日本曹達(4041) 経常利益+23.2%の中身、アグリビジネス黒字転換と為替差益
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
日本曹達株式会社
2026/08/10 時点
株価
3,935円
時価総額
2,175億円
配当利回り
4.07%
年間160円
PER
13.3倍
PBR
1.00倍
ROE
9.3%
ROA
7.7%
経常利益ベース
自己資本比率
66.0%
配当性向
47.5%
有利子負債
559億円
D/Eレシオ
0.26倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期は、売上高342億48百万円(前年同期比+4.9%)・営業利益37億34百万円(同+18.3%)・経常利益55億81百万円(同+23.2%)と増収増益。経常利益の伸びが営業利益の伸びを上回ったのは、アグリビジネスの黒字転換と為替差益(前年同期は為替差損だった)が重なったため。
- アグリビジネスは輸出向けの中でも品目によって明暗が分かれた。殺虫剤モスピラン・殺菌剤パンチョの輸出が伸びた一方、殺ダニ剤ニッソランの輸出は減少しており、「海外向けだから伸びる」と一括りにできる状況ではない。
- 会社の通期予想は据え置きで、経常利益は前期比△17.4%・純利益は同△13.5%の減益を見込んでいる。1Qの大幅増益がそのまま通期の上振れにつながるとは会社自身も見ていない。
- 配当は2027年3月期も年間160円(前期実績と同額)の予想で、予想利回りは4.07%。前期(2026年3月期)は期初140円予想から160円へ上方修正して着地しており、累進的配当方針のもとで下方修正の実績は今のところない。
目次11項目
1. 概要
2026年8月10日時点で、PER13.35倍(会社予想EPSベース)・PBR1.00倍・ROE9.3%(2026年3月期実績)・ROA7.7%(総資産経常利益率、同実績)・予想配当利回り4.07%・自己資本比率66.0%(2026年6月末時点)という水準です。
2026年8月7日に発表された2027年3月期第1四半期決算では、経常利益が前年同期比+23.2%と、営業利益の伸び(+18.3%)を上回りました。この差を生んだのが、農薬を扱うアグリビジネス事業の黒字転換と、為替差益の計上です。ただし輸出向けの品目すべてが伸びたわけではなく、殺虫剤・殺菌剤が伸びる一方で殺ダニ剤は減っています。 この品目ごとの明暗と、増益の背景にある為替の影響を第4節で詳しく見ていきます。
2. 会社概要とビジネスモデル
日本曹達は、電解ソーダ(か性ソーダ)を祖業とする総合化学メーカーです。現在は5つのセグメントで構成されており、2027年3月期第1四半期の売上高342億48百万円の内訳は、ケミカルマテリアル(医薬品添加剤・原体、樹脂添加剤など)が94億18百万円(構成比27.5%)、アグリビジネス(農薬)が85億82百万円(同25.1%)、トレーディング&ロジスティクス(商社機能)が121億96百万円(同35.6%)、エンジニアリング(プラント建設)が17億92百万円(同5.2%)、エコソリューション(非鉄金属リサイクルなど)が22億58百万円(同6.6%)です。
この会社のもう一つの特徴は、営業利益を上回る規模の営業外損益が経常利益を押し上げる構造を持つことです。受取配当金・持分法による投資利益・為替差損益などが営業外収益・費用の主な内訳で、2026年3月期は営業利益149億70百万円に対し経常利益229億90百万円と、経常利益が営業利益の1.5倍以上に膨らんでいます。持分法による投資利益は2026年3月期に60億55百万円(前期27億1百万円から倍増)でした。
強みと弱みの整理
強み
経常段階での上乗せ収益力
受取配当金・持分法投資利益・為替差益などの営業外損益が経常利益を押し上げる構造です。2026年3月期は営業利益149億70百万円に対し経常利益229億90百万円と、経常段階でさらに約8割上乗せされています。
財務健全性の高さ
自己資本比率66.0%(2026年6月末)、有利子負債558億52百万円に対し自己資本2,112億76百万円、D/Eレシオ0.26倍。借入余力を残した状態です。
累進的配当方針と増配実績
2026年3月期は期初140円予想から160円へ上方修正して着地しました。総還元性向50%以上を目標とする累進的配当方針を会社が明示しています。
弱み
利益の押し上げ要因が事業の実力とは別物
2027年3月期第1四半期の経常利益の伸び(+23.2%)は、為替差益や持分法投資利益といった、円安・株式市場の動向に左右される要因を含みます。円高局面では同じ構造が逆に働きます。
セグメント間で明暗がはっきり分かれている
ケミカルマテリアルは医薬品原体の減少や一部製品の終売により売上高が5.5%減少しました。増収増益はアグリビジネスとトレーディング&ロジスティクスに支えられています。
通期の会社予想は減益
2027年3月期の会社予想は経常利益が前期比△17.4%の190億円、純利益が同△13.5%の158億円。1Qの増益基調がそのまま通期に反映されるとは、会社自身が見ていません。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 152,500 | 11,900 | 16,500 | 12,700 | — | — |
| 2023/03 | 172,800 | 16,900 | 26,500 | 16,700 | 15,600 | 67.3% |
| 2024/03 | 154,400 | 13,900 | 23,300 | 16,600 | 5,730 | 64.7% |
| 2025/03 | 155,199 | 16,063 | 19,529 | 15,011 | 22,636 | 64.8% |
| 2026/03 | 152,091 | 14,970 | 22,990 | 18,271 | 21,594 | 66.6% |
| 2027/03会社予想 | 152,200 | 14,200 | 19,000 | 15,800 | — | — |
この表から読み取れることは3つあります。
1つ目は、売上高が2023年3月期の1,728億円をピークに、その後は1,500億円台で横ばい圏にあることです。 市況品を含む化学メーカーらしく、単年の水準を「成長トレンド」と捉えるより、レンジで見たほうが実態に近いといえます。
2つ目は、経常利益が営業利益を上回る状態がほぼ全期間で続いていることです。 前節で触れた営業外損益の上乗せ構造がここに表れています。2023年3月期は営業利益169億円に対し経常利益265億円と、その差が特に大きくなりました。
3つ目は、2027年3月期が計画ベースで減益だということです。 会社予想は売上高1,522億円(前期比+0.1%)とほぼ横ばいながら、営業利益142億円(同△5.1%)・経常利益190億円(同△17.4%)・純利益158億円(同△13.5%)といずれも減益です。1Qの大幅増益とは方向が逆であることに注意が必要です。
4. 経常利益+23.2%の中身 — アグリビジネスの黒字転換と為替差益
2027年3月期第1四半期の決算で最も特徴的なのは、経常利益の伸び(+23.2%、金額にして+10億52百万円)が、営業利益の伸び(+18.3%、金額にして+5億78百万円)を上回ったことです。この差の背景を、セグメント別と損益計算書の両方から確認します。
セグメント別に見ると、アグリビジネスが黒字転換している
| セグメント | 売上高(当期) | 売上高(前年同期) | 増減率 | セグメント利益(当期) | セグメント利益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|---|
| ケミカルマテリアル | 94億18百万円 | 99億69百万円 | △5.5% | 22億23百万円 | 21億53百万円 |
| アグリビジネス | 85億82百万円 | 70億44百万円 | +21.8% | 4億04百万円(黒字) | △2億36百万円(赤字) |
| トレーディング&ロジスティクス | 121億96百万円 | 111億33百万円 | +9.5% | 8億03百万円 | 6億77百万円 |
| エンジニアリング | 17億92百万円 | 24億23百万円 | △26.0% | 7億00百万円 | 5億33百万円 |
| エコソリューション | 22億58百万円 | 20億69百万円 | +9.1% | 1億11百万円 | 28百万円 |
注目すべきはアグリビジネスです。 前年同期は2億36百万円の赤字でしたが、当期は4億04百万円の黒字に転換しました。会社の説明によれば、殺ダニ剤「ニッソラン」の輸出向けは減少した一方、殺虫剤「モスピラン」と殺菌剤「パンチョ」の輸出向けが伸長したことが増収の要因です。つまり「輸出向けだから伸びた」のではなく、輸出品目の中でも構成によって明暗が分かれています。 ニッソランの減少要因(現地の需要動向や競合の状況など)までは短信からは特定できませんが、少なくとも農薬事業の海外比率の上昇は、品目構成というフィルターを通して業績に影響していることが分かります。
損益計算書レベルでは、為替差益が経常利益を押し上げた
決算短信は、当第1四半期の経常利益について「為替差益を計上したことなどにより、55億81百万円(前年同期比23.2%増)となりました」と明記しています。四半期連結損益計算書の営業外項目を見ると、次のようになっています。
| 項目 | 前年同期 | 当期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 為替差益(費用側は為替差損) | △1億91百万円(差損) | +1億95百万円(差益) | +3億86百万円 |
| 持分法による投資利益 | 13億33百万円 | 12億95百万円 | △38百万円 |
| 受取配当金 | 3億74百万円 | 3億62百万円 | △12百万円 |
| 支払利息 | 1億41百万円 | 1億91百万円 | +50百万円 |
出典:決算短信「四半期連結損益計算書」
前年同期は為替差損1億91百万円だったのに対し、当期は為替差益1億95百万円が計上されており、この差だけで約3億86百万円のスイングになっています。 一方で持分法投資利益や受取配当金はむしろ小幅に減っているので、経常利益を押し上げた主因はアグリビジネスの黒字転換(営業段階)と為替差益(営業外段階)の組み合わせだと整理できます。
この論点をどう受け止めるか
農薬事業の海外向け比率が上がるほど、業績は品目構成と為替の両方に敏感になります。今回はその両方が良い方向に働きましたが、構造としては逆方向にも同じ大きさで振れうるということです。円高局面になれば為替差益は差損に転じますし、ニッソランの減少が他の輸出品目にも広がれば、アグリビジネスの黒字は再び不安定になります。1Qの増益率(経常+23.2%)を単純に年換算して評価するのは早計です。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2025/03 | — | 140円 | — | 51.4% |
| 2026/03 | 140円 | 160円 | +20円 | 47.5% |
| 2027/03会社予想 | 160円 | 160円 | — | 54.3% |
- 2025/03:2024年10月の1→2株式分割の影響で表記上の合計は「-」(短信の注記)。分割後換算ベースでは第2四半期末60円+期末80円=年間140円。
- 2026/03:期初(2025年5月)は第2四半期末70円+期末70円=合計140円の予想。2026年5月14日、決算発表と同時に期末配当を70円→90円に上方修正し、合計160円で着地。
- 2027/03:2026年5月14日公表の予想(第2四半期末80円+期末80円)のまま、2027年3月期第1四半期決算でも修正なし。
2026年3月期は、期初(2025年5月)に第2四半期末70円+期末70円=合計140円で予想されていました。ところが2026年5月14日、決算発表と同時に期末配当を70円から90円へ上方修正し、合計160円で着地しています。 修正理由として会社は「業績が堅調に推移し、親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高益を更新するなど、当初の想定を上回って推移したため」と説明しています。
2027年3月期の会社予想は、2026年5月14日公表の第2四半期末80円+期末80円=合計160円のまま、2027年3月期第1四半期決算でも修正はありませんでした(短信に「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」と明記)。前期実績と同額で、増配ではなく据え置きの予想です。
配当性向は2026年3月期実績で47.5%、2027年3月期予想では54.3%まで上昇します。これは純利益が前期比で減る予想(△13.5%)の中で配当を据え置くためで、利益が計画どおりに減れば配当性向はさらに切り上がる形になります。 会社は総還元性向50%以上を目標とする累進的配当方針を掲げているため、この上昇自体は方針と整合的ですが、減益が続けば余地は狭まっていきます。
なお、2025年3月期の配当は2024年10月の株式分割の影響で単純比較がしづらく、短信の表記上「合計」欄は空欄になっています。分割後の基準で換算すると、年間配当は140円(第2四半期末60円相当+期末80円)でした。
6. 会社の現状と直近の動き
財政状態 — 総資産は増えたが自己資本比率はわずかに低下
2026年6月末の総資産は3,202億33百万円で、2026年3月末(3,073億05百万円)から129億28百万円増加しました。増加の主因は、持分法による投資利益の計上などによる投資有価証券の増加(790億31百万円→906億04百万円、+115億72百万円)と、棚卸資産の増加(529億62百万円→577億44百万円、+47億82百万円)です。一方、受取手形・売掛金及び契約資産は65億75百万円減少しました。
負債は短期借入金の増加(186億17百万円→230億42百万円、+44億25百万円)と繰延税金負債の増加(+21億80百万円)などにより1,076億49百万円へ、64億38百万円増加しました。純資産は64億90百万円増加し2,125億84百万円となりましたが、総資産の増加スピードが純資産の増加スピードを上回ったため、自己資本比率は66.6%(2026年3月末)から66.0%(2026年6月末)へ0.6ポイント低下しています。
有利子負債は前期末の522億70百万円(短期借入金186億17百万円+長期借入金336億53百万円)から、1Q末には558億52百万円(短期借入金230億42百万円+長期借入金328億10百万円)へ35億82百万円増加し、D/Eレシオは0.25倍から0.26倍へわずかに上昇しました。増加の主因は短期借入金です。 短信は資産側で棚卸資産が47億82百万円増加したことに触れていますが、短期借入金増加の使途そのものは明記されておらず、運転資本の積み増しに対応した可能性はあるものの、この記事の時点で断定はできません。
建設仮勘定の急減と設備投資の稼働
有形固定資産の内訳を見ると、建設仮勘定が2026年3月末の163億37百万円から2026年6月末には35億85百万円へ大きく減少する一方、建物及び構築物(242億85百万円→309億30百万円)と機械装置及び運搬具(201億55百万円→270億26百万円)がそれぞれ増加しています。これは大型設備投資が「建設中」から「稼働中」に区分変更されたことを示唆する動きです。同時期の2026年8月6日、医薬品添加剤「NISSO HPC」製造設備の増強完了・営業運転開始が適時開示されており、時期としては符合する可能性がありますが、勘定科目の異動だけから特定の設備名を断定することはできません。
キャッシュ・フローは四半期単独では作成されていない
日本基準の四半期決算では、四半期単独のキャッシュ・フロー計算書は作成されません(短信にその旨明記)。直近の通期実績(2026年3月期)では、営業活動によるキャッシュ・フローが215億94百万円、投資活動によるキャッシュ・フローが△108億円、財務活動によるキャッシュ・フローが△112億74百万円で、現金及び現金同等物の期末残高は219億07百万円でした。
純利益の伸びが経常利益の伸びに届いていない点にも触れておく
経常利益は前年同期比+23.2%でしたが、親会社株主に帰属する四半期純利益は+2.0%にとどまりました。この差の一因は特別損失の増加です。前年同期の特別損失は2億32百万円でしたが、当期は工場閉鎖損失3億72百万円・減損損失55百万円・固定資産廃棄損2億17百万円などにより6億94百万円に膨らんでいます。前年同期にあった固定資産売却益・投資有価証券売却益(合計3億77百万円)が当期は計上されていないことも、純利益の伸びを抑える方向に働きました。
7. 業界とセクターの状況
化学メーカーに共通する構造的な制約がいくつかあります。
原料と国際市況への連動。 化学品の多くは原油・ナフサ由来の原料を使うため、原料コストと国際市況の変動を強く受けます。コモディティ化しやすい基礎化学品ほど、価格転嫁力は限定的です。
輸出比率が上がるほど為替の影響が増す。 第4節で見たとおり、農薬など輸出向け比率の高い品目は、為替の方向次第で損益が振れます。円安は輸出採算を押し上げますが、円高局面では同じ構造が逆方向に働きます。
設備投資が重厚長大で、減損・工場閉鎖リスクを抱える。 プラント建設には長期の投資判断が必要で、需要見通しが外れると減損や工場閉鎖といった特別損失が発生します。今回の1Qに計上された工場閉鎖損失3億72百万円・減損損失55百万円は、その一例です。
農薬事業は各国の登録制度・特許・天候に左右される。 新規登録の可否や既存製品の特許切れ後のジェネリック競合、天候不順による作付面積の変動など、個社の努力だけでは制御できない要因が多くあります。
政策保有株式や持分法投資からの収益寄与が業績に効きやすい。 日本曹達に限らず、伝統的な化学メーカーは取引先との株式持合いや合弁事業からの持分法損益が経常利益に占める比重が大きく、株式市場全体の変動が業績の「地合い」として反映されやすい構造があります。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
会社は1Q決算短信で「通期の連結業績予想につきましては、第2四半期(中間期)の決算発表時に見直しを行う予定」と明記している。通期予想(経常利益190億円、純利益158億円)の修正有無を確認する最初の機会。
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
9. 想定されるカタリスト
会社があらかじめ「中間決算時に通期予想を見直す」と明言している数少ない確定イベント。1Qの増益基調(経常+23.2%)が続くか、通期予想(経常△17.4%)に収れんするかが焦点。
モスピラン・パンチョの輸出増が続くか、ニッソランの減少に歯止めがかかるかでセグメント利益の水準が変わる。同時に、経常利益への為替差損益の寄与も為替水準次第で反転しうる。
2026年8月6日付で増強設備の稼働開始が発表されている。ケミカルマテリアルの減収(医薬品原体の減少・一部製品の終売)を打ち返せるかの確認材料になる。
2026年5月14日に発表された新中計。開示された年度ごとの数値目標の進捗を、四半期ごとの決算で確認していくことになる。
10. 想定されるリスク
為替反転のリスク。 1Qの経常利益を押し上げた為替差益(3億86百万円のスイング)は、円高局面では逆方向に働きます。会社自身、通期では経常利益が前期比△17.4%の減益になると予想しています。
セグメント間の偏りのリスク。 ケミカルマテリアルは医薬品原体の減少や一部製品の終売で減収が続いています。NISSO HPC増強設備の稼働がこれを打ち返せなければ、増収増益はアグリビジネスとトレーディング&ロジスティクスへの依存を強めることになります。
農薬の品目構成リスク。 アグリビジネスの黒字転換はモスピラン・パンチョの輸出増に支えられていますが、同じ輸出向けでもニッソランは減少しています。特定品目への依存が強まれば、その品目の不振が業績全体に響きやすくなります。
利益の質のリスク。 純利益の伸び(+2.0%)が経常利益の伸び(+23.2%)に届いていないのは、工場閉鎖損失・減損損失などの特別損失が増えたためです。特別損失が今後も断続的に発生すれば、経常利益の水準ほどには純利益が伸びない状態が続きます。
有利子負債増加のリスク。 D/Eレシオは0.25倍から0.26倍へわずかに上昇しました。増加要因が特定できていない短期借入金の増加であり、今後も同様の増加が続くかは確認が必要です。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期は、経常利益+23.2%という数字だけを見れば好調な決算です。ただしその中身は、アグリビジネスの黒字転換(品目構成の変化)と為替差益という、事業の裾野の広がりというより「振れやすい要因」の組み合わせでした。会社自身も通期では経常利益△17.4%・純利益△13.5%の減益を予想しており、1Qの伸び率をそのまま延長した評価はしていません。
この1Qの増益を「農薬事業の海外展開が軌道に乗り始めた兆し」と見るなら、通期の減益予想は保守的すぎる可能性があります。 一方で、「為替差益と特定品目の輸出増が重なった一時的な追い風」と見るなら、会社の減益予想のほうが実態に近いということになります。
判断の分かれ目は、モスピラン・パンチョの輸出増が2Q以降も続くか、そしてニッソランの減少に歯止めがかかるかです。次の確認ポイントは2026年11月上旬に予定される第2四半期(中間)決算で、会社があらかじめ「この時点で通期予想を見直す」と明言しているため、経常利益190億円という現在の計画が据え置かれるか修正されるかを確認できます。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、通期の経常利益予想190億円が明確に下方修正された場合。特にアグリビジネスの輸出(モスピラン・パンチョ)が失速し、1Qの黒字転換(404百万円)が一過性だったと判明した場合。
- 為替が円高方向に振れ、1Qに計上した為替差益195百万円(前年同期は為替差損191百万円)が再び差損に転じた場合。経常利益が営業利益の伸びを上回るという当四半期の構図がそのまま反転する。
- D/Eレシオが1Q末の0.26倍から明確に上昇(目安として0.35倍超)し、有利子負債の増加が設備投資の一巡ではなく、運転資本の恒常的な悪化など別の要因によるものだと確認された場合。
- 配当が期初予想を下回って着地する事態が生じた場合。2026年3月期は逆に上振れて着地しており、現状は累進的配当方針への信頼を支えているが、これが崩れれば予想配当利回り4.07%の前提が揺らぐ。
参考文献・引用元
- 01日本曹達株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月7日開示。連結経営成績(累計)、セグメント別売上高・利益、財政状態、貸借対照表、四半期連結損益計算書、配当の状況、通期業績予想を参照。 / 2026/08/07 開示
- 02日本曹達株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月14日開示。2026年3月期実績(自己資本当期純利益率9.3%・総資産経常利益率7.7%)、キャッシュ・フロー実績、配当の状況(期初予想・修正・実績)、2027年3月期業績予想を参照。 / 2026/05/14 開示
- 03日本曹達株式会社「配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」
2026年5月14日開示。2026年3月期期末配当を70円から90円へ上方修正した経緯(過去最高益の更新など)を参照。 / 2026/05/14 開示
- 04IR BANK「日本曹達(4041) 決算まとめ」
2022年3月期〜2024年3月期の通期業績・財務状況の過年度推移を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月11日時点の表示)。直近2期(2025年3月期・2026年3月期)は決算短信の実数を優先して使用。