2027年3月期(会社予想)+4.5%と、伸び率には年によって差があるものの、減収になった期はありません。2022年3月期の12兆2,000億円から2027年3月期予想の15兆600億円まで、5期で2割以上増えています。
営業利益は2025年3月期に落ち込み、2026年3月期に持ち直している。 営業利益は前期比で2023年3月期+3.4%、2024年3月期+4.9%と伸びた後、2025年3月期は▲14.1%と大きく落ち込み、2026年3月期は+3.4%まで回復しました。2027年3月期(会社予想)は+0.2%とほぼ横ばいの計画です。純利益も同様に、2025年3月期は▲21.9%まで落ち込んだ後、2026年3月期は+3.7%まで回復しましたが、2027年3月期(会社予想)は▲5.5%と再び減益の計画です。
自己資本比率は2025年3月期末の34.0%から2026年3月期末の20.8%へ急低下している。 同じ期間に総資産は30.1兆円から46.7兆円へと急拡大しており、資産・負債の両方が大きく膨らんだことがうかがえます。この変化が何によるものかは第4節で詳しく扱います。
4. 増収増益でも通期減益予想が据え置かれた理由
Q1実績と通期予想の対照
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の実績は次のとおりです。
| 項目 | 2026年3月期第1四半期 | 2027年3月期第1四半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,262,039百万円 | 3,617,707百万円 | +10.9% |
| 営業利益 | 405,193百万円 | 425,149百万円 | +4.9% |
| 税引前利益 | 391,769百万円 | 421,411百万円 | +7.6% |
| うち金融費用 | 49,281百万円 | 71,106百万円 | +44.3% |
| うち金融収益 | 23,618百万円 | 43,824百万円 | +85.6% |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 259,714百万円 | 274,830百万円 | +5.8% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日開示)1・7ページ目
売上収益+10.9%に対して、営業利益+4.9%・税引前利益+7.6%と、増収の伸びほど利益が伸びていません。特に金融費用は前年同期比+44.3%(492億円→711億円)と急増しており、税引前利益の伸びを圧迫する一因になっています。
一方、通期(2027年3月期)の会社予想はQ1決算時点でも修正されていません。
| 項目 | 2026年度(2027年3月期)予想 | 2025年度(2026年3月期)実績比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 15,060,000百万円 | +4.5% |
| 営業利益 | 1,710,000百万円 | +0.2% |
| 税引前利益 | 1,500,000百万円 | ▲5.2% |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 980,000百万円 | ▲5.5% |
出典:2025年度決算短信(2026年5月8日開示)1ページ目。2027年3月期Q1決算短信でもこの予想を維持。
増収・営業増益を見込みながら、税引前利益・純利益は減益予想という構図です。 単純に営業利益の伸びだけを見れば増益基調ですが、営業利益より下の段階、つまり金融収支の部分で利益が目減りする計画になっています。
自己資本比率34.0%→20.8%の内訳
この金融費用増加・減益予想の背景を財務諸表からたどると、自己資本比率の急低下に行き着きます。
| 時点 | 総資産 | 資本合計 | 親会社所有者帰属持分 | 自己資本比率 | BPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月末 | 30.1兆円 | 11.3兆円 | 10,221,587百万円 | 34.0% | 123.54円 |
| 2026年3月末 | 46.7兆円 | 10.2兆円 | 9,727,623百万円 | 20.8% | 119.47円 |
| 2026年6月末 | 47.5兆円 | 10.3兆円 | 9,858,080百万円 | 20.8% | 121.07円 |
出典:2025年度決算短信・2027年3月期Q1決算短信、各1ページ目
2026年度第1四半期決算説明会資料(2026年8月6日)のAppendixでは、この急低下の理由として2つの出来事が開示されています。
- 株式会社ドコモSMTBネット銀行の新規連結。 銀行子会社であるため、貸出金・預金など銀行特有の資産・負債が丸ごと連結対象に加わりました。同行単体の連結値(IFRS、2026年度第1四半期)は資産13兆4,894億円・負債13兆3,651億円(うち有利子負債1兆3,264億円)です。銀行は業態上、自己資本比率が低いのが通常であり、これが連結ベースの自己資本比率を機械的に押し下げています。
- NTTデータグループに対する株式公開買付(TOB)。 2026年度第1四半期のキャッシュ・フロー計算書には「データグループ株式公開買付 ▲1兆3,472億円」が計上されており、これを賄うために「借入 2兆7,772億円」を実施しています(前年同期の借入は8,665億円)。TOBによる子会社株式の追加取得は資産・負債を増やす一方で親会社所有者帰属持分を直接には増やさないため、自己資本比率を押し下げる方向に働きます。
出典:2026年度第1四半期決算説明会資料(2026年8月6日)15・16ページ(Appendix:連結貸借対照表の状況・連結キャッシュ・フローの状況)
この2つの出来事が、Q1の金融費用急増(+44.3%)と通期減益予想(税引前利益▲5.2%・純利益▲5.5%)のいずれとも整合するストーリーになっています。 有利子負債が急増した結果として支払利息負担が増え、それが通期の減益予想に織り込まれていると読めます。ただし、会社がこの2つの出来事と減益予想の関係を数値で明示的に結び付けて説明しているわけではなく、ここでの整理は財務諸表の変動から推測できる範囲の解釈である点には留意してください。
セグメント別の状況
決算説明会資料は、総合ICT事業(NTTドコモ中心)の2026年度第1四半期の営業収益が1兆6,170億円だったことを開示しています。この金額は、連結全体の第1四半期営業収益3兆6,177億円(前年同期比+3,557億円、+10.9%)のうち4割超を占める規模です。会社は「営業収益は過去最高を更新」「対前年増収・増益」とコメントしています。地域通信事業(NTT東西)・グローバル・ソリューション事業(NTTデータグループ中心)・その他(不動産・エネルギー等)についても増収基調にあるとみられますが、決算説明会資料のグラフから個別の金額を確定させることはできなかったため、本稿では総合ICT事業の金額のみを具体的な数値として扱っています。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 4.6円 | — | — |
| 2023/03 | — | 4.8円 | — | — |
| 2024/03 | 5円 | 5.1円 | +0.09999999999999964円 | — |
| 2025/03 | 5.2円 | 5.2円 | 0円 | 43.5% |
| 2026/03 | 5.3円 | 5.3円 | 0円 | 42.0% |
| 2027/03会社予想 | 5.4円 | 5.4円 | — | 44.6% |
- 2024/03:2023年7月に普通株式1株につき25株の株式分割を実施したため、値は分割調整後ベース。期初予想5.00円を5.10円に上方修正。
- 2025/03:期初予想どおりの水準で着地。修正なし。
- 2026/03:期初予想どおりの水準で着地。修正なし。
- 2027/03:2026年8月6日の第1四半期決算時点でも期初予想(5.40円)を据え置き。
配当は分割調整後ベースで、2022年3月期の4.60円から2027年3月期予想の5.40円まで5期連続で増配しています。2024年3月期に期初予想5.00円を5.10円へ上方修正した以外は、2025年3月期・2026年3月期とも期初予想どおりの水準で着地しており、減額修正は一度もありません。2027年3月期の予想(年間5.40円)も、2026年8月6日のQ1決算時点で据え置かれています。
会社予想ベースの配当利回りは3.40%(株価159円、年間配当5.40円ベース)です。この利回りは会社が明示している予想にもとづくもので、そのまま参考にできます。会社予想ベースの配当性向は44.6%と、2025年3月期の43.5%・2026年3月期の42.0%からやや上昇する計画ですが、極端に高い水準ではありません。
6. 会社の現状と直近の動き
2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期(4〜6月)決算では、売上収益3兆6,177億円(前年同期比+10.9%)・営業利益4,251億円(同+4.9%)という実績でした。EBITDA(参考指標)は8,362億円(同+4.3%)です。
財政状態は前節のとおり、2026年6月末時点で総資産47.5兆円・資本合計10.3兆円・親会社所有者帰属持分9,858,080百万円、自己資本比率20.8%となっています。総資産が2025年3月末の30.1兆円から1年余りで47.5兆円まで拡大した主因は、株式会社ドコモSMTBネット銀行の新規連結とNTTデータグループへのTOBです。
株主還元については、2026年5月8日に上限2,000億円の自己株式取得を決議しており(取得期間2026年5月11日〜2027年3月31日)、2026年7月末時点の取得実績は331億円です。配当予想(年間5.40円)には変更がありません。
7. 業界とセクターの状況
通信セクターは、電気通信事業法や旧NTT法などの規制の下で料金・設備投資・相互接続の条件が一定程度コントロールされる、公共インフラに近い性格を持ちます。国内の人口動態を背景に契約者数そのものの伸びしろは限られる一方、通信サービスは生活・企業活動に不可欠なため、需要そのものが景気変動の影響を受けにくく、キャッシュフローの安定性と株主還元の継続性につながりやすい構造です。NTTの5期連続増配・減額修正なしという実績は、この構造的な安定性を裏付けています。
一方で、契約者数の伸びが頭打ちに近い国内通信市場だけでは成長を続けにくいため、各社ともデータセンターやシステムインテグレーションなど非通信領域への投資を拡大しています。NTTにとってのグローバル・ソリューション事業(NTTデータグループ中心)への今回のTOBは、この流れに沿った動きです。ただし、非通信領域への大型投資は有利子負債の増加を伴いやすく、今回のように自己資本比率が短期間で大きく低下する要因にもなります。個社の努力で通信料金や規制の枠組みを変えられない一方、非通信領域への投資規模や財務レバレッジの取り方は各社の経営判断に委ねられており、この記事で扱った財務構造の変化はその一例です。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期第1四半期決算は、本記事の執筆時点(2026年8月8日)ですでに2026年8月6日に発表済みです。第4節・第6節の内容がその実績です。表には、まだ発表日が確定していない第2四半期以降の決算のみを記載しています。
9. 想定されるカタリスト
金融費用の前年同期比増加(Q1は+44.3%)が続くか、税引前利益・純利益の通期予想(▲5.2%/▲5.5%)の妥当性を確認する最初の機会。
有利子負債が急増した後だけに、金利が上昇局面に入れば金融費用の増加ペースがさらに速まる可能性がある。
取得した持分・資産の収益貢献が連結利益にどこまで反映されるかで、有利子負債増加の妥当性の評価が変わる。
2026年6月末20.8%からの反転(利益蓄積による回復)か、さらなる低下かで財務健全性の評価が変わる。
10. 想定されるリスク
金融費用がさらに増加するリスク。 Q1の金融費用は前年同期比+44.3%(492億円→711億円)まで増加しました。有利子負債が高水準のまま金利が上昇局面に入れば、通期の減益幅が会社予想(税引前利益▲5.2%・純利益▲5.5%)より拡大する可能性があります。
自己資本比率がさらに低下するリスク。 2026年6月末時点で20.8%まで低下しており、財務レバレッジの余裕は以前より薄くなっています。追加の大型投資やM&Aが同様の手法(借入による資金調達)で行われれば、さらに低下する余地があります。
TOB・銀行連結のシナジーが確認できないリスク。 NTTデータグループの完全子会社化や銀行子会社の連結が、有利子負債の増加に見合う収益拡大につながるかは、今後の四半期で確認する必要があります。
規制業種ゆえの料金・制度リスク。 電気通信事業法や旧NTT法の枠組みの見直し次第では、通信料金や事業運営の自由度に影響が及ぶ可能性があります。これは個社の努力では変えられない外部要因です。
11. まとめ:どう判断材料にするか
日本電信電話は、2027年3月期第1四半期の売上収益・営業利益・税引前利益・純利益がいずれも増加した一方、通期の会社予想は税引前利益▲5.2%・純利益▲5.5%という減益のまま据え置かれています。PER13.15倍・PBR1.31倍という水準は、スクリーニングの目安(PER10〜15倍・PBR1倍以下)と比べてPERはレンジ上限付近、PBRはやや上振れています。ROE9.94%はスクリーニングの目安(8%以上)を満たす一方、ROA2.06%(純利益ベース)は目安(5%以上)を下回っています。
判断の分かれ目は、自己資本比率34.0%→20.8%という急低下を、銀行連結・NTTデータTOBという一時的な会計上のイベントに伴うレバレッジ上昇と見るか、恒常的な財務体質の変化と見るかです。
一時的なイベントによるものと見るなら、有利子負債の増加は成長投資(非通信領域の取り込み)の対価であり、収益貢献が今後の四半期で確認できれば財務体質への懸念は後退していく可能性があります。恒常的な変化と見るなら、金融費用の増加基調が続き、通期の減益予想がさらに下振れするリスクを織り込む必要があります。配当については5期連続増配・減額修正なしという実績が続いていますが、この安定性が財務構造の変化とどこまで両立するかも、あわせて見ていく点になります。
次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期決算です。金融費用の第1四半期の前年同期比増加率(+44.3%)からどう推移するかを確認してください。あわせて、税引前利益・純利益の通期予想(▲5.2%/▲5.5%)が据え置かれるか修正されるかも確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期以降、金融費用の前年同期比増加率がQ1の+44.3%からさらに拡大し、税引前利益・純利益の減益幅が会社予想(▲5.2%/▲5.5%)を超えて拡大した場合。
- 自己資本比率が2026年6月末の20.8%からさらに大きく低下し、資金調達コストの上昇など財務健全性への懸念が具体的な形(格付け見直し等)で表面化した場合。
- 会社が2027年3月期の配当予想(年間5.40円)を減額修正した場合。2022年3月期以降5期連続増配・減額修正なしという実績が途切れることを意味する。
- NTTデータグループTOB・銀行子会社化について、有利子負債の増加に見合う収益拡大が複数四半期にわたって確認できないことが明確になった場合。
よくある質問
- NTTの配当はいつもらえますか?
- 権利確定は中間が9月末、期末が3月末です。2027年3月期の会社予想は1株5.40円で、内訳は中間2.70円・期末2.70円。期末配当は6月の定時株主総会の決議を経て支払われるため、権利確定からおおむね2〜3か月後の受け取りになります。配当を受け取るには権利付最終日までに保有している必要があり、権利確定日に買っても間に合いません。
- NTTの配当利回りはどのくらいですか。100株ならいくらですか?
- 2026年8月7日時点の株価159円に対する予想利回りは3.40%です。1株5.40円なので100株なら年間540円(税引前)、配当性向は44.6%です。分割調整後ベースでは2022年3月期の4.60円から2027年3月期予想の5.40円まで5期連続で増配しており、期初予想からの減額修正は一度もありません。
- 増収増益なのに通期が減益予想なのはなぜですか?
- 第1四半期は売上収益+10.9%・営業利益+4.9%の増収増益でしたが、通期予想は売上収益+4.5%・営業利益+0.2%に対して税引前利益▲5.2%・当期利益▲5.5%の減益が据え置かれています。背景には自己資本比率が2025年3月末の34.0%から2026年6月末の20.8%へ低下した財務構造の変化があり、NTTデータグループへのTOB(1兆3,472億円、借入2兆7,772億円で実施)による有利子負債の増加が、第1四半期の金融費用+44.3%(492億円→711億円)と整合します。
参考文献・引用元
- 01日本電信電話株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年8月6日開示。連結損益計算書(1・7ページ目、売上収益・営業利益・税引前利益・金融収益・金融費用・親会社所有者帰属当期利益)、連結財政状態(総資産・資本合計・自己資本比率・BPS)、配当の状況、2027年3月期通期業績予想(据え置き)を参照。 / 2026/08/06 開示
- 02日本電信電話株式会社「2025年度(2026年3月期) 決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年5月8日開示。2026年3月期の通期実績、2027年3月期(期初)業績予想・配当予想、2025年3月期の連結財政状態(総資産30.1兆円・自己資本比率34.0%)を参照。 / 2026/05/08 開示
- 03日本電信電話株式会社「2026年度第1四半期 決算説明会資料」
2026年8月6日開示。IR BANK未掲載の一次資料。8ページ(セグメント別営業収益・営業利益)、15〜16ページ(Appendix:連結貸借対照表の状況・連結キャッシュ・フローの状況=ドコモSMTBネット銀行の新規連結、NTTデータグループ株式公開買付1兆3,472億円と借入2兆7,772億円)、18ページ(自己株式取得の実績)を参照。 / 2026/08/06 開示
- 04IR BANK「日本電信電話(9432) 決算まとめ」
二次情報。2022年3月期〜2024年3月期の通期業績(売上高・営業利益・純利益・EPS)は、決算短信に直接の記載が無いためIR BANK集計(有価証券報告書ベース)の概算値を参照した。2025年3月期以降は決算短信の実数と整合することを確認済み。
- 05IR BANK「日本電信電話(9432) 配当金の推移」
二次情報。株式分割(2023年7月、1株→25株)の調整後ベースでの配当の期初予想・実績・修正履歴を参照。
- 06IR BANK「日本電信電話(9432)」
二次情報。株価・PER/PBR・ROE/ROA予の直近表示値との整合確認に用いた(本文の数値は決算短信・説明会資料から独自に計算したものを使用)。