グロービング(277A) 1Qは売上+20.8%でも営業益-3.1%、コンサル利益率40.5%への低下が焦点
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
グロービング株式会社
2026/10/16 時点
株価
1,843円
時価総額
529億円
配当利回り
1.93%
年間35.6円
PER
15.6倍
PBR
6.65倍
ROE
43.2%
ROA
27.1%
純利益ベース
自己資本比率
71.0%
配当性向
30.0%
有利子負債
12億円
D/Eレシオ
0.15倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年5月期1Qは売上収益3,212百万円(前年同期比+20.8%)、営業利益923百万円(同-3.1%)、親会社帰属の四半期利益632百万円(同-2.6%)。売上総利益は+24.6%と売上以上に伸びたが、販管費が+54.8%(453百万円増)と膨らみ、営業利益率は35.8%から28.7%へ7.1ポイント下がった。
- 前回記事(2026年5月期通期)の宿題だった「コンサル事業の利益率低下」は1Qで鮮明になった。コンサルのセグメント利益率は44.95%から40.49%へ、全社調整額(主に一般管理費)は+42.8%。営業利益の増減-29.5百万円は、コンサル+111.3、AI事業-27.7、調整額-113.1に分解できる。
- 会社は通期予想(売上収益16,100百万円・営業利益4,830百万円)を据え置いた。計算上、達成には2〜4Qで売上が前年同期間比+45.6%、営業利益が+28.1%必要で、1Q(+20.8%・-3.1%)の形とは離れている。一方で期初から利益率を30.0%に落とす計画だったため、1Qの28.7%は計画比1.3ポイント下という見方もできる。
- 低下を「採用先行の一時的なコスト」と見るなら予想据え置きは整合し、「単価・稼働・販管費の構造的な変化」と見るなら予想の達成は重い。分かれ目は、2Q以降にコンサル利益率が40%台前半から戻るか、売上成長が加速するかである。決算翌営業日の株価は+8.7%だったが、理由は開示されていない。
目次11項目
1. 概要
2026年10月16日終値は1,843円で、会社予想ベースのPERは15.55倍(1,843円÷予想EPS118.55円)、PBRは6.65倍(1,843円÷BPS277.0円)、予想配当利回りは1.93%(年35.60円)です。2026年8月末時点の親会社所有者持分比率は71.0%(5月末は63.5%)、有利子負債(リース負債)は1,202百万円でD/Eレシオは0.15倍です。PBR1倍割れや高配当を狙う水準ではなく、成長を織り込んだ評価の銘柄です。同社の成長性そのものは成長株の観点で整理した記事で扱っているので、本記事では「1四半期で何が起きたか」に絞ります。
2027年5月期の第1四半期(2026年6〜8月)は、売上収益3,212百万円(前年同期比+20.8%)、営業利益923百万円(同-3.1%)、親会社帰属の四半期利益632百万円(同-2.6%)でした。売上は伸びたのに営業利益は前年を割ったことが、この決算の事実です。
前回記事は、2026年5月期通期の分析で「コンサル事業の利益率がわずかに下がっていないか」を次の確認事項として残していました。1Qはその答えが出た四半期です。コンサルのセグメント利益率は44.95%から40.49%へ4.5ポイント下がり、全社調整額(主に各セグメントに帰属しない一般管理費)は+42.8%増えました。それでも会社は通期予想(売上収益16,100百万円・営業利益4,830百万円)を据え置いています。この据え置きが何を要求しているのかを第4節で数字にします。
なお、今回から日本基準とIFRSの混在をやめ、2025年5月期・2026年5月期はIFRSの数値に揃えました。前回記事の数値が間違っていたわけではなく、会計基準が違うだけです。違いは第3節で説明します。
2. 会社概要とビジネスモデル
グロービングはDX・生成AI活用のコンサルティング会社です。2026年5月期(IFRS)の外部売上は、コンサルティング事業が11,108百万円(96.5%)、AI事業が405百万円(3.5%)です。コンサルティング事業は、コンサルタントが戦略策定からDX推進までを顧客企業に伴走して支援する人月型のビジネスで、売上はコンサルタントの人数、稼働、単価で決まります。会社自身も重要課題として「コンサルタント人員数」「コンサルタント平均年収」「JI(Joint Initiative)売上高比率」「AI関連売上高」を挙げています(2026年5月期短信)。
1Q時点の構成は、コンサルの外部売上3,134百万円(97.6%)、AI事業の外部売上78百万円(2.4%)です。AI事業は外部売上が前年同期比-7.9%で、大手クライアントと3つのプロダクトを共同開発し、PoC(概念実証)と要件定義を進めている段階だと短信にあります。
強みと弱みの整理
強み
売上成長は20%超を維持、粗利率も上昇
1Qの売上収益は+20.8%、売上総利益は+24.6%で、売上総利益率は66.6%から68.7%へ2.1ポイント上がりました。コンサルの外部売上は+21.7%です。減益の原因は粗利の段階ではなく、販管費にあります。
会社予想は据え置き、利益率低下は期初計画に一部織り込み済み
通期予想の営業利益率はもともと30.0%(前期34.8%)で、1Qの28.7%は計画比1.3ポイント下の水準です。7.1ポイントの低下のうち、期初の想定との差はそれより小さいと読めます。
財務に余裕がある
2026年8月末の現金及び現金同等物は4,828百万円、定期預金など(その他の金融資産・流動)が2,016百万円で、合計約6,843百万円(計算)です。借入金の記載はなく、有利子負債とみなせるのはリース負債1,202百万円だけで、D/Eレシオは0.15倍です。
弱み
売上が伸びても利益が残らない局面に入った
1Qは増収でも営業利益が-3.1%、営業利益率は35.8%から28.7%へ7.1ポイント下がりました。コンサルの売上が559百万円増えたのに、セグメント利益の増加は111百万円(増分利益率19.9%、計算)で、既存の約45%の半分以下です。
人件費など先行コストの回収時期が見えない
会社は中途採用を進めていると説明していますが、販管費の内訳や採用人数は短信に出ていません。回収に何四半期かかるのかを外部から確かめる材料がありません。
AI事業の利益が半減、全社費用も増加
AI事業のセグメント利益は59.6百万円から31.9百万円へ-46.5%でした。全社調整額は264.5百万円から377.5百万円へ+42.8%(売上比9.9%→11.8%)で、事業の外側のコストが利益を押し下げています。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/05 | 2,606 | 736 | 738 | 474 | — | — |
| 2024/05 | 4,175 | 370 | 379 | 261 | — | — |
| 2025/05 | 8,256 | 2,607 | — | 1,583 | 3,255 | 61.8% |
| 2026/05 | 11,513 | 4,003 | — | 2,876 | 3,334 | 63.5% |
| 2027/05会社予想 | 16,100 | 4,830 | — | 3,381 | — | — |
会計基準の違い。 2023年5月期・2024年5月期は日本基準、2025年5月期以降はIFRSです。同社は2026年5月期の有価証券報告書からIFRSを任意適用しており、IFRSの数値は2025年5月期から遡及して開示されています。IFRSには経常利益の区分がないため、2025年5月期以降の経常利益は表示していません。前回記事は2026年5月期の実績を日本基準(営業利益4,142百万円・純利益3,052百万円)で、2027年5月期の予想をIFRSで並べていました。今回はIFRSに揃えたので、同じ2026年5月期が営業利益4,003百万円・親会社帰属の当期利益2,876百万円になっています。差が出る理由は、2026年5月期短信の初度適用の調整表(2025年5月期分)に次のように載っています。
- 日本基準でオペレーティング・リースだったものも、IFRSでは使用権資産とリース負債を認識する(自己資本比率が73.5%から63.5%に下がる主因の一つ。リースの返済は営業CFから財務CFに移る)
- 日本基準の営業外損益・特別損益が、IFRSでは「その他の営業収益・費用」と金融損益に振り替わる
- 未消化の有給休暇の負債計上、のれんの非償却、減価償却方法の変更などの測定差
この表から読み取れることは3つあります。
1つ目は、2025年5月期以降の利益の水準が大きいことです。 IFRSで見ると営業利益は2025年5月期2,607百万円、2026年5月期4,003百万円(+53.6%)でした。2024年5月期以前の日本基準の数値とは基準が違うため、前期比は2025年5月期以降だけで読みます。
2つ目は、会社予想は期初から利益率の低下を見込んでいたことです。 2027年5月期は売上収益16,100百万円(+39.8%)に対し営業利益4,830百万円(+20.6%)で、営業利益率は2026年5月期の34.8%から30.0%へ下がる計画です。1Qの28.7%は、この計画より1.3ポイント低い水準です。
3つ目は、1Qの形が通期予想とは別物であることです。 通期は増収+39.8%・増益+20.6%の計画なのに、1Qは増収+20.8%・減益-3.1%でした。次節で、この差を埋めるために2〜4Qに何が必要かを計算します。
4. 利益率低下はどこから来て、通期予想は何を要求しているか
営業利益は923.3百万円で、前年同期の952.8百万円から29.5百万円減りました。まず損益計算書の段階で分解します(単位は百万円)。
| 2026年5月期1Q | 2027年5月期1Q | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,660.1 | 3,212.4 | +20.8% |
| 売上総利益(粗利率) | 1,772.4(66.6%) | 2,208.0(68.7%) | +24.6% |
| 販売費及び一般管理費(売上比) | 827.0(31.1%) | 1,280.4(39.9%) | +54.8% |
| 営業利益(営業利益率) | 952.8(35.8%) | 923.3(28.7%) | -3.1% |
粗利は435.6百万円増えましたが、販管費が453.3百万円増えて、その他の営業収益・費用の差(-11.8百万円)も加わり、営業利益が29.5百万円減ったという関係です。営業利益率が下がった主因は売上原価ではなく、販管費が売上の2倍以上のペースで増えたことです。
セグメントで見ると
| 前年1Q | 当1Q | 増減 | |
|---|---|---|---|
| コンサル 外部売上 | 2,575.1 | 3,134.1 | +21.7% |
| コンサル セグメント利益(利益率) | 1,157.6(44.95%) | 1,268.9(40.49%) | +9.6%(+111.3) |
| AI事業 セグメント利益 | 59.6 | 31.9 | -46.5%(-27.7) |
| 調整額(主に全社の一般管理費) | -264.5 | -377.5 | +42.8%(-113.1) |
| 営業利益 | 952.8 | 923.3 | -29.5 |
営業利益の増減-29.5百万円は、コンサルの+111.3、AI事業の-27.7、全社調整額の-113.1に分けられます。コンサルの利益は増えていますが、その増加分は全社の費用増だけで消えています。ここで3つのことが言えます。
1つ目。コンサルの増収が利益を生む効率が落ちています。 売上は559.0百万円増えたのにセグメント利益は111.3百万円しか増えておらず、増分の利益率は19.9%(計算)です。これは前年1Qの44.95%や2026年5月期通期の44.46%の半分以下です。通期ベースでは45.02%から44.46%へ0.56ポイントのわずかな低下でしたが、1Qで4.5ポイントに拡大しました。前回記事の整理(日本基準で45.68%から45.48%の横ばい)と、成長株記事の見立て(IFRSで45.0%から44.5%)の両方で「次の確認事項」に挙げていた点です。
2つ目。全社の一般管理費が売上の伸びを超えて増えています。 調整額の売上比は9.9%から11.8%に上がりました。成長株記事では「調整額の増加率が売上の伸びを上回り続けるなら、コーポレート機能の拡大が利益率の重荷になっている」と置いていました。1Qは調整額+42.8%に対し売上+20.8%で、この条件に該当します(ただし通期で見る指標なので、確定には2Q以降が必要です)。
3つ目。販管費の増加のうち、調整額で説明できるのは一部です。 販管費の増加453.3百万円に対し、調整額の増加は113.1百万円です。残りの約340百万円(概算)は、各セグメント側の販管費ではないかと推測されますが、調整額が全額販管費とは限らず、短信は販管費の内訳を開示していないため、何の費用が増えたのかは特定できません。減価償却費及び償却費が71.2百万円から115.3百万円(+61.9%)に増えたことは事実ですが、これで説明できるのは増加額のうち約44百万円にすぎません。会社が短信で挙げているのは、コンサルタントの中途採用の推進とJI案件の拡大です。
通期予想の据え置きは何を要求するか
会社は2026年10月15日、通期予想(売上収益16,100百万円、営業利益4,830百万円)を修正しないとしました。1Qの実績を差し引いて、2〜4Qに必要な水準を計算します(以下、本記事による計算)。
| 2026年5月期2〜4Q(通期-1Q) | 2027年5月期2〜4Qに必要な値 | 伸び率 | |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 8,852.7 | 12,887.6 | +45.6%(1Qは+20.8%) |
| 営業利益 | 3,050.7 | 3,906.7 | +28.1%(1Qは-3.1%) |
| 営業利益率 | 34.5% | 30.3% | 1Qは28.7% |
1Qの進捗率は、売上20.0%、営業利益19.1%、親会社帰属利益18.7%です(計算)。前年1Qは通期実績の売上23.1%、営業利益23.8%だったので、今期は1Qの進捗が昨年より低いことになります。
必要な売上を四半期平均にすると約4,296百万円(12,887.6÷3)で、1Qの3,212百万円より約34%多い水準です。つまり予想は、2Q以降に売上の伸びが+20%台から+45%台へ加速し、営業利益率も28.7%から30.3%へ約1.6ポイント戻ることを前提にしています。
強気に読む場合と弱気に読む場合
強気に読む材料。
- 粗利率は68.7%に上がっており、原価(人件費など)のコントロールが崩れているわけではない
- 売上は+20.8%で、成長は止まっていない。期初計画で利益率を30.0%まで落とす想定だったため、1Qの28.7%は計画との差が1.3ポイントにとどまる
- 会社は予想を据え置いた。採用の増員が稼働に乗れば、2Q以降に売上が加速する余地がある。前年も、1Qの進捗は通期の23%台にとどまっていた(通期実績比)
弱気に読む材料。
- 売上を伸ばしても利益が増えにくい形(増分利益率19.9%)が1Qで表れた。採用先行が稼働に変わる時期は、短信からは分からない
- 予想が要求する2〜4Qの売上+45.6%は、1Qの+20.8%の2倍を超える加速で、人月型のビジネスでは採用人数と稼働の積み上げが前提になる
- AI事業の利益は半減し、全社費用は増加。AI事業の売上は外部で-7.9%と、まだ小さく伸びていない
どちらが正しいかは、1Qの数字だけでは決まりません。分かれ目は、コンサルの利益率が2Q以降に40%台前半から戻るのか、40%近辺で定着するのかです。この記事は、2Q決算で確認する指標をその1点に置きます。
決算翌営業日の10月16日は、株価が前日の1,696円から1,843円へ+8.7%上昇しました(IR BANK、出来高747,700株で前日比+99.6%)。決算は15時30分に開示されています。上昇の理由は開示されておらず、本記事も特定しません。1Qの減益と予想据え置きという組み合わせが、市場でどう受け止められたのかは、数字からは読み取れません。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2025/05 | — | 0円 | — |
| 2026/05 | — | 16.1円 | 15.9% |
| 2027/05会社予想 | 35.6円 | 35.6円 | 30.0% |
- 2025/05:上場後初の本決算期。無配。
- 2026/05:上場来初配当。期初予想の値は参照した決算短信の範囲では確認できていない。
- 2027/05:2026年7月15日公表の会社予想。2026年10月15日の第1四半期短信でも「直近公表予想からの修正:無」。第2四半期末(中間)に配当が入るのは今期が初めて。
2026年5月期は上場後初の配当で、期末16.10円(配当性向15.9%、配当総額459百万円)でした。2027年5月期の会社予想は中間14.20円・期末21.40円の合計35.60円(予想配当性向30.0%)で、1Q短信でも修正はありません。100株あたりでは年3,560円です。1,843円に対する予想利回りは1.93%で、これは会社が開示した予想配当にもとづく値です。
配当は前期の16.10円から35.60円へ引き上げる計画で、中間配当が入るのも今期が初めてです。前期の期初予想は参照した短信の範囲で確認できず、初配当の1回分しかないため、「期初予想を保守的に出す癖」があるかどうかはまだ判断できません。
一方で、配当は利益の成長を前提にしています。35.60円は予想EPS118.55円の30.0%ですが、1Qの基本EPSは22.15円(前年同期22.72円)で、通期EPSの18.7%にとどまります。予想EPSが下振れすれば配当性向の方針(30.0%)の下で配当額にも影響する可能性があります。会社が配当の下限を示しているかどうかは、参照した範囲では確認できていません。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態と有利子負債。 2026年8月末の総資産は11,127百万円で、5月末(12,017百万円)から890百万円減りました。負債が1,157百万円減り(未払法人所得税等-457百万円、その他の流動負債-478百万円、営業債務等-139百万円が主因)、資本は7,899百万円へ266百万円増えています(四半期利益632百万円から配当459百万円を引いた利益剰余金の増加173百万円など)。親会社所有者持分比率は63.5%から71.0%に上がっていますが、これは自己資本が積み上がったというより、納税や賞与などの支払いで負債が減り、総資産が縮んだ面が大きいと読めます。
有利子負債は、借入金の記載がなく、リース負債(流動363百万円+非流動839百万円)の1,202百万円のみです。2026年5月末は1,291百万円で、約89百万円減りました。D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は、5月末の0.17倍から0.15倍です。前期末にかけてリース負債が増えた(2026年5月期に+945百万円)のは、使用権資産の増加(+990百万円)と対応しますが、何のリースが増えたかは短信からは特定できません。1Qはキャッシュ・フロー計算書が作成されておらず、リース返済額も確認できません。
現金及び現金同等物は5,694百万円から4,828百万円に減りました(-866百万円)。短信は、未払法人所得税等の減少と配当の支払(459百万円)を財政状態の変動として挙げています。定期預金など(その他の金融資産・流動)は2,016百万円あり、現金と合わせた手元流動性は約6,843百万円(計算)です。
持株会社体制への移行。 前回記事の時点では、2026年12月1日の持株会社体制への移行(商号をWAOホールディングス株式会社に変更)は株主総会の承認が条件でした。1Q短信には「株式会社グロービング吸収分割準備会社」を新規連結(連結範囲の重要な変更:有)したと記載があり、準備が進んでいることは確認できます。一方、株主総会の承認結果そのものは、本記事で読んだ資料には記載がなく、確認できていません。
その他。 2026年10月16日に、従業員への譲渡制限付株式としての自己株式処分の払込完了と一部失権がIR BANKの開示一覧にあります。内容は精査しておらず、本記事の分析には使っていません。決算説明会資料(同日開示)も、本記事では精読していません。
7. 業界とセクターの状況
人月型のコンサルティングには、個社の努力では動かせない構造があります。
- 売上の上限は人数と稼働で決まる。 在庫や設備に頼らず、増員した分しか売上は伸びません。成長の速さは需要よりも採用と教育の速度に左右されます。採用してから稼働が乗るまでの期間は、利益率が一時的に下がりやすい。これは業態の特徴で、1Qの形と整合する一方、実際に起きていることかどうかは短信からは確かめられません。
- 人件費の単価は市場で決まる。 会社自身が「コンサルタント平均年収」を重要課題に挙げているとおり、報酬水準は採用競争の結果です。大手コンサルティングファームやSIerとの人材獲得競争の中で、報酬を抑えて採用を進めるのは難しい業態です。
- 顧客のIT・DX予算に連動する。 短信はDX支援や生成AIの業務実装の需要が「堅調」としています。景気後退局面で外部コンサル費が削られやすい一方、経営課題として設定されたDX投資は削りにくいという二面性があります。
- 利益率の上限は人件費率で決まる。 設備投資が小さい代わりに、利益率は報酬と稼働率の関数です。売上総利益率が上がっているのに営業利益率が下がっている1Qの形は、原価率よりも販管費側の増加が効いているという読み方と整合します。
8. 今後のスケジュール
持株会社体制への移行・商号変更(グロービング株式会社→WAOホールディングス株式会社)
2026年7月15日に決議を公表。第1四半期短信には「株式会社グロービング吸収分割準備会社」を新規連結したとの記載がある。株主総会での承認結果そのものは、本記事で読んだ資料では確認できていない。
2027年5月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定(前年は2026年1月14日)
2027年5月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年5月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年5月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
9. 想定されるカタリスト
コンサル利益率が1Qの40.49%から戻るか、売上が1Q(3,212百万円)から加速するかを確認する最初の材料。通期予想の据え置きが維持されるかも分かる。
会社予想の配当は第2四半期末14.20円・期末21.40円。中間配当が入るのは今期が初めて。
準備会社は1Qで連結範囲に入った。体制移行で全社費用(調整額)がどう動くかも注目点だが、現時点で見通しを示す開示は確認できていない。
売上収益16,100百万円・営業利益4,830百万円(営業利益率30.0%)の予想に対する着地が確定する。
10. 想定されるリスク
コンサル利益率の低下が定着するリスク。 1Qは40.49%で、前年同期から4.5ポイント下がりました。通期でみた成長株記事の注視水準(43%台)と比べても低く、2Q以降に戻らなければ、通期の営業利益率30.0%の計画自体が重くなります。
予想達成の難度。 2〜4Qの売上+45.6%、営業利益+28.1%は、1Qの実績から大きく加速する前提です。未達のとき、予想の修正があり得ます。据え置きは会社の自信を示す面もありますが、1Qの時点では実績が裏付けていません。
費用の内訳が見えないこと。 販管費の内訳(人件費、採用費、報酬制度など)は短信にありません。2026年5月期は株式報酬費用が82.9百万円から241.7百万円へ増えており、報酬制度に関わる費用が増えた可能性はありますが、1Qの販管費にどう影響したかは特定できません。
AI事業が伸びていないこと。 外部売上は-7.9%、利益は-46.5%です。共同開発の段階で、収益化のタイミングは短信からは分かりません。全社の3%にも満たない規模のため、単独で全体を動かす力はまだありません。
評価の高さ。 PBR6.65倍・予想PER15.55倍は、成長が続く前提の評価です。減益局面で利益の伸びが鈍れば、評価の見直しが入りうる水準です。1Qの決算翌日は上昇しましたが、理由は不明です。
組織再編の不確実性と顧客集中。 2026年12月1日に持株会社体制へ移行する計画があり、移行後の費用構造は現時点で見通せません。また2026年5月期は、トヨタ自動車向けが売上の約20%(前回記事、日本基準の開示値)を占めており、1Qに顧客別の開示は確認できていません。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年5月期1Qは、売上+20.8%でも営業利益が-3.1%になりました。営業利益率は35.8%から28.7%へ下がり、要因はコンサルの利益率低下(44.95%→40.49%)、全社調整額の増加(+42.8%)、AI事業の利益減(-46.5%)で、売上総利益率はむしろ改善しています。前回記事が宿題にしていた「コンサル利益率の低下傾向」は、1Qではっきり表れました。
見方は2つに分かれます。
- 採用先行の一時的なコストと見るなら、期初から利益率30.0%の計画だったこと、粗利率が上がっていること、予想が据え置かれたことは整合します。採用した人材が稼働に乗れば、2Q以降に売上が加速し、利益率も戻ると読めます。この見方では、1Qの進捗の遅れは織り込み済みの範囲です。
- 構造的な変化と見るなら、増分利益率19.9%、調整額+42.8%、2〜4Qに必要な売上+45.6%は、予想の達成が簡単でないことを示します。この見方では、売上が伸びても利益率が40%近辺にとどまる可能性を考える必要があります。
分かれ目は、2Q(2026年9〜11月)でコンサルの利益率が40.49%から戻るか、売上が1Qの3,212百万円から加速するかです。 配当(予想35.60円)は利益成長を前提にした計画で、予想利回りは1.93%と配当だけで評価する水準ではありません。2027年1月上旬の第2四半期決算で、この2点を確認することになります。本記事は売買の推奨や株価の見通しを示すものではありません。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2Q(2026年9〜11月)単独のコンサル事業セグメント利益率が40.49%を再び下回る、または全社調整額の売上比が1Qの11.8%を上回って拡大した場合。「1Qは採用先行などの一過性」という見方が崩れ、利益率低下が構造的だという整理が強まる。
- 2Q単独のコンサル事業セグメント利益率が44%台まで戻った場合。1Qの低下は特定の要因による一時的なものだったことになり、本記事が「鮮明になった」と書いた利益率低下の読みが外れる。
- 2Q単独の売上収益が1Q(3,212百万円)から大きく伸びない(目安として+5%未満)場合。通期予想には2〜4Qで四半期平均約4,296百万円(計算)の売上が必要で、売上加速の前提が崩れる。
- 通期の営業利益予想4,830百万円が下方修正された場合。「据え置きは期初計画に織り込み済みの利益率低下の範囲内」という整理が外れる。
- AI事業のセグメント利益が2Q以降も1Q(31.9百万円、前年同期59.6百万円)から増えず、赤字に戻った場合。前期の黒字転換が一過性だった可能性が高まる。
よくある質問
- グロービングの2027年5月期第1四半期は増益でしたか?
- いいえ。売上収益は3,212百万円(前年同期比+20.8%)と伸びましたが、営業利益は923百万円(同-3.1%)、 親会社帰属の四半期利益は632百万円(同-2.6%)と減益でした。販管費が827百万円から1,280百万円へ +54.8%増え、営業利益率は35.8%から28.7%に下がっています。販管費増の内訳は決算短信では説明されておらず、 特定できていません。
- グロービングの営業利益が減ったのはなぜですか?
- 営業利益の増減-29.5百万円は、コンサル事業のセグメント利益+111.3百万円、AI事業-27.7百万円、 全社調整額(主に各セグメントに帰属しない一般管理費)-113.1百万円に分けられます。コンサルのセグメント利益率は 44.95%から40.49%に下がりました。会社は短信で中途採用の推進などを挙げていますが、利益率低下の 理由そのものは説明していません。
- グロービングの配当はいくらですか?決算で変わりましたか?
- 2027年5月期の会社予想は中間14.20円・期末21.40円の合計35.60円(予想配当性向30.0%)で、 第1四半期短信でも修正はありません。100株では年3,560円です。2026年10月16日終値1,843円に対する 予想配当利回りは1.93%です。
- グロービングの株価は決算後に上がりましたか?
- 決算は2026年10月15日の15時30分に開示され、翌営業日の10月16日の終値は1,843円と前日の1,696円から +8.7%でした(IR BANKによる二次情報)。上昇の理由は開示されていません。 本記事は理由を断定せず、事実の記録にとどめています。
参考文献・引用元
- 01グロービング株式会社「2027年5月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年10月15日公表。連結経営成績(売上収益・売上総利益・販売費及び一般管理費・営業利益・四半期利益、 基本的・希薄化後EPS、前年同期比)、連結財政状態(資産・負債・資本、親会社所有者帰属持分比率、 リース負債)、配当の状況、2027年5月期通期予想(修正なし)、セグメント情報(コンサルティング事業・ AI事業の外部売上・セグメント間売上・セグメント利益、調整額)、連結範囲の重要な変更を参照。 第1四半期はキャッシュ・フロー計算書が作成されていない。 / 2026/10/15 開示
- 02
グロービング株式会社「2026年5月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
2026年8月26日公表。2025年5月期・2026年5月期のIFRS通期実績(売上収益・営業利益・当期利益・EPS・ 営業CF・親会社所有者帰属持分比率)、IFRS基準のセグメント情報、財政状態の増減要因、 日本基準からIFRSへの調整表(初度適用)を参照。 / 2026/08/26 開示
- 03
グロービング株式会社「2026年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年7月15日公表。日本基準の2026年5月期実績(前回記事で使用)との差を説明するために参照。 2023年5月期・2024年5月期の数値は、前回記事に掲載した日本基準の値(IR BANK掲載の二次情報、 原本の決算短信は本記事では未確認)を使用している。 / 2026/07/15 開示
- 04IR BANK「グロービング(277A)」
二次情報。2026年10月16日終値1,843円(前日1,696円)・出来高・時価総額約529億円の参照に使用。 PER・PBR・配当利回りは、この株価と決算短信記載の会社予想EPS 118.55円・配当35.60円、 第1四半期末の資本7,899百万円と自己株式を除く発行済株式数から計算したBPS 277.0円で本記事が算出した。