大林組(1802) 純利益+116.3%の中身と、据え置かれた減益計画
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
株式会社大林組
2026/08/31 時点
株価
2,992.5円
時価総額
20,571億円
配当利回り
3.14%
年間94円
PER
13.1倍
PBR
1.63倍
ROE
12.5%
ROA
5.0%
純利益ベース
自己資本比率
40.6%
配当性向
41.2%
有利子負債
3,428億円
D/Eレシオ
0.28倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高6,234億29百万円(前年同期比+19.0%)・営業利益327億円(同+107.0%)・経常利益364億68百万円(同+98.2%)・純利益390億91百万円(同+116.3%)という大幅な増収増益だった。
- ただし、セグメント別営業利益の増加額169億1百万円のうち約48%(80億98百万円)は不動産事業(分譲物件の売却)によるもので、税引前利益の増加額290億6百万円のうち約38.5%(111億72百万円)は政策保有株式の売却益を中心とする特別利益の増加が占めており、増益の相当部分が一過性の色彩を帯びる。
- 通期業績予想(純利益1,570億円、前期比△9.6%)は、Q1の大幅増益(純利益進捗率24.9%)にもかかわらず2026年5月13日の公表から修正されておらず、増収(+13.9%)でも営業利益・経常利益・純利益いずれも減益という計画のままである。
- 個別受注高は前年同期比+54.2%と大きく伸びたが、その大半は国内官公庁区分の突出した増加(19億1百万円→1,328億97百万円)によるものである一方、海外建築の連結受注高は前年同期比△83.4%と急減しており、受注の伸びが特定区分に偏っている可能性がある。
目次11項目
1. 概要
大林組は、2026年8月31日時点で株価2,992.5円、時価総額2兆571億円、PER13.10倍(2027年3月期会社予想EPS228.39円ベース)・PBR1.63倍(2026年3月期実績BPS1,830.64円ベース)という水準にあります。ROE12.48%・ROA4.99%(いずれも会社予想、ROAは純利益÷総資産ベース)、予想配当利回りは3.14%で、これは会社が公表している2027年3月期の年間配当予想94円を株価で割った値です。なお自己資本比率だけは直近の第1四半期末(2026年6月30日)時点の40.6%を使っており、他の指標が2026年3月期実績・2027年3月期予想ベースであるのとは時点が異なる点は先に断っておきます。
2026年8月7日に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算は、売上高6,234億29百万円(前年同期比+19.0%)・営業利益327億円(同+107.0%)・経常利益364億68百万円(同+98.2%)・純利益390億91百万円(同+116.3%)と、数字だけを見れば非常に強い増収増益でした。ただし、この増益の中身を分解すると、セグメント別営業利益の増加額のうち約48%は不動産事業における分譲物件の売却、純利益段階の増加額のうち約38.5%は政策保有株式の売却益の増加によるもので、一過性の色彩が濃いことが分かります。しかも会社は、この大幅増益にもかかわらず通期業績予想(増収でも純利益は前期比△9.6%の減益計画)を一切修正していません。「増益の質」と「据え置かれた減益計画」という2つの論点を中心に、この記事では大林組の第1四半期決算を読み解きます(第4節で詳しく扱います)。
2. 会社概要とビジネスモデル
大林組は、大成建設・清水建設・鹿島建設と並ぶ「スーパーゼネコン」の一角を占める総合建設会社です。国内建築事業・海外建築事業・国内土木事業・海外土木事業・不動産事業の5セグメントを軸に、国内外で大規模建築物・インフラ工事の設計・施工と、分譲マンション等の不動産開発・売却を手がけています。2025年12月には海外建築事業を強化するためGCON社を連結子会社化しており、当第1四半期の増収要因の一つにも挙げられています。
建設業は受注生産・工事進行基準にもとづく会計が特徴で、着工から竣工・引き渡しまでのタイムラグがあるぶん、単四半期の決算だけでは実態をつかみにくい業種です。加えて大林組は、他のスーパーゼネコン同様、不動産事業や政策保有株式の売却損益が単四半期の利益を大きく振らす要因にもなります。この特性は、第4節・第7節の論点と直結します。
強みと弱みの整理
強み
増収増益の規模自体は大きい
売上高6,234億29百万円(前年同期比+19.0%)・営業利益327億円(同+107.0%)と、規模・伸び率ともに大きい増収増益でした。国内建築・国内土木・海外土木の各セグメントも営業利益が増加しており、不動産事業だけが増益を牽引したわけではありません。
自己資本比率が改善し、有利子負債はほぼ横ばい
Q1末の自己資本比率は40.6%と、前期末(40.0%)から0.6ポイント改善しました。有利子負債(ノンリコース債務含む連結)は3,428億円で前期末(3,440億円)比△0.4%とほぼ横ばいで、D/Eレシオもおよそ0.27倍台で大きな変化はありません。
配当は着実な増配基調
年間配当は2023年3月期の42円から、2024年3月期に期中の2回の増額修正を経て75円、2025年3月期81円、2026年3月期88円と積み上がってきました。2027年3月期の予想94円(+6.8%)も、公表以来修正されていません。
弱み
増益の相当部分が一過性要因による
セグメント別営業利益の増加額169億1百万円のうち約48%(80億98百万円)は不動産事業(分譲物件の売却)、税引前利益の増加額290億6百万円のうち約38.5%(111億72百万円)は政策保有株式の売却益の増加によるものです。売却が一巡すれば同じペースの増益は続きません。
通期予想自体が増収減益の計画
2027年3月期の会社予想は、売上高2兆9,450億円(前期比+13.9%)に対し、営業利益1,800億円(同△7.5%)・経常利益1,830億円(同△10.4%)・純利益1,570億円(同△9.6%)と、増収にもかかわらず利益は減る計画です。
海外建築事業の受注・利益がともに悪化
Q1の海外建築事業は、連結受注高が前年同期比△83.4%と急減し、利益も同△54.1%でした。GCON社の連結効果で増収はしているものの、採算面では他のセグメントと明暗が分かれています。
3. 業績の推移
数値で確認する
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/03 | 1,980,000 | 93,800 | 100,800 | 77,700 | 38.2% |
| 2024/03 | 2,330,000 | 79,400 | 91,500 | 75,100 | 38.1% |
| 2025/03 | 2,590,000 | 142,500 | 152,200 | 145,400 | 38.1% |
| 2026/03 | 2,586,258 | 194,678 | 204,195 | 173,759 | 40.0% |
| 2027/03会社予想 | 2,945,000 | 180,000 | 183,000 | 157,000 | — |
読み取れることは3つあります。
2024年3月期の落ち込みを底に、2期連続で急回復してきた。 営業利益は2023年3月期の938億円から2024年3月期は794億円へ落ち込みましたが、2025年3月期は1,425億円(前年比+79.5%)、2026年3月期は1,946億78百万円(同+36.6%)と急拡大しました。建設業界全体が資材高・労務費上昇で採算が悪化した時期を経て、値上げ浸透や採算管理の改善で回復したとみられますが、2024年3月期の落ち込みの直接の原因は、この記事で参照した資料だけでは特定できません。
売上高は2025年3月期から2026年3月期にかけてほぼ横ばいだった。 2025年3月期の約2兆5,900億円から2026年3月期は2,586,258百万円と、ほぼ変わらない水準にとどまりましたが、利益は前述の通り大きく伸びており、増収を伴わない利益率改善の局面だったことがうかがえます。2027年3月期は売上高が2兆9,450億円(前期比+13.9%)へ拡大する計画ですが、利益はいずれも減益の計画になっています(詳細は第4節)。
自己資本比率は2023年3月期から2025年3月期まで38%前後で推移した後、2026年3月期に40.0%へ上昇した。 さらにQ1末は40.6%まで改善しています。この動きの背景は第6節で扱います。
4. 純利益+116.3%の中身 ── 不動産売却・政策保有株式売却という一過性要因
2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上高+19.0%・営業利益+107.0%・経常利益+98.2%・純利益+116.3%という、表面上は非常に強い増収増益でした。しかし、この増益がどこから来ているかを分解すると、単純に「本業が好調」と言い切れない構造が見えてきます。
まず、セグメント別の営業利益を見ます。
| セグメント | 前Q1営業利益 | 当Q1営業利益 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 国内建築 | 50億01百万円 | 132億54百万円 | +165.0% |
| 海外建築 | 28億96百万円 | 13億28百万円 | △54.1% |
| 国内土木 | 30億81百万円 | 47億38百万円 | +53.7% |
| 海外土木 | 22億76百万円 | 35億32百万円 | +55.2% |
| 不動産事業 | 14億40百万円 | 95億38百万円 | +562.1% |
| その他 | 11億02百万円 | 3億07百万円 | △72.1% |
| 合計 | 157億98百万円 | 327億00百万円 | +107.0% |
出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「経営成績等の概況」
営業利益の増加額169億1百万円のうち、不動産事業だけで80億98百万円、約48%を占めています。 決算短信の経営成績概況は、増益の要因として「国内建築事業において工事損失引当金を計上した案件の多くが概ね竣工し、採算性の良い案件の寄与度が高まったこと」に加え、「不動産事業において分譲物件の売却を行ったこと」を明記しています。分譲物件の売却は、その物件が竣工・引き渡しされた四半期に一括して利益が計上される性質のもので、毎四半期同じペースで発生するとは限りません。一方、海外建築事業は増収(GCON社の連結効果を含む)にもかかわらず利益は△54.1%の減益で、セグメント間の明暗はここでも分かれています。
次に、営業利益から純利益までの伝わり方を見ます。
| 項目 | 前Q1(2025年4〜6月) | 当Q1(2026年4〜6月) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業利益 | 157億98百万円 | 327億00百万円 | +107.0% |
| 経常利益 | 183億96百万円 | 364億68百万円 | +98.2% |
| 特別利益(うち投資有価証券売却益) | 89億38百万円(85億85百万円) | 201億10百万円(200億64百万円) | +125.0%(+133.7%) |
| 税金等調整前四半期純利益 | 272億71百万円 | 562億77百万円 | +106.4% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 180億70百万円 | 390億91百万円 | +116.3% |
出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(四半期連結損益計算書)
税引前利益の増加額290億6百万円のうち、特別利益(政策保有株式の売却益が中心)の増加が111億72百万円、約38.5%を占めます。 決算短信本文にも「政策保有株式の売却益が増加したことなどから」純利益が伸びたと明記されています。投資有価証券売却益は85億85百万円から200億64百万円へ+133.7%拡大しており、特別利益の増加のほとんどがこの1項目によるものです。
この決算で最も注目すべき点は、これだけの大幅増益にもかかわらず、会社が通期業績予想を一切修正していないことです。 2026年5月13日に公表した通期予想(純利益1,570億円、前期比△9.6%)は、2026年8月7日のQ1決算時点でも変更されていません。決算短信に「なぜ修正しないのか」という明示的な説明はなく断定はできませんが、Q1の伸びの半分近くを占める不動産事業の売却・政策保有株式の売却がいずれも継続的に同じペースで発生するとは限らない性質の利益であることを踏まえると、会社自身がこの増益ペースを構造的な改善ではなく一過性のものと見ている可能性は考えられます。 この見立てが正しいかどうかは、次の中間決算で通期予想が修正されるかどうかで確認できます。
5. 配当の推移
| 決算期 | 期初予想 | 年間配当 | 期初比 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | — | 32円 | — | — |
| 2023/03 | — | 42円 | — | — |
| 2024/03 | 42円 | 75円 | +33円 | — |
| 2025/03 | 80円 | 81円 | +1円 | 39.9% |
| 2026/03 | 82円 | 88円 | +6円 | 35.3% |
| 2027/03会社予想 | 94円 | 94円 | — | 41.2% |
- 2024/03:期初予想42円(21円+21円)から、期中に72円(21円+51円)へ増額修正され、最終的に75円(21円+54円)で着地。期中に2回の増額修正があった。
- 2025/03:期初予想80円(40円+40円)に対し、期末配当が41円へわずかに上振れて着地。
- 2026/03:期初予想82円(41円+41円)から、期末配当が41円から47円へ増額修正され、年間88円で着地。純資産配当率5.1%、配当総額609億41百万円。
- 2027/03:中間47円・期末47円の予想。2026年5月13日の公表から、2026年8月7日のQ1決算時点でも修正なし。
配当は2022年3月期の32円(16円+16円)から2023年3月期42円(21円+21円)へと段階的に増え、2024年3月期には期初予想42円(21円+21円)から期中に72円(21円+51円)へ増額修正され、最終的に75円(21円+54円)で着地しました。2025年3月期は期初予想80円(40円+40円)に対し実績81円(配当性向39.9%)、2026年3月期は期初予想82円(41円+41円)から期末配当が47円へ増額され、年間88円(配当性向35.3%、純資産配当率5.1%、配当総額609億41百万円)で着地しています。
2024年3月期の期中増額修正以降、年6〜9%程度の着実な増配が続いています。 2027年3月期の予想94円(中間47円・期末47円、+6.8%)は、2026年5月13日の公表から2026年8月7日のQ1決算時点まで修正されていません。株価2,992.5円に対する予想利回り3.14%は、この会社予想94円にもとづく数値です。第4節で見た通り、Q1の増益は一過性要因の寄与が大きく、それが政策保有株式の売却益のような形で配当原資に回るのか、あるいは通期業績予想通りに減益で着地して配当も据え置きのまま終わるのかは、次の中間決算以降を確認する必要があります。
6. 会社の現状と直近の動き
通期業績予想(2027年3月期、2026年5月13日公表から修正なし)に対する進捗率は、決算短信に記載された実測値で売上高21.2%・営業利益18.2%・経常利益19.9%・純利益24.9%です。純利益の進捗率24.9%は単純な4分の1(25%)にほぼ達しており、営業利益・経常利益の進捗率がそれを下回っていることと合わせると、第4節で見た特別利益(政策保有株式売却益)の押し上げが純利益の進捗率を相対的に高く見せていることが分かります。
財政状態については、総資産が前期末の3兆1,434億49百万円から当第1四半期末は3兆630億36百万円へ、△2.6%減少しました。純資産は1兆3,164億66百万円から1兆2,997億42百万円へ、自己資本(親会社株主持分)は1兆2,584億24百万円から1兆2,444億37百万円へ、それぞれ減少しています。総資産の減少ペースが自己資本の減少ペースを上回ったため、自己資本比率は40.0%から40.6%へ0.6ポイント改善しました。
有利子負債(ノンリコース債務を含む連結ベース)は、前期末の3,440億円から当第1四半期末は3,428億円へ、△0.4%とほぼ横ばいでした。有利子負債の自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.275倍で、前期末(自己資本1兆2,584億24百万円に対して概算0.273倍程度)からほぼ変わっていません。総資産・自己資本がともに縮小するなかで有利子負債はほぼ一定であり、増減の直接の理由(設備投資の抑制、自己株買い、配当支払等のいずれが主因か)までは、この決算短信の記載からは特定できませんでした。
なお、2026年3月期(前期)通期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが2,529億20百万円のプラス、投資活動によるキャッシュ・フローが843億63百万円のマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローが1,414億49百万円のマイナスで、現金及び現金同等物の期末残高は4,160億28百万円でした。
補足情報として、連結・個別それぞれの受注高・繰越高も確認しておきます。
| 項目 | 前Q1実績 | 当Q1実績 | 増減率 | 通期予想 | 通期進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築計(連結) | 4,097億円 | 3,458億円 | △15.6% | 1兆8,900億円 | 18.3% |
| (うち海外建築) | 2,345億円 | 390億円 | △83.4% | 5,750億円 | 6.8% |
| 土木計(連結) | 1,684億円 | 1,996億円 | +18.5% | 1兆0,700億円 | 18.7% |
| 建設事業計(連結) | 5,781億円 | 5,455億円 | △5.6% | 2兆9,600億円 | 18.4% |
出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「補足情報」(連結ベース)
海外建築事業の受注高が前年同期比△83.4%と急減しています。 通期予想でも海外建築の受注は前期実績(7,881億円)比△27.0%の計画(5,750億円)になっていますが、Q1の落ち込みはそれをさらに大きく下回るペースです。前年同期が大型案件で一時的に膨らんでいたための反動なのか、需要そのものの変調なのかは、この決算短信だけでは切り分けられません。
個別ベースの受注高は前年同期比+54.2%(2,324億97百万円→3,585億45百万円)と大きく伸びていますが、その中身を見ると、増加はほぼ全て「国内官公庁」区分によるもので、19億1百万円から1,328億97百万円へ(構成比0.8%→37.1%)突出して増加しています。決算短信に案件名の記載はなく、単発の大型公共工事案件の獲得によるものと推測されますが、集中受注か複数件かは特定できません。個別ベースの繰越高(手持工事高)はQ1末で2兆9,123億56百万円(前年同期比+7.5%)と、直近四半期の個別売上高(3,571億88百万円)の約8.2倍の水準にあり、当面の業績バッファは厚いといえます。
7. 業界とセクターの状況
当サイトでは、同じ建設業セクターで大成建設(1801)と高松コンストラクショングループ(1762)をすでに扱っています。3社とも同じ「工事進行基準」「資材高・労務費上昇の採算への影響」という業界共通の構造を抱えていますが、規模・財務体質・市場評価は異なります。
| 大林組(1802) | 大成建設(1801) | 高松コンストラクショングループ(1762) | |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | スーパーゼネコン | スーパーゼネコン | 中堅の総合建設持株会社 |
| 自己資本比率(直近開示) | 40.6%(2027年3月期Q1末) | 36.8%(2027年3月期Q1末) | 50.0%(2027年3月期Q1末) |
| PBR | 1.63倍 | 2.16倍 | 0.89倍 |
| PER | 13.10倍(予想) | 13.34倍(予想) | 11.38倍(実績) |
| 予想配当利回り(会社予想ベース) | 3.14% | 3.08% | 3.86% |
スーパーゼネコン同士(大林組・大成建設)を比べると、自己資本比率は大林組の方が高く、PBRは大成建設の方が高くついています。 中堅の高松コンストラクショングループは自己資本比率50.0%と財務の安定性では最も高い一方、PBRは0.89倍と市場評価は最も控えめです。規模・ブランド力・大型案件への参画力といった、財務指標だけでは測れない要素が市場評価の差に反映されている可能性がありますが、その因果関係をこの記事の資料だけで特定することはできません。
建設業というセクターに固有の制約は、3社に共通する工事進行基準による利益とキャッシュ・フローの乖離、個別案件ごとの競争入札にさらされやすく、資材・労務費の上昇分を価格に転嫁できるかどうかが採算を左右するという2点です。加えて大林組・大成建設のようなスーパーゼネコンでは、不動産事業や政策保有株式の売却損益が単四半期の利益を大きく振らす要因になり得るという点も、この記事の第4節で見た通りです。単四半期の利益の伸びだけを見て判断すると、こうした一過性要因を本業の改善と取り違えるおそれがあります。
8. 今後のスケジュール
2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 第3四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2027年3月期 通期 決算発表
過去の発表時期からの推定
2028年3月期 第1四半期 決算発表
過去の発表時期からの推定
決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。
9. 想定されるカタリスト
Q1の増益を牽引した不動産事業(分譲物件売却)と政策保有株式売却益が中間決算以降も続くか、通期業績予想(純利益△9.6%予想)が修正されるかどうかを確認できる。
Q1は投資有価証券売却益が前年同期比+133.7%(85億85百万円→200億64百万円)に拡大した。追加売却が続けば特別利益の押し上げ要因になる一方、この記事の資料だけでは縮減目標・進捗率は確認できない。
Q1の連結受注高(海外建築)は前年同期比△83.4%と急減し、通期予想(△27.0%計画)よりさらに悪いペースにある。2025年12月に連結子会社化したGCON社の寄与も含め、次四半期以降の受注動向が焦点になる。
個別受注高(国内官公庁区分)が19億1百万円から1,328億97百万円へ突出して増加した。決算短信に案件名の記載はなく、単発の大型案件か複数件かは特定できないが、次四半期以降も同水準が続くかで受注全体の評価が変わる。
10. 想定されるリスク
第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。
増益の一過性要因が剥落するリスク。 第4節で見た通り、Q1の営業利益増加額の約48%は不動産事業の分譲物件売却、純利益段階の増加額の約38.5%は政策保有株式の売却益によるものです。これらは毎四半期同じペースで発生するとは限らず、次の四半期以降にこの寄与がなくなれば、増益率は大きく鈍化する可能性があります。
通期業績予想が増収減益の計画のままである点。 2027年3月期の会社予想は、売上高+13.9%に対し純利益△9.6%という、増収減益の計画です。Q1の大幅増益にもかかわらずこの予想が修正されていない以上、会社自身が下期にかけての採算悪化、あるいはQ1の一過性要因の剥落を織り込んでいる可能性があります。
海外建築事業の受注・利益がともに悪化しているリスク。 Q1の海外建築事業は受注高が前年同期比△83.4%、利益は同△54.1%でした。GCON社の連結効果で増収は続いていますが、採算・受注の両面で他のセグメントとの明暗が鮮明です。この悪化が一時的な反動か構造的な需要変化かは、この決算短信だけでは判断できません。
受注高の伸びが特定区分に偏っているリスク。 個別受注高全体は+54.2%と伸びていますが、その大半は国内官公庁区分の突出した増加(19億1百万円→1,328億97百万円)によるものです。単発の大型案件だった場合、次四半期以降に反落し、受注全体の勢いが失われる可能性があります。
11. まとめ:どう判断材料にするか
2027年3月期第1四半期は、売上高6,234億29百万円(前年同期比+19.0%)・営業利益327億円(同+107.0%)・純利益390億91百万円(同+116.3%)という、表面上は非常に強い増収増益でした。しかしその中身は、営業利益増加額の約48%が不動産事業の分譲物件売却、純利益段階の増加額の約38.5%が政策保有株式の売却益という一過性の色彩が濃いものです。会社はこの大幅増益にもかかわらず、通期業績予想(増収でも純利益△9.6%の減益計画)を一切修正していません。
判断の分かれ目は、このQ1の増益を「本業の採算改善が始まった兆し」と見るか、「不動産・株式売却という一時的な特殊要因が重なっただけ」と見るかです。 前者と見るなら、据え置かれた通期予想は保守的な下振れ余地として読め、次の中間決算での上方修正が期待材料になります。後者と見るなら、通期予想通りの増収減益で着地する可能性が高く、海外建築事業の受注急減や国内官公庁向け受注の偏りといった弱含みの材料の方が、より本質的な業績のトレンドを示していると考えることになります。次の中間決算(2026年11月上旬予定)で通期業績予想に修正が入るかどうか、海外建築事業の受注がどう推移するかが、この記事の見立てに対する最初の答え合わせになります。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 次の中間決算(2026年11月予定)で通期業績予想が上方修正されないまま、Q1の増益ペース(純利益進捗率24.9%)が下期にかけて失速した場合、Q1の増益が不動産・政策保有株式売却という一過性要因中心だったという見立てを裏付ける。逆に上方修正されれば、一過性論は後退する。
- 海外建築事業の受注高減少(Q1連結ベース前年同期比△83.4%)が複数四半期にわたって続き、繰越高(個別、Q1末2兆9,123億56百万円、前年同期比+7.5%)の伸びが鈍化・前年割れに転じた場合、受注減少が反動ではなく構造的な変化だったことが裏付けられる。
- 国内官公庁向け受注の急増(個別Q1、19億1百万円→1,328億97百万円)が単発の大型案件によるものだったことが後続四半期で判明し、次四半期以降大幅に反落した場合、個別受注高全体の伸び(+54.2%)が持続的な需要拡大ではなかったことになる。
- 2027年3月期の配当が予想合計94円(中間47円・期末47円)を下回って着地した場合、2024年3月期以降続いてきた期中の増額修正・据え置き基調が途切れ、逆方向に振れたことになる。
- 自己資本比率がQ1末40.6%から低下に転じ、有利子負債(Q1末3,428億円)が前期末(3,440億円)を上回って増加に転じた場合、Q1時点で確認できた財務改善の流れが反転したことになる。
よくある質問
- 大林組の2027年3月期第1四半期はなぜ純利益が+116.3%も増えたのに、通期予想は減益のままなのですか?
- Q1の営業利益増加額169億1百万円のうち約48%(80億98百万円)は不動産事業における分譲物件の売却、税引前利益の増加額290億6百万円のうち約38.5%(111億72百万円)は政策保有株式の売却益の増加によるものです。会社は2026年5月13日に公表した通期予想(純利益1,570億円、前期比△9.6%)をQ1決算時点でも修正していません。会社が明言しているわけではありませんが、この据え置きは、会社自身がQ1の伸びを一過性のものと見ている可能性を示唆します。
- 大林組の2027年3月期の配当予想はいくらですか?
- 会社予想は年間94円(中間47円・期末47円)で、2026年5月13日の公表から2026年8月7日の第1四半期決算時点まで修正はありません。配当は2023年3月期の42円から2024年3月期に期中の増額修正を経て75円、2025年3月期81円、2026年3月期88円と着実に積み上がってきており、この流れが今期も続くかは中間決算以降を確認する必要があります。
- 大林組の海外事業の受注は減っているのですか?
- 海外建築事業の連結受注高はQ1で前年同期比△83.4%と急減しました。通期予想でも海外建築の受注は前期実績比△27.0%の計画になっていますが、Q1の落ち込みはそれをさらに下回るペースです。前年同期が大型案件で一時的に膨らんでいた反動なのか、需要そのものの変化なのかは、この決算短信だけでは特定できません。
参考文献・引用元
- 01大林組「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月7日公表)
1ページ目「連結業績」「配当の状況」「連結業績予想」、2〜3ページ目「経営成績等の概況」(増収・増益要因の記述、セグメント別営業利益)、財政状態の概況(総資産・純資産・自己資本比率・有利子負債)、四半期連結損益計算書(特別利益・投資有価証券売却益の内訳)、補足情報(受注高・繰越高、連結・個別ベース)を参照。 / 2026/08/07 開示
- 02大林組「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月13日公表)
前期実績(2025年3月期・2026年3月期)の精密値、配当の状況(配当性向・純資産配当率・配当総額)、2027年3月期の連結業績予想・配当予想の出所として参照。 / 2026/05/13 開示
- 03IR BANK「大林組(1802) 決算まとめ/配当金の推移」
2023年3月期・2024年3月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益・EPS・自己資本比率(億円単位の集計値。本文では百万円換算の参考値として使用)、配当の期初予想・修正・実績の履歴を、決算短信・有価証券報告書を集計した二次情報として参照した(2026年8月31日時点の表示)。