EIZO(6737) 純資産急増でPBR0.62倍、含み益と本業収益力のギャップ
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
EIZO株式会社
2026/09/25 時点
株価
3,135円
時価総額
1,234億円
配当利回り
3.67%
年間115円
PER
18.7倍
PBR
0.62倍
ROE
5.6%
ROA
2.3%
経常利益ベース
自己資本比率
74.8%
配当性向
68.6%
有利子負債
62億円
D/Eレシオ
0.03倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の売上高は200億31百万円(前年同期比+15.5%)、営業利益は8億7百万円で前年同期の▲97百万円の営業損失から黒字に転換した。経常利益は15億74百万円(前年同期比+129.0%)、純利益は12億15百万円(同+294.7%)。
- 一方で本業の収益性は5期連続で低下しており、売上高営業利益率は2022年3月期13.0%から2026年3月期2.9%まで下がった。2027年3月期の会社予想でも営業利益率は3.9%(3,300百万円÷85,000百万円)にとどまる。
- 純資産・PBRの動きは非事業要因の影響が大きい。投資有価証券は2026年3月末644億円から2026年6月末1,576億円へ1四半期で932億円増え、この含み益によって1株当たり純資産は3,463.64円から5,078.41円へ跳ね上がり、PBRは0.62倍まで一段と下がった。
- 2026年3月期の純利益+76.5%増、2027年3月期の▲11.2%減益予想は、いずれも政策保有株式・純投資株式の売却益(前期7,999百万円、今期見込み4,400百万円)という非経常要因が主因である。
- 会社は2026年7月31日、自己株式取得枠を上限40億円・150万株(3.79%)から上限170億円・550万株(13.91%)へ4倍以上に拡大し、取得方法にToSTNeT-3を追加した。低PBRへの対応と株主還元姿勢の強化に整合する動きである。
目次11項目
1. 概要
2026年7月31日、EIZOは2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表しました。売上高は200億31百万円で前年同期比+15.5%の増収、営業利益は8億7百万円で、前年同期の▲97百万円の営業損失から黒字に転換しました。経常利益は15億74百万円(前年同期比+129.0%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は12億15百万円(同+294.7%)と、いずれも大幅な増益です。
2026年9月25日時点の株価3,135円をもとにすると、PER18.71倍(2027年3月期会社予想EPS167.60円ベース)・PBR0.62倍(2026年6月末BPS5,078.41円ベース)・予想配当利回り3.67%(会社予想の年間配当115円ベース)という水準です。ROE5.6%・ROA2.3%(いずれも2026年3月期実績、ROAは総資産経常利益率ベース)、自己資本比率74.8%、有利子負債62億円(D/Eレシオ0.03倍、実質ほぼ無借金)となっています。
この記事で扱う中心的な論点は、PBR0.62倍という「割安に見える水準」の中身です。 EIZOの純資産は2026年3月末の1,369億円から2026年6月末には1,999億円へ、1四半期で630億円も増えました。しかしこの増加の主因は事業の成長ではなく、保有する投資有価証券の含み益(その他有価証券評価差額金が639億円増加)です。一方で本業の収益性を示す売上高営業利益率は、2022年3月期の13.0%から2026年3月期には2.9%まで、5期連続で低下し続けています。「PBRが下がって割安に見える」ことと「本業が稼ぐ力を取り戻している」ことは、この会社では別々に進んでいます。会社側もこの状況を意識してか、2026年7月31日に自己株式取得枠を大幅に拡大しました。詳しくは第4節で扱います。
2. 会社概要とビジネスモデル
EIZOは、医療・産業・クリエイティブ・監視/防衛/船舶・アミューズメントの各分野向けに高精度モニターを開発・生産・販売する専業メーカーです。自らを「Visual Technology Company」と位置づけ、決算短信では単一セグメントとして開示しているため、事業別の利益内訳は開示されていません(セグメント情報の開示無し)。
決算短信は売上を市場別に6区分で開示しています。2027年3月期第1四半期の内訳は、ヘルスケア(医療用モニター)84億4百万円(構成比41.9%、前年同期比+12.2%)、B&P(産業・オフィス向け)33億33百万円(同16.6%、+14.6%)、V&S(監視/防衛/船舶)35億93百万円(同17.9%、+38.2%)、アミューズメント21億1百万円(同10.5%、+60.3%)、クリエイティブワーク10億93百万円(同5.5%、▲4.9%)、その他15億6百万円(同7.5%、▲19.7%)でした。ヘルスケアが最大の売上構成比を占め、V&S・アミューズメントの伸び率が特に高い一方、クリエイティブワークとその他は減収でした。
強みと弱みの整理
強み
自己株式取得枠を4倍以上に拡大
2026年5月12日に決定した自己株式取得枠(上限40億円・150万株=発行済株式(自己株除く)の3.79%)を、2026年7月31日の取締役会でわずか2.5ヶ月後に上限170億円・550万株=13.91%へ拡大し、取得方法にToSTNeT-3(立会外買付取引)も追加しました。政策保有株式の売却で得た資金を原資にした株主還元の積み増しと整合的です。
ヘルスケア・V&S・アミューズメントが牽引しQ1は増収増益
当第1四半期の営業利益は前年同期の▲97百万円の赤字から8億7百万円の黒字に転換しました。円安ユーロ高の為替影響、欧州の組織再編・固定費削減効果、前年同期にあった新技術棟の一時費用の反動剥落が寄与しています。
実質ほぼ無借金でバランスシートは頑健
2026年6月末の有利子負債は62億円(短期借入金55億60百万円・長期借入金6億2百万円)で、自己資本1,998億円に対するD/Eレシオは0.03倍にとどまります。自己資本比率も74.8%(2026年3月末77.2%)と高水準です。
配当は過去5期にわたり期初予想どおりで安定
2023年3月期から2027年3月期予想まで、いずれも期初に公表した配当予想から増額・減額修正された実績がありません。2027年3月期は年間115.00円(前期比+5円)の予想で、Q1決算時点でも無修正です。
弱み
本業の収益性は5期連続で低下している
売上高営業利益率は2022年3月期13.0%→2023年3月期6.2%→2024年3月期4.9%→2025年3月期4.6%→2026年3月期2.9%と下がり続けました。2027年3月期の会社予想でも3.9%(3,300百万円÷85,000百万円)にとどまり、構造的な低収益から抜け出せていません。
純利益の急増・急減が有価証券売却益という非経常要因に依存
2026年3月期の純利益+76.5%増は、政策保有株式・純投資株式の売却益80億円(前期は11億円)が主因で、本業の経常利益はむしろ▲17.2%の減益でした。2027年3月期は同様の売却益を44億円と見込むため、その反動で純利益は前期比▲11.2%の減益予想です。
PBR低下の主因は保有有価証券の含み益で、事業価値の向上ではない
1株当たり純資産は2026年3月末の3,463.64円から2026年6月末は5,078.41円へ+46.6%跳ね上がりましたが、この増加の大半は投資有価証券の含み益(その他有価証券評価差額金+639億円)によるものです。株価がほぼ横ばいで推移する中でPBRが一段と下がっており、これを「割安化」とそのまま読むと実態を見誤る可能性があります。
欧州(特にドイツ)のB&P市場の需要低迷が続いている
決算短信は増益要因として欧州の組織再編・固定費削減を挙げる一方、B&P市場については「欧州、特にドイツにおける需要低迷が継続」と説明しています。B&Pの売上自体はQ1で+14.6%と増収でしたが、需要環境そのものは弱いままです。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 86,789 | 11,299 | 12,110 | 7,794 | 76.3% |
| 2023/03 | 80,849 | 5,002 | 6,126 | 5,862 | 77.3% |
| 2024/03 | 80,471 | 3,908 | 6,326 | 5,454 | 78.5% |
| 2025/03 | 80,493 | 3,706 | 4,555 | 4,148 | 78.8% |
| 2026/03 | 81,308 | 2,365 | 3,772 | 7,323 | 77.2% |
| 2027/03会社予想 | 85,000 | 3,300 | 4,600 | 6,500 | — |
注: 2024年10月1日付で1株を2株にする株式分割を実施したため、EPSの系列に断絶があります。 2024年3月期のEPS(132.56円)は2025年3月期決算短信が分割後ベースで遡及開示した数値ですが、2022年3月期・2023年3月期は会社が分割後ベースの数値を公表していません。ここでは比較のため、当サイトが会社公表値(365.61円・280.97円)を2で除して算出した参考値(182.81円・140.49円)を掲載しています。売上高・各段階利益は株数に依存しないため、分割の影響を受けません。
この6期を並べて読み取れることは3つあります。
売上高はこの5期、8兆円台前半でほぼ横ばいだった。 2022年3月期の867億89百万円から2026年3月期の813億8百万円まで、大きな増減はなく推移しています。2027年3月期の会社予想は850億円(前期比+4.5%)で、5期ぶりにまとまった増収を見込んでいます。
一方で営業利益は右肩下がりが続いている。 112億99百万円(2022年3月期)から23億65百万円(2026年3月期)まで、5期連続で減少しました。売上高がほぼ横ばいの中でこれだけ営業利益が縮小しているということは、原価率や販管費の増加など、コスト側の構造変化が続いていることを意味します。2027年3月期の会社予想は33億円(前期比+39.5%)への回復を見込みますが、これでも2022年3月期の3割弱の水準にとどまります。
純利益は営業利益・経常利益の動きと連動していない。 2026年3月期は経常利益が前期比▲17.2%の減益だったにもかかわらず、純利益は+76.5%増の73億23百万円でした。逆に2027年3月期は営業利益・経常利益とも増益予想である一方、純利益は▲11.2%の減益予想です。この「利益の質」のねじれが、第4節の中心的な論点になります。
4. 本業の収益力低下と保有有価証券の含み益—PBR0.62倍の中身
Q1決算の内訳:15.5%増収・営業黒字転換
2026年7月31日発表のQ1(2026年4〜6月)決算は、以下の内容でした。
| 項目 | 2026年3月期Q1 | 2027年3月期Q1 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 173億38百万円 | 200億31百万円 | +15.5% |
| 売上総利益(率) | — | 69億37百万円(34.6%、+1.0pt) | — |
| 販管費 | — | 61億30百万円 | +3.2% |
| 営業利益 | ▲97百万円(赤字) | 8億7百万円 | 黒字転換(+9億4百万円) |
| 経常利益 | 6億87百万円 | 15億74百万円 | +129.0% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 3億8百万円 | 12億15百万円 | +294.7% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月31日開示)
当第1四半期(2026年4〜6月)の増益要因として、決算短信は円安ユーロ高の為替影響、欧州の組織再編・固定費削減効果、前年同期にあった新技術棟の一時費用の反動剥落を挙げています。営業外収益では受取配当金が7億32百万円(前年同期6億13百万円)と大きく、営業利益8億7百万円から経常利益15億74百万円への上乗せ分(7億67百万円)の主因になっています。市場別では、当第1四半期のヘルスケア市場・V&S市場・アミューズメント市場が牽引役となった一方、B&P市場は欧州、特にドイツにおける需要低迷が継続していると説明されています。
なお、通期予想に対するQ1時点の進捗率は、売上高ベースで23.6%(200億31百万円÷850億円)、営業利益ベースで24.5%(8億7百万円÷33億円)、経常利益ベースで34.2%(15億74百万円÷46億円)、純利益ベースで18.7%(12億15百万円÷65億円)です。経常利益の進捗が高い一方、純利益の進捗が相対的に低いのは、後述する特別利益(投資有価証券売却益)の計上時期がQ1には集中していないためとみられます。
5期連続の営業減益はどこで止まるか
売上高がほぼ横ばいで推移する一方、売上高営業利益率は次のように下がり続けてきました。
| 期 | 2022/03 | 2023/03 | 2024/03 | 2025/03 | 2026/03 | 2027/03(予) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高営業利益率 | 13.0% | 6.2% | 4.9% | 4.6% | 2.9% | 3.9% |
出典:各期決算短信1ページ目「売上高営業利益率」欄
2027年3月期の会社予想は3.9%への反転を見込んでいますが、これでも2022年3月期の3割程度の水準にすぎません。Q1の営業利益黒字転換は、為替の追い風と前年同期にあった一時費用(新技術棟関連)の反動剥落という、性質の異なる複数の要因が重なった結果です。このうち為替は市況次第で反転しうる要因であり、Q1の黒字転換だけをもって収益性低下に歯止めがかかったと判断するのは早計です。 次の第2四半期決算で、この反転が一時的なものか構造的な改善かを確認する必要があります。
純資産急増とPBR0.62倍の主因は保有有価証券の含み益
2026年6月末の財政状態は、前期末から次のように変化しました。
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 1,774億82百万円 | 2,671億53百万円 | +896億70百万円 |
| 純資産 | 1,369億30百万円 | 1,998億54百万円 | +629億23百万円 |
| 自己資本比率 | 77.2% | 74.8% | ▲2.4pt |
| 投資有価証券 | 644億42百万円 | 1,576億26百万円 | +931億84百万円 |
| 繰延税金負債 | 140億54百万円 | 434億91百万円 | +294億37百万円 |
| その他有価証券評価差額金 | 386億31百万円 | 1,025億54百万円 | +639億23百万円 |
| 1株当たり純資産(BPS) | 3,463.64円 | 5,078.41円 | +46.6% |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(貸借対照表・1株当たり情報)
決算短信は、この変化の理由を次のように説明しています。
「資産、負債及び純資産の状況は、前連結会計年度末と比較し、保有する有価証券の価格が大幅に上昇したことから、資産の部において投資有価証券が大幅に増加しました。それに合わせて負債の部では繰延税金負債、純資産の部ではその他有価証券評価差額金がそれぞれ増加しました。」
四半期純利益12億15百万円に対し、その他の包括利益(その他有価証券評価差額金+639億23百万円、為替換算調整勘定+5億12百万円、退職給付調整▲1億17百万円、合計+643億18百万円)を合わせた四半期包括利益は655億33百万円にのぼります。純利益の50倍以上にあたる規模のその他の包括利益が、株式市況の上昇という一過性の要因から生じていることになります。
この結果として、PBRは一段と下がりました。同じ株価水準(3,135円)で機械的に計算すると、前期末BPSベースでは0.91倍相当(3,135円÷3,463.64円)だったのに対し、当第1四半期末BPSでは0.62倍(3,135円÷5,078.41円)まで下がる計算になります。株価そのものはこの間ほぼ横ばいで推移しており、PBRの低下分は主として保有有価証券の含み益によるBPSの急増で説明でき、事業価値の向上を反映したものではありません。 なお株主資本合計自体は899億91百万円から885億97百万円へ微減しています(利益剰余金は860億21百万円から850億88百万円へ、配当支払等による減少)。純資産の増加は、その他の包括利益累計額(含み益等)の増加によるところが大きい構図です。
純利益急増・急減の主因は投資有価証券売却益(利益の質)
2026年3月期の純利益+76.5%増と、2027年3月期の▲11.2%減益予想は、いずれも本業の損益ではなく特別損益の規模で説明できます。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(会社予想) |
|---|---|---|
| 経常利益 | 37億72百万円(前期比▲17.2%) | 46億円(前期比+21.9%) |
| 投資有価証券売却益 | 79億99百万円(前期は11億円) | 約44億円(会社見込み) |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 73億23百万円(前期比+76.5%) | 65億円(前期比▲11.2%) |
出典:2026年3月期決算短信、2027年3月期第1四半期決算短信
決算短信は、2026年3月期の特別損益について次のように説明しています。
「特別利益として、今後の成長投資を見据えて政策保有株式及び純投資目的株式の一部売却を進めたことにより、投資有価証券売却益7,999百万円(前期は1,100百万円)を計上しました。特別損失としては、1,206百万円を計上しました。主な内容は…欧州での営業組織体制を再構築するため人員の適正化を行ったこと、開発及び生産拠点を一部閉鎖したこと…事業構造改善費用として441百万円…欧州の開発製造会社において固定資産の減損497百万円を計上…」
つまり2026年3月期は、本業の経常利益が減益だったにもかかわらず、政策保有株式の売却益80億円が特別損失12億円を大きく上回ったことで、純利益は前期比+76.5%という大幅増益に見えました。2027年3月期は、経常利益こそ+21.9%の増益予想ですが、同様の売却益を約44億円と、前期の80億円より少なく見込んでいるため、純利益は前期比▲11.2%の減益予想になっています。「経常利益は増える予想なのに純利益は減る予想」という一見奇妙な構図は、特別利益(投資有価証券売却益)の規模の違いで説明がつきます。 本業の損益だけを見れば2027年3月期は改善方向にあると評価できますが、純利益の見た目の増減は本業の実力とは別の理由で動いている点に注意が必要です。
自己株式取得枠の急拡大:低PBRへの対応か
会社は2026年5月12日、自己株式取得(上限40億円・150万株=発行済株式(自己株控除後)の3.79%、取得期間2026年5月25日〜2027年4月30日)を決定しました。ところが、そのわずか2.5ヶ月後にあたる2026年7月31日(Q1決算と同日)の取締役会で、この枠を上限170億円・550万株=13.91%へ、取得方法にToSTNeT-3(自己株式立会外買付取引)を追加したうえで、取得期間も2027年5月24日まで延長する決定をしています。
| 決定日 | 上限金額 | 上限株式数 | 発行済株式(自己株除く)比 | 取得期間 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年5月12日(当初) | 40億円 | 150万株 | 3.79% | 2026/5/25〜2027/4/30 |
| 2026年7月31日(拡大後) | 170億円 | 550万株 | 13.91% | 2026/5/25〜2027/5/24 |
出典:2027年3月期第1四半期決算短信(後発事象)
上限金額で4.25倍、株式数で3.67倍という拡大幅は小さくありません。2026年3月期に政策保有株式・純投資株式の売却で得た約80億円の資金の使途を、成長投資だけでなく株主還元(自己株買い)にも大きく振り向ける方針に転じたと解釈できます。PBR0.62倍という水準そのものを会社が問題視し、対応を強めた動きと整合的です。 ただし、この枠が実際にどこまで消化されるかは今後の開示で確認する必要があります。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 60円 | — | 32.8% |
| 2023/03 | 62.5円 | 62.5円 | 0円 | 44.5% |
| 2024/03 | 100円 | 100円 | 0円 | 75.4% |
| 2025/03 | 105円 | 105円 | 0円 | 104.2% |
| 2026/03 | 110円 | 110円 | 0円 | 60.9% |
| 2027/03会社予想 | 115円 | 115円 | — | 68.6% |
- 2022/03:2024年10月の株式分割(1株→2株)を考慮し、当サイトが2で除して算出した参考値。実際に支払われた金額は中間60.00円・期末60.00円・年間120.00円(会社は分割後ベースでの遡及開示をしていない)。
- 2023/03:同様に分割を考慮した参考値。実際に支払われた金額は中間60.00円・期末65.00円・年間125.00円。
- 2024/03:2025年3月期決算短信が分割後ベースで遡及開示した数値。実際に支払われた金額は中間100.00円・期末100.00円・年間200.00円。
- 2025/03:株式分割が期中(2024年10月1日)に発生した期。中間配当は分割前に105.00円で、期末配当は分割後に52.50円で支払われた。2026年3月期決算短信の注記により「分割を考慮した場合の第2四半期期末配当金は52円50銭、年間配当金は105円00銭」と明記されている。
- 2026/03:期初予想どおり無修正で着地。
- 2027/03:期初(2026年5月12日開示)予想から、2026年7月31日のQ1決算時点でも無修正。
配当は2022年3月期から2027年3月期予想まで、額面上は60.00円→115.00円へと拡大していますが、これは2024年10月の株式分割(1株→2株)を挟んでいるため単純な増配率としては読めません。分割後ベースにそろえると、実質的な年間配当は60.00円(2022年3月期)→62.50円(2023年3月期)→100.00円(2024年3月期)→105.00円(2025年3月期)→110.00円(2026年3月期)→115.00円(2027年3月期予想)という推移です。
特筆すべきは、2023年3月期から2027年3月期予想まで5期連続で、期初予想からの増額・減額修正が一度も無いことです。 2025年3月期は分割が期中(2024年10月1日)に発生した変則的な期で、中間配当は分割前に105.00円、期末配当は分割後に52.50円という形で支払われましたが、2026年3月期決算短信の注記により「分割を考慮した場合の年間配当金は105円00銭」と明記されています。
2027年3月期は年間115.00円(中間57.50円・期末57.50円)を予想しており、2026年7月31日のQ1決算時点でも無修正です。会社予想ベースの配当利回りは3.67%(株価3,135円、年間配当115円)で、この利回りは会社が明示している予想にもとづくものであり、そのまま参考にできます。
一方で、配当性向は2026年3月期の60.9%から2027年3月期予想では68.6%へ上昇しています。第4節で見たとおり、両期とも純利益の相当部分が投資有価証券売却益という非経常要因によるものであり、本業の稼ぐ力だけで配当を賄えているわけではない点は踏まえておく必要があります。
6. 会社の現状と直近の動き
2026年7月31日発表の第1四半期(2026年4〜6月)決算では、売上高200億31百万円(前年同期比+15.5%)・営業利益8億7百万円(赤字から黒字に転換)という実績でした。当第1四半期の市場別売上は、ヘルスケア84億4百万円(前年同期比+12.2%)・V&S35億93百万円(同+38.2%)・アミューズメント21億1百万円(同+60.3%)・B&P33億33百万円(同+14.6%)が増収、クリエイティブワーク10億93百万円(同▲4.9%)・その他15億6百万円(同▲19.7%)が減収でした。
損益面では、売上原価130億94百万円に対し売上総利益は69億37百万円(売上総利益率34.6%、前年同期比+1.0pt)、販管費は61億30百万円(同+3.2%)でした。売上総利益率の改善幅が販管費の増加率を上回ったことが、営業黒字転換につながっています。
財政状態は、前述のとおり保有有価証券の含み益拡大により総資産・純資産とも大きく増加し、自己資本比率は77.2%から74.8%へ低下しました。有利子負債は短期借入金55億60百万円・長期借入金6億2百万円の合計62億円で、自己資本1,998億54百万円に対するD/Eレシオは0.03倍です。有利子負債・D/Eレシオの水準自体はごく低く、増減の理由について決算短信に具体的な設備投資・M&Aとの関連の記載は見当たらず、本記事が確認した一次情報からは特定できませんでした。
会社は2027年3月期の通期業績予想(売上高850億円・営業利益33億円・経常利益46億円・純利益65億円)、および配当予想(年間115.00円)をいずれも無修正で据え置いています。一方で、前述のとおり自己株式取得枠は大幅に拡大されており、業績予想面では保守的姿勢を崩さない一方、株主還元の枠組みでは積極的な変更を行ったという、非対称な動きが見られます。
7. 業界とセクターの状況
高精度モニター(業務用ディスプレイ)市場は、汎用の家庭用ディスプレイ市場とは異なり、医療画像診断・産業用検査・監視/防衛といった用途ごとの認証・仕様適合が参入障壁になっています。EIZOはこの専業ポジションにより、汎用パネルメーカーとの単純な価格競争を避けられる一方、市場規模自体が家庭用ディスプレイほど大きくないため、規模の経済で稼ぐことが構造的に難しいという制約があります。売上高がこの5期ほぼ横ばいで推移してきたのは、この市場規模の制約と無縁ではないと考えられます。
為替は、このセクターに共通する外部要因です。会社は為替感応度を開示しており、1円の円安でユーロは+1億円(増益)、米ドルは▲8000万円(減益)に働くとされています。ユーロ圏(欧州)向け売上の比重が大きい会社ほど、円安ユーロ高が業績の追い風になりやすい一方、米ドルとは逆方向に効く点はこのセクター、特に欧州向け売上比率の高い企業に共通する特徴です。
政策保有株式・純投資株式を厚く保有する慣行は、日本の製造業に広く見られるものであり、EIZOに固有の事情ではありません。ただし、第4節で見たとおり、EIZOの場合はこの保有株式の時価変動が純資産・自己資本比率・特別損益に与える影響の大きさが際立っており、事業そのものの規模に対する保有有価証券の比率の高さが、PBRという指標の解釈を難しくしている一因になっています。単一セグメント開示のため、事業別の収益構造(医療向けとその他向けでどちらが高採算かなど)を本記事が参照した一次情報から確認することはできませんでした。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期第1四半期決算は、本記事の執筆時点(2026年9月27日)ですでに2026年7月31日に発表済みです。第4節・第6節の内容がその実績です。表には、まだ発表日が確定していない第2四半期以降の決算のみを記載しています。決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定であり、会社が公表した確定日ではありません。
9. 想定されるカタリスト
Q1で807百万円だった営業利益が、通期予想3,300百万円(営業利益率3.9%)に対してどこまで進捗するかを確認する最初の機会。5期連続で低下してきた営業利益率に歯止めがかかるかが焦点。
2026年7月31日に4倍以上へ拡大した枠がどの程度実際に消化されるかで、株主還元姿勢の実行力が問われる。ToSTNeT-3(立会外買付取引)の活用有無も確認点。
会社開示の感応度は1円の円安でユーロ+1億円(増益)・米ドル▲8000万円(減益)。Q1の増益は円安ユーロ高が寄与要因の一つだった。
2027年3月期の純利益予想(65億円)は投資有価証券売却益約44億円を織り込んでいる。売却が計画どおり進むか、あるいは市況次第で規模が変わるかが純利益の着地を左右する。
10. 想定されるリスク
5期連続で低下してきた営業利益率が、再び悪化するリスク。 Q1の黒字転換は円安ユーロ高と一時費用の反動剥落という要因が大きく、これらが剥落すれば収益性低下トレンドに逆戻りする可能性があります。2027年3月期の会社予想でも営業利益率は3.9%にとどまり、2022年3月期の13.0%とは水準が大きく異なります。
保有有価証券の含み益が市況次第で反転するリスク。 2026年6月末の純資産急増・BPS急増・PBR低下は、投資有価証券の含み益拡大という株式市況要因によるものです。市況が反転すれば、その他有価証券評価差額金・純資産・BPSはすべて逆方向に動き、PBRの計算基盤自体が変わります。
純利益予想が投資有価証券売却益の実現に依存しているリスク。 2027年3月期の純利益予想65億円は、約44億円の投資有価証券売却益を織り込んでいます。売却が計画どおり進まなければ、純利益は予想を下回る可能性があります。
欧州(特にドイツ)のB&P市場の需要低迷が長期化するリスク。 決算短信は継続的にこの点を課題として挙げており、Q1時点でも解消していません。欧州の組織再編・固定費削減はコスト側の対応であり、需要そのものの回復を保証するものではありません。
配当性向の上昇リスク。 配当自体は過去5期無修正で安定していますが、配当性向は2026年3月期60.9%から2027年3月期予想68.6%へ上昇しています。本業の稼ぐ力に対して配当水準が先行している状態が続けば、投資有価証券売却益に依存しない持続的な原資確保が課題になります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
EIZOの2027年3月期第1四半期は、売上高+15.5%・営業利益黒字転換・経常利益+129.0%・純利益+294.7%という増収増益決算でした。株価3,135円に対するPBR0.62倍・予想配当利回り3.67%は、選定条件(配当利回り3%以上・PBR1倍以下)を満たす水準です。しかし、このPBRの低さの多くは、保有有価証券の含み益によって純資産が1四半期で630億円増えたことによるもので、本業の売上高営業利益率は2022年3月期13.0%から2026年3月期2.9%へ5期連続で低下したままです。
判断の分かれ目は、PBR0.62倍・自己株式取得枠の4倍拡大という現在の状況を「株式市況の含み益と株主還元強化が重なった、割安さが際立つ局面」と見るか、「事業価値の向上を伴わない一時的な純資産膨張の上に成り立つ、見かけ上の割安さ」と見るかです。
前者と見るなら、実質無借金の頑健な財務、円安ユーロ高や欧州の固定費削減効果によるQ1の増益、そして会社自身が自己株式取得枠を大幅に拡大したという株主還元姿勢の強化が、株価の下値を支える材料になります。後者と見るなら、含み益は株式市況が反転すれば縮小しうるものであり、本業の営業利益率が5期連続で低下してきたという事実は、Q1の1四半期分の黒字転換だけでは覆っていません。ROE5.6%・ROA2.3%(いずれも2026年3月期実績)という水準も、高いとは言えない状態が続いています。
次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期決算です。営業利益率の改善がQ1限りのものか、通期予想3.9%に向けて持続するものかを確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2026年11月頃公表予定の第2四半期決算で、営業利益率が通期予想の3.9%(3,300百万円÷85,000百万円)からさらに悪化し、収益性低下に歯止めがかからないことが確認された場合。
- 保有有価証券の時価が下落し、その他有価証券評価差額金・純資産・PBRの計算基盤が反転(悪化)した場合。2026年6月末の含み益急増(投資有価証券が1四半期で932億円増加)は市況次第で反転しうる。
- 2026年7月31日に拡大した自己株式取得枠(上限170億円・550万株、取得期間2027年5月24日まで)の消化が進まず、株主還元姿勢が実行を伴わなかった場合。
- 会社が2027年3月期の業績予想(売上高850億円・営業利益33億円・経常利益46億円・純利益65億円)、または配当予想(年間115.00円)を減額修正した場合。過去5期(2023年3月期〜2027年3月期予想)は期初予想どおりの着地が続いており、これが崩れることを意味する。
よくある質問
- EIZOの配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の会社予想は年間115.00円(中間57.50円・期末57.50円)で、2026年7月31日のQ1決算時点でも無修正のまま据え置かれています。100株なら年間11,500円です(税引前)。2026年9月25日時点の株価3,135円に対する予想配当利回りは3.67%です。
- なぜ2026年3月期は経常利益が減益なのに純利益は+76.5%も増えたのですか?
- 2026年3月期は経常利益が前期比▲17.2%の減益でしたが、政策保有株式・純投資株式の一部売却により投資有価証券売却益7,999百万円(前期は1,100百万円)を特別利益として計上したため、純利益は前期比+76.5%増の7,323百万円となりました。2027年3月期は同様の売却益を約4,400百万円と見込んでいますが、前期の7,999百万円という高い水準からの反動で、純利益は前期比▲11.2%の減益予想です。
- 株式分割はいつ行われましたか?
- 2024年10月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を実施しました。この記事のEPS・配当の系列は分割後ベースにそろえていますが、2022年3月期・2023年3月期は会社が分割後ベースの数値を公表していないため、当サイトが2で除して算出した参考値(EPS182.81円・140.49円)を使用しています。
参考文献・引用元
- 01EIZO株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年7月31日開示。連結業績(売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益・EPS)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・1株当たり純資産)、配当の状況、2027年3月期通期業績予想(無修正)、市場別売上、四半期包括利益計算書、貸借対照表(投資有価証券・繰延税金負債・その他有価証券評価差額金等)、自己株式取得枠拡大に関する後発事象を参照。 / 2026/07/31 開示
- 02EIZO株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月12日開示。2025年3月期・2026年3月期の通期実績、配当の状況(2026年3月期実績・2027年3月期期初予想)、2027年3月期通期業績予想(期初、為替前提1ユーロ=175円・1米ドル=160円、為替感応度)、特別損益(投資有価証券売却益7,999百万円等)の説明、自己株式取得の当初決定(上限40億円・150万株)、売上高営業利益率の5期推移を参照。 / 2026/05/12 開示
- 03EIZO株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年5月8日開示。2024年3月期・2025年3月期の通期実績、配当の状況、株式分割後ベースでの2024年3月期EPS(132.56円)の遡及開示を参照。 / 2025/05/08 開示
- 04EIZO株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年5月9日開示。2023年3月期・2024年3月期の通期実績(分割前ベース)、配当の状況を参照。 / 2024/05/09 開示
- 05EIZO株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年5月12日開示。2022年3月期・2023年3月期の通期実績(分割前ベース)、配当の状況を参照。 / 2023/05/12 開示
- 06EIZO株式会社「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2022年5月11日開示。2021年3月期・2022年3月期の通期実績(分割前ベース)、配当の状況を参照。 / 2022/05/11 開示
- 07株探「EIZO(6737)」株価ページ
2026年9月25日15:30時点の株価(3,135円)を参照。同ページのPER・PBR・利回り・時価総額は株探算出の参考値であり、本記事のmetricsには採用せず、会社開示の株式数(2026年6月末時点39,353,845株)と当該終値から自社算出した値、および会社予想ベースの配当利回りを使用した。 / 2026/09/25 開示