愛三工業(7283) 増収でも減益の2027年3月期予想とEVシフトという論点
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
愛三工業株式会社
2026/07/28 時点
株価
2,298円
時価総額
1,457.09億円
配当利回り
3.48%
年間80円
PER
10.1倍
PBR
0.92倍
ROE
9.4%
ROA
6.3%
経常利益ベース
自己資本比率
45.5%
配当性向
35.1%
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2026年3月期は売上高3,308億34百万円(前期比-1.9%)・営業利益182億87百万円(同-0.3%)・純利益130億74百万円(同-1.2%)と、いずれも小幅な減収減益で着地した。前期(2025年3月期)が売上高+7.3%・営業利益+18.3%の大幅増益だった反動で、高水準からのわずかな足踏みという位置づけになる。
- 2027年3月期について会社は、売上高335,000百万円(同+1.3%)への増収を見込む一方、営業利益180億円(同-1.6%)・経常利益180億円(同-6.4%)・純利益120億円(同-8.2%)はいずれも減益を予想している。燃料系製品が売上の54%を占め海外売上比率も71%と高いなかで、この増収減益予想がEVシフトという長期テーマと関係している可能性はあるが、1年分の予想だけでその影響を断定することはできない。
- 純利益がほぼ横ばい〜微減(-1.2%)にもかかわらずEPSは211.86円から227.61円へ増加し、BPSも自己資本の伸び(+4.4%)を上回るペース(+14.5%)で増加した。決算短信の主要数値だけでは断定できないが、自己株式取得が発行済株式数を減らした可能性が考えられる。
- 配当は2026年3月期、当初予想75.00円から実績80.00円へ期中増額された。2027年3月期は前期と同額の80.00円を会社が予想しており、株価2,298円に対する利回りは3.48%になる。
- PERは実績ベースで10.10倍。会社の2027年3月期予想EPS209.30円を使うと10.98倍まで上がる。減益予想を織り込んだ株価と見るか、EVシフトへの懸念が過度に織り込まれていると見るかが、この銘柄を判断するうえでの分かれ目になる。
目次11項目
1. 概要
愛三工業は、2026年7月28日時点でPBR0.92倍・PER10.10倍・ROE9.4%・ROA6.3%(経常利益ベース)という水準にあります。会社が開示している2027年3月期の年間配当予想は80.00円で、株価2,298円に対する利回りは3.48%です。
2026年3月期の実績は、売上高・営業利益・経常利益・純利益のすべてで前期比マイナスという小幅な減収減益でした。ただし前期(2025年3月期)が大幅な増収増益だった反動という位置づけで、水準自体は高いところにあります。
この記事でいちばん掘り下げたいのは、会社が2027年3月期に予想している「増収なのに減益」という計画です。 燃料系製品が売上の54%を占め、海外売上比率も71%に達する同社にとって、この減益予想はガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトという長期テーマと関係しているのか、それとも為替や原材料費といった一時的な要因なのか。第4節でこの論点を整理します。
2. 会社概要とビジネスモデル
愛三工業は愛知県大府市に本社を置く自動車部品メーカーです。トヨタ自動車の持分法適用関連会社で、トヨタグループ向け売上が6割強を占めます。電子制御燃料噴射装置・吸排気系製品が主力で、燃料ポンプモジュール・スロットルボディ・キャニスタ・エンジンバルブなどを手がけています。
事業別売上構成比(2025年3月期時点)は、燃料系製品54%・吸排気系製品23%・排出ガス制御系製品15%・動弁系製品3%です。2022年にデンソーの燃料ポンプ事業を取得したことで、燃料ポンプモジュールで世界シェア4割・トップシェアを獲得しました。海外売上比率は71%(2025年3月時点)と高く、グローバルに事業を展開しています。
強みと弱みの整理
強み
燃料ポンプモジュールで世界シェア4割・トップシェア
2022年にデンソーの燃料ポンプ事業を取得したことで、燃料ポンプモジュールの世界シェアは4割に達し、トップシェアを獲得しました。特定の製品領域で高い市場地位を持つことは、価格交渉力や取引の継続性という点で強みになります。
海外売上比率71%という広い地理的分散
海外売上比率は71%(2025年3月時点)に達しており、国内需要だけに依存しない事業構造です。2022年3月期の売上高1,938億円から2025年3月期は3,373億円まで拡大しており、デンソー燃料ポンプ事業の取得を境に急拡大した過去があります。
2026年3月期の配当は期中に増額され、株主還元姿勢は維持されている
2026年3月期の配当は当初予想75.00円から実績80.00円へ、期中に+5円増額されました。配当性向は32.1%(2025年3月期実績)から35.1%へ上昇しており、利益水準に対して配当を積み増す姿勢がうかがえます。
弱み
燃料系製品が売上の54%を占め、EVシフトの影響を受けやすい事業構造
燃料ポンプモジュール等の燃料系製品は売上の54%を占め、内燃機関(エンジン)を前提とした製品群です。ガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが進めば、これらの製品の需要が構造的に減少する可能性があります。詳細は第4節で扱います。
営業キャッシュ・フローが前期比-74.5%と大きく減少した
営業キャッシュ・フローは2025年3月期の282億22百万円から2026年3月期は72億04百万円へ減少しました。利益はほぼ横ばいなのに現金創出力は4分の1程度まで落ちており、運転資本の増減など内訳は本記事で参照した資料からは確認できません。
トヨタグループへの高い依存度
トヨタ自動車の持分法適用関連会社として、トヨタグループ向け売上が6割強を占めます。安定した受注基盤である一方、トヨタグループの生産動向や取引条件の変化に業績が左右されやすい構造でもあります。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018/03 | 212,500 | 9,420 | 9,770 | 4,530 | — | — |
| 2019/03 | 213,500 | 8,230 | 8,180 | 6,120 | — | — |
| 2020/03 | 205,500 | 7,230 | 6,870 | -5,070 | — | — |
| 2021/03 | 181,400 | 4,960 | 4,990 | 3,530 | — | — |
| 2022/03 | 193,800 | 9,810 | 10,300 | 6,830 | — | — |
| 2023/03 | 240,800 | 13,600 | 14,100 | 8,500 | — | — |
| 2024/03 | 314,300 | 15,500 | 17,200 | 11,700 | — | — |
| 2025/03 | 337,259 | 18,338 | 19,292 | 13,234 | 28,222 | 45.1% |
| 2026/03 | 330,834 | 18,287 | 19,229 | 13,074 | 7,204 | 45.5% |
| 2027/03会社予想 | 335,000 | 18,000 | 18,000 | 12,000 | — | — |
読み取れることは3つあります。
2020年3月期は新型コロナ禍等の影響で純利益が赤字(-50億70百万円)に転落した過去がある。 売上高は2019年3月期の2,135億円から2021年3月期は1,814億円まで縮小し、営業利益も82億30百万円から49億60百万円まで落ち込みました。景気変動の影響を受けやすい事業であることが分かります。
2022年3月期以降はV字回復し、デンソー燃料ポンプ事業の取得を境に売上高が急拡大した。 売上高は2022年3月期の1,938億円から2023年3月期2,408億円、2024年3月期3,143億円、2025年3月期3,373億円と急拡大しています。2022年のデンソー燃料ポンプ事業取得の影響が大きいと考えられます。
2026年3月期は高水準からわずかに足踏みし、2027年3月期は会社が増収減益を計画している。 前期(2025年3月期)は売上高が前期比+7.3%、営業利益が+18.3%、経常利益が+12.2%という大幅増益でしたが、2026年3月期は売上高3,308億34百万円(前期比-1.9%)、営業利益182億87百万円(同-0.3%)、経常利益192億29百万円(同-0.3%)、純利益130億74百万円(同-1.2%)といずれも小幅な減収減益となりました。2027年3月期については、会社は売上高335,000百万円(同+1.3%)への増収を見込む一方、営業利益180億円(同-1.6%)・経常利益180億円(同-6.4%)・純利益120億円(同-8.2%)はいずれも減益を予想しています。
4. 増収でも減益という次期予想は、EVシフトの兆しか
これがこの記事でいちばん整理したい論点です。会社が発表した2027年3月期の連結業績予想を、2026年3月期実績と並べます。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,308億34百万円 | 3,350億円 | +1.3% |
| 営業利益 | 182億87百万円 | 180億円 | -1.6% |
| 経常利益 | 192億29百万円 | 180億円 | -6.4% |
| 純利益 | 130億74百万円 | 120億円 | -8.2% |
| EPS | 227.61円 | 209.30円 | — |
出典:2026年3月期 決算短信
売上高は前期比+1.3%の増収を見込む一方、営業利益・経常利益・純利益はそれぞれ-1.6%・-6.4%・-8.2%の減益予想です。 増収なのに各段階利益がすべて減益という構図は、当サイトが直近で扱った5302日本カーボン・1762高松コンストラクショングループ・6272レオン自動機(いずれも増益前提で予想PERが実績より下がるパターン)とは逆の形になります。事実、愛三工業のPERは実績ベースの10.10倍に対し、会社予想EPS209.30円を使うと10.98倍まで上がります。
同社の事業構造を踏まえると、この減益予想を長期テーマと結びつける仮説が浮かびます。燃料ポンプモジュール・スロットルボディ・キャニスタなど、売上の54%を占める燃料系製品は内燃機関(エンジン)を前提とした製品群です。ガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが世界的に進めば、これらの製品の需要は構造的に縮小していく可能性があります。加えて海外売上比率は71%と高く、トヨタグループ向け売上が6割強を占めることから、トヨタグループを含む完成車メーカー各社の電動化戦略の進み方が、この会社の業績を左右する構図にあります。
ただし、1年分の減益予想だけを根拠に、これをEVシフトの影響と断定するのは早計です。 経常利益の減益幅(-6.4%)が営業利益の減益幅(-1.6%)より大きいことは、営業外収支(為替差損益や持分法投資損益など)の悪化を織り込んでいる可能性を示唆しますし、純利益の減益幅(-8.2%)が経常利益の減益幅よりさらに大きいことも、税負担や特別損益といった要因が加わっている可能性を示します。原材料費(鋼材等)の動向や為替前提の置き方など、他の要因が働いている可能性も十分にあり、今回参照した決算短信の主要数値だけでは、減益の主因がEVシフトによる構造的な需要変化なのか、それとも為替・原材料費といった一時的な要因なのかを特定することはできません。
言い換えると、この銘柄を検討するうえでの論点は「この増収減益予想を、EVシフトという長期の構造変化の兆しと見るか、それとも1年限りの一過性要因と見るか」という一点に集約されます。どちらであるかは、2027年3月期以降も売上高営業利益率が5%台を維持できるか、それとも切り下がり続けるかで、ある程度判別できると考えられます。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2010/03 | — | 14円 | — | — |
| 2025/03 | — | 68円 | — | 32.1% |
| 2026/03 | 75円 | 80円 | +5円 | 35.1% |
| 2027/03会社予想 | 80円 | 80円 | — | 38.2% |
- 2010/03:参考値(IR BANK集計)。長期的な配当推移を示す起点として参照。
- 2025/03:中間31.00円・期末37.00円。純資産配当率3.1%。
- 2026/03:当初予想は中間37.00円・期末38.00円(合計75.00円)。期中に77.00円へ修正後、最終的に中間37.00円・期末43.00円、合計80.00円(当初予想比+5円)で着地した(IR BANK集計でも同じ経緯を確認:予想75→修正77→実績80)。純資産配当率3.4%。
- 2027/03:中間40.00円・期末40.00円の予想。前期実績と同額での据え置き。
配当は長期的に増加してきました。IR BANKの集計によれば2010年3月期は14円でしたが、2026年3月期には80.00円まで積み上がっています。
注目すべきは2026年3月期の期初からの増額です。 当初予想は中間37.00円・期末38.00円の合計75.00円でしたが、期中に77.00円へ修正され、最終的には中間37.00円・期末43.00円、合計80.00円(当初予想比+5円)で着地しました。配当性向も前期実績の32.1%から35.1%へ上昇しています。
2027年3月期は、会社が中間40.00円・期末40.00円の合計80.00円を予想しています。前期実績と同額での据え置きです。株価2,298円に対する利回りは3.48%で、これは会社が明示的に開示した予想にもとづく数値です。純利益が減益予想であるにもかかわらず配当額を据え置いているため、配当性向は35.1%から38.2%へ上昇する計画になっています。
6. 会社の現状と直近の動き
2026年3月期の決算では、利益の水準そのもの以上に、いくつかの財務指標の動きが目を引きます。
まず、純利益がほぼ横ばい〜微減(-1.2%)にもかかわらず、EPSは211.86円から227.61円へ増加しています。 同時に自己資本は135,821百万円から141,853百万円へ+4.4%増加した一方、BPSは2,173.01円から2,487.44円へ+14.5%と、自己資本の伸びを大きく上回るペースで増加しました。純利益とほぼ連動するはずのEPS・BPSがこれだけ増加率に差が出るのは、発行済株式数が減少した(自己株式取得が行われた)ことが一因である可能性が高いと考えられます。ただし、今回参照した決算短信の主要数値だけでは、自己株式取得の具体的な金額・株数は確認できません。
もう一つの注目点は、包括利益の急増です。 包括利益は5,271百万円から21,035百万円へ+299.1%増加しました。当期純利益がほぼ横ばいであるのに対し、包括利益がここまで拡大しているのは、当期純利益に含まれない項目(その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定など)が大きく動いたことを意味します。海外売上比率71%という同社の特性上、海外子会社の円換算差額(為替換算調整勘定)の影響が大きいと推測されますが、決算短信の主要数値だけでは断定できません。
さらに、営業キャッシュ・フローは282億22百万円から72億04百万円へ、-74.5%の大幅な減少となりました。 利益水準はほぼ横ばいなのに、本業からの現金創出力は4分の1程度まで落ちています。売上債権や棚卸資産といった運転資本の増減が影響している可能性がありますが、内訳は本記事で参照した資料からは特定できません。投資キャッシュ・フローは-201億28百万円から-115億74百万円へ縮小、財務キャッシュ・フローは+109億49百万円から+41億33百万円へ縮小しており、現金及び現金同等物の期末残高は841億31百万円から876億20百万円へ増加しています。
7. 業界とセクターの状況
愛三工業は当サイトの「auto-parts(自動車部品)」セクターの1本目の記事です。同セクターにはトヨタグループ系の東海理化(6995)・市光工業(7244)といった銘柄がありますが、当サイトではまだ記事化していません。今後これらの記事が加われば、同業他社との詳細な指標比較が可能になります。
ここでは、当サイトがすでに扱った建設・機械セクターの記事と、「景気敏感度」「海外展開度」という軸で軽く比較します。
| 愛三工業(7283) 自動車部品 | オカダアイヨン(6294) 機械 | レオン自動機(6272) 機械 | 高松コンストラクショングループ(1762) 建設業 | |
|---|---|---|---|---|
| 需要の性格 | トヨタグループ向け(6割強)中心、内燃機関向け燃料系部品 | 国内の解体・改修工事、公共インフラ更新工事が中心 | 国内外の食品メーカー向け(127の国と地域へ輸出) | 国内の建築工事(マンション・非住宅) |
| 海外売上比率 | 71% | 資料の範囲では確認できず | 資料の範囲では確認できず(輸出網は広い) | 国内中心 |
| 売上高営業利益率 | 5.5% | 8.4% | 12.3% | 5.0% |
| 自己資本比率 | 45.5% | 45.2% | 79.1% | 46.7% |
| 予想配当利回り(会社予想ベース) | 3.48% | 3.79% | 3.95% | 3.75% |
この4社を並べると、愛三工業は海外売上比率71%という点で最も海外展開度が高いことが分かります。 一方で売上高営業利益率5.5%・自己資本比率45.5%という水準は、高松コンストラクショングループ(建設業、5.0%・46.7%)に近く、レオン自動機(食品機械、12.3%・79.1%)のような高収益・高財務健全性の構造とは異なります。
自動車部品セクターに構造的に決まっていることとしては、完成車メーカーとの系列取引が根強く、価格決定力は完成車メーカー側が握りやすいこと、海外生産拠点を持つ企業では為替の影響を受けやすいこと、そしてガソリン車からEVへのシフトが進むと内燃機関に依存する部品の需要が構造的に減少しうることが挙げられます。愛三工業は燃料系製品が売上の54%を占めるため、この構造的な制約を業界内でも強く受けやすい立場にあると考えられますが、具体的な感応度や転換の進み方は、本記事で参照した資料からは確認できません。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
会社は通期で売上高335,000百万円(+1.3%)・営業利益180億円(-1.6%)・経常利益180億円(-6.4%)・純利益120億円(-8.2%)という増収減益を計画している。四半期の進捗から、この減益ペースが計画どおりか、それとも上振れ・下振れしているかを確認できる最初の機会になる。
2026年3月期は中間37.00円・期末38.00円の当初予想から実績37.00円・43.00円(合計+5円)へ増額した実績がある。減益予想のなかで同様の増額修正が続くかどうかが、次の配当を見るうえでの着目点になる。
トヨタグループ向け売上が6割強を占めるため、トヨタグループの生産台数動向が業績に直結する。加えて燃料系製品が売上の54%を占めるため、EV(電気自動車)シフトの進度が中長期の需要を左右すると考えられるが、具体的な感応度は本記事で参照した資料からは確認できない。
海外売上比率は71%(2025年3月時点)と高い。2026年3月期は包括利益が5,271百万円から21,035百万円へ+299.1%増加しており、海外子会社の為替換算調整勘定の影響が大きいと推測されるが、決算短信の主要数値だけでは断定できない。今後の為替動向は損益・純資産の両面に影響しうる。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
EVシフトによる燃料系製品需要の構造的な縮小リスク。 売上の54%を占める燃料系製品は内燃機関を前提とした製品群です。ガソリン車からEVへのシフトが加速すれば、需要が構造的に縮小していく可能性があります。ただし、そのペースや影響度合いは本記事で参照した資料からは確認できず、第4節で述べたとおり2027年3月期の減益予想だけでこの影響を断定することはできません。
営業キャッシュ・フローの悪化が一過性か構造的かが見えないリスク。 2026年3月期の営業キャッシュ・フローは282億22百万円から72億04百万円へ-74.5%減少しました。運転資本の増減が一時的なものなのか、恒常的な変化なのかは、今回の資料からは判別できません。
トヨタグループへの高い依存度によるリスク。 トヨタグループ向け売上が6割強を占めるため、トヨタグループの生産動向や部品調達方針の変化に業績が左右されやすい構造です。系列取引ゆえの受注の安定性がある一方、価格交渉力では完成車メーカー側が優位に立ちやすい構造でもあります。
2027年3月期の減益予想が未達に終わるリスク、あるいは予想以上に減益が進むリスク。 会社は営業利益-1.6%・経常利益-6.4%・純利益-8.2%を予想していますが、これを上回る減益となれば、EVシフトを含む構造的な要因がより強く働いていることを示唆します。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2026年3月期の愛三工業は、売上高3,308億34百万円(前期比-1.9%)・営業利益182億87百万円(同-0.3%)・純利益130億74百万円(同-1.2%)と、小幅な減収減益で着地しました。前期の大幅増益の反動という側面が大きく、水準自体は高いところにあります。配当は当初予想75.00円から実績80.00円へ増額され、2027年3月期も同額の80.00円が予想されています。指標面ではPER10.10倍・PBR0.92倍・ROE9.4%・ROA6.3%(経常利益ベース)という水準です。
一方で、2027年3月期は会社が増収(+1.3%)を見込みつつ、営業利益・経常利益・純利益はいずれも減益(-1.6%・-6.4%・-8.2%)を予想しています。燃料系製品が売上の54%を占め、海外売上比率も71%に達する同社にとって、この減益予想はEVシフトという長期テーマと関係している可能性がありますが、1年分の予想だけでそれを断定することはできません。純利益がほぼ横ばいなのにEPS・BPSが自己資本の伸びを上回るペースで増加している点(自己株式取得が示唆される)、包括利益が急増している点、営業キャッシュ・フローが大きく減少している点も、あわせて確認しておきたい材料です。
判断の分かれ目は、2027年3月期の増収減益予想をどう評価するかです。 これをEVシフトという長期の構造変化の兆しと見るなら、燃料系製品への依存度が高いこの銘柄の今後の収益性には注意が必要です。一方で、経常利益・純利益の減益幅が営業利益より大きいことから、為替や特別損益など一過性の要因も影響していると見るなら、高い海外売上比率とトップシェアの燃料ポンプモジュール事業を備えた銘柄として、水準そのものを評価する余地もあります。
次に確認すべきは、2026年8月上旬に予定される2027年3月期第1四半期決算です。売上高営業利益率が5.5%からどう動くか、そして通期計画(売上高+1.3%・各利益減益)に対する進捗がどうなっているかが、この記事の見立てを検証する最初の材料になります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 2027年3月期の会社予想(売上高3,350億円・営業利益180億円・経常利益180億円・純利益120億円)を大きく下回り、特に売上高営業利益率が2026年3月期の5.5%からさらに顕著に低下した場合。EVシフトによる需要減が一時的な要因ではなく構造的に進んでいることを示唆する。
- 逆に2027年3月期以降も売上高が横ばい〜微増を維持しつつ営業利益率が5%台を保てた場合。今回の減益予想が為替や原材料費など一過性の要因によるものであり、EVシフトの影響と直結させる見方が早計だったことを意味する。
- 営業キャッシュ・フローが2026年3月期の72億04百万円からさらに悪化し、通期でマイナスに転じた場合。運転資本の悪化が一時的でなく構造化している可能性を示す。
- 2027年3月期の配当が予想80.00円を下回って着地した場合(減配)。前期と同額で据え置いた方針が崩れ、株主還元姿勢の後退を意味する。
- 自己資本比率が2026年3月期末の45.5%から大きく低下した場合(目安として35%を下回るなど)。財務健全性の低下が今後の投資余力や株主還元に影響しうる。
参考文献・引用元
- 01愛三工業「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
連結経営成績、連結財政状態、連結キャッシュ・フローの状況、配当の状況、2027年3月期の連結業績予想(1〜2ページ目付近)を参照。 / 2026/06/16 開示
- 02IR BANK「愛三工業(7283) 決算まとめ/配当金の推移」
2018年3月期以降の通期業績(売上高・各利益)、および配当の期初予想・修正・実績の履歴を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年7月30日時点の表示)。2024年3月期以前の数値は同サイトの表示値(億円単位に丸めた値)にもとづく。