東京エネシス(1945) 受注高+30.4%と増益の裏で、工事入札関連の事案が新たな論点に
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
株式会社東京エネシス
2026/09/19 時点
株価
2,180円
時価総額
724億円
配当利回り
3.53%
年間77円
PER
13.9倍
PBR
1.00倍
ROE
7.2%
ROA
4.7%
純利益ベース
自己資本比率
65.3%
配当性向
49.1%
有利子負債
171億円
D/Eレシオ
0.24倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高205億94百万円(前年同期比+31.6%)・営業利益9億60百万円(同+73.8%)・純利益8億70百万円(同+12.9%)と増収増益で着地した。受注高240億50百万円(同+30.4%)・次期繰越工事高1,483億86百万円(同+19.5%)も拡大しており、先行指標も含めて業績の勢いは強い。
- 一方、決算短信の経営成績等の概況には、群馬県上野村発注の工事入札に関して社員が逮捕・起訴された事案が新たに開示された。会社は特別調査委員会を設置し、司法手続きへの協力と再発防止に取り組むとしているが、この時点で行政処分(指名停止等)の有無や範囲は判明していない。売上構成比50.0%を占める電力市場、受注構成比20.2%を占める原子力部門など、公共性の高い分野への依存度が高い会社だけに、判明する情報の続報を追う必要がある。
- 自己資本比率は前期末60.7%から当第1四半期末65.3%へ上昇した。有利子負債は当第1四半期末で171億33百万円(短期借入金78億18百万円・社債50億円・長期借入金43億15百万円)、D/Eレシオは0.24倍。前期末時点の有利子負債データは今回参照した決算短信からは確認できず、増減の要因は特定できなかった。
- 配当は2027年3月期に年77円を予想(中間38円・期末39円)し、今回の決算でも修正なし。配当性向は期によって48.9%〜83.7%と振れがあるが、期初予想を期中で増額してきた実績が複数回ある。
目次11項目
1. 概要
東京エネシスは2026年8月6日、2027年3月期第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の決算短信を開示しました。以下の株価指標は2026年9月18日終値2,180円にもとづくものです。
この株価で計算すると、PER(2027年3月期の会社予想EPS156.93円ベース)は13.89倍、予想配当利回り(会社予想配当年77円ベース)は3.53%です。一方、PBR(当第1四半期末BPS2,170.32円ベース)は1.00倍、自己資本比率65.3%は、いずれも当第1四半期末(2026年6月30日)時点の実績にもとづいています。PER・ROE・ROAは会社予想ベース、PBR・自己資本比率は当第1四半期末の実績ベースと、指標によって基準となる時点が異なる点に注意してください。
当第1四半期の決算は、売上高205億94百万円(前年同期比+31.6%)・営業利益9億60百万円(同+73.8%)・純利益8億70百万円(同+12.9%)と増収増益でした。受注高240億50百万円(同+30.4%)、次期繰越工事高1,483億86百万円(同+19.5%)も伸びており、先行指標を含めて業績の勢いは強く見えます。
その一方で、今回の決算短信には、これまでの記事では扱っていなかった新しい論点が含まれています。群馬県上野村発注の工事入札に関して、当社社員が逮捕・起訴された事案が今回初めて開示されました。 会社は特別調査委員会を設置していますが、この決算短信の時点で行政処分の有無・範囲は判明していません。堅調な受注・増益基調と、この新しいリスクをどう読むかが、本記事(特に4節)の中心的なテーマです。
2. 会社概要とビジネスモデル
東京エネシスは、発変電設備工事をはじめとする電気設備工事を主力とする専門工事会社です。事業区分は「設備工事業」(グリーンエネルギー事業部門・エネルギー部門・原子力部門・溶接検査センター・海外事業部)と、発電・不動産・リース等を手がける「その他の事業」の2区分です。東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)グループの一員という位置づけにありますが、具体的な出資比率等は今回参照した決算短信には記載がなく、本記事ではその詳細には立ち入りません。
当第1四半期の売上高205億94百万円のうち、設備工事業が192億35百万円(前年同期比+35.0%)を占め、その他の事業は13億82百万円(同△1.4%)です。設備工事業の部門別売上高は、エネルギー部門125億09百万円(同+34.1%)、グリーンエネルギー事業部門38億13百万円(同+87.3%)、原子力部門35億25百万円(同+1.0%)となっており、エネルギー部門が売上の中心です。市場別では、電力市場が102億94百万円(構成比50.0%)、一般産業・その他が65億24百万円(同31.7%)、再生可能エネルギーが37億99百万円(同18.4%)で、電力市場向けが売上の半分を占めています。
強みと弱みの整理
強み
受注・繰越工事高が拡大基調
当第1四半期の受注高は240億50百万円(前年同期比+30.4%)、次期繰越工事高は1,483億86百万円(同+19.5%)といずれも拡大しています。特にエネルギー部門の受注は167億93百万円(同+67.5%)と伸び、受注構成比の69.8%を占めています。
自己資本比率65.3%と財務健全性が高い
当第1四半期末の自己資本比率は65.3%(前期末60.7%)で、有利子負債171億33百万円に対するD/Eレシオは0.24倍にとどまります。財務レバレッジを大きくは使っていません。
増配基調と期中の増額修正実績
2027年3月期の会社予想配当は年77円(配当性向49.1%)で、今回の決算でも据え置かれています。2026年3月期は期初予想57円から63円へ、2023年3月期・2024年3月期も期中で増額して着地した実績があります。
弱み
工事入札に関する事案という新しいリスク
今回の決算短信で、群馬県上野村発注の工事入札に関して社員が逮捕・起訴された事案が初めて開示されました。特別調査委員会が設置されていますが、司法手続きは進行中で、行政処分の有無・範囲はこの時点では判明していません(詳しくは4節)。
電力・原子力等の公共性の高い分野への依存度が高い
売上構成比では電力市場が50.0%、原子力部門が17.1%を占めます。電力会社の設備投資計画や原子力発電所の稼働・保守周期といった、個社の努力では変えられない外部要因に業績が左右されやすい構造です。
業績の振れ幅が大きい
2025年3月期は売上高が前期比△23.5%、営業利益が同△32.7%と大幅な減収減益になりました。今回参照した決算短信の記載からは主因を特定できておらず、単年度の数値だけで傾向を語るのは難しい会社です。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業CF | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 72,578 | 3,158 | 3,257 | 1,226 | -5,733 | 62.8% |
| 2023/03 | 79,055 | 3,458 | 2,770 | 2,120 | 8,143 | 61.1% |
| 2024/03 | 88,467 | 3,959 | 5,212 | 2,960 | 8,503 | 63.8% |
| 2025/03 | 67,722 | 2,665 | 3,342 | 2,900 | -15,229 | 63.3% |
| 2026/03 | 83,083 | 4,737 | 5,518 | 4,287 | 4,706 | 60.7% |
| 2027/03会社予想 | 95,000 | 7,300 | 7,500 | 5,200 | — | — |
読み取れることは3つあります。
まず、業績は一本調子ではなく、大きな山と谷を伴って推移してきました。 売上高は2022年3月期の725億78百万円から2024年3月期の884億67百万円まで拡大した後、2025年3月期は677億22百万円(前期比△23.5%)へ大きく落ち込み、2026年3月期は830億83百万円(同+22.7%)へ回復しています。2027年3月期は950億円(同+14.3%)とさらなる増収を見込んでいます。2025年3月期の落ち込みの主因は、今回参照した決算短信の記載からは特定できませんでした。
次に、営業利益とその下の段階である経常利益の伸び率が、年によって大きく乖離しています。 2023年3月期は営業利益が+9.5%伸びた一方で経常利益は△15.0%減少し、逆に2024年3月期は営業利益+14.5%に対して経常利益は+88.1%と大きく上振れました。営業外損益の振れが利益の伸び率に大きな影響を与えていることがうかがえますが、通期ベースでの営業外損益の内訳は今回参照した決算短信の抜粋からは確認できていません。当第1四半期についても同様の乖離(営業利益+73.8%に対し経常利益+176.9%)が生じており、その内訳は6節で扱います。
最後に、営業キャッシュ・フローの振れも大きく、黒字と赤字を繰り返しています。 2022年3月期は△57億33百万円、2023年3月期は+81億43百万円、2024年3月期は+85億03百万円、2025年3月期は再び△152億29百万円、2026年3月期は+47億06百万円と推移しました。工事進行基準にもとづく受注産業では、未成工事支出金や完成工事未収入金の増減によって、利益とキャッシュ・フローが一時的に大きく乖離することがあります(7節)。
4. 工事入札に関する事案 — 好調な受注環境と併存する新たなリスク
当第1四半期の決算短信「経営成績等の概況」には、これまでの記事では扱っていなかった記載があります。要旨は次のとおりです。
2026年6月16日、群馬県上野村発注の工事入札に関して逮捕された当社社員が、2026年7月3日に起訴された。このような事態に至ったことは誠に遺憾であり、お客さまをはじめ関係者に多大な心配と迷惑をかけている。当社はこの事態を厳粛に受け止め、当局の捜査および今後の司法手続きの進展に対し誠実に協力するとともに、社内に「特別調査委員会」を設置し、事実確認を進め、再発防止に向けてコンプライアンスの徹底に取り組み、信頼回復に努める。
この記載自体は会社が自ら開示した事実であり、前四半期までの決算短信には無かった新しい情報です。断定できることと、できないことを分けて整理します。
断定できるのは次の点です。 2026年6月16日に社員が逮捕され、2026年7月3日に起訴されたこと。会社が特別調査委員会を設置したこと。この第1四半期決算の開示時点で、当局の捜査・司法手続きは進行中であり、判決や行政処分に関する続報はまだ出ていないことです。
断定できないのは次の点です。 発注者である群馬県上野村、あるいは他の官公庁・電力会社が、指名停止(一定期間、当該発注者の入札に参加できなくなる行政処分)などの措置をとるかどうか、とる場合にその範囲がどの程度になるかは、今回の決算短信からは分かりません。指名停止は個別の発注者ごとに科されることが一般的で、仮に措置がとられても全社の受注に占める影響が限定的にとどまる可能性はありますが、それも含めて未確定です。
この論点が重要なのは、東京エネシスが公共性の高い分野への依存度が高い会社だからです。当第1四半期の市場別売上高では、電力市場が構成比50.0%(102億94百万円)を占め、部門別では原子力部門が売上構成比17.1%(35億25百万円)・受注構成比20.2%(48億63百万円)です。もし電力会社や官公庁による行政処分に発展した場合、こうした構成比の大きい分野の受注に影響が及ぶ可能性は理論上ありますが、現時点でその可能性の大小を判断する材料は開示されていません。
一方で、同じ決算短信は受注高240億50百万円(前年同期比+30.4%)・次期繰越工事高1,483億86百万円(同+19.5%)という好調な数字も示しています。好調な受注環境という強気材料と、司法手続きが進行中で結果が未確定という弱気材料が、同じ四半期の中に併存しています。 どちらか一方だけを見て評価を決めるのではなく、次回以降の決算で特別調査委員会の結果や行政処分の有無が明らかになるのを待つ、という姿勢が現時点では妥当だと考えられます。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 30円 | — | 83.7% |
| 2023/03 | 30円 | 40円 | +10円 | 64.6% |
| 2024/03 | 40円 | 45円 | +5円 | 51.9% |
| 2025/03 | 52円 | 52円 | 0円 | 60.0% |
| 2026/03 | 57円 | 63円 | +6円 | 48.9% |
| 2027/03会社予想 | 77円 | 77円 | — | 49.1% |
- 2022/03:前身の日立プラントコンストラクションからの事業一部承継協議のため期初は予想を開示できず、2021年5月17日に別途公表した。
- 2023/03:期初予想から10円増額。中間は普通配当15円+記念配当5円、期末は普通配当15円+特別配当5円。
- 2024/03:期末を5円増額して着地。
- 2025/03:期初予想どおり据え置き。
- 2026/03:期末を29円から35円へ増額修正(2026年4月23日公表)。
- 2027/03:期初予想77円。今回(2027年3月期第1四半期)の決算でも修正なく据え置き。
配当は増額修正を伴いながら推移してきました。2022年3月期は、前身の日立プラントコンストラクションからの事業一部承継協議のため期初予想を開示できず、年30円(中間15円・期末15円)で着地しています。2023年3月期は期初予想30円に対し、記念配当・特別配当を含めて年40円へ10円増額。2024年3月期は期末を5円増額して45円、2025年3月期は期初予想52円どおりで着地しました。2026年3月期は期初予想57円に対し、期末を29円から35円へ増額修正し、年63円で着地しています。
2027年3月期は年77円(中間38円・期末39円)を予想しており、今回の第1四半期決算でも修正されていません。配当性向は83.7%(2022年3月期)〜48.9%(2026年3月期)と期によって幅がありますが、期初予想を下回って着地した期はなく、期中の増額修正が複数回ある点は評価材料になります。
株価2,180円に対する予想配当利回り3.53%は、会社が開示した2027年3月期の年間配当予想77円にもとづく数値です。会社予想と前期実績が一致している(77円=前期実績63円からさらに増額の予想)ため、予想と実績のギャップに注意すべき局面ではありません。
6. 会社の現状と直近の動き
当第1四半期の四半期連結損益計算書を、前年同期と比べます。
| 項目 | 前Q1(2025年4〜6月) | 当Q1(2026年4〜6月) |
|---|---|---|
| 売上高 | 156億45百万円 | 205億94百万円 |
| 営業利益 | 5億52百万円 | 9億60百万円 |
| 営業外収益(主なもの) | 受取配当金1億76百万円・為替差益52百万円・受取利息17百万円 | 受取配当金2億04百万円・為替差益54百万円・デリバティブ評価益1億85百万円・受取利息18百万円 |
| 営業外費用(主なもの) | 支払利息53百万円・匿名組合投資損失1億41百万円・デリバティブ評価損1億43百万円 | 支払利息74百万円・匿名組合投資損失75百万円 |
| 経常利益 | 4億61百万円 | 12億77百万円 |
| 特別利益(主なもの) | 固定資産売却益8億07百万円 | 固定資産売却益1百万円・受取損害賠償金1億39百万円 |
| 法人税等 | 4億97百万円 | 5億47百万円 |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 7億71百万円 | 8億70百万円 |
出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(主な内訳のみを抜粋しており、合計は表中の小項目の和と厳密には一致しません)
3節で触れたとおり、当第1四半期は営業利益+73.8%に対して経常利益は+176.9%と大きく上振れました。主因は営業外損益の振れです。 為替予約のデリバティブ評価が、前年同期の評価損1億43百万円から当第1四半期は評価益1億85百万円へ改善し、匿名組合投資損失も1億41百万円から75百万円へ縮小しました。円安基調に伴う為替予約の時価評価が主な要因と見られます。
一方、経常利益が大きく伸びたにもかかわらず、純利益の伸びは+12.9%にとどまりました。これは特別利益の反動によるものです。 前年同期には固定資産売却益8億07百万円という特別利益がありましたが、当第1四半期はそれがほぼなくなり(1百万円)、代わりに自然災害に係る受取損害賠償金1億39百万円を計上しました。特別利益の合計は8億08百万円から1億40百万円へ大きく減少し、経常利益段階での増益がそのまま純利益に反映されない結果になっています。この四半期の増益は、営業利益ベースでは実力に近い伸びである一方、経常利益・純利益は非経常的な項目の影響を強く受けている点に注意が必要です。
貸借対照表では、総資産が前期末1,193億29百万円から当第1四半期末1,100億78百万円へ92億51百万円減少した一方、純資産(自己資本)は724億52百万円から719億14百万円へ5億38百万円の減少にとどまりました。この結果、自己資本比率は60.7%から65.3%へ上昇しています。総資産減少の内訳(受取手形等や現金及び預金の増減幅)について、前期末との比較データは今回参照した決算短信の抜粋には含まれておらず、特定できませんでした。有利子負債は当第1四半期末で171億33百万円(短期借入金78億18百万円・社債50億円・長期借入金43億15百万円の合計)、自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.24倍です。前期末時点の有利子負債の水準や、増減の理由(設備投資・借換等)についても、今回参照した資料からは確認できませんでした。
セグメント別では、設備工事業のセグメント利益が20億07百万円(前年同期比+48.4%)と伸びた一方、その他の事業はセグメント損失△1百万円(前年同期は利益54百万円)でした。市場別の次期繰越工事高は、電力市場が構成比40.3%、再生可能エネルギーが40.0%、一般産業・その他が19.7%となっています。
7. 業界とセクターの状況
建設業は、官公庁・民間の建設投資の総量に業績が連動する受注生産型の産業です。工事は工事進行基準にもとづいて売上・利益が計上されるため、未成工事支出金や完成工事未収入金の増減によって、決算上の利益と実際のキャッシュ・フローが一時的に大きく乖離することがあります。3節で見た東京エネシスの営業キャッシュ・フローの振れ(黒字と赤字を繰り返す推移)は、この業種の特徴と整合的です。
受注高・次期繰越工事高は数年先の業績を映す先行指標になります。 東京エネシスの当第1四半期は、受注高+30.4%・次期繰越工事高+19.5%と伸びており、この点では業績の先行きにポジティブなシグナルが出ています。
官公庁発注の工事は入札を通じて受注されるため、入札制度の公正性に対する社会的な監視は、このセクター全体に共通する構造的な論点です。 個別企業の入札関連の事案が行政処分(指名停止等)に発展した場合、当該発注者からの新規受注機会が一定期間失われるのは、業界共通の制度上の仕組みです。4節で扱った東京エネシスの事案が実際にそこまで発展するかどうかは、この記事の時点では判明していません。
また、電力・原子力といった公共性の高いインフラ分野は、個社の努力では変えられない外部要因(電力会社の設備投資計画、原子力発電所の再稼働・保守周期、再生可能エネルギー関連の政策動向)に業績が左右されやすい点も、この会社の事業構造に固有の制約として押さえておく必要があります。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
受注高・次期繰越工事高の増加基調(当第1四半期はそれぞれ+30.4%・+19.5%)が続いているか、特別調査委員会の調査進捗に関する追加開示があるかを確認できる最初の機会。
当第1四半期の決算短信時点では処分の有無・範囲は未確定。電力市場(売上構成比50.0%)・原子力部門(受注構成比20.2%)への影響度合いを見極める材料になる。
エネルギー部門の受注(当第1四半期+67.5%、受注構成比69.8%)が業績を牽引しており、電力会社の投資計画の変化が業績に連動しやすい。
グリーンエネルギー事業部門の受注高は当第1四半期△40.8%と減少しており、案件のタイミングによって受注が振れやすい。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
工事入札に関する事案が行政処分に発展するリスク。 4節で見たとおり、群馬県上野村発注の工事入札に関する事案で社員が起訴され、特別調査委員会が設置されています。仮に発注者による指名停止等の行政処分に発展すれば、当該発注者からの新規受注機会が一定期間失われます。売上構成比50.0%を占める電力市場や、受注構成比20.2%を占める原子力部門にどの程度の影響が及びうるかは、現時点では判明していません。
公共性の高いインフラ分野への依存に伴う外部要因リスク。 電力市場向け売上が構成比50.0%を占め、原子力部門も17.1%を占めます。電力会社の設備投資計画や原子力発電所の稼働・保守周期といった、個社の努力では変えられない外部要因の変化が業績に直結します。
業績の振れ幅の大きさ。 2025年3月期は売上高△23.5%・営業利益△32.7%という大幅な減収減益を経験しており、主因は今回参照した決算短信の記載からは特定できていません。単年度・単四半期の数値だけで傾向を判断するのは難しい会社です。
グリーンエネルギー事業部門の受注減速。 当第1四半期の同部門の受注高は8億93百万円(前年同期比△40.8%)と大きく減少しました。案件のタイミングによって受注が振れやすく、この分野の成長ペースには不確実性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期は、売上高+31.6%・営業利益+73.8%の増収増益で、受注高+30.4%・次期繰越工事高+19.5%と先行指標も好調でした。自己資本比率も60.7%から65.3%へ改善し、配当予想も年77円で据え置かれています。財務・受注の両面では、堅調さを裏付ける材料が並んでいます。
一方で、今回の決算短信で初めて開示された工事入札に関する事案は、この記事の時点では結末が見えていない新しいリスクです。 特別調査委員会は設置済みですが、司法手続きは進行中で、行政処分の有無・範囲は判明していません。
判断の分かれ目は、堅調な受注・財務指標を中心に評価するか、結末の見えない入札関連の事案を重く見るかです。 前者を重視するなら、増収増益・受注拡大・財務健全性の高さが際立つ決算と読めます。後者を重視するなら、電力市場・原子力部門への依存度が高い会社だけに、続報を待つべき局面と読めます。次の中間決算(2026年11月上旬予定)では、受注高・次期繰越工事高の推移に加えて、特別調査委員会や行政処分に関する続報が出ているかどうかを、あわせて確認してください。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 特別調査委員会の調査結果や、行政処分(指名停止等)の有無・範囲が判明し、電力市場(売上構成比50.0%)や原子力部門(売上構成比17.1%・受注構成比20.2%)の受注に明確な悪影響が出た場合。
- 次四半期(2026年11月発表予定の中間決算)で、受注高・次期繰越工事高の増加基調(当第1四半期はそれぞれ前年同期比+30.4%・+19.5%)が反転し、減少に転じた場合。
- 通期業績予想(売上高950億円・営業利益73億円・経常利益75億円・純利益52億円)に対する上半期時点の進捗率が、単純な50%を大きく下回るなど下振れが明確になった場合。
- 2027年3月期の配当が予想の年77円を下回って着地した場合(減配)。2023年3月期以降、期初予想を据え置くか増額してきた実績が途切れたことを意味する。
よくある質問
- 東京エネシスで何があったのですか?
- 2027年3月期第1四半期の決算短信によれば、2026年6月16日に群馬県上野村発注の工事入札に関して同社の社員が逮捕され、2026年7月3日に起訴されました。会社は社内に「特別調査委員会」を設置し、事実確認とコンプライアンス徹底に取り組むとしています。この決算短信の時点では、当局の捜査・司法手続きは進行中で、行政処分(指名停止等)の有無や範囲は判明していません。本文4節で詳しく扱っています。
- 東京エネシスの配当はいくらですか?
- 2027年3月期の会社予想配当は年77円(中間38円・期末39円)で、2026年8月6日発表の第1四半期決算でも修正されていません。2026年3月期の実績は年63円(中間28円・期末35円、期末を29円から35円へ増額修正)でした。
- なぜ経常利益は前年同期比+176.9%も伸びたのに、純利益は+12.9%にとどまったのですか?
- 経常利益の急伸は、為替予約のデリバティブ評価益185百万円(前年同期はデリバティブ評価損143百万円)を営業外収益に計上したことなどが主因です。一方、純利益の伸びが小さいのは、前年同期に固定資産売却益807百万円という特別利益を計上していた反動で、今期の特別利益は受取損害賠償金139百万円などにとどまり808百万円から140百万円へ減少したためです。詳しくは本文6節で扱っています。
参考文献・引用元
- 01株式会社東京エネシス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年8月6日開示。連結経営成績、受注高・次期繰越工事高、セグメント情報(設備工事業/その他の事業、部門別・市場別内訳)、四半期連結貸借対照表、四半期連結損益計算書の明細、配当の状況、経営成績等の概況(工事入札に関する事案の記載)を参照。 / 2026/08/06 開示
- 02
株式会社東京エネシス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年5月12日開示。通期実績、配当の状況(2026年3月期実績・2027年3月期予想)を参照。 / 2026/05/12 開示
- 03
株式会社東京エネシス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年5月12日開示。通期実績・配当の状況を参照。 / 2025/05/12 開示
- 04
株式会社東京エネシス「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年5月8日開示。通期実績・配当の状況を参照。 / 2024/05/08 開示
- 05
株式会社東京エネシス「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年4月28日開示。通期実績・配当の状況を参照。 / 2023/04/28 開示
- 06
株式会社東京エネシス「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2022年4月27日開示。通期実績・配当の状況を参照。 / 2022/04/27 開示
- 07IR BANK「東京エネシス(1945) 株式情報」
二次情報。株価・時価総額・BPSのみを参照した(2026年9月18日終値時点のスナップショット)。通期業績・配当の実額はすべて上記の各期決算短信を一次情報として用いている。