四半期分析化学・素材2027/3期 Q1

三井化学(4183) コア営業利益+235億円の97%が1セグメント、上期760億円・下期290億円の予想をどう読むか

2026/10/07 公開2026/10/07 更新6分で読了対象決算:2027年3月期 第1四半期

本記事をお読みになる前に

本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。

生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。

三井化学株式会社

東証プライム 4183 ・ 3月期決算

2026/09/24 時点

株価

2,150円

時価総額

7,772億円

配当利回り

3.49%

年間75円

PER

23.5倍

PBR

0.92倍

ROE

4.0%

ROA

1.6%

純利益ベース

自己資本比率

38.6%

配当性向

81.9%

有利子負債

8,764億円

D/Eレシオ

1.00倍

有利子負債÷自己資本

※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。

この記事の結論

  • 2027年3月期第1四半期は、売上収益4,600億円(前年同期比+10.8%)・コア営業利益501億円(同+88.4%)・営業利益484億円(同+279.8%)・親会社帰属利益321億円(前年同期7億円)。コア営業利益の増加235億円のうち、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(B&G)が227億円で約97%を占める。会社は主因に在庫評価損益の良化を挙げるが、固定費改善・持分法利益増も挙げており、金額の内訳は短信から特定できない。
  • 通期予想(コア営業利益1,050億円)は据え置きのまま、今回初めて開示された上期予想が760億円。差し引きの下期は290億円で、上期の約38%に落ちる置き方になっている。Q2単独は259億円、B&Gは上期予想150億円に対しQ1が198億円のため、Q2単独で約48億円の赤字という算術になる。会社が下期前提を短信で詳しく述べているわけではなく、これは算術上の含意にとどまる。
  • 財務は、有利子負債が前期末比+806億円の8,764億円、D/Eレシオ(有利子負債÷親会社持分)は約1.00倍、親会社所有者帰属持分比率は40.2%から38.6%に低下した。Q1の営業CFは140億円(前年454億円)で、棚卸資産+528億円など運転資本が膨らみ、財務CF+471億円(借入増)で賄った形。
  • 配当は年75円(分割考慮後)で、会社予想EPS124.48円に対し配当性向60.3%、現在の株価2,150円で予想利回り3.49%。2026年3月期は実績EPS91.62円に対し約82%で、自社株買い173億円も実施した。会社予想の純利益450億円に届くなら余裕が出るが、前期並み(344億円)にとどまるなら配当性向は約80%になり、自社株買いを加えた総還元は純利益を上回る水準になりうる。
目次11項目
  1. 1. 概要
  2. 2. 会社概要とビジネスモデル
  3. 3. 業績の推移
  4. 4. Q1の増益の97%が1セグメント。通期据え置きの下期290億円をどう読むか
  5. 5. 配当の推移
  6. 6. 会社の現状と直近の動き
  7. 7. 業界とセクターの状況
  8. 8. 今後のスケジュール
  9. 9. 想定されるカタリスト
  10. 10. 想定されるリスク
  11. 11. まとめ:どう判断材料にするか

1. 概要

2026年9月24日時点で、株価は2,150円、PBRは0.92倍(2026年3月期末のBPS 2,349.17円ベース)、会社予想の年間配当75円に対する予想配当利回りは3.49%です。PERは2026年3月期の実績EPS 91.62円で計算すると約23.5倍、2027年3月期の会社予想EPS 124.48円で計算すると約17.3倍で、どちらの利益を採るかで見え方が変わります。サマリーカードのPERは実績ベース(EPS 91.62円)に揃えています。ROEは2026年3月期で3.98%、親会社所有者帰属持分比率は2026年6月末で38.6%です。三井化学は2026年1月1日に1:2の株式分割を行っており、EPS・BPS・配当は分割後ベースで統一しています。

2026年8月5日に発表された2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比+10.8%の4,600億円、コア営業利益が+88.4%の501億円と大幅な増益でした。ただしコア営業利益の増加235億円のうち227億円(約97%)は、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(B&G)という1つのセグメントによるものです。 会社はこの改善の主因にナフサ等原料価格上昇に伴う在庫評価損益の良化を挙げています。通期予想は据え置かれたうえで、今回初めて開示された上期予想(コア営業利益760億円)との差から、下期は290億円と上期の約4割に落ちる置き方になっています。

第4節では、「増益の偏り」「通期据え置きの含意」「配当と財務の持続性」を、強気・弱気の両面から整理します。なお、他の情報サイトには予想EPSを152円台で表示しているものがありますが、これは非支配株主持分を含む当期利益550億円を使った値で、会社の基本EPS 124.48円(親会社帰属利益450億円ベース)とは異なります(第4節)。

2. 会社概要とビジネスモデル

三井化学は、IFRSを採用する総合化学メーカーです。事業はライフ&ヘルスケア、モビリティ、ICT、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(B&G)の4つの事業領域とその他に分かれ、ナフサクラッカー(原料ナフサからエチレン等を作る設備)を持つ基礎化学品の事業をB&Gが担っています。製品ごとの細かい構成までは、今回参照した資料の範囲では確認していません。

2027年3月期第1四半期の売上収益4,600億円の内訳は、B&Gが1,736億円(構成比約38%)、モビリティが1,425億円(約31%)、ICTが778億円(約17%)、ライフ&ヘルスケアが622億円(約14%)、その他が39億円(約1%)です。コア営業利益501億円では、B&Gが198億円、モビリティが148億円、ICTが111億円、ライフ&ヘルスケアが68億円です。IFRSのため経常利益の開示はなく、本記事の財務表も売上・営業利益・親会社帰属利益の3段階です。

「コア営業利益」は営業利益から非経常項目(事業撤退・縮小の損失等)を除いたもので、Q1は501億円と営業利益484億円の差が17億円でした。通期予想ではコア営業利益1,050億円と営業利益830億円の差が220億円(前期は1,000億円と738億円で262億円)あり、その非経常項目の中身は今回の資料からは特定できていません。

強みと弱みの整理

強み

  • 複数セグメントが前年同期を上回った

    Q1のコア営業利益は、B&Gを除くライフ&ヘルスケア(+6億円)、モビリティ(+2億円)、ICT(+21億円)もそろって前年同期を上回った。B&G以外の3セグメント合計は+29億円で、規模は小さいが悪化した部門はない。

  • 構造改善の効果が固定費に出ている

    会社はB&Gの改善要因として、在庫評価損益の良化のほかに固定費改善(事業構造改善)と持分法利益増を挙げている。市況に左右されない要因も含まれているが、金額の内訳は短信から特定できない。

  • 営業CFは5期とも黒字で、直近2期は2,000億円台

    営業CFは2022年3月期の926億円から、2025年3月期2,005億円、2026年3月期2,130億円へ増えた(IR BANK)。2026年3月期は営業CF2,130億円に対し投資CF△1,348億円で、営業CF+投資CFは+782億円だった。

弱み

  • Q1の増益は1セグメントへの偏りが極めて大きい

    増加額235億円のうち約97%がB&G。他3セグメントの合計は+29億円で、その他・全社の差し引き(約△21億円)で目減りしている。実力が全社に広がったとは言い切れない。

  • 資本効率が低い

    ROEは2022年3月期15.43%から2026年3月期3.98%へ低下(IR BANK)。純利益344億円に対し、営業利益738億円と大きな開きがある。重い設備を抱える化学会社で、利益水準が下がるとROEが低く出る構造。

  • 財務の余裕が薄れている

    Q1に有利子負債が806億円増え、親会社所有者帰属持分比率は40.2%から38.6%に低下。営業CFはQ1で140億円(前年454億円)、投資CF△292億円で、営業CF+投資CFは約△152億円だった。

3. 業績の推移

売上高(左軸) 営業利益(右軸) 会社予想
00500,00050,0001,000,000100,0001,500,000150,0002,000,000200,0002022/032023/032024/032025/032026/032027/03単位:百万円
自己資本比率(%)20355036.838.038.939.440.2
数値で確認する
決算期売上高営業利益経常利益純利益営業CF自己資本比率
2022/03161,000147,300—110,00092,60036.8%
2023/03188,000129,000—82,900101,20038.0%
2024/03175,00074,100—50,000161,30038.9%
2025/031,809,20078,300—32,200200,50039.4%
2026/031,668,80073,800—34,400213,00040.2%
2027/03会社予想1,900,00083,000—45,000——
単位:百万円。出典:2027年3月期第1四半期決算短信(2027年3月期予想)、IR BANK集計(2022〜2026年3月期。売上は兆円単位の表示のため2022〜2024年3月期は億円単位の丸めで±50億円程度の誤差。2025・2026年3月期は決算短信・有報の億円値と一致を確認)

この表から読み取れることは4つあります。

1つ目は、利益のピークは2022年3月期で、その後3年かけて落ちたことです。 営業利益は2022年3月期の1,473億円から、2023年3月期1,290億円、2024年3月期741億円、2025年3月期783億円、2026年3月期738億円と、ピークの約半分の水準に下がりました。親会社帰属利益は1,100億円から322億円(2025年3月期)まで減り、2026年3月期は344億円(前期比+6.8%)です。

2つ目は、売上は増減しても利益と連動していないことです。 2026年3月期の営業利益は前期比△5.7%でした。売上は2025年3月期の1兆8,092億円から2026年3月期は1兆6,688億円へ減っています(売上の減少率は7.8%)。2027年3月期の会社予想は売上1兆9,000億円(同+13.9%)、営業利益830億円(同+12.5%)、親会社帰属利益450億円(同約+31%)で、売上の伸びよりも純利益の伸びが大きい形です。

3つ目は、PERとROEが低位・高位に出ている理由は、直近の利益水準そのものにあることです。 2026年3月期の実績PERが約23.5倍と高く見えるのは、分母のEPS 91.62円が営業利益のピーク時(2022年3月期のEPS 282.73円)の約3分の1に下がっているためです。会社予想EPS124.48円で計算すると約17.3倍まで下がります。ROE 3.98%の低さも同じ理由で、自己資本は増えているのに利益が伸びていません。ただし、営業利益と純利益の差(2026年3月期で738億円と344億円)の中身(支払利息・税・非支配株主持分の内訳)は、今回の資料からは特定できませんでした。 会社予想では当期利益550億円に対し親会社帰属450億円と、非支配株主に帰属する分が約100億円あり、利益の約2割弱が親会社の外に出る構造になっています。

4つ目は、営業CFの水準が利益に比べて大きいことです。 2026年3月期の営業CFは2,130億円で、営業利益738億円・純利益344億円を大きく上回っています。重い設備の減価償却費などが非現金費用として利益から引かれている業態のためと考えられますが、減価償却費の金額は今回の資料に含まれていません。

4. Q1の増益の97%が1セグメント。通期据え置きの下期290億円をどう読むか

この記事の論点は、Q1の好調な数字をどこまで「本業の改善」と読めるかです。3つに分けて見ます。

論点1:コア営業利益+235億円の97%はB&Gが占める

セグメント売上収益(Q1)コア営業利益(前年同期差)
ライフ&ヘルスケア622億円(+59億円)68億円(+6億円)
モビリティ1,425億円(+123億円)148億円(+2億円)
ICT778億円(+88億円)111億円(+21億円)
ベーシック&グリーン・マテリアルズ1,736億円(+174億円)198億円(+227億円、前年同期は△29億円)
その他39億円約0億円の損失

出典:決算短信(億円)。全社のコア営業利益は266億円から501億円へ+235億円。B&Gを除く3セグメントの合計は+29億円で、その他・全社を含めた差し引きは約△21億円です(この差し引きは当サイトの算術)。

  • 強気材料: 会社はB&Gの改善要因に、在庫評価損益の良化だけでなく、固定費改善(事業構造改善)と持分法利益の増加を挙げています。固定費の削減は市況が変わっても残りうる要素です。他のセグメントも売上・利益とも前年同期を上回りました。
  • 弱気材料: 同じB&Gについて、会社は販売が低調で、ナフサクラッカーの稼働率も中東情勢による稼働調整等で低調だったと説明しています。つまり数量面は悪く、利益は在庫評価損益などで押し上げられた部分が大きいと読めます。モビリティも中東情勢で販売減の中、為替差による交易条件の改善で増益でした。在庫評価損益・固定費改善・持分法利益のそれぞれが何億円かは、今回確認した資料からは特定できません。 よって「97%が在庫評価損益」とは言えず、「97%が在庫評価損益を主因に含むB&G1セグメント」というのが正確です。

論点2:通期据え置きと、上期760億円・下期290億円の置き方

今回の決算で、会社は初めて第2四半期累計(上期)の予想を開示しました。コア営業利益は上期760億円、通期は1,050億円のまま据え置きです。前提は為替160円/ドル、国産ナフサ104,500円/KLです。

区分コア営業利益備考
Q1(実績)501億円通期予想の47.7%
Q2(上期予想−Q1)259億円Q1の約5割
上期(予想)760億円前年同期445億円から+71.0%
下期(通期−上期)290億円上期の約38%
通期(予想・据え置き)1,050億円前期1,000億円から+5.0%

上期予想のセグメント別(億円)は、ライフ&ヘルスケア130、モビリティ300、ICT230、B&G150、その他△30、全社費用等△20で合計760です。B&GはQ1の198億円に対し上期予想が150億円なので、Q2単独では約48億円の赤字になる算術です。同様に営業利益は上期660億円(Q1の484億円を引くとQ2は176億円)、親会社帰属利益は上期340億円(Q1の321億円を引くとQ2は約19億円)です。

  • 強気に読む場合: 会社は上期の好調を通期に積み増さず、下期を低めに置いている保守的な予想で、上期が予想を上回れば通期の上振れ余地になる、と読めます。通期の営業利益830億円は前期比+12.5%で、Q1の484億円だけで通期予想に対する進捗は6割近くです。
  • 弱気に読む場合: 会社自身が、Q1の好調が上期の後半以降は続かず、下期は上期の約4割に落ちると見ている、と読めます。これは在庫評価益などの剥落と稼働低調を織り込んだ形とも読めますが、短信にはナフサの下期前提も、下期の落ち込みの理由も書かれておらず、この読み方は当サイトの推測の域を出ません。 上期が予想を上回っても通期が据え置かれれば、下期の水準がさらに低くなります。

どちらが正しいかは、中間決算で上期760億円に対する実績と、通期予想が修正されるかで確認できます。

論点3:配当75円と有利子負債の増加

配当は年75円で、2026年3月期の実績EPS 91.62円に対して約82%、会社予想EPS 124.48円に対して60.3%です。2025年3月期の配当性向は87.9%でした。キャッシュフローで見ると、2026年3月期は営業CF2,130億円・投資CF△1,348億円で、営業CF+投資CFは+782億円(IR BANK)。配当の支払い約282億円と自社株買い173億円の合計455億円は、純利益344億円の約1.3倍で、フリーCFの範囲内でした。

ところがQ1は様子が違います。営業CFは140億円(前年454億円)に減り、投資CFは△292億円で、営業CF+投資CFは約△152億円です。棚卸資産は4,145億円から4,672億円へ+528億円、営業債権は3,276億円から3,496億円へ+220億円増えました。財務CFは+471億円(借入増)で、有利子負債は前期末比+806億円の8,764億円、親会社所有者帰属持分比率は40.2%から38.6%に低下しました。D/Eレシオ(有利子負債÷親会社持分)は、短信の前期末から逆算した有利子負債7,958億円で0.92倍、2026年6月末の8,764億円で1.00倍です(ネットD/Eレシオは短信の表示で0.75、前期末比+0.05)。自己株式は4,019万株と、前期末から約660万株増えており、自社株買いが財務CFのうち一部を占めていると考えられますが、その金額は短信から特定できません。

  • 強気に読む場合: 棚卸資産と営業債権の増加は、ナフサ等の原料価格上昇で在庫・売上の金額が膨らんだ面があり、市況が落ち着けば運転資本は戻ります。現金及び現金同等物は2,178億円と前期末より347億円増えており、手元資金は厚いです。
  • 弱気に読む場合: 利益が約1.9倍になった四半期に、営業CFが減って借入が増えています。会社予想の純利益450億円に届かなければ(前期並みの344億円なら、配当総額は75円×約3.6億株≒270億円で配当性向は約80%)、配当と還元の余力は小さくなります。有利子負債の増加は運転資本の膨らみが中心とみられますが、どこまでが一時的かは今回の資料からは判断できません。なお、IR BANKの有利子負債(2026年3月期7,402億円)は短信から逆算した前期末7,958億円と一致せず、定義の違いによるとみられますが、特定できていません。本記事では短信の数字を使っています。

参考:予想EPSの見え方と、PERの2つの数字

他サイトの予想ベースの数値は、会社の親会社帰属利益450億円ではなく、非支配株主持分を含む当期利益550億円を使って、EPSを152.15円と表示しているものがあります。550億円を期中平均株式数(約3.6億株)で割ると約152円で、PERは約14倍に見えますが、親会社の株主に帰属するのは450億円のみで、会社の基本EPSは124.48円(PER約17.3倍)です。同じ予想でも3割近く違うため、PERを見るときは分子の利益が親会社帰属かどうかを確認する必要があります。

5. 配当の推移

決算期期初予想年間配当期初比配当性向
2022/0355円60円+5円21.2%
2023/0360円60円0円27.8%
2024/0370円70円0円53.2%
2025/0375円75円0円87.9%
2026/0375円75円0円81.9%
2027/03会社予想75円75円—60.3%
  • 2022/03:2026年1月の1:2株式分割を反映した金額に統一(以下同じ)。
  • 2026/03:年間75円(分割考慮後)。分割前表記の中間75円と分割後の期末37.5円を単純に足した「112.5円」は誤りで、減配ではない。配当性向は75円÷実績EPS91.62円で当サイトが算出。
  • 2027/03:中間37.5円・期末37.5円・年75円で、第1四半期決算でも修正なし。配当性向は75円÷会社予想EPS124.48円。
1株当たり。「期初比」は期初予想に対する着地の差。 出典:2027年3月期第1四半期決算短信「配当の状況」、IR BANK配当(期初予想と着地の履歴・二次情報)。2026年1月の1:2株式分割を反映した金額に統一

配当の動きは3つあります。

1つ目は、分割をまたぐ表記に注意が必要なことです。 2026年3月期の配当は、決算短信で分割前の中間75円・分割後の期末37.5円と書かれています。単純に足して「年112.5円」とするのは誤りで、分割考慮後に揃えると中間37.5円・期末37.5円の年75円です。2025年3月期の年75円と同額で、減配でも増配でもありません。2027年3月期の会社予想も年75円(中間37.5円・期末37.5円)で、第1四半期決算でも修正はありません。

2つ目は、期初予想は着地時にほぼ上振れしない会社です。 2022年3月期は期初55円から60円に増額して着地しましたが、2023年3月期以降の4期は、期初予想どおりに着地しています(60円、70円、75円、75円)。2027年3月期の期初予想も75円で、今期も同額です。「期初は保守的で期末に増配する」という癖は、直近4期では見られません。

3つ目は、配当性向が利益の振れで大きく動くことです。 2022年3月期は21.2%、2023年3月期は27.8%、2024年3月期は53.2%、2025年3月期は87.9%、2026年3月期は約82%(実績EPSで当サイトが算出)、2027年3月期の会社予想では60.3%です。配当額は60円から75円へゆるやかに増えた一方、利益の減少で性向が上がった形で、利益に連動して配当を決める方針というより、配当額を維持する運営に見えます。 ただし、配当方針の文言そのものは今回確認した資料に含まれていません。自社株買いは、2022年3月期100億円、2023年3月期100億円、2024年3月期0.49億円、2025年3月期100億円、2026年3月期173億円(IR BANK)です。

予想利回り3.49%は、会社予想の年75円を株価2,150円で割った値で、前期実績と同額のため、前期実績を機械的に当てはめた数字との食い違いはありません。この利回りの信頼度は、会社予想の利益(親会社帰属利益450億円)がどこまで実現するかと、有利子負債の増加が一時的かどうかにかかっています。

6. 会社の現状と直近の動き

直近の決算の分解

Q1の売上収益は4,600億円(前年同期4,154億円、+10.8%)です。会社は、ナフサ等原料価格の上昇に伴う販売価格の上昇と為替の影響が増収要因だと説明しています。損益の流れは次のとおりです。

項目前年同期当期
コア営業利益266億円501億円
営業利益128億円484億円
親会社帰属四半期利益7億円321億円
基本EPS1.95円88.78円

コア営業利益は+88.4%でしたが、営業利益は+279.8%と伸び率がさらに大きいのは、前年同期に非経常項目が約138億円(266億円と128億円の差)あったのに対し、当期は17億円にとどまったためです。非経常項目の中身は短信から特定できていません。四半期利益は372億円で、うち親会社帰属が321億円、非支配株主に帰属するのが約52億円です。

財政状態

総資産は2兆1,517億円から2兆2,623億円へ増え、資本合計は9,888億円から9,976億円へ、親会社持分は8,647億円から8,732億円へ増えました。親会社持分の増加幅(+85億円)が総資産の増加幅(+1,106億円)より小さく、親会社所有者帰属持分比率は40.2%から38.6%に下がりました。

通期予想

通期予想は売上収益1兆9,000億円(+13.9%)、コア営業利益1,050億円(+5.0%)、営業利益830億円(+12.5%)、親会社帰属利益450億円、基本EPS 124.48円で、すべて変更なしです。

7. 業界とセクターの状況

化学メーカーに共通する、個社の努力では変えられない構造的な制約は次のとおりです。

原料価格と製品価格のずれが、利益を動かす。 ナフサなどの原料価格が動いても、製品価格に転嫁されるまでにはずれがあり、その間の在庫評価が損益に混ざります。今回の三井化学の説明も、ナフサ等原料価格の上昇に伴う在庫評価損益の良化がコア営業利益を押し上げたというものです。同じ構造は価格が反対方向に動く局面では逆向きに働きます。ただし、その方向や大きさを当サイトが予測することはしません。

基礎化学品は設備が重く、稼働率で損益が動く。 B&Gでは、ナフサクラッカーの稼働率が中東情勢による稼働調整等で低調だったと会社は説明しています。固定費が重い設備は、稼働が落ちると単位当たりの固定費負担が増えます。ここは個社で変えにくい部分です。

最終需要と為替の影響を受ける。 モビリティは中東情勢で販売が減ったものの、為替差による交易条件の改善で増益になりました。会社の前提は160円/ドルで、為替が動けば増益要因にも減益要因にもなります。

市況で利益が振れるため、単年のPER・ROEで判断しにくい。 三井化学の実績PERは約23.5倍ですが、会社予想EPSで計算すると約17.3倍まで下がります。これは利益がピークからボトム圏にあることと、営業利益と純利益の間に非経常項目や非支配株主持分があることの影響で、割安・割高の差とは限りません。セクター共通の見方として、PERは複数年の利益水準とあわせて見る必要があります。

8. 今後のスケジュール

2026年11月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第2四半期(中間) 決算発表

第1四半期決算で初めて開示された上期予想(コア営業利益760億円)に対する実績を確認する最初の機会。日付は過去の発表時期からの推定。

2027年2月上旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 第3四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年5月中旬(予定)当サイト推定

2027年3月期 通期 決算発表

過去の発表時期からの推定

2027年8月上旬(予定)当サイト推定

2028年3月期 第1四半期 決算発表

過去の発表時期からの推定

9. 想定されるカタリスト

時期想定イベント蓋然性方向
2026年11月上旬(予定)2027年3月期 第2四半期(中間)決算高両面

上期予想はコア営業利益760億円。Q1の501億円を引くとQ2単独は259億円で、Q1の約5割。B&GはQ2単独で赤字(約△48億円)の算術になっており、予想どおりに落ちるのか、Q1の水準が続くのかが最初の確認点。

2027年3月期下期通期予想(コア営業利益1,050億円)の据え置き継続/修正中両面

下期290億円は上期の約38%。上期が予想を上回って通期が据え置かれれば、下期の置き方がさらに低くなる。修正の方向(上方・下方)は現時点で予想できない。

2026年9月末(権利確定)中間配当37.5円の権利確定高上振れ

配当予想(中間37.5円・期末37.5円・年75円)は第1四半期決算でも修正されていない。中間決算で維持されるかを確認する。

2027年3月期中有利子負債と運転資本の推移中両面

Q1は棚卸資産が528億円、営業債権が220億円増え、有利子負債は806億円増えた。運転資本が戻って営業CFが回復するのか、借入が積み上がるのかが、配当と自社株買いの余力を測る材料になる。

10. 想定されるリスク

増益の偏りと反転リスク。 Q1のコア営業利益増加235億円の約97%がB&G1セグメントで、会社は在庫評価損益の良化を主因の1つに挙げています。上期予想ではB&GがQ2単独で約48億円の赤字になる算術で、予想どおりに進めばQ1の水準は続きません。

下期の見通しの不透明さ。 下期のコア営業利益は290億円と上期の約38%で、前提となるナフサ価格や稼働の想定は短信に書かれていません。通期予想が据え置かれたまま上期が上振れれば、下期の置き方が低くなる一方、下期の事業環境が実際にどうなるかは当サイトでは予測できません。

有利子負債とD/Eレシオの上昇。 有利子負債はQ1で806億円増の8,764億円、D/Eレシオは約1.00倍、親会社所有者帰属持分比率は38.6%に低下しました。運転資本の増加(棚卸資産+528億円、営業債権+220億円)が営業CFを圧迫していますが、増加分が回収される時期は今回の資料からは特定できません。

配当と還元の余力。 配当75円は実績EPS 91.62円に対して約82%、2026年3月期は配当約282億円と自社株買い173億円で純利益344億円を上回る還元でした。会社予想の純利益450億円に届かなければ、配当性向は上がります。ただし、配当予想は第1四半期決算でも修正されていません。

資本効率の低さ。 ROEは3.98%(2026年3月期)まで下がっています。会社予想の純利益450億円に近づいても、親会社持分8,700億円台に対しては約5%台にとどまる計算で、PBR 0.92倍が是正されにくい理由のひとつになりえます。

分割をまたぐ数値の誤読リスク。 2026年1月の1:2株式分割をまたぐ配当・EPS・BPSは、比較の基準が揃っていないと誤読しやすく、「112.5円」のような誤りにつながります。

11. まとめ:どう判断材料にするか

2027年3月期第1四半期のコア営業利益+88.4%は、数字だけを見れば大きな増益です。ただし増加額235億円の約97%はB&G1セグメントで、会社は主因の1つに在庫評価損益の良化を挙げています。通期予想は据え置きで、上期760億円に対して下期は290億円と、上期の約38%の水準です。Q1は営業CF140億円に対し有利子負債が806億円増え、親会社所有者帰属持分比率は38.6%に低下しました。

Q1の増益を「在庫評価損益などの変動要因が中心で、持続しにくい」と見るなら、通期予想の保守性は妥当で、予想EPS124.48円に対する実質PER約17.3倍と配当利回り3.49%は、割安とまでは言えません。 一方で、「固定費改善や持分法利益など、市況に左右されない要因も含む改善で、通期予想は保守的」と見るなら、PBR0.92倍・配当性向60.3%(会社予想ベース)は、利益が戻る前提で割安と言える余地があります。

判断の分かれ目は、B&Gの利益が、Q2以降に上期予想(150億円)を上回って続くのか、予想どおり落ちるのかです。あわせて、運転資本の増加による有利子負債の増加が一時的かどうか(営業CFが回復するか)を、2026年11月上旬(推定)の中間決算で確認できます。

この記事の見立てが外れたと判断する条件

以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。

  • 2027年3月期第2四半期(中間)決算で、上期のコア営業利益が予想の760億円を大きく下回り(Q2単独で200億円を割る水準)、かつB&Gが上期予想150億円を割り込んだ場合。Q1の増益は在庫評価損益などの一時的な押し上げが大きいとする本記事の整理は裏付けられる一方、通期1,050億円の達成可能性は大きく揺らぐ。
  • 逆に、上期のコア営業利益が760億円を大きく上回って着地し、通期予想が上方修正されたうえで、B&Gの利益がQ2以降も100億円規模で続いた場合。「B&Gの増益は在庫評価損益などの変動要因が中心で、持続しにくい」という見立てが誤りだったことになる。
  • Q2末の有利子負債が9,000億円を超えて増え続け、営業CFが同期間の投資CFを賄えない状態が続いた場合、またはD/Eレシオが1.1倍を超えた場合。Q1の借入増は一時的な運転資本の膨らみだとする見方が外れ、財務の弱気材料が強まる。
  • 通期の親会社帰属利益予想が450億円から前期並みの350億円前後へ下方修正された、または配当予想の年75円が引き下げられた場合。配当の持続性を「利益の回復と財務余力で支えられる」とみる前提が崩れる。

よくある質問

三井化学の配当は100株でいくらになりますか?いつもらえますか?
2027年3月期の会社予想は中間37.5円・期末37.5円の年間75円(第1四半期決算でも修正なし)なので、100株では年間7,500円(中間3,750円+期末3,750円)です。権利確定は9月末と3月末です。2026年9月24日時点の株価2,150円で予想利回りは3.49%です。配当予想は会社の見込みで、将来の支払いを約束するものではありません。
三井化学は減配したのですか?配当が年112.5円になっているサイトがあります。
減配ではありません。2026年1月に1:2の株式分割を行ったため、2026年3月期の中間配当は分割前の表記で75円、期末配当は分割後の37.5円と記載されています。両者を単純に足すと112.5円になりますが、分割考慮後に揃えると中間37.5円・期末37.5円の年間75円で、2025年3月期(75円)と同額です。2027年3月期の会社予想も年75円です。
三井化学の2027年3月期第1四半期でコア営業利益が約1.9倍になったのはなぜですか?
コア営業利益は前年同期の266億円から501億円へ+88.4%増えました。増加額235億円のうち、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(前年同期の29億円の損失から198億円の利益へ、+227億円)が約97%を占めます。会社はナフサ等原料価格の上昇に伴う在庫評価損益の良化を主因に挙げていますが、同セグメントでは固定費改善や持分法利益の増加も挙げており、在庫評価損益だけで何億円かは短信から特定できません。

参考文献・引用元

  1. 01
    三井化学株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」

    一次情報。2026年8月5日開示。1ページ目の連結経営成績・財政状態・配当の状況・通期および第2四半期累計の業績予想(今回新たに開示)、セグメント別の説明、キャッシュ・フロー、有利子負債・棚卸資産・営業債権、株式数(自己株式含む)を参照。 / 2026/08/05 開示

  2. 02
    IR BANK「三井化学(4183) 業績・配当」

    二次情報。2022年3月期〜2026年3月期の通期業績(売上は兆円単位の表示で、2022〜2024年3月期は億円単位の丸めによる誤差が±50億円程度ある。百万円は億円×100で入力)、自己資本比率、BPS、営業CF、設備投資、配当の期初予想と着地の履歴、自社株買い、ROAを参照。2025年3月期・2026年3月期の売上・営業利益・純利益は決算短信・有報の億円値と一致を確認済み。

  3. 03
    IR BANK「三井化学(4183) 配当」

    二次情報。配当の期初予想・実績・配当性向の履歴。2026年3月期の「112.5円」は分割前後の単純合算で、決算短信の分割考慮後の金額(年75円)を正とした。