INTLOOP(9556) 増収でも純利益-62.4%、販管費急増とM&A投資の中身
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
INTLOOP株式会社
2026/09/18 時点
株価
2,392円
時価総額
225億円
配当利回り
0.00%
年間0円
PER
43.8倍
PBR
3.39倍
ROE
8.0%
ROA
8.6%
経常利益ベース
自己資本比率
36.4%
有利子負債
56億円
D/Eレシオ
0.84倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2026年7月期は売上高40,399百万円(前期比+20.4%)と増収が続いた一方、親会社株主に帰属する当期純利益は514百万円(同-62.4%)と大幅減益だった。売上総利益率はむしろ27.4%から30.1%へ改善しており、減益の直接要因は販売費及び一般管理費の+54.4%という急増にある。
- 販管費急増の背景には、ハイレイヤー・デリバリー人材の採用強化、期中に新規連結した2社(コムテック、クロスシステムサービス)に伴うのれん償却等の統合コスト、AIエージェント「INTLOOP Pocket」開発などの無形固定資産投資が重なっている。特別損失(投資有価証券評価損100百万円)と非支配株主に帰属する当期純利益の拡大(+90.5%)も、親会社株主帰属純利益をさらに押し下げた。
- D/Eレシオは0.29倍(2025年7月期末)から0.84倍(2026年7月期末)へ急上昇した。M&A・システム投資の資金を借入で賄った結果で、2026年8月以降のディクスホールディングス持株比率引き上げ・アンダーワークス完全子会社化に伴う新規借入2,170百万円により、2027年7月期はさらに上昇する見込みである。
- 2027年7月期の会社予想(レンジ中央値で営業利益4,050百万円、前期実績1,337百万円から大幅増益)は、新規連結子会社のフル期寄与を前提にしている可能性が高いが、決算短信に具体的な達成根拠の記載は無い。増収基調とM&A投資の継続を成長フェーズと見るか、営業CF急減・D/Eレシオ上昇を財務リスクの兆候と見るかが、この銘柄の評価の分かれ目になる。
目次11項目
1. 概要
2026年9月18日時点で、株価2,392円・PER43.82倍・PBR3.39倍・ROE8.0%・自己資本比率36.4%という水準です(PER・PBRは2026年7月期の実績EPS・実績BPSから算出)。
INTLOOPの2026年7月期(2025年8月〜2026年7月)は、売上高40,399百万円(前期比+20.4%)と2桁の増収が続きました。売上総利益率も27.4%から30.1%へ改善しており、稼ぐ力そのものは強まっているように見えます。しかし営業利益は1,337百万円(同-38.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は514百万円(同-62.4%)と、増収とは対照的な大幅減益で着地しました。 なぜ売上総利益率が改善しているのに、ここまで利益が沈んだのか。第4節で販売費及び一般管理費の急増(+54.4%)を分解して整理します。
あわせて、上場来無配の方針が続いていること、そしてM&Aやシステム投資の資金を借入で賄った結果、有利子負債とD/Eレシオ(負債資本比率)が1年で急上昇したことにも触れます。2027年7月期の会社予想は大幅な増益計画を掲げていますが、その達成可否を判断するための材料も本記事で整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
INTLOOPは、フリーランスを含む高度専門人材(コンサルタント・ITエンジニア等、約57,000人のネットワーク)を活用した人材紹介・SES(システムエンジニアリングサービス)・コンサルティング事業を展開する会社です。事業セグメントは「プロフェッショナル人材ソリューション&コンサルティング事業」の単一セグメントで、事業別の売上構成比は開示されていません。
中長期経営計画「INTLOOP “VISION2030”」を掲げ、2030年7月期に売上高1,000億円・営業利益150億円を目標にしています。達成に向けた柱は、既存フリーランス事業の強化、コンサル領域の拡充、独自AIエージェント「INTLOOP Pocket」の開発などAI活用、そしてM&Aによる新規事業領域の創出です。2026年7月期は期中に2社(コムテック株式会社、クロスシステムサービス株式会社)を新規連結し、1社(株式会社ヴィータ)を連結から除外しました。決算後の2026年8月にも、ディクスホールディングス株式会社の持株比率引き上げ(58.3%→84.7%)とアンダーワークス株式会社の完全子会社化を実施しており、M&Aによる拡大戦略は継続中です。
強みと弱みの整理
強み
2桁増収が続き、売上総利益率も改善
2026年7月期は売上高40,399百万円(前期比+20.4%)と2桁増収が続き、売上総利益率も27.4%から30.1%へ改善しました。IT人材需要・生成AI導入機運という追い風のなかで、事業規模の拡大と採算の両方が進んでいます。
M&Aとテック投資による成長フェーズ
中期経営計画「VISION2030」のもと、期中に2社を新規連結し、AIエージェント「INTLOOP Pocket」の開発に無形固定資産投資(ソフトウエア仮勘定は366百万円から1,419百万円へ増加)を進めています。決算後にも2社のM&Aを実行しており、事業領域の拡張が続いています。
幅広い専門人材ネットワーク
約57,000人のフリーランス・専門人材ネットワークが同社の供給基盤です。ネットワークの規模自体が、案件対応力や紹介スピードの競争力につながっていると考えられます。
弱み
販管費の急増で増収が利益に結びついていない
2026年7月期の販売費及び一般管理費は前期比+54.4%と急増し、売上総利益率の改善分を打ち消して営業利益は-38.8%(1,337百万円)に落ち込みました。採用強化・M&A統合コスト・AI投資が同時に利益を圧迫しています。
D/Eレシオの急上昇と営業CFの急減
D/Eレシオは0.29倍(2025年7月期末)から0.84倍(2026年7月期末)へ急上昇し、営業キャッシュ・フローは1,739百万円から182百万円へ大きく減少しました。M&A・投資の資金を借入で賄う構図が続いており、財務面の余力は薄くなっています。
上場来無配
2025年7月期・2026年7月期とも年間配当0円で、2027年7月期の会社予想も0円です。配当より成長投資を優先する方針が明確な一方、インカムゲインを求める投資家にとっては判断材料が乏しい銘柄です。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021/07 | 9,250 | 401 | 419 | 342 | — | — |
| 2022/07 | 13,100 | 793 | 772 | 517 | — | — |
| 2023/07 | 17,800 | 1,110 | 1,110 | 795 | — | — |
| 2024/07 | 27,100 | 1,510 | 1,540 | 902 | — | — |
| 2025/07 | 33,551 | 2,186 | 2,217 | 1,367 | 1,739 | 45.2% |
| 2026/07 | 40,399 | 1,337 | 1,366 | 514 | 182 | 36.4% |
| 2027/07会社予想 | 49,250 | 4,050 | 3,750 | 2,450 | — | — |
この7期の推移から読み取れることは3つあります。
1つ目は、2021年7月期から2025年7月期までの一貫した拡大です。 売上高は9,250百万円から33,551百万円へ、営業利益は401百万円から2,186百万円へ、いずれもほぼ毎期増加しています。M&Aや採用拡大を通じた成長投資が、この期間は増収・増益の両方に結びついていました。
2つ目は、2026年7月期に増収と減益が同時に起きたことです。 売上高は40,399百万円まで伸び続けた一方、営業利益は1,337百万円へ4割近く減少しました。過去の「増収=増益」という関係がこの期で崩れています。詳しい要因は第4節で分解します。
3つ目は、2027年7月期の会社予想が急回復を見込んでいることです。 会社予想はレンジ形式で開示されており、frontmatterには中央値(売上高49,250百万円・営業利益4,050百万円・経常利益3,750百万円・純利益2,450百万円)を採用しています。営業利益は前期実績1,337百万円から大幅な増益計画ですが、決算短信にはこの急回復の具体的な根拠は記載されていません。この点は第6節・第10節で改めて扱います。
4. 増収でも純利益が-62.4%に沈んだ理由
2026年7月期は売上高が前期比+20.4%と伸びました。売上総利益率も27.4%から30.1%へ改善しています。それにもかかわらず、親会社株主に帰属する当期純利益は514百万円(同-62.4%)まで落ち込みました。この乖離がどこで生まれたのかを、損益計算書の段階ごとに分解します。
| 項目 | 2025年7月期 | 2026年7月期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 33,551百万円 | 40,399百万円 | +20.4% |
| 売上総利益(売上総利益率) | 9,184百万円(27.4%) | 12,140百万円(30.1%) | +32.2% |
| 販売費及び一般管理費 | 6,997百万円 | 10,802百万円 | +54.4% |
| 営業利益 | 2,186百万円 | 1,337百万円 | -38.8% |
| 経常利益 | 2,217百万円 | 1,366百万円 | -38.4% |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 150百万円 | 286百万円 | +90.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,367百万円 | 514百万円 | -62.4% |
出典:決算短信(連結損益計算書)
段階を追うと、利益が削れていく場所は3つに分かれます。
第一に、販売費及び一般管理費が+54.4%と、売上総利益の伸び(+32.2%)を大きく上回るペースで増えました。 これが営業利益を-38.8%に押し下げた直接要因です。決算短信から確認できる内訳は、(1)ハイレイヤー人材・デリバリー人材の採用強化による人件費増、(2)期中に新規連結した2社(コムテック株式会社、クロスシステムサービス株式会社)に伴うのれん償却・統合費用、(3)AIエージェント「INTLOOP Pocket」開発など無形固定資産投資(ソフトウエア仮勘定は366百万円から1,419百万円へ急増、投資キャッシュ・フローでは「無形固定資産の取得による支出」1,053百万円)の3つです。それぞれの金額別の内訳までは、本記事で参照した決算短信の範囲からは特定できませんでした。
第二に、特別損失が営業外・経常段階の下で追加の下押しになりました。 投資有価証券評価損100百万円(前期は計上なし)と固定資産除却損8百万円を計上し、税金等調整前当期純利益は1,258百万円となりました。また支払利息は29百万円から61百万円へ倍増しており、後述する借入増加のコストが表面化し始めています。
第三に、非支配株主に帰属する当期純利益が150百万円から286百万円へ+90.5%拡大し、親会社株主の取り分をさらに圧迫しました。 M&Aで新規連結した子会社に非支配株主持分が存在する場合、連結利益が増えても親会社株主に帰属する部分はその分目減りします。営業利益の減少(-38.8%)よりも親会社株主帰属純利益の減少(-62.4%)の方が大きい理由は、この非支配株主帰属利益の拡大と特別損失の計上が重なったためです。
まとめると、2026年7月期の大幅減益は「一つの大きな失敗」によるものではなく、採用強化・M&A統合・AI投資という複数の先行投資が同じ期に重なったことと、非支配株主帰属利益の拡大・特別損失が追い打ちをかけた結果です。 売上総利益率が改善している点は、事業そのものの採算が崩れているわけではないことを示しています。問題は、その改善分を上回るペースで先行コストを積み増したことにあります。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2025/07 | 0円 | 0円 | 0円 | — |
| 2026/07 | 0円 | 0円 | 0円 | — |
| 2027/07会社予想 | 0円 | 0円 | — | — |
- 2025/07:上場来無配。成長投資(採用・M&A・AI開発)を優先する方針。
- 2026/07:上場来無配を継続。配当性向・純資産配当率は非開示(「-」)。
- 2027/07:会社予想も年間配当0円。営業利益の急回復計画を掲げる一方、配当方針の転換は示されていない。
INTLOOPは上場来無配です。2025年7月期・2026年7月期とも年間配当0円で、配当性向・純資産配当率はいずれも「-」(非開示)となっています。2027年7月期の会社予想も年間配当0円で、配当より成長投資(採用・M&A・AI開発)を優先する方針が続いています。
2027年7月期の会社予想は営業利益・純利益とも大幅な増益計画になっていますが、その利益成長が配当政策の転換につながるかどうかは、現時点の決算短信からは読み取れません。 配当を判断材料に加えたい投資家にとっては、この点が引き続き注視ポイントになります。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態。 総資産は13,631百万円(2025年7月期末)から18,294百万円(2026年7月期末)へ増加し、自己資本比率は45.2%から36.4%へ低下しました。のれんは805百万円から1,097百万円へ、ソフトウエア仮勘定は366百万円から1,419百万円へ、いずれもM&Aとテック投資を反映して増加しています。
有利子負債とD/Eレシオ。 2026年7月期末の有利子負債は短期借入金300百万円・1年内返済予定の長期借入金1,235百万円・長期借入金4,017百万円・リース債務49百万円の合計5,601百万円で、前期末の1,808百万円から3倍以上に増えました。自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.29倍から0.84倍へ急上昇しています。決算短信・後発事象の開示から、この増加はM&A資金や無形固定資産投資(AIエージェント開発など)を借入で調達した結果と確認できます。自己資本比率の低下とD/Eレシオの上昇は表裏一体で、「資産のうち自前の割合が減り、かつ自前の資本に対する借入の比率が増えた」という同じ動きを2つの指標から見ていることになります。
キャッシュ・フロー。 営業キャッシュ・フローは1,739百万円から182百万円へ大きく減少し、税金等調整前当期純利益1,258百万円に対して見合わない水準まで縮小しました。主因は売上債権(受取手形・売掛金及び契約資産)の増加659百万円と法人税等の支払948百万円です。投資キャッシュ・フローは△2,417百万円(子会社株式取得385百万円、敷金差入386百万円、無形固定資産取得1,053百万円など)、財務キャッシュ・フローは+3,676百万円(長期借入金の借入5,080百万円が主因)で、現金期末残高は4,071百万円から5,533百万円へ増加しました。現金残高が増えているのは、借入による資金調達が投資・営業の支出を上回ったためであり、本業のキャッシュ創出力が強まった結果ではない点に注意が必要です。
2027年7月期の会社業績予想。 会社は売上高48,000〜50,500百万円、営業利益3,500〜4,600百万円、経常利益3,200〜4,300百万円、親会社株主帰属当期純利益2,100〜2,800百万円というレンジ形式で予想を開示しています(本記事のfrontmatterではレンジの中央値を使用)。中央値ベースで営業利益は前期実績1,337百万円から+203%という急回復計画です。決算短信にはこの回復ペースの具体的な根拠(新規連結子会社の寄与度など)は記載されていません。
重要な後発事象。 決算短信と同日(2026年9月11日)付で、2026年8月3日に連結子会社ディクスホールディングス株式会社の株式を追加取得し持株比率を58.3%から84.7%に引き上げたこと(取得原価720百万円)、2026年8月3日〜6日にアンダーワークス株式会社(デジタルマーケティング領域のコンサルティング、子会社にシンガポールのClickr Media Pte. Ltd.)を完全子会社化したこと(取得原価1,392百万円)を開示しています。これらの資金・付随費用に充当するため、2026年8月6日にみずほ銀行から2,170百万円を新規借入(7年、変動金利)しました。2027年7月期の会社予想は、これら新規連結子会社のフル期寄与を織り込んでいる可能性が高いと考えられますが、決算短信にその旨の明記はなく、あくまで本記事による推測です。 同時に、この借入によりD/Eレシオは2027年7月期にさらに上昇する見込みです。
株式分割。 2025年9月1日付で普通株式1株を2株にする分割を実施しました。決算短信のEPS・BPSは前期分も分割後の株数で遡及計算済みのため、本記事の実績EPS・BPSはそのまま比較可能です。
7. 業界とセクターの状況
INTLOOPが属する人材紹介・コンサルティングセクターには、構造的にいくつかの特徴があります。
第一に、売上は稼働する人材の数と単価にほぼ比例する「人材依存型」のビジネスです。在庫や大きな設備投資を必要としない代わりに、増員・単価上昇のペースが成長の上限を決めます。INTLOOPが約57,000人という人材ネットワークの規模を強みとして掲げているのも、この構造を踏まえたものです。
第二に、需要は企業のIT投資・外部人材活用の意欲に連動します。 生成AI導入機運のように投資が積極化する局面では追い風になる一方、景気後退局面では企業がまず絞るコストの一つが外部人材・コンサル費用であるという、構造的な脆さも併せ持ちます。
第三に、成長のドライバーがM&Aに寄っている場合、のれん・統合コストが利益のブレ要因になります。 買収した会社の業績が計画通りに伸びなければ、のれんの減損リスクが顕在化します。INTLOOPは2026年7月期に2社を新規連結し、決算後にも2社の買収を実行しており、この業界特有のM&A関連リスクへのエクスポージャーが高まっている局面です。
第四に、参入障壁は本質的に高くありません。 人材紹介・SES・コンサルティング事業は、同業他社や大手人材会社との人材獲得競争に常にさらされます。ネットワークの規模や専門領域の特化が差別化要因になりますが、模倣が難しい参入障壁とまでは言えません。
8. 今後のスケジュール
2026年7月期 有価証券報告書の提出
決算短信に記載の提出予定日。M&Aによるのれん計上額やソフトウエア仮勘定の内訳など、より詳細な開示が期待できる。
2027年7月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年7月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年7月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年7月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
9. 想定されるカタリスト
のれん・ソフトウエア仮勘定の内訳、セグメント別の情報など、決算短信より詳細な開示が期待できる。
2026年8月に完全子会社化したアンダーワークス(Clickr Media含む)と持株比率を引き上げたディクスホールディングスの業績寄与、販管費の伸び率が落ち着くかを確認する最初の材料。
会社予想レンジ(営業利益3,500〜4,600百万円)の達成可否と、D/Eレシオ・営業CFがどう推移したかが判明する。
10. 想定されるリスク
販管費の高止まりが続くリスク。 2026年7月期の販管費急増(+54.4%)が採用・M&A統合・AI投資という複数の先行投資の重なりだったとすれば、2027年7月期以降もこれらのコストが高止まりし、会社予想が見込む大幅増益を実現できない可能性があります。
新規連結子会社の統合リスク。 2026年7月期に2社、決算後にさらに2社(ディクスホールディングス、アンダーワークス)を連結・買収しており、のれん残高は1,097百万円まで積み上がっています。買収先の業績が計画を下回れば、のれんの減損リスクが顕在化します。
財務健全性の低下。 D/Eレシオは0.29倍から0.84倍へ急上昇し、営業キャッシュ・フローは182百万円まで縮小しました。2026年8月の追加借入2,170百万円により、2027年7月期はD/Eレシオがさらに上昇する見込みです。金利上昇局面では支払利息負担(2026年7月期は前期比倍増の61百万円)がさらに増える可能性があります。
上場来無配であること。 配当より成長投資を優先する方針が続いており、インカムゲインを期待する投資家には向きません。2027年7月期の会社予想でも配当0円を計画しています。
2027年7月期の急回復予想の実現不確実性。 会社予想は前期実績から大幅な増益を見込みますが、決算短信に具体的な達成根拠の記載はありません。新規連結子会社のフル期寄与が計画通り実現するかは、次期以降の決算で確認する必要があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2026年7月期のINTLOOPは、売上高+20.4%・売上総利益率改善という事業そのものの強さを示す一方、販管費+54.4%の急増によって親会社株主帰属純利益は-62.4%まで落ち込みました。第4節で整理したとおり、この減益は単一の失敗ではなく、採用強化・M&A統合・AI投資という複数の先行投資が同時に進んだことと、非支配株主帰属利益の拡大・特別損失が重なった結果です。
判断の分かれ目は2つあります。1つは、この販管費の急増を「VISION2030」に向けた一時的な先行投資と見るか、収益性を継続的に圧迫する構造的なコスト増と見るかです。前者と見るなら、売上総利益率の改善という土台はすでにできており、投資が一巡すれば利益が回復する余地があると評価できます。後者と見るなら、増収のたびにコストが先行する構図が続く可能性を織り込む必要があります。もう1つは、D/Eレシオの急上昇(0.29倍→0.84倍)とM&Aによる成長投資を、成長フェーズとして許容するか、財務リスクの高まりとして警戒するかです。2026年8月以降の追加M&A・追加借入により、この比率はさらに上昇する見込みです。
次の確認ポイントは、2026年10月27日予定の有価証券報告書提出と、2026年12月上旬に予定される2027年7月期第1四半期決算です。新規連結子会社の業績寄与、販管費の伸び率が落ち着くかどうか、そして営業キャッシュ・フローが回復するかどうかを、あわせて確認することをおすすめします。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年7月期の営業利益が会社予想レンジの下限3,500百万円を明確に下回った場合。2026年7月期実績1,337百万円からの急回復計画が未達というシグナルになり、新規連結子会社のフル期寄与を前提にした本記事の整理が崩れる。
- 新規連結子会社(コムテック、クロスシステムサービス、ディクスホールディングス、アンダーワークス等)でのれん減損が発生した場合。2026年7月期末ののれん残高は1,097百万円で、2026年8月の追加M&A(取得原価合計2,112百万円)によりさらに積み上がる見込み。
- D/Eレシオが1倍を超える水準までさらに上昇する、または営業CFが2期連続で税引前利益を大きく下回る状態が続いた場合。2026年7月期は営業CF182百万円に対し税金等調整前当期純利益1,258百万円という開きがあり、これが一過性(売上債権増加・法人税支払)でなく構造化すれば財務健全性への懸念が強まる。
- 上場来無配の方針を維持したまま、支払利息が急増し続けた場合(2025年7月期29百万円→2026年7月期61百万円と倍増)。借入依存の成長投資という現在の資本政策の持続可能性が問われる。
よくある質問
- INTLOOPは増収なのに、なぜ2026年7月期は大幅減益になったのですか?
- 売上総利益率はむしろ27.4%から30.1%へ改善しています。減益の直接要因は販売費及び一般管理費が 前期比+54.4%と急増したことです。背景には、ハイレイヤー・デリバリー人材の採用強化、期中に新規連結した 2社(コムテック、クロスシステムサービス)ののれん償却等の統合コスト、AIエージェント「INTLOOP Pocket」 開発などの投資が重なっています。加えて非支配株主に帰属する当期純利益の拡大(+90.5%)と投資有価証券 評価損100百万円が、親会社株主帰属純利益(-62.4%)をさらに押し下げました。
- INTLOOPの配当はいくらですか?
- 上場来無配で、2025年7月期・2026年7月期とも年間配当0円です。2027年7月期の会社予想も0円で、配当より 採用・M&A・AI開発などの成長投資を優先する方針が続いています。
- INTLOOPの有利子負債やD/Eレシオはどう変化しましたか?
- 有利子負債は2025年7月期末の1,808百万円から2026年7月期末は5,601百万円へ増加し、D/Eレシオ(有利子負債 ÷自己資本)は0.29倍から0.84倍へ急上昇しました。M&Aや無形固定資産投資(AIエージェント開発など)の 資金を借入で調達したことが主因で、2026年8月以降の追加M&Aに伴う新規借入2,170百万円により、 2027年7月期はさらに上昇する見込みです。
参考文献・引用元
- 01
INTLOOP株式会社「2026年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年9月11日開示。連結経営成績(売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益、 EPS、ROE、総資産経常利益率、売上高営業利益率)、連結財政状態(総資産・純資産・自己資本比率・BPS、 のれん、ソフトウエア仮勘定)、連結キャッシュ・フロー(営業・投資・財務CF、現金期末残高)、 配当の状況(2025年7月期実績・2026年7月期実績・2027年7月期会社予想)、2027年7月期の連結業績予想 (レンジ形式)、株式分割の経緯、後発事象(ディクスホールディングス株式会社の持株比率引き上げ、 アンダーワークス株式会社の完全子会社化、みずほ銀行からの新規借入2,170百万円)を参照。 有価証券報告書の提出予定日は2026年10月27日。 / 2026/09/11 開示
- 02IR BANK「INTLOOP(9556) 決算まとめ」
二次情報。2021年7月期〜2024年7月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益(百万円換算、下2桁は概算)の 参照に使用。2025年7月期・2026年7月期は決算短信の値を優先して使用している。なお2025年9月1日付の 株式分割(1株→2株)により分割前のEPS表示が混在する年度があるため、本記事のfinancialsではEPSを 対象外としている。
- 03Yahoo!ファイナンス「INTLOOP(9556)」
東証プライム上場の確認に使用。
- 04IR BANK「INTLOOP(9556) 株価」
2026年9月18日終値2,392円(9月21日は敬老の日で休場のため直近取引日)、時価総額約225億円を参照。 PER・PBRはこの株価と決算短信記載のEPS実績54.75円・BPS706.44円(いずれも2025年9月の株式分割後 ベースで遡及計算済み)から算出しており、記事内の値と整合していることを確認した。