四半期分析SaaS・クラウドサービス2026/12期 Q2

網屋(4258) 中間決算は増収増益も自己資本比率26.2%に急低下。累進配当政策との両立は

2026/09/20 公開2026/09/20 更新6分で読了対象決算:2026年12月期 第2四半期(中間)

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

株式会社網屋

東証グロース 4258 ・ 12月期決算

2026/09/20 時点

株価

5,750円

時価総額

508億円

配当利回り

0.35%

年間20円

PER

56.5倍

PBR

20.26倍

ROE

30.3%

ROA

17.0%

経常利益ベース

自己資本比率

26.2%

配当性向

19.7%

有利子負債

26億円

D/Eレシオ

1.11倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2026年12月期第2四半期(中間、2026年1〜6月)は、売上高33億97百万円(前年同期比+23.7%)・営業利益6億38百万円(同+31.3%)・親会社株主に帰属する中間純利益4億35百万円(同+33.8%)という増収増益で着地した。データセキュリティ事業(ALog)はセグメント利益が前年同期比+51.5%、ネットワークセキュリティ事業は同+7.7%と、両セグメントとも増益だが伸び方には差がある。
  • 一方で自己資本比率は前期末(2025年12月末)の40.8%から中間期末(2026年6月末)は26.2%へ急低下した。社債1,500百万円の発行、自己株式取得837百万円、株式会社アンペールの子会社化(取得原価538百万円)が主因で、有利子負債は932百万円から2,597百万円へ、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は0.33倍から1.11倍へ拡大している。
  • 同じ2026年8月12日に、会社は「経営環境の著しい変化等、特段の事由がない限り減配を行わない」累進配当政策を新たに採用し、2026年12月期の配当予想を(期初「未定」から)期末20円に決定した。増資余地を狭める自己株買い・社債発行と、恒久的な株主還元コミットメントを同時に打ち出した形になる。
  • 通期の会社業績予想(売上高70億02百万円・営業利益12億円・純利益8億50百万円)は2026年2月の公表以来修正されていない。中間期時点の進捗率は売上高48.5%・営業利益53.2%・純利益51.2%で、単純な50%の目安を上回っている。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. 累進配当政策の採用と、自己資本比率26.2%への急低下は両立するか
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

網屋は2026年9月18日時点で株価5,750円、時価総額508億円という水準にあります。PER56.52倍・PBR20.26倍は、いずれも当サイトで会社予想EPS101.75円・2026年6月末のBPS283.75円をもとに算出した値です(実績PERではなく予想PERであること、2026年6月末という中間期末時点のBPSを使っていることに注意してください)。予想配当利回りは0.35%で、これは2026年12月期の会社予想配当20円(期末のみ)を株価で割った値です。

2026年8月12日に発表された2026年12月期第2四半期(中間、2026年1〜6月)決算は、売上高33億97百万円(前年同期比+23.7%)・営業利益6億38百万円(同+31.3%)・親会社株主に帰属する中間純利益4億35百万円(同+33.8%)という増収増益でした。ここまでは順調な決算に見えます。

しかし同じ決算短信では、自己資本比率が前期末(2025年12月末)の40.8%から中間期末(2026年6月末)の26.2%へ、半年で14.6ポイントという急低下も明らかになりました。しかも会社は同じ日に、今後は「特段の事由がない限り減配しない」累進配当政策の採用を発表しています。増収増益・財務レバレッジの急上昇・恒久的な株主還元コミットメントという3つが同じ決算で同時に起きているのが、この記事で扱う中心的な論点です(詳しくは§4)。

2. 会社概要とビジネスモデル

網屋(東証グロース、証券コード4258)は、サイバーセキュリティの総合プロバイダーです。事業は大きく2つのセグメントに分かれます。

データセキュリティ事業は、AI搭載のSIEM(Security Information and Event Management)製品「ALog」を中核とします。企業内のログを収集・分析し、不正アクセスや内部不正の兆候を検知するソフトウェアで、経済安全保障・内部統制・サプライチェーン監査を目的とした導入が中心です。

ネットワークセキュリティ事業は、ネットワークの運用・監視をまるごと請け負う「Network All Cloud」と、フルマネージドSASE(Secure Access Service Edge)の「Verona」を柱とします。自社でルータ等のネットワーク機器を含めて提供し、構築から監視・対応までを一括で任せたい企業(複数拠点を持つ製造業など)の需要を取り込んでいます。

いずれも月額・従量課金の性格を持つサブスクリプション型の収益が中心で、当中間期末の契約負債(前受収益に相当する会計項目)は29億88百万円と、前期末の20億59百万円から45.1%増加しています。これは、一度獲得した契約が翌期以降も収益として積み上がっていくストック型ビジネスの特徴を裏付ける数字です。

強みと弱みの整理

強み

  • データセキュリティ事業(ALog)の高い増益率

    中間期のセグメント利益は6億81百万円(前年同期比+51.5%)で、セグメント売上高の伸び(+27.7%)を大きく上回っています。大手製造業・大手IT企業からの受注が中心で、経済安全保障目的の導入は解約率が低水準にとどまりやすく、利益率の改善につながっています。

  • ストック収益の積み上がりが数字で確認できる

    契約負債(前受収益)は中間期末に29億88百万円と、半年で9億29百万円(+45.1%)増加しました。円安による海外製品の価格高騰や、政府のセキュリティ対策強化策(SCS評価制度等)を追い風に、国産製品への切り替え需要を取り込めている状況がうかがえます。

  • 通期計画に対する進捗は順調

    2026年2月公表の通期計画(売上高70億02百万円・営業利益12億円・純利益8億50百万円)は据え置かれたままで、中間期末時点の進捗率は売上高48.5%・営業利益53.2%・純利益51.2%と、単純な50%の目安を上回っています。

弱み

  • 自己資本比率が半年で14.6ポイント低下

    前期末40.8%→中間期末26.2%。社債発行(1,500百万円)・自己株式取得(837百万円)・M&A(アンペール子会社化、取得原価538百万円)が重なった結果で、有利子負債は932百万円から2,597百万円へ、D/Eレシオは0.33倍から1.11倍へ拡大しています。詳しくは§4で扱います。

  • ネットワークセキュリティ事業は増収ほど利益が伸びていない

    中間期のセグメント売上高は前年同期比+20.9%と伸びていますが、セグメント利益は同+7.7%にとどまります。SASE「Verona」領域への積極的な販売促進投資を継続していることが要因で、投資が先行し利益率が一時的に下がっている状態です。

  • 株主還元の実績が浅い

    初配当は2025年12月期(15.73円)で、無配当だった期間の方が長い会社です。2026年8月に累進配当政策を採用したばかりで、「減配しない」というコミットメントが景気後退や大型投資局面でも維持されるかどうかは、まだ実績で確認できていません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
002,0005004,0001,0006,0001,5008,0002,0002021/122022/122023/122024/122025/122026/12単位:百万円
自己資本比率(%)20406050.450.847.339.440.8
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2021/122,76126026018329950.4%
2022/122,986263301229-11050.8%
2023/123,55936342532552847.3%
2024/124,7675265413841,17639.4%
2025/125,9361,0511,0487511,30140.8%
2026/12会社予想7,0021,2001,188850——
単位:百万円。出典:決算短信各期(2021年12月期〜2026年12月期・会社予想)

読み取れることは3つあります。

増収増益のペースが加速している。 売上高は2021年12月期の27億61百万円から2025年12月期の59億36百万円まで、5期でおよそ2.1倍になりました。特に2024年12月期(+33.9%)・2025年12月期(+24.5%)と、直近2期の伸び率が高くなっています。純利益も2021年12月期の1億83百万円から2025年12月期は7億51百万円へ、4倍以上に拡大しました。

EPSの数値は、株式分割の影響で単純比較できない期がある。 網屋は2025年7月1日付で普通株式1株を2株にする株式分割を行っています。上表のEPSは、分割前の期(2021〜2023年12月期)についても当サイトで2分の1に換算し、分割後の株数に統一した値を掲載しています(会社が実際に決算短信で開示した分割前ベースの数値は、2021年12月期51.29円、2022年12月期57.14円、2023年12月期80.34円)。換算後のベースで見ても、EPSは2021年12月期の25.65円から2025年12月期の90.84円まで、着実に伸びています。

自己資本比率は2025年12月期まで40%前後で安定していたが、2026年中間期に急低下した。 2021年12月期50.4%→2022年12月期50.8%→2023年12月期47.3%→2024年12月期39.4%→2025年12月期40.8%と、緩やかな低下と反発を繰り返してきましたが、2026年中間期末は26.2%まで落ち込んでいます(表には反映していない中間期末時点の数値。詳しくは§4)。

4. 累進配当政策の採用と、自己資本比率26.2%への急低下は両立するか

これが、この決算で最も注目すべき論点です。網屋は2026年8月12日、2つの発表を同時に行いました。

  1. 中間決算の発表:増収増益(売上高+23.7%・純利益+33.8%)
  2. 配当方針の変更:「経営環境の著しい変化等、特段の事由がない限り、年間配当金を維持又は増配し、減配は行わない」累進配当政策の採用。あわせて2026年12月期の配当予想を(期初は「未定」だったところから)期末20円に決定

一見すると、業績の好調さを背景にした前向きな株主還元強化に見えます。しかし同じ決算短信の貸借対照表を見ると、財務構造はこの半年で大きく変わっています。

項目前期末(2025年12月末)中間期末(2026年6月末)増減
総資産69億40百万円89億19百万円+19億78百万円
負債合計41億07百万円65億63百万円+24億55百万円
純資産合計28億33百万円23億56百万円-4億77百万円
自己資本比率40.8%26.2%-14.6pt
有利子負債(社債+短期・長期借入金)9億32百万円25億97百万円+16億65百万円
D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)0.33倍1.11倍+0.78
自己株式(帳簿価額)4億97百万円13億34百万円+8億37百万円

出典:決算短信「中間連結貸借対照表」および「財政状態に関する説明」

自己資本比率が下がった要因は、決算短信の説明を読むと3つに整理できます。

①社債1,500百万円の発行。 中間連結貸借対照表の固定負債に、前期末には計上のなかった社債1,500百万円が新たに現れています。財務活動によるキャッシュ・フローの内訳でも「社債の発行による収入」が14億89百万円あり、資金調達の主因になっています。

②自己株式の取得837百万円。 2026年2月13日の取締役会決議にもとづき30万3,200株を取得し、自己株式(帳簿価額)は4億97百万円から13億34百万円へ増加しました。純資産を直接減らす効果があります。さらに2026年8月12日には、上限18万5,000株(発行済株式数の2.10%)の追加取得も決議されており、この一部は2026年2月発行の転換社債型新株予約権付社債・新株予約権の転換・行使時に交付する株式に充当する予定です。

③株式会社アンペールの子会社化。 2026年6月30日、SASE「Verona」向けルータ等の調達を担う株式会社アンペールの発行済株式97.84%を、現金538百万円で取得しました。海外製ルータの調達コスト上昇(円安)や供給遅延への対応が目的です。この取得により、のれん280百万円が新たに発生し、総資産・負債の両方を押し上げています。

つまり、自己資本比率の低下は「業績が悪化したから」ではなく、社債による資金調達・自己株買い・M&Aという3つの資本政策を同じ半年に集中させた結果です。営業活動によるキャッシュ・フローは4億95百万円のプラスを確保しており、本業の収益力自体が悪化しているわけではありません。

ただし、この資本政策の組み合わせと、同日発表した「減配しない」という恒久的なコミットメントの両立には注意が必要です。累進配当政策は、業績が悪化した局面でも配当を維持し続けることを意味します。今回のように社債や自己株買いで自己資本を薄くした状態で、今後さらに大型のM&Aや投資が続けば、財務の柔軟性(追加の借り入れ余地や、配当を維持しながら投資を続ける体力)は今よりも狭くなります。「減配しない」という約束と「成長投資を借り入れと自己株買いで積極的に進める」という経営方針が、今後も両立できるかどうかは、まだ1四半期分のデータだけでは判断できません。 次の四半期以降、自己資本比率とD/Eレシオがどう推移するかが、この論点への答え合わせになります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2021/12—0円——
2022/12—0円——
2023/12—0円——
2024/12—0円——
2025/120円15.73円+15.73円17.3%
2026/12会社予想—20円—19.7%
  • 2025/12:初配当。2025年2月公表の期初予想は無配(0円)だったが、時価総額300億円到達などを踏まえ2025年11月10日に有配へ方針転換し、15.73円で確定した。
  • 2026/12:2026年2月公表の期初予想は「未定」。2026年8月12日、累進配当政策(経営環境の著しい変化等の特段の事由がない限り減配しない方針)の採用とあわせて期末20円に決定(前期実績比+27.1%)。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」および適時開示(配当方針の変更に関するお知らせ)

網屋の配当には、他の高配当銘柄とは異なる特徴があります。2024年12月期まで一貫して無配当で、初めて配当を実施したのは2025年12月期(15.73円)です。しかもその2025年12月期についても、2025年2月の期初予想では無配(0円)としていました。時価総額300億円到達などを一つの目安としてきたところ、2025年11月10日に「剰余金の配当を開始することが適切」と判断し、15.73円で確定させています。

この「期初は無配・期中に有配へ転換」という経緯を踏まえると、2026年12月期についても、2026年2月の期初時点では配当予想を「未定」としていた点が目を引きます。2026年8月12日になって初めて、期末20円という具体的な金額が決まりました。前期実績15.73円に対して+27.1%の増額です。

配当性向は、2025年12月期実績で17.3%、2026年12月期予想で19.7%(会社予想配当20円÷会社予想EPS101.75円)です。同業のSaaS・セキュリティ企業と比べて高い水準ではなく、内部留保を厚く残しながら還元を始めた段階と言えます。予想配当利回り0.35%も、高配当株のスクリーニング基準(3%以上)とは性格の異なる銘柄であることを示しています。網屋は「配当利回りで選ぶ銘柄」ではなく、成長投資と両立させながら株主還元の実績を積み上げている段階にある銘柄として見るのが実態に近いでしょう。

6. 会社の現状と直近の動き

中間期の連結損益計算書を、前年同期と比べます。

項目前中間期(2025年1〜6月)当中間期(2026年1〜6月)増減
売上高27億46百万円33億97百万円+23.7%
売上原価14億68百万円17億69百万円+20.5%
売上総利益12億77百万円16億27百万円+27.3%
販売費及び一般管理費7億91百万円9億88百万円+24.9%
営業利益4億86百万円6億38百万円+31.3%
経常利益4億78百万円6億33百万円+32.3%
親会社株主に帰属する中間純利益3億25百万円4億35百万円+33.8%

出典:決算短信「中間連結損益計算書」

売上総利益率は46.5%から47.9%へ改善しており、原価率の悪化を伴わずに増収を実現できています。一方で販管費も24.9%増えており、これはネットワークセキュリティ事業のSASE領域への販売促進投資などが含まれるとみられます。

セグメント別(外部顧客向け、中間期累計)は次のとおりです。

セグメント売上高前年同期比セグメント利益前年同期比
データセキュリティ事業14億29百万円+27.7%6億81百万円+51.5%
ネットワークセキュリティ事業19億67百万円+20.9%4億94百万円+7.7%

出典:決算短信「セグメント情報等」

データセキュリティ事業(ALog)は、売上・利益ともに高い伸びを示し、特に利益の伸びが売上の伸びを大きく上回っています。大手製造業・大手IT企業からの受注に加え、直近ではエネルギー産業や防衛産業といった新たな業種からの受注も増えているとされ、顧客基盤の拡大が進んでいるとみられます。

一方のネットワークセキュリティ事業は、売上の伸び(+20.9%)に対して利益の伸び(+7.7%)が見劣りします。「Network All Cloud」自体は堅調とされていますが、今後の市場拡大が見込まれるSASE領域への積極的な販売促進投資を続けていることが要因です。この投資が将来の売上・利益にどう結びつくかは、まだ答えが出ていません。

なお、当中間期には株式会社アンペールの子会社化(2026年6月30日付)がありましたが、取得日が中間期末と同日のため、損益計算書には同社の業績はまだ含まれていません(貸借対照表のみ連結)。次の第3四半期以降の決算で、アンペールの業績がどう寄与するかが確認できます。

7. 業界とセクターの状況

当サイトでは、SaaS・クラウドサービスセクターにスマレジ(4431)を掲載しており、網屋はこのセクターに加わる2社目の銘柄になります。

このセクターに構造的に共通するのは、契約数(アカウント数・拠点数)とARPU(顧客単価)の掛け合わせで売上が決まり、一度獲得した契約からの収益が積み上がっていくストック型のビジネスモデルであることです。初期導入費用よりも月額・従量課金の継続収益が収益の柱になるため、新規契約の獲得ペースと解約率(チャーンレート)のバランスが成長性を左右します。

網屋のセキュリティ製品市場に固有の事情としては、サイバー攻撃・ランサムウェア被害の深刻化と、政府によるセキュリティ対策の制度整備(SCS評価制度など)が需要の追い風になっている点が挙げられます。これは個社の営業努力というより、外部環境の変化がもたらす市場拡大です。また、競合の海外製品は円安の影響で価格が上昇しやすく、国産セキュリティ製品への切り替え需要という形で網屋のような国内プレーヤーに追い風が吹きやすい構造にあります。逆に言えば、円高局面ではこの追い風が弱まる可能性があります。

もう一つの構造的な特徴は、成長投資(M&A・販売促進費)を継続的に必要とする点です。SaaS企業は、契約が積み上がるまでに先行して営業・開発コストがかかるビジネスモデルが一般的で、網屋のネットワークセキュリティ事業における販売促進投資や、今回のアンペール子会社化のようなサプライチェーン強化のためのM&Aも、この構造の延長線上にあります。個社の経営判断だけでなく、業界全体が「先に投資して後から回収する」という時間差を抱えやすいことは、押さえておく価値があります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2026年12月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月中旬(予定)当サイト推定

2026年12月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月上旬(予定)当サイト推定

2027年12月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2027年12月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2026年12月期 第3四半期 決算発表高両面

自己資本比率・D/Eレシオが中間期末の水準(26.2%・1.11倍)からさらに悪化するか、横ばいで落ち着くかを確認できる。契約負債(前受収益)の増加ペースが継続しているかもストック収益の指標になる。

未定(サイバーソリューションズ社との協議次第)サイバーソリューションズ株式会社との資本業務提携の詳細開示中両面

2026年8月31日に「開示事項の経過」として提携の検討が公表されているが、具体的な出資比率や提携内容はまだ確定していない。内容次第で自己資本比率・株式の希薄化に追加の影響が出る可能性がある。

随時株式会社アンペールの子会社化による調達コスト低減効果の顕在化中上振れ

SASE「Verona」向けルーターの調達を、円安・海外物価高の影響を受けにくい体制に切り替える狙いでの子会社化。原価率・ネットワークセキュリティ事業の利益率改善につながるかが焦点。

2026年8月13日以降、随時自己株式取得(上限185,000株、発行済株式数の2.10%)の進捗高両面

取得した自己株式の一部は、2026年2月発行の転換社債型新株予約権付社債・新株予約権の転換・行使時の交付株式に充当予定。買付けの進捗と、CB転換による希薄化の実際の規模が今後の焦点になる。

10. 想定されるリスク

第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。

財務レバレッジの急上昇が続くリスク。 自己資本比率は半年で40.8%から26.2%へ低下し、D/Eレシオは0.33倍から1.11倍へ拡大しました。社債の返済負担や、追加の借り入れ余地の縮小は、今後のM&A・成長投資の選択肢を狭める可能性があります。

累進配当政策と成長投資の両立が崩れるリスク。 「減配しない」というコミットメントを守りながら、社債や自己株買いを伴う積極的な資本政策を続けることは、業績が悪化した局面ほど難しくなります。実績が浅い(配当開始から1年未満)方針であることも踏まえ、今後の運用を注視する必要があります。

ネットワークセキュリティ事業の投資が利益に結びつかないリスク。 中間期のセグメント利益成長率(+7.7%)は売上成長率(+20.9%)を大きく下回っています。SASE領域への販売促進投資が計画通り収益化しない場合、この乖離が長期化する可能性があります。

M&Aによるのれんの減損リスク。 株式会社アンペールの子会社化で発生したのれん280百万円は、期待される超過収益力(調達コスト低減効果)が実現しなければ、将来的に減損の対象になり得ます。取得からまだ日が浅く、効果の検証にはこれからの決算を待つ必要があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

2026年12月期第2四半期は、売上高33億97百万円(前年同期比+23.7%)・純利益4億35百万円(同+33.8%)という増収増益で着地しました。データセキュリティ事業(ALog)の利益成長(+51.5%)が特に目立ち、ストック収益の積み上がりも契約負債の増加という数字で裏付けられています。

一方で、自己資本比率は40.8%から26.2%へ急低下し、D/Eレシオは0.33倍から1.11倍へ拡大しました。同じ日に「減配しない」累進配当政策を採用しており、財務レバレッジを高めながら恒久的な株主還元コミットメントを打ち出すという、方向性の異なる2つの意思決定が重なっています。

判断の分かれ目は、この財務構造の変化を「一時的な資本政策の集中(社債発行・自己株買い・M&Aが偶然重なった)」と見るか、「今後も続く積極路線への転換」と見るかです。 前者であれば、本業の増収増益ペースが続く限り、自己資本比率は次第に回復していく可能性があります。後者であれば、累進配当政策の持続性そのものが試される局面が今後訪れるかもしれません。次の第3四半期決算(2026年11月上旬予定)で自己資本比率・D/Eレシオがどちらの方向に動くかが、この記事の見立てに対する最初の答え合わせになります。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月発表の第3四半期決算で、自己資本比率が中間期末の26.2%からさらに低下し、20%を明確に下回るなど財務健全性の悪化が加速した場合。
  • 2026年12月期の配当予想(期末20円)が期中に減額修正された場合。採用したばかりの累進配当政策(減配しない方針)が早期に破られたことになる。
  • ネットワークセキュリティ事業のセグメント利益成長率(中間期は前年同期比+7.7%)が、売上成長率(同+20.9%)との乖離を拡大させ続け、SASE領域の販売促進投資が利益に結びつかない状態が長期化した場合。
  • 通期業績予想(売上高70億02百万円・営業利益12億円・純利益8億50百万円)が下方修正された場合。2026年2月の公表以来据え置かれてきた計画からの転換を意味する。
  • 株式会社アンペールの子会社化で発生したのれん(280百万円)や、今後発生しうるのれんについて、減損の兆候が開示された場合。M&Aによる成長投資が想定通りの超過収益力を生んでいないことを示す。

よくある質問

網屋(4258)の配当は今後、減配することはありますか?
会社は2026年8月12日、「経営環境の著しい変化等、特段の事由がない限り、年間配当金を維持又は増配し、 減配は行わない」累進配当政策を採用しました。ただし「特段の事由がない限り」という留保が付いており、 絶対に減配しないことを保証するものではありません。また配当を開始したのは2025年12月期(15.73円)が 初めてで、この方針が景気後退や大型投資局面でも維持されるかどうかは、まだ実績で確認できていません。
網屋(4258)の自己資本比率はなぜ40.8%から26.2%に下がったのですか?
2026年12月期第2四半期(中間期末、2026年6月末)に、社債1,500百万円の発行、自己株式837百万円の 取得、株式会社アンペールの子会社化(取得原価538百万円)という3つの資本政策が重なったためです。 本業の業績が悪化したことによる低下ではなく、営業活動によるキャッシュ・フローは4億95百万円の プラスを確保しています。
網屋(4258)の配当は100株でいくらになりますか?
2026年12月期の会社予想では、年間配当金は期末のみ20円(100株あたり2,000円、税引前)です。 中間配当はありません。前期(2025年12月期)実績の15.73円(100株あたり1,573円)から+27.1%の 増配となる予想です。実際の金額は今後の業績動向によって変わる可能性があります。

参考文献・引用元

  1. 01
    株式会社網屋「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」

    1〜16ページ全体を参照。連結経営成績・連結財政状態・配当の状況(1ページ目)、経営成績に関する説明・セグメント別の状況(4ページ目)、財政状態およびキャッシュ・フローの状況(5ページ目)、中間連結貸借対照表(7〜8ページ目)、中間連結損益計算書(9ページ目)、中間連結キャッシュ・フロー計算書(11〜12ページ目)、株主資本の著しい変動・企業結合(アンペール子会社化、13〜15ページ目)、重要な後発事象(自己株式取得、16ページ目)。 / 2026/08/12 開示

  2. 02
    株式会社網屋「配当方針の変更及び配当予想に関するお知らせ」

    累進配当政策への変更内容(変更前・変更後の基本方針の全文)と、2026年12月期配当予想の修正内容(未定→期末20円)を参照。 / 2026/08/12 開示

  3. 03
    株式会社網屋「配当方針及び配当予想の修正に関するお知らせ」(2025年11月10日、初配当決定時)

    時価総額300億円を配当開始の目安としてきたこと、2025年12月期配当予想を0円から15.73円へ修正した経緯を参照。 / 2025/11/10 開示

  4. 04
    株式会社網屋「2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2024年12月期・2025年12月期の連結業績(売上高・各利益段階・EPS・ROE・総資産経常利益率)、自己資本比率、キャッシュ・フローの推移、2026年12月期の期初業績予想(配当予想は未定)を参照。 / 2026/02/12 開示

  5. 05
    株式会社網屋「2024年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2023年12月期・2024年12月期の連結業績(分割調整前のEPS・BPS)を参照。1株を2株にする株式分割(2025年7月1日)前の数値であることを確認するために使用。 / 2025/02/13 開示

  6. 06
    株式会社網屋「2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

    2023年12月期(連結決算を初めて作成した期)の売上高・各利益段階・EPS・自己資本比率を参照。 / 2024/02/14 開示

  7. 07
    株式会社網屋「2022年12月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)」

    2021年12月期・2022年12月期(非連結)の売上高・各利益段階・EPS・自己資本比率・配当実績(いずれも無配)を参照。 / 2023/02/14 開示

  8. 08
    kabutan(株探)「網屋(4258)株価情報」

    二次情報。2026年9月18日時点の株価5,750円・時価総額508億円・PER54.5倍・PBR19.83倍・利回り0.35%(当サイトのPER・PBRは会社予想EPS・中間期末BPSにもとづき自社で算出しており、掲載値とは基準が異なる)。 / 2026/09/18 開示

  9. 09
    株式会社網屋 公式サイト「事業内容」

    二次情報。データセキュリティ事業(ALog)・ネットワークセキュリティ事業(Verona、Hypersonix等)の製品構成の確認に使用。