四半期分析建設業2027/3期 Q1

大成建設(1801) 土木△37.9%・建築+199.1%の明暗、通期予想は据え置き

2026/08/23 公開2026/08/23 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

大成建設株式会社

東証プライム・名証プレミア 1801 ・ 3月期決算

2026/08/21 時点

株価

12,355円

時価総額

20,161億円

配当利回り

3.08%

年間380円

PER

13.3倍

PBR

2.16倍

ROE

16.2%

ROA

6.0%

純利益ベース

自己資本比率

36.8%

配当性向

41.0%

有利子負債

4,470億円

D/Eレシオ

0.48倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高5,212億15百万円(前年同期比+18.4%)・営業利益453億17百万円(同+15.3%)と増収増益で着地したが、経常利益は+11.5%、純利益は+4.8%と、段階を追うごとに伸び率が縮小した。
  • セグメント別では、土木事業の営業利益が前年同期比△37.9%(153億円)と落ち込む一方、建築事業は+199.1%(250億円)と急拡大し、連結の増益は建築事業の利益率好転が土木事業の利益率悪化を打ち消した結果である。
  • 純利益の伸びが営業利益の伸びを下回った主因は、資金調達費用(新設区分)が41百万円から9億33百万円へ急増したことと、実効税率が33.2%から36.3%へ上昇したことの2つである。
  • 通期業績予想(純利益1,510億円、前期比△11.2%)は2026年5月14日の公表から修正されていない。Q1の純利益進捗率は20.5%で単純な4分の1をやや下回るが、増益ペースをそのまま4倍すると通期予想を上回る計算になり、期初予想が保守的なのか下期に採算悪化が本格化すると会社が見ているのかは、この決算短信だけでは判断できない。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. セグメント間の明暗と、利益の質の低下 ── 土木△37.9% vs 建築+199.1%
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

大成建設は、2026年8月21日時点で株価12,355円、時価総額2兆161億円、PER13.34倍(2027年3月期会社予想EPS926.33円ベース)・PBR2.16倍(2026年3月期実績BPSベース)という水準にあります。ROE16.18%・ROA5.95%(いずれも会社予想、ROAは純利益÷総資産ベース)、予想配当利回りは3.08%で、これは会社が公表している2027年3月期の年間配当予想380円を株価で割った値です。なお自己資本比率だけは直近の第1四半期末(2026年6月30日)時点の36.8%を使っており、他の指標が2026年3月期実績・2027年3月期予想ベースであるのとは時点が異なります。

PBR2.16倍は、2010年以降のレンジ(0.53〜3.56倍)の中では高めの水準にあり、当サイトが「高配当・割安」の目安とするPBR1倍以下という基準からは外れています。大成建設をこの記事で取り上げているのは割安だからではなく、資材高・労務費上昇という業界共通の逆風のなかで業績サイクルがどう動いているかを見る対象としてです。この点は誤解のないよう先に断っておきます。

2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算は、売上高5,212億15百万円(前年同期比+18.4%)・営業利益453億17百万円(同+15.3%)と増収増益でした。ただし経常利益は+11.5%、純利益は+4.8%と、利益の段階を追うごとに伸び率が縮小しています。さらに第1四半期のセグメント別に見ると、土木事業の営業利益は前年同期比△37.9%と落ち込む一方、建築事業は+199.1%と急拡大しており、この明暗のコントラストが連結の増益を作り出しました。この「セグメント間の明暗」と「利益の質の低下」の2つが、この記事の中心テーマです(第4節で詳しく扱います)。

2. 会社概要とビジネスモデル

大成建設は、いわゆる「スーパーゼネコン」(大手総合建設会社)の一角を占める総合建設業です。土木事業(インフラ・大型土木工事)、建築事業(オフィスビル・商業施設・工場・再開発案件などの請負工事)、開発事業(不動産開発)の3セグメントを軸に、国内外で大規模建築物・インフラ工事の設計・施工を手がけています。2027年3月期第1四半期累計の売上高構成は、建築事業3,155億円(構成比約60%)、土木事業1,772億円(同約34%)、開発事業461億円(同約9%)で、建築事業が最大の柱です。

建設業は受注生産・工事進行基準にもとづく会計が特徴で、着工から竣工・引き渡しまでのタイムラグがあるぶん、単年度・単四半期の決算だけでは実態をつかみにくい業種です。この特性は、後述する第4節・第7節の論点と直結します。

強みと弱みの整理

強み

  • 建築事業の利益率が大きく好転

    建築事業の完成工事総利益率は前年同期の9.8%から当期は14.4%へ4.6ポイント改善し、粗利額は250億円から446億円へ増加しました。営業利益も前年同期比+199.1%の250億円と急拡大しており、連結の増益を主導しています。

  • 2期連続の大幅増配で株主還元が拡大

    年間配当は2024年3月期の130円(5期連続横ばい)から、2025年3月期210円(+61.5%)、2026年3月期310円(+47.6%)と急速に積み上がりました。2027年3月期の予想380円(+22.6%)も、公表以来修正されていません。

  • 繰越高(手持工事高)が高水準で微増

    Q1末の繰越高は3兆2,923億89百万円(前年同期比+2.7%)で、直近四半期の売上高の約9.5倍にあたる残高があります。Q1の受注高(個別、前年同期比△42.0%)が急減しても、当面の業績に即座に響く状況ではありません。

弱み

  • 土木事業の利益率が大きく悪化

    土木事業の完成工事総利益率は前年同期の23.6%から当期は17.1%へ6.5ポイント低下し、粗利額は334億円から283億円へ減少しました。営業利益は前年同期比△37.9%の153億円にとどまり、決算短信は「利益率低下」とのみ記載しており、資材高・労務費上昇か個別案件の採算悪化かまでは特定できません。

  • 営業利益の伸びが純利益まで届いていない

    営業利益+15.3%に対し、経常利益+11.5%、純利益+4.8%と段階的に伸び率が縮小しています。資金調達費用(新設区分)の急増(41百万円→9億33百万円)と実効税率の上昇(33.2%→36.3%)が主因で、営業段階の増益の実感が最終利益まで伝わっていません。

  • 個別ベースの受注高が急減

    Q1の受注高(個別)は前年同期比△42.0%の2,811億52百万円、建築事業だけで見ると△59.0%の1,789億33百万円まで落ち込みました。前年同期が大型案件の一時集中だった可能性もありますが、この決算短信だけでは反動なのか需要の変調なのかを切り分けられません。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00750,00050,0001,500,000100,0002,250,000150,0003,000,000200,0002023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20355041.136.035.734.9
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益自己資本比率
2023/031,640,00054,70063,10047,10041.1%
2024/031,770,00026,50038,90040,30036.0%
2025/032,150,000120,200134,500123,80035.7%
2026/032,088,919187,957195,800170,00034.9%
2027/03会社予想2,420,000188,000187,000151,000
単位:百万円。出典:決算短信(2026年3月期実績・2027年3月期会社予想)、およびIR BANK集計による過年度実績

読み取れることは3つあります。

2024年3月期を底に、2期連続で急回復した。 営業利益は2023年3月期の547億円から2024年3月期は265億円まで落ち込みましたが、2025年3月期は1,202億円(+353.6%)、2026年3月期は1,880億円(+56.4%)と急拡大しました。建設業界全体が資材高・労務費上昇で採算が悪化した時期を経て、値上げ浸透や採算管理の改善で回復したとみられますが、2024年3月期の落ち込みの直接の原因は、この記事で参照した資料だけでは特定できません。

2027年3月期は増収ながら減益の予想になっている。 売上高は2026年3月期の2兆889億19百万円から2027年3月期予想は2兆4,200億円(+15.8%)へ拡大する一方、純利益は1,700億円から1,510億円(△11.2%)へ減る計画です。営業利益はほぼ横ばい(1,879億57百万円→1,880億円)の予想で、増収の割に利益が伸びない、保守的な通期計画になっています。

自己資本比率は緩やかな低下から反発局面に入った。 2023年3月期の41.1%から2026年3月期の34.9%まで低下してきましたが、2027年3月期第1四半期末は36.8%まで戻しています。この動きの背景は第6節で扱います。

4. セグメント間の明暗と、利益の質の低下 ── 土木△37.9% vs 建築+199.1%

2027年3月期第1四半期の連結営業利益は前年同期比+15.3%の増益でしたが、その中身をセグメント別に見ると、決して全社一律の好調ではありません。

セグメント売上高増減率営業利益増減率
土木事業1,772億円+19.5%153億円△37.9%
建築事業3,155億円+21.0%250億円+199.1%
開発事業461億円+6.5%93億円+46.2%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「経営成績等の概況」

土木事業は増収でも減益、建築事業は増収かつ大幅増益という、正反対の動きです。 決算短信は土木事業について「当社及び連結子会社の利益率低下により完成工事総利益が減少」、建築事業について「当社及び連結子会社の利益率好転」により完成工事総利益が増加したと記載しています。実際、連結ベースの完成工事総利益率(粗利率)を見ると、土木事業は前年同期の23.6%から当期は17.1%へ6.5ポイント低下(粗利額334億円→283億円)、建築事業は9.8%から14.4%へ4.6ポイント改善(粗利額250億円→446億円)と、方向が完全に逆転しています。

連結の増益は、建築事業の利益率好転が土木事業の利益率悪化を打ち消した結果です。 これはuniverse.jsonで立てた「工事進行基準の利益認識、資材高・労務費上昇の採算への影響」という論点仮説に、一次資料で直接裏付けられる形で当てはまります。ただし、決算短信本文には利益率変動の詳細な原因(資材・労務費の値上がりそのものか、価格転嫁の進み方か、個別案件の採算管理かなど)についての説明はなく、土木事業の悪化と建築事業の改善それぞれの直接の要因までは、この決算短信からは特定できません。

続いて、営業利益の伸びが最終的な純利益までどう伝わったかを見ます。

項目前Q1(2025年4〜6月)当Q1(2026年4〜6月)増減率
営業利益392億87百万円453億17百万円+15.3%
営業外費用13億79百万円26億02百万円+88.7%
(うち支払利息)6億58百万円14億69百万円+123.3%
(うち資金調達費用)41百万円9億33百万円+2,175.6%
受取配当金22億04百万円17億01百万円△22.8%
経常利益411億45百万円458億63百万円+11.5%
特別利益(投資有価証券売却益)42億39百万円(42億27百万円)44億23百万円(43億91百万円)+4.3%
法人税等150億04百万円182億25百万円+21.5%
実効税率33.2%36.3%+3.1pt
親会社株主に帰属する四半期純利益295億01百万円309億09百万円+4.8%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信(四半期連結損益計算書)

営業利益+15.3%が、経常利益+11.5%、純利益+4.8%へと、段階を追うごとに伸び率が縮小しています。 主因は2つあります。1つは、当第1四半期に新設された「資金調達費用」という区分が41百万円から9億33百万円へ急増したこと(支払利息の増加123.3%と合わせて営業外費用全体が+88.7%)。もう1つは、実効税率が33.2%から36.3%へ3.1ポイント上昇したことです。特別損益(投資有価証券売却益が中心)はほぼ横ばいで、最終利益を押し上げる方向には働いていません。受取配当金の減少(△22.8%)も、後述する政策保有株式の売却進捗と整合的な動きとして、地味に利益の伸びを圧縮しています。

まとめると、この第1四半期の増益は「建築事業の利益率好転が土木事業の悪化を打ち消した」うえに、「資金調達費用の増加と税負担増によって最終利益への伝わり方が鈍った」という、2階建ての構造になっています。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2019/03130円
2022/03130円37.0%
2023/03130円53.9%
2024/03130円60.3%
2025/03130円210円+80円30.8%
2026/03150円310円+160円30.2%
2027/03会社予想380円380円41.0%
  • 2019/03:2019年3月期〜2024年3月期は年間配当130円で5期連続横ばい(IR BANK集計による参考値)。
  • 2025/03:期初予想130円から、期末にかけて65→145円へ大幅増額修正。
  • 2026/03:期初予想150円(中間75円想定)から、中間配当自体も75→125円へ再増額されたうえで期末185円が加わり、年間310円で着地。
  • 2027/03:中間190円・期末190円の予想。2026年5月14日の公表から、2026年8月6日のQ1決算時点でも修正なし。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:決算短信「配当の状況」、およびIR BANK集計による過年度の実績

配当は2019年3月期から2024年3月期まで年間130円で5期連続横ばいでしたが、2025年3月期に期末増額修正で210円(+61.5%)、2026年3月期に310円(+47.6%)と、業績回復に連動して急激な増配基調に転じています。

2025年3月期は期初予想130円(中間65円・期末65円想定)に対し、期末にかけて期末配当が65円から145円へ増額され、年間210円で着地しました。2026年3月期はさらに期初予想150円から、中間配当自体が75円から125円へ再増額されたうえで期末185円が加わり、年間310円まで積み上がっています。「期初は保守的に出し、期中・期末に大幅増額する」という会社の癖が、直近2期連続で明確に表れています。

2027年3月期の予想380円(中間190円・期末190円)は、2026年5月14日の公表から2026年8月6日のQ1決算時点まで修正されていません。株価12,355円に対する予想利回り3.08%は、この会社予想380円にもとづく数値です。過去2期の増額修正パターンを踏まえると、期中に上振れる可能性はありますが、それは第4節で見た土木事業の採算悪化がどこまで下期に波及するか、また通期業績予想が据え置かれたままなのかとも無関係ではないと考えられます。

6. 会社の現状と直近の動き

通期業績予想(2027年3月期、2026年5月14日公表から修正なし)に対する進捗率は、決算短信に記載された実測値で売上高21.5%・営業利益24.1%・経常利益24.5%・純利益20.5%です。営業利益・経常利益は単純な4分の1(25%)をやや下回る程度ですが、純利益の進捗率20.5%は4分の1を4.5ポイント下回っており、第4節で見た「利益の質の低下」がここにも表れています。

一方で、Q1の純利益の伸び(前年同期比+4.8%)をそのまま4四半期分に引き延ばすと、通期予想(純利益1,510億円、前期比△11.2%)を上回る計算になります。決算短信の「(3)連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」には「通期の連結業績予想につきましては、2026年5月14日に公表した業績予想からの変更はありません」と明記されており、会社側からは修正の意思表示はありません。期初予想が保守的なのか、下期に土木事業の採算悪化や資金調達費用の増加が本格化すると会社が見ているのかは、この決算短信からは判断できません。 次の中間決算(2026年11月上旬予定)で修正の有無を確認する必要があります。

財政状態については、総資産が前期末の2兆7,145億50百万円から当第1四半期末は2兆5,376億10百万円へ、△6.5%・1,769億40百万円減少しました。決算短信は完成工事未収入金の減少等を要因として挙げています。純資産は9,899億31百万円から9,749億31百万円へ減少した一方、自己資本(親会社株主持分)は9,480億75百万円から9,332億08百万円へ減少しており、総資産の減少ペースが自己資本の減少ペースを上回ったため、自己資本比率は34.9%から36.8%へ1.9ポイント改善しました。

有利子負債(資金調達に係る残高、ノンリコース債務を含む)は、前期末の4,634億80百万円から当第1四半期末は4,470億29百万円へ、△3.5%・164億51百万円減少しました。有利子負債の自己資本に対する比率(D/Eレシオ)は0.489倍から0.479倍へわずかに改善しています。総資産・有利子負債がともに縮小方向にある一方、増減の直接の理由(設備投資の抑制か、運転資本の圧縮か)までは、この決算短信の記載からは特定できませんでした。

決算短信には、政策保有株式について「今後、株価や連結純資産額が変動した場合においても、縮減目標を確実に達成すべく、適宜追加売却等を検討・実施してまいります」との記載があります。第4節で見た受取配当金の減少(前年同期比△22.8%)は、この縮減の進捗と整合的な動きですが、具体的な縮減目標や進捗率の数値はこの決算短信からは確認できませんでした。

なお、当第1四半期からNeoSphere株式会社を新規連結しており、連結範囲が前年同期と一部異なる点も、増収率(+18.4%)を単純比較する際に留意が必要です。

補足情報として、個別ベースの受注高・繰越高も確認しておきます。

項目前Q1累計(2025年4〜6月)当Q1累計(2026年4〜6月)増減率
受注高(全体)2,811億52百万円△42.0%
(うち建築事業)1,789億33百万円△59.0%
繰越高(Q1末)3兆2,923億89百万円+2.7%

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信「補足情報」(個別ベース)

受注高の急減は目を引きますが、繰越高(手持工事高)は前年同期比+2.7%と微増を維持しており、直近四半期の売上高(連結5,212億15百万円)の約9.5倍にあたる残高があります。四半期単位の受注減少が即座に業績悪化につながる状況ではありませんが、前年同期が大型案件の一時集中だったための反動なのか、需要そのものの変調なのかは、この決算短信からは切り分けられません。

7. 業界とセクターの状況

当サイトでは、同じ建設業セクターで高松コンストラクショングループ(1762)をすでに扱っています。同じ総合建設業でも、規模と立ち位置は大きく異なります。

大成建設(1801)高松コンストラクショングループ(1762)
位置づけスーパーゼネコン(大手総合建設会社)中堅の総合建設持株会社
2027年3月期Q1売上高5,212億15百万円884億49百万円(前期実績、Q1時点)
自己資本比率(直近開示)36.8%(2027年3月期Q1末)50.0%(2027年3月期Q1末)
PBR2.16倍0.89倍
PER13.34倍(予想)11.38倍(実績)
予想配当利回り(会社予想ベース)3.08%3.86%

同じ「工事進行基準」「資材高・労務費上昇の採算への影響」という業界共通の課題に直面していても、財務体質と市場評価は対照的です。 大成建設は自己資本比率36.8%、高松コンストラクショングループは50.0%と、後者の方が財務の安定性では高い水準にあります。一方でPBRは大成建設2.16倍に対し高松コンストラクショングループ0.89倍と、株式市場の評価は逆に大成建設の方が高くついています。これは規模・ブランド力・大型案件への参画力といった、財務指標だけでは測れない要素が市場評価に反映されている可能性がありますが、その因果関係をこの記事の資料だけで特定することはできません。

建設業というセクターに固有の制約は、両社に共通する工事進行基準による利益とキャッシュ・フローの乖離個別案件ごとの競争入札にさらされやすく、資材・労務費の上昇分を価格に転嫁できるかどうかが採算を左右するという2点です。今回の大成建設の決算では、この価格転嫁力の差がセグメント間(土木事業と建築事業)で正反対の方向に表れました。同じ会社の中でも事業ごとに採算の振れ方が異なりうるという点は、建設業を評価するうえで押さえておくべき構造です。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

決算発表日はいずれも過去の発表時期からの推定です。確定日は同社のIRサイトで確認してください。

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算発表両面

Q1で悪化した土木事業の利益率(前年同期23.6%→当期17.1%)が下期にかけて続くか、建築事業の利益率好転(9.8%→14.4%)が定着するかを確認できる。通期業績予想の修正有無もここで判明する。

随時政策保有株式の追加売却両面

決算短信は「縮減目標を確実に達成すべく、適宜追加売却等を検討・実施してまいります」としている。売却が進めば特別利益の押し上げ要因になる一方、受取配当金(前年同期比△22.8%)はさらに減る可能性がある。具体的な縮減目標・進捗率はこの決算短信からは確認できない。

随時資材価格・労務費の動向と価格転嫁力両面

土木事業の完成工事総利益の減少は「利益率低下」とのみ説明されており、原価上昇か価格転嫁の遅れかは特定できない。今後の資材・労務費動向が、この利益率悪化が一過性か構造的かを左右する。

随時受注高(個別ベース)の回復両面

Q1の受注高(個別)は前年同期比△42.0%(建築事業は△59.0%)と急減した。繰越高(手持工事高)は+2.7%を維持しており当面の業績バッファはあるが、受注減少が続けば数年先の売上高に影響する。

10. 想定されるリスク

第2節の強みと同じ分量で、弱気材料を整理します。

土木事業の採算悪化が続くリスク。 土木事業の第1四半期営業利益は前年同期比△37.9%、完成工事総利益率も23.6%から17.1%へ6.5ポイント低下しました。この悪化が資材高・労務費上昇という構造要因によるものであれば、建築事業の利益率好転で相殺できなくなった場合、連結全体の減益要因になり得ます。

通期予想が据え置かれたままである不透明感。 通期業績予想(純利益1,510億円、前期比△11.2%)は修正されていませんが、Q1の増益ペースとは整合していません。期初の保守的な見積もりなのか、下期の採算悪化を織り込んでいるのかが判然としないまま、次の決算まで持ち越されます。

資金調達費用・実効税率の上昇が続くリスク。 資金調達費用は41百万円から9億33百万円へ急増し、実効税率も33.2%から36.3%へ上昇しました。この傾向が続けば、営業利益段階の増益が最終利益まで届きにくい状態が定着する可能性があります。

個別ベースの受注高急減が長期化するリスク。 Q1の受注高は前年同期比△42.0%(建築事業△59.0%)でした。繰越高は当面のバッファがありますが、受注減少が複数四半期にわたって続けば、数年先の完成工事高(売上高)に影響が及ぶ可能性があります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

2027年3月期第1四半期は、売上高5,212億15百万円(前年同期比+18.4%)・営業利益453億17百万円(同+15.3%)と、表面上は堅調な増収増益でした。しかしその中身は、建築事業の利益率好転(+199.1%)が土木事業の利益率悪化(△37.9%)を打ち消したものであり、資金調達費用の急増と実効税率の上昇によって純利益の伸び(+4.8%)は営業利益の伸びを大きく下回っています。通期業績予想(純利益△11.2%予想)は据え置かれたままで、Q1の増益ペースとの整合性は取れていません。

判断の分かれ目は、土木事業の利益率悪化を一過性の案件要因と見るか、資材高・労務費上昇が業界全体に及ぼす構造的な逆風の表れと見るかです。 前者と見るなら、建築事業の好調が続く限り連結の増益基調は維持されやすく、据え置かれた通期予想は保守的な下振れ余地として読めます。後者と見るなら、下期にかけて土木事業の悪化が拡大し、建築事業の改善だけでは相殺しきれなくなるリスクを織り込む必要があります。PBR2.16倍という株価水準が、この業績サイクルのどちらの見方をどこまで織り込んでいるのかも、あわせて考える材料になります。次の中間決算(2026年11月上旬予定)では、土木事業の利益率がどう推移したか、通期業績予想に修正が入るかどうかが、この記事の見立てに対する最初の答え合わせになります。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2026年11月の中間決算で土木事業の営業利益率がさらに低下し、通期の土木事業営業利益がQ1の落ち込み(前年同期比△37.9%)を超えて悪化した場合。建築事業の利益率好転による相殺が効かなくなったことを意味する。
  • 通期業績予想(純利益1,510億円、前期比△11.2%)から大きく下振れて着地した場合、あるいはQ1の増益ペース(進捗率20.5%)にもかかわらず通期で会社予想が上方修正されないまま着地した場合。据え置かれた保守的な予想の意味が説明できなくなる。
  • 2027年3月期の配当が予想合計380円(中間190円・期末190円)を下回って着地した場合。2025年3月期・2026年3月期と続いた期中の大幅増額修正パターンが途切れ、逆方向に振れたことになる。
  • 自己資本比率がQ1末の36.8%から再び低下し、有利子負債(Q1末4,470億29百万円)が前期末(4,634億80百万円)の水準を上回って増加に転じた場合。政策保有株式の売却などによる財務改善の流れが反転したことになる。
  • 個別ベースの受注高の急減(前年同期比△42.0%)が複数四半期にわたって続き、繰越高(手持工事高、Q1末3兆2,923億89百万円)が前年同期比でマイナスに転じた場合。手持工事のバッファが縮小し、将来の完成工事高に影響が及ぶ可能性が高まる。

よくある質問

大成建設の2027年3月期第1四半期はなぜ営業利益が増えたのに純利益の伸びが小さいのですか?
営業利益は前年同期比+15.3%でしたが、経常利益は+11.5%、純利益は+4.8%と段階的に伸び率が縮小しました。主因は、資金調達費用(新設区分)が41百万円から9億33百万円へ急増したこと、実効税率が33.2%から36.3%へ上昇したことの2つです。受取配当金の減少(政策保有株式の売却進捗によるもの)も一部影響しています。
大成建設の2027年3月期の配当予想はいくらですか?
会社予想は年間380円(中間190円・期末190円)で、2026年5月14日の公表から2026年8月6日の第1四半期決算時点まで修正はありません。前期(2026年3月期)は期初予想150円から実績310円へ、前々期(2025年3月期)は期初予想130円から実績210円へ、いずれも期中に大幅増額修正されており、この癖が今期も繰り返されるかは中間決算以降を確認する必要があります。
大成建設の土木事業と建築事業では、どちらの採算が悪化していますか?
2027年3月期第1四半期は土木事業の採算が悪化しています。土木事業の営業利益は前年同期比△37.9%(153億円)で、決算短信には「利益率低下により完成工事総利益が減少」と記載されています。一方、建築事業は営業利益+199.1%(250億円)と急拡大しており、決算短信は「利益率好転」を理由に挙げています。連結全体の増益は、建築事業の改善が土木事業の悪化を打ち消した結果です。

参考文献・引用元

  1. 01
    大成建設「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

    1ページ目「連結業績」「配当の状況」「連結業績予想」、2〜3ページ目「経営成績等の概況」(セグメント別の増減要因の記述を含む)「財政状態の概況」、4〜6ページ目「四半期連結財務諸表」(貸借対照表・損益計算書)、13〜15ページ目「補足情報」(受注高・売上高・繰越高、セグメント別粗利率)を参照。 / 2026/08/06 開示

  2. 02
    IR BANK「大成建設(1801) 決算まとめ/配当金の推移」

    通期業績・自己資本比率・有利子負債の推移(/results)、配当の期初予想・修正・実績の履歴(/dividend)、株価・PER・PBR等の指標(トップページ)を、有価証券報告書・決算短信を集計した二次情報として参照した(2026年8月21日時点の表示)。過年度の数値は同サイトの表示値(億円単位に丸めた値)にもとづく。有利子負債の集計値(2026年3月期4,174億円)は決算短信ベースの残高(同期末4,634億80百万円)よりノンリコース債務相当分だけ少なく、集計範囲の定義差によるものと考えられる。