東京ガス(9531)を10年持てるか — 1株配当は2.0倍、EPSは5.7倍。配当は利益に連動せず階段で上がる
本記事をお読みになる前に
本記事は筆者個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は有価証券報告書等の公開情報にもとづく分析ですが、正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価や業績を約束するものでもありません。投資判断は必ずご自身で情報を確認し、責任をもって行ってください。本記事はあくまで参考情報としてご利用ください。
生成AI利用本記事は、決算短信・有価証券報告書などの一次情報をもとに、生成AIを用いて作成・編集しています。掲載する数値は一次情報との照合を行っていますが、誤りが含まれる可能性を排除できません。重要な数値は必ず出典元の原典でご確認ください。
東京瓦斯株式会社
2026/10/09 時点
株価
5,954円
時価総額
19,943億円
配当利回り
2.02%
年間120円
PER
9.1倍
PBR
1.16倍
ROE
13.2%
ROA
5.0%
経常利益ベース
自己資本比率
44.1%
配当性向
28.7%
有利子負債
12,097億円
D/Eレシオ
0.70倍
有利子負債÷自己資本
※ 指標は記事執筆時点のスナップショットです。最新の数値はご自身で証券会社等の情報をご確認ください。
この記事の結論
- 2017年3月期から2026年3月期までの9年間で、1株配当は55円から110円へ2.0倍(年率8.01%)、EPSは115.09円から654.76円へ5.69倍(年率21.31%)になった。EPSの伸びは配当の3倍近い。5.69倍は、純利益の4.27倍と、期中平均株式数の25.0%減(1.33倍の押し上げ)の積である。配当は利益に追随しておらず、配当性向は47.8%から16.8%へ下がった。NTTやKDDIの記事と違い、この会社では配当性向の引き上げは増配の原資になっていない。
- ただしこの数字は読み方に注意が要る。起点の2017年3月期は営業利益が前期比-69.6%に落ち込んだ谷(二次情報で、直前の2016年3月期は約1,920億円)で、2026年3月期の営業利益1,977億円は10年前のピークとほぼ同水準(約+3%)にすぎない。さらに2026年3月期の純利益2,269億円は、経常利益1,937億円を上回っている。固定資産売却益487億円、投資有価証券売却益119億円、為替換算調整勘定取崩益680億円(計1,286億円)の特別利益が入り、減損損失301億円が差し引かれた結果である。実績PER9.1倍はこの純利益で計算した見かけの低さで、会社予想EPS418.07円なら14.2倍になる。
- 配当は階段型で、利益連動ではない。55→55→60→60→60→65→65→70→80→110円と、10期で減配はなく、減益期(2017年・2021年・2025年3月期)も維持か増配だった。一方で営業利益が+230.5%と跳ねた2023年3月期は増配なし(配当性向10.0%)。2026年3月期の短信は方針の文言を「成長に合わせて緩やかな増配」から「中長期的な1株当たり利益の成長に合わせた増配・累進配当」に書き換えたが、数値目標は取得した短信には無い。2027年3月期は純利益-39.6%の予想で配当は120円(+10円)、配当性向28.7%の計画である。
- 株数の減少は直近3期に集中している。自己株式を除く期末株数は2023年3月期の約4.34億株から2026年3月期の約3.33億株へ23.1%減り、2026年3月期の自己株式取得は約2,000億円と、同期のフリーキャッシュフロー(営業CF4,518億円−投資CF2,069億円=2,449億円)とほぼ同額だった。配当約338億円と合わせた還元は約2,338億円で、純利益2,269億円を上回る。同規模が続く条件は、会社の方針に数値としては示されていない。
- 財務は2022年3月期(自己資本比率39.3%、有利子負債約1.17兆円)から改善し、2026年3月期末は自己資本比率44.1%、有利子負債1兆2,097億円、D/Eレシオ0.70倍(前期末0.76倍)。判断の分かれ目は、2026年3月期の利益と還元を「一過性込みの突出した年」と見るか、「資源価格に連動する海外利益を含めた新しい水準の入口」と見るかで、会社予想(2027年3月期の営業利益1,860億円、純利益1,370億円)の達成度がその材料になる。
目次11項目
1. 10年の要約
東京ガス(東京瓦斯)を10年単位で持てるかを判断するために、2017年3月期から2026年3月期の10期(前年比較は9回)を、決算短信から並べました。
| 項目 | 2017年3月期 | 2026年3月期 | 倍率 | 年率(9年) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,587,085百万円 | 2,834,749百万円 | 1.79倍 | +6.66% |
| 営業利益 | 58,365百万円 | 197,677百万円 | 3.39倍 | +14.52% |
| 純利益(親会社帰属) | 53,134百万円 | 226,857百万円 | 4.27倍 | +17.50% |
| EPS | 115.09円 | 654.76円 | 5.69倍 | +21.31% |
| 1株配当 | 55円 | 110円 | 2.00倍 | +8.01% |
1株あたり利益(EPS)が5.7倍になったのに、1株配当は2.0倍にとどまっています。 NTTやKDDIの長期記事では配当のほうが利益より速く伸びていましたが、東京ガスは逆です。配当は利益に追随しておらず、配当性向は47.8%から16.8%へ下がりました。ここがこの記事の論点です。ただし、この年率の起点と終点には注意が必要です(後述)。
- 起点の2017年3月期は営業利益の谷です。 二次情報(IR BANK)では、前期の2016年3月期は約1,920億円で、2017年3月期は584億円(-69.6%)でした。2026年3月期の1,977億円は、10年前のピークとほぼ同じ水準(約+3%)です。年率14.52%は谷からの数字で、10年の実力の伸びではありません。
- 終点の2026年3月期の純利益は一過性が大きい。 営業利益1,976億円・経常利益1,937億円に対し、固定資産売却益などの特別利益が合計1,286億円入っています。年率17.50%の純利益、21.31%のEPSはこれを含みます。
現在値(2026年10月9日終値、IR BANK)は、株価5,954円、BPS 5,151.08円でPBR 1.16倍です。実績EPS 654.76円で計算したPERは9.09倍ですが、この低さは特別利益で膨らんだ純利益が分母にあるための見かけで、会社予想EPS 418.07円なら14.24倍になります。会社予想の配当120円に対する配当利回りは2.02%、配当性向は28.7%です。ROE 13.2%も同じ純利益から計算されていて、一過性を含みます。ROAは経常利益ベースで5.0%(短信の総資産経常利益率)です。自己資本比率は44.1%、有利子負債は1兆2,097億円、D/Eレシオは0.70倍です(§6)。
直近の四半期の動きは四半期記事にあります。本記事は10年スパンの視点に絞ります。
2. 事業の持続性 — 10年後もこの事業はあるか
東京ガスは首都圏を地盤とする都市ガス最大手で、国内の都市ガス・電力の小売(エネルギー・ソリューション)、導管事業(ネットワーク)、北米のシェールガス開発などの海外、不動産の都市ビジネスの4セグメントから成ります。2025年10月には「26-28年度中期経営計画」を策定し、経営ビジョン「Compass 2030」の前倒し達成とセグメント別のROIC管理の導入を示しています。
| 強み | 弱み |
|---|---|
| 首都圏の導管を持つ都市ガス最大手。2026年3月期の都市ガス販売量は11,175百万m3で、電力販売量は28,021百万kWh(+19.5%)と、ガスと電力を併せ持つ | 都市ガス販売量は前期比-0.4%、2027年3月期の見通しは10,790百万m3(-3.4%)。国内の主力商品の量は縮小方向 |
| 2026年3月期のセグメント営業利益はエネルギー・ソリューション1,502億円(+285億円)、ネットワーク41億円(前期は-31億円)と国内も改善 | ネットワークは41億円と小さく、前期は赤字。導管という資産の大きさに対して利益が薄い |
| 海外は738億円(+510億円)。北米シェールガスの販売単価上昇で国内の変動を補った。4セグメント利益の単純合計2,378億円の約3割 | その海外の増益は販売単価、つまり市況によるもので、会社が制御できない。営業利益に占める割合が高まるほど利益のぶれが大きくなる |
| 営業CFは2026年3月期に4,518億円。10期とも営業CFはプラス | 都市ビジネスは97億円(-143億円)。パークハイアット東京のリニューアル費用が理由と短信にある。不動産は主力ではない |
ガスと電力のインフラという事業そのものが10年後に消える可能性は低いと考えられます。一方で、国内の都市ガス販売量は減少方向にあり、利益の成長余地を海外(市況連動)に求める構図になっています。国内の量の減少が10年続いた場合に、導管事業の収益性がどうなるかは、取得した短信の範囲では分析できていません。
3. 10期の業績推移 — 増収増益の打率
| 期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017/03 | 1,587,085 | 58,365 | 55,688 | 53,134 | 115.09円 |
| 2018/03 | 1,777,344 | 116,302 | 111,546 | 74,987 | 164.12円 |
| 2019/03 | 1,962,308 | 93,704 | 89,386 | 84,555 | 187.60円 |
| 2020/03 | 1,925,235 | 101,508 | 102,735 | 43,382 | 98.07円 |
| 2021/03 | 1,765,146 | 77,675 | 70,500 | 49,505 | 112.26円 |
| 2022/03 | 2,154,860 | 127,525 | 136,481 | 95,702 | 217.67円 |
| 2023/03 | 3,289,634 | 421,477 | 408,846 | 280,916 | 646.99円 |
| 2024/03 | 2,662,420 | 217,143 | 222,766 | 165,481 | 401.09円 |
| 2025/03 | 2,636,809 | 133,090 | 113,599 | 74,194 | 192.22円 |
| 2026/03 | 2,834,749 | 197,677 | 193,701 | 226,857 | 654.76円 |
| 2027/03(会社予想) | 2,947,000 | 186,000 | 173,000 | 137,000 | 418.07円 |
単位は百万円(EPSのみ円)。9回の前年比較で、増えた回数は次のとおりです。
| 項目 | 増加した回数 | 打率 | 減少した期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5回 / 9回 | 5割5分 | 2019年3月期(-1.9%)、2020年3月期(-8.3%)、2024年3月期(-19.1%)、2025年3月期(-1.0%) |
| 営業利益 | 5回 / 9回 | 5割5分 | 2019年3月期(-19.4%)、2021年3月期(-23.5%)、2024年3月期(-48.5%)、2025年3月期(-38.7%) |
| 純利益 | 6回 / 9回 | 6割7分 | 2020年3月期(-48.7%)、2024年3月期(-41.1%)、2025年3月期(-55.2%) |
| EPS | 6回 / 9回 | 6割7分 | 同上 |
| 1株配当 | 5回 / 9回(据え置き4回) | 減配は0回 | なし |
読み取れることは4つあります。
- 営業利益の打率は5割5分です。 大きく増えた年(2018年+99.3%、2022年+64.2%、2023年+230.5%、2026年+48.5%)と大きく減った年が交互に来ており、利益は年ごとの振れが大きい会社です。振れ方が大きい分、年ごとの利益に配当を連動させると配当も大きく振れます。
- 2023年3月期は突出しています。 売上高3.29兆円(+52.7%)、営業利益4,215億円(+230.5%)、純利益2,809億円(+193.5%)。翌2024年3月期に営業利益は-48.5%、2025年3月期にさらに-38.7%と、2年かけて元の水準へ戻っています。2023年3月期の営業利益が突出した要因を、本記事で取得した短信の範囲で特定することはできませんでした(原燃料価格の高騰期だったことは確認できる状況ですが、原料費調整制度のタイムラグが何億円寄与したかを示す記載は見つかっていません)。
- 2026年3月期は営業利益+48.5%、経常利益+70.5%に対し、純利益は+205.8%です。 純利益の伸びだけが突き抜けている理由は、§4で見る特別利益です。
- 2027年3月期の会社予想は、売上高+4.0%、営業利益-5.9%、経常利益-10.7%、純利益-39.6%、EPS-36.1%です。 営業利益の減少は小さく、純利益の減少が大きい。この差は、2026年3月期にあった特別利益の剥落が主因という整理になります。営業利益が減る理由そのもの(原燃料や為替の前提は原油71.41ドル→85ドル、為替150.67円→155円)は、短信の前提から読み取れる範囲では特定できませんでした。
過去の数値が遡及修正されている(2件)
古い短信の数字をそのまま並べると、現在の開示と食い違う系列になります。本記事は、後年の開示(現在の会社の見解)に揃えた系列を使い、修正前後を示します。
| 期 | 項目(百万円) | 当時の短信 | 遡及適用後 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 売上高 | 2,145,197 | 2,154,860 | +0.5% |
| 営業利益 | 117,777 | 127,525 | +8.3% | |
| 純利益 | 88,745 | 95,702 | +7.8% | |
| EPS | 201.84円 | 217.67円 | +7.8% | |
| 2024年3月期 | 売上高 | 2,664,518 | 2,662,420 | -0.1% |
| 営業利益 | 220,308 | 217,143 | -1.4% | |
| 経常利益 | 228,179 | 222,766 | -2.4% | |
| 純利益 | 169,936 | 165,481 | -2.6% | |
| EPS | 411.88円 | 401.09円 | -2.6% | |
| 営業CF | 331,210 | 316,323 | -4.5% |
- 2022年3月期は、2023年3月期の短信に「会計方針の変更に伴い遡及適用が行われたため、遡及適用後の数値を記載」とあるだけで、変更の中身は取得した短信の範囲では特定できませんでした。営業利益と純利益が約8%上方に修正されています。
- 2024年3月期は、2025年3月期の短信p17の注記によると、米国連結子会社の会計基準をIFRSから米国会計基準へ変更し、遡及適用したものです。遡及適用前に比べて営業利益-3,165百万円、経常利益-5,413百万円、純利益-4,455百万円です。
注意点が2つあります。第一に、2021年3月期から2022年3月期の前年比較は基準が混ざっています。 2021年3月期は2022年3月期の当時の短信の前期列、2022年3月期は遡及適用後の値だからです。表の営業利益+64.2%は、修正前の値同士なら+51.6%(117,777÷77,675)になります。第二に、配当性向も修正後のEPSで割ると変わります(2022年3月期は29.9%、修正前のEPSなら32.2%)。どちらの修正も、10年の傾向(年率や、配当が利益に追随していないこと)を変える大きさではありません。
また、2008〜2016年3月期の流れ(§5の一部)は、短信を取得しておらず二次情報(IR BANK)のみに基づいています。
4. ★増配の原資はどこから来ているか — 配当は利益に連動せず、階段で上がる
ここが記事の中心です。1株配当を「利益 ÷ 株数 × 配当性向」に分解すると、東京ガスはNTTやKDDIの長期記事とは違う形をしています。
1株配当 = 利益 ÷ 株数 × 配当性向
2017年3月期から2026年3月期の9年間の変化は次のとおりです。
| 要素 | 2017年3月期 | 2026年3月期 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 純利益 | 53,134百万円 | 226,857百万円 | 4.27倍 |
| 期中平均株式数 | 461,674,618株 | 346,474,789株 | 0.75倍(1.33倍の押し上げ) |
| EPS | 115.09円 | 654.76円 | 5.69倍 |
| 配当性向 | 47.8% | 16.8% | 0.35倍 |
| 1株配当 | 55円 | 110円 | 2.00倍 |
4.27 × 1.33 ≒ 5.69(EPS)、5.69 × 0.35 ≒ 2.00(1株配当)です。利益と株数減で5.7倍に膨らんだEPSに対し、配当は2.0倍しか引き上げていません。 配当性向が0.35倍に下がった分だけ、利益の伸びが配当に回らなかったことになります。
配当は「利益連動」ではなく「階段型」
10期の1株配当は 55 → 55 → 60 → 60 → 60 → 65 → 65 → 70 → 80 → 110円です。EPSは 115 → 164 → 188 → 98 → 112 → 218 → 647 → 401 → 192 → 655円と大きく振れており、二つの推移は連動していません。
- 純利益が最大だった2023年3月期(営業利益+230.5%)は増配なし(65円据え置き、配当性向10.0%)。
- 純利益が-55.2%、営業利益が-38.7%だった2025年3月期は10円の増配(70円→80円、配当性向は前期の17.5%から41.6%へ上昇)。
- 利益が前期のほぼ半分(-48.7%)に落ち込んだ2020年3月期は据え置きで、そのぶん配当性向は61.2%まで上がりました。
利益が跳ねた年は配当に回さず、減った年も下げない、という運用です。減配のない階段である一方、利益の増減がそのまま配当に反映される構造ではありません。 利益の振れが大きい(§3)会社が、配当を滑らかに保つための運用だと読めます。
方針の文言が書き換わった
短信の「利益配分に関する基本方針」は次のように変わっています。
| 時期 | 文言(要旨) |
|---|---|
| 2022年3月期〜2024年3月期の短信 | 安定配当を維持しつつ、中長期の利益水準を総合的に勘案し、成長に合わせて緩やかな増配を実現していくことを基本とする |
| 2025年3月期の短信 | 緩やかな増配を実現していく方針。累進配当の継続を前提に(配当45円の期末配当) |
| 2026年3月期の短信 | 中長期的な1株当たり利益の成長に合わせた増配を株主還元の中核と位置付け、累進配当により、成長の成果を安定的に還元していく |
「緩やかな増配」という表現が消え、「1株当たり利益の成長に合わせた増配」に変わりました。2026年3月期の配当は80円から110円へ+37.5%(+30円)と大きく増額されており、方針の文言変更と実際の増額の大きさは符合します。ただし、何をもって「1株当たり利益の成長」とするか(基準年、一過性利益の扱い)、配当性向やDOEの数値目標は、取得した短信に記載がありません。 EPSは2026年3月期の654.76円から、会社予想の2027年3月期は418.07円へ-36.1%の見通しですが、配当は120円(+9.1%)の計画です。この予想は「EPSに合わせた増配」の文言とそのままは整合しません。EPSの成長を、一過性を除いた水準で測っているのかどうかは、取得した資料では判断できませんでした。
株数の減少は直近3期に集中している
自己株式を除く期末株数(発行済株式数−自己株式数、短信の値から計算)は、次のように動きました。
| 期末 | 発行済株式数 | 自己株式 | 自己株式を除く株数 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 460,571,259 | 1,365,308 | 459,205,951 | — |
| 2023年3月期 | 434,875,059 | 1,455,205 | 433,419,854 | 2017年比-5.6% |
| 2024年3月期 | 400,452,159 | 1,436,376 | 399,015,783 | -7.9% |
| 2025年3月期 | 388,893,859 | 19,370,015 | 369,523,844 | -7.4% |
| 2026年3月期 | 371,090,859 | 37,670,958 | 333,419,901 | -9.8% |
2017年3月期から2023年3月期の6年間の減少は5.6%にとどまり、25%減のほとんどは2024年3月期以降の3年間に集中しています。 自己株式取得額(IR BANK、二次情報)は、2022年3月期37.9億円、2023年3月期160億円から、2024年3月期1,130億円、2025年3月期1,205億円、2026年3月期2,001億円へ増えました。短信p4でも2026年3月期の取得は2,000億円と記載されています。発行済株式数も減っているので、取得した株式の一部は消却されたと読めますが、消却の決議内容は取得した資料では確認していません。
2026年3月期の利益は何が入っていたか
2026年3月期の純利益2,269億円は、利益の段階を追うと次のようになります(短信p5・p7)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業利益 | 1,976億円 |
| 経常利益 | 1,937億円 |
| 特別利益:固定資産売却益 | 487億円 |
| 特別利益:投資有価証券売却益 | 119億円 |
| 特別利益:為替換算調整勘定取崩益 | 680億円(計1,286億円) |
| 特別損失:減損損失 | 301億円(ほか特別損失あり) |
| 税金等調整前当期純利益 | 2,891億円 |
| 純利益(親会社帰属) | 2,269億円 |
税金等調整前当期純利益は経常利益より約954億円多く、純利益2,269億円は経常利益1,937億円を上回っています。 減損の対象資産は、本記事の資料の範囲では特定できませんでした。為替換算調整勘定取崩益680億円は現金を伴う収益ではなく、同じ項目の前年同期の反動は四半期記事で扱っています。
2026年3月期の配当性向16.8%は、この膨らんだ純利益が分母にあるための低さです。会社予想の2027年3月期(EPS 418.07円、配当120円)で28.7%、これが一過性を除いた感覚に近いと考えられますが、特別損益を除いたEPSを会社は示していないため、確定した値ではありません。
この3要素はどう続くか
- 利益成長: 打率5割5分で振れが大きく、年率の起点・終点がともに偏っています。10年の実力として使える伸びは、営業利益で「谷から3.4倍、ピークからは約+3%」というのが実態です。
- 株数減(自社株買い): 2026年3月期の自社株買い約2,000億円と配当約338億円の合計は約2,338億円で、純利益2,269億円とほぼ同額、フリーキャッシュフロー2,449億円ともほぼ同額です。同規模を続けるには同規模のFCFが必要で、FCFが負だった期は10期中4期あります(§6)。
- 配当性向: NTTのように「天井が近い」状態ではなく、2027年3月期の予想で28.7%と余力があります。筆算として、2026年3月期末の自己株式を除く株数(約3.33億株)に120円を掛けた配当総額は約400億円で、過去10期の純利益は最小の2020年3月期(434億円)でも上回ります。ただし純利益が1,000億円を下回った7期(2017〜2022年3月期と2025年3月期)に当てはめると、配当性向は42〜92%になります(株数は将来変わる前提の筆算)。配当性向の低さは安心材料ですが、利益が過去の低位に戻る局面では、余力はそこまで大きくありません。
5. 不況期に何が起きたか
営業利益の減益局面と、配当の対応を並べました。2008〜2016年3月期は短信を取得しておらず、二次情報(IR BANK)のみです。
| 局面 | 営業利益の変化 | 配当の対応 | 配当性向 | 回復 |
|---|---|---|---|---|
| 2009年3月期(リーマン、二次情報) | 700億円→652億円(-6.9%) | 当期の配当は確認できず。2010〜2012年3月期は45円(併合調整後)で据え置き | 未確認 | 2010年3月期に852億円で回復(1年) |
| 2012年3月期(二次情報) | 1,225億円→771億円(-37.1%)。要因は特定できず | 45円据え置き | 未確認 | 2013年3月期に1,456億円(1年) |
| 2017年3月期 | 約1,920億円→584億円(-69.6%、二次情報)。要因は特定できず | 55円据え置き | 47.8% | 直前ピークを超えたのは2023年3月期(トラフから6年) |
| 2020年3月期 | 営業利益+8.3%、純利益-48.7%(433億円)。要因は取得資料から特定できず | 60円据え置き | 61.2%(10期で最高) | 2022年3月期に超える |
| コロナ期の2021年3月期 | 1,015億円→777億円(-23.5%) | 60円据え置き | 53.4%(二次情報) | 2022年3月期に1,275億円で回復(1年) |
| 2024年3月期 | 4,215億円→2,171億円(-48.5%)。2023年3月期のピークからの反動 | 増配(65円→70円) | 17.5% | 2026年3月期の1,977億円も、2024年3月期の2,171億円には未達 |
| 2025年3月期 | 2,171億円→1,331億円(-38.7%)(遡及修正後) | 増配(70円→80円) | 17.5%→41.6% | 同上 |
取得した範囲で、減益局面での減配はありません。 コロナ期の営業利益-23.5%、2017年3月期の-69.6%でも配当は据え置きでした。
読み取れることは3つあります。
- 据え置きの局面では、配当性向が上がって耐えていました。 2017年3月期は47.8%、2020年3月期は61.2%、2021年3月期は53.4%。この水準まで上がっても減配はしなかったので、会社は配当性向が50〜60%台に上がることを許容してきた実績があります。
- 営業利益が減った年の増配は、2019年3月期(-19.4%、ただし純利益は+12.8%)、2024年3月期、2025年3月期の3回あります。 2024年3月期と2025年3月期は、2023年3月期の突出した利益の後で配当性向が17.5%と低かったため、減益でも増配の余地がありました。2025年3月期の配当性向は41.6%まで上がっています。
- リーマン期のデータは薄い。 2009年3月期の営業利益の減益は-6.9%と小さく、2009年3月期の配当と、2008〜2016年3月期の短信は取得できていません。この時期の実績は「検証不十分」と書くのが正確です。
2012年3月期(-37.1%)、2017年3月期(-69.6%)の減益の要因は、取得した資料からは特定できませんでした。いずれも原燃料価格や為替の要因の可能性はありますが、確認していません。
6. 財務の耐久力
| 期 | 営業CF | 投資CF | FCF(営業CF+投資CF) | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2017/03 | 238,734 | -204,873 | 33,861 | 49.4% |
| 2018/03 | 259,738 | -247,162 | 12,576 | 48.7% |
| 2019/03 | 141,306 | -203,462 | -62,156 | 47.7% |
| 2020/03 | 306,296 | -270,798 | 35,498 | 45.2% |
| 2021/03 | 255,574 | -295,911 | -40,337 | 42.1% |
| 2022/03 | 145,227 | -224,656 | -79,429 | 39.3% |
| 2023/03 | 487,030 | -203,522 | 283,508 | 43.5% |
| 2024/03 | 316,323 | -362,014 | -45,691 | 43.4% |
| 2025/03 | 363,120 | -263,526 | 99,594 | 44.8% |
| 2026/03 | 451,837 | -206,934 | 244,903 | 44.1% |
(百万円。FCFは短信の営業CFと投資CFから筆者が計算。2024年3月期の営業CFは遡及修正後)
- 営業CFは10期ともプラスですが、FCFがマイナスだったのは10期中4期(2019年、2021年、2022年、2024年3月期)です。10期の累計FCFは約4,823億円で、2023年3月期の2,835億円と2026年3月期の2,449億円の2期で合計約5,284億円で累計を上回り、残る8期の合計は約-461億円です。FCFは設備投資の水準次第で振れやすく、2026年3月期の2,449億円は常態ではありません。
- 2026年3月期の投資CF(-2,069億円)には、固定資産や投資有価証券の売却収入が含まれている可能性があります。 売却益が合計606億円出ているためですが、売却収入の額は取得した資料では確認できていません。FCF 2,449億円がそのまま継続的な水準かどうかは、この点で割り引く必要があります。設備投資は短信p7で3,088億円です。
- 2026年3月期の配当約338億円に対し、営業CFは約13倍あります。 一方、自己株式取得(約2,000億円)まで含めた還元約2,338億円に対しては約1.9倍です。配当だけなら十分な裏付けがありますが、自社株買いを同規模で続けるにはFCFが頼りです。
自己資本比率・有利子負債・D/Eレシオ
自己資本比率は、49.4%(2017年3月期)から2022年3月期の39.3%(当時の短信は38.1%、遡及適用後に39.3%)まで下がり、2026年3月期は44.1%まで戻りました。
有利子負債(短信の貸借対照表から、短期借入金・1年内償還社債・1年内返済長期借入金・社債・長期借入金を足し上げ)は、次のとおりです。
| 期末 | 有利子負債 | 自己資本 | D/Eレシオ |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 約0.65兆円(IR BANK、二次) | — | — |
| 2022年3月期 | 約1.17兆円(IR BANK、有利子負債比率93.7%) | — | 約0.94倍(二次) |
| 2025年3月期 | 1,308,007百万円 | 1,725,446百万円 | 0.758倍 |
| 2026年3月期 | 1,209,669百万円 | 1,717,472百万円 | 0.704倍 |
2026年3月期末の内訳は、短期借入金10,244百万円、1年内償還社債10,017百万円、1年内返済長期借入金53,933百万円、社債641,062百万円、長期借入金494,413百万円です。D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は、自己資本比率とあわせて見ると「資産の4割強が自前、自前資本の0.7倍を借りている」という状態です。
- 2025年3月期末から2026年3月期末の有利子負債の減少(約983億円): 短信p4の財務CFによると、長期借入金の返済2,665億円に対し長期借入による調達が1,703億円で、差し引き約962億円の返済超です。つまり借入を返しながら、同時に自社株買い2,000億円と配当338億円を出していることになります。営業CFがその原資です。
- 2017年3月期(約0.65兆円)から2022年3月期(約1.17兆円)の有利子負債の増加: この期間のFCFの合計は約-1,000億円で、これだけでは約5,200億円の増加を説明できません。増加の要因は、取得した資料では特定できませんでした。
- 自己資本1.72兆円に対して、鉱業権(海外シェールガス権益)が6,154億円、為替換算調整勘定が1,430億円あります(2026年3月期末の貸借対照表)。鉱業権は自己資本の約36%に当たり、資源価格や権益評価が下がった場合の減損は自己資本に直接響きます。ただし、2026年3月期の減損301億円の対象が何かは、確認できていません。
7. 10年スパンで何が変わりうるか
都市ガス販売量は縮小方向にあります。 2026年3月期は11,175百万m3(-0.4%)、2027年3月期の会社見通しは10,790百万m3(-3.4%)。需要が縮む国内事業を、電力販売の拡大(28,021百万kWh、+19.5%)と海外で補う構造です。
原燃料価格・為替は個社の努力で変えられません。 2027年3月期の会社前提は為替155円/ドル、原油85ドル/バレルです。海外のシェールガス事業は販売単価に連動し、国内も原料費調整制度を通じてコストが料金に反映されますが、反映には数か月の遅れが生じます。2023年3月期の営業利益4,215億円という突出は、この種の市況の局面で生じた可能性がありますが、本記事の資料の範囲では寄与の大きさを確認できていません。
規制と制度の枠が事業を決めます。 導管(ネットワーク)事業は規制色が強く、料金の一部は国の認可が必要です。電力・ガスの小売全面自由化以降、電力会社との顧客獲得競争にさらされている点も構造的な制約です。
中東情勢が調達に影響しうる点は、会社も認めています。 短信p17は、ホルムズ海峡内のカタール等からのLNG長期契約は有していないが、調達への影響は予測困難としています。
脱炭素の方向性が長期の前提を変えます。 都市ガス(天然ガス)は、電化や再エネの拡大が進めば、長期の需要見通しが変わりえます。「26-28年度中期経営計画」とROIC管理は、資本配分を見直す方向を示しますが、10年後の事業ポートフォリオまでは、取得した資料からは判断できません。
8. 株主還元方針と、そこから読めること
明文の方針は、2026年3月期の短信にある「中長期的な1株当たり利益の成長に合わせた増配を株主還元の中核と位置付け、累進配当により、成長の成果を安定的に還元していく」です(詳細は§4の表)。数値目標(配当性向、DOE、総還元性向)は、取得した短信には記載がありませんでした。IR BANKが算出する純資産配当率(連結)は2013年3月期の2.3%から途中1.8%まで下がり、2026年3月期は2.2%です(二次情報で、会社の目標値ではありません)。
実績の配当性向は、2017年3月期47.8%、2018年3月期33.5%、2019年3月期32.0%、2020年3月期61.2%、2021年3月期53.4%、2022年3月期29.9%、2023年3月期10.0%、2024年3月期17.5%、2025年3月期41.6%、2026年3月期16.8%と、10.0〜61.2%で振れています。一定の配当性向を目標とした配当ではなく、配当額を決めた結果として配当性向が動いていることが、数字から読めます。
会社の行動様式として読めることは3つです。
- 減配をしない。 取得した範囲で10期とも維持か増配です(累進配当の文言とも整合)。
- 利益が跳ねても連動させず、段階的に引き上げる。 2023年3月期は増配なし、2026年3月期は+30円と、引き上げのタイミングは利益と同時とは限りません。
- 直近は自社株買いを大幅に増やした。 2024年3月期以降の取得額は、1,130億円、1,205億円、2,001億円と上がっています。
連続増配年数は、会社が公表している値を取得資料から確認できていません。 本記事は短信の配当額から自分で数え、2023年3月期は据え置き(65円→65円)のため、2024年3月期から3期連続(65→70→80→110円)としました。それ以前に増配した期(2019年3月期、2022年3月期)はありますが、連続では途切れています。2027年3月期の予想120円が実現すれば4期連続です。
9. 長期保有を取り崩す可能性がある要因
「10年持つつもりで買ったが、途中で判断を変える必要が出てくる」条件です。
自社株買いの規模が縮むとき。 株数減は直近3期の増配ペースを下支えしてきた要素で、2026年3月期の約2,000億円はFCFとほぼ同額でした。FCFが投資CFの増加で細れば、同規模の継続は難しくなります。
EPSが低位に戻り、配当120円の性向が40%を超えるとき。 会社予想のEPS 418円では28.7%ですが、過去10期のEPSには100〜200円台の期が6期あります(株数は当時のほうが多かったので単純比較はできません)。
海外の利益が縮むとき。 海外セグメントは2026年3月期に738億円(+510億円)まで増え、4セグメント利益の約3割を占めました。この増益が販売単価(市況)によるものである以上、市況が反転すれば全社利益に直接響きます。
一過性利益の依存が続くとき。 2026年3月期の還元は、純利益に特別利益1,286億円を含みます。特別利益のない年に同規模の還元を続けることはできません。
方針の運用が不透明なままのとき。 「1株当たり利益の成長に合わせた増配」の基準が示されないまま、一過性込みのEPSが基準になるなら、配当の予見性は文言ほど高くありません。
10. リスク
記録の継続そのものが判断を歪める可能性。 「10期で減配なし」「累進配当」という記録は、会社にとって守る動機が強く働きます。実績として確認できるのは、減益期の据え置きまでです。EPSの成長と連動させる文言に改まった以上、利益が構造的に下振れした場合にこの記録がどう扱われるかは、まだ試されていません。
利益の質のリスク。 2026年3月期は、税金等調整前で約954億円(特別利益1,286億円−減損301億円ほか)の特別損益が入っており、継続しない可能性が高いものです。経常利益1,937億円に対し純利益が2,269億円と上回っていること自体が、その規模を示しています。実績PER9.1倍、ROE 13.2%は一過性込みで、会社予想EPSなら14.2倍になります。
市況連動のリスク。 営業利益の打率は5割5分、2023年3月期は+230.5%、翌2期で-48.5%、-38.7%でした。海外は市況連動です。
指標が見かけ上低く出るリスク。 10年の利益成長率(年率14.52%)は谷からの数字で、ピーク対比では約+3%です。成長の持続性をこの数字で読むと過大評価になります。
国内需要縮小のリスク。 都市ガス販売量は2027年3月期の見通しが-3.4%。国内の主力事業の量が縮む中で、導管の資産をどう維持するかは中長期の課題です。
海外資産のリスク。 鉱業権6,154億円は自己資本の約36%に当たり、評価の見直しは自己資本に響きます。2026年3月期の減損301億円の対象は確認できていません。
本記事のデータの制約。 2017〜2026年3月期の数値は決算短信から取っています(7本。2019年3月期・2021年3月期・2022年3月期などは翌年の短信の前期列から取得)。2008〜2016年3月期の流れ(リーマン期、2012年3月期、2017年3月期の減益)はIR BANKの二次情報のみで、短信は未取得です。2022年3月期の遡及修正の中身、2023年3月期の突出の要因、2012年・2017年・2020年の減益の要因、2017〜2022年3月期の有利子負債増加の要因は、特定できていません。
11. まとめ — どういう投資家に向くか
配当の下がらなさは、10期の実績で確認できます。 減益期も維持か増配、2024年3月期から3期連続の増配(自己計算)、会社予想は120円でさらに増配。配当性向は28.7%(予想)と余力があり、営業CFは配当の約13倍、D/Eレシオは0.70倍と、財務も2022年3月期のピークから改善しました。
一方で、見かけの数字が良く出ている点は割り引く必要があります。 EPSの伸び(5.7倍)は、谷の起点、一過性の特別利益1,286億円、株数の25%減の産物です。営業利益は10年前のピークとほぼ同水準です。配当は階段型で、方針が「1株当たり利益の成長に合わせた増配」に変わった今、何を成長とみなすかは示されていません。
| 論点 | Aと見るなら | Bと見るなら |
|---|---|---|
| 2026年3月期の利益と還元(純利益2,269億円、還元約2,338億円) | 海外利益と資本効率の改善で、利益の水準が一段上がった。減益予想(純利益1,370億円)でも配当性向は28.7%で、還元余力は残る | 特別利益1,286億円とFCF2,449億円に支えられた突出した年。特別利益のない年に同規模の自社株買いは続かず、増配の追い風(株数減)は止まる |
| 配当方針(累進配当、EPS成長に合わせた増配) | 10期で減配なし。配当性向が低く、利益が過去の低位に戻っても維持できる余地があり、文言の変更は還元の積極化を示す | 数値目標がなく、EPSの基準も不明。階段型の引き上げは経営判断次第で、利益の低位への回帰が続けば据え置きが長引く |
| 10年の利益成長(谷から3.4倍、ピークからは約+3%) | 海外の収益源が加わり、国内の変動を補う構造に変わった。ピーク対比で横ばいでも、財務は改善している | 利益は市況で大きく振れ、10年で水準は変わっていない。成長ではなく振れを見ている可能性が高い |
Aと見るなら、減配しない大型インフラ企業として、長期保有に向く余地があります。Bと見るなら、利益の質と市況依存を割り引くと、利回り2.02%(会社予想ベース)に見合う成長が確認できず、長期保有には向かないという結論もありえます。 本記事はどちらが正しいかを決めるものではなく、分かれ目が「2026年3月期の水準を新しい基準とみるか、一過性とみるか」にあることを示すのが目的です。
この記事は年に1回、通期決算の発表後に更新します。次回は2027年4〜5月の通期決算後で、確認することは次の4つです。2027年3月期の純利益が会社予想1,370億円に対してどこに着地したか、配当が120円(4期連続増配)になるか、2028年3月期の配当予想はいくらか、方針文言に数値目標が加わるか。あわせて、本記事で特定できなかった、減損301億円の対象と、2026年3月期の売却収入の額を、有価証券報告書まで遡って確認します。
この記事の見立てが外れたと判断する条件
以下のいずれかが起きた場合、本記事の整理は前提から崩れます。買うかどうかを判断する際は、 強気材料と同じだけこちらも見てください。
- 自己株式取得が止まる、またはフリーキャッシュフロー(営業CF−投資CF)が2期連続でマイナスになった場合。10期のうちFCFが負だったのは2019年3月期・2021年3月期・2022年3月期・2024年3月期の4期あり、2026年3月期の2,449億円という水準が常態でないことは既に記録に出ている。株数減という増配の追い風が止まり、「還元は利益とキャッシュの範囲」という本記事の整理の前提が崩れる。
- 2027年3月期のEPSが300円を下回る(配当120円の配当性向が40%超になる)場合。会社予想は418.07円で性向28.7%。ここまで下がると、配当性向の低さという余力が減益年でも使えるという見立てが外れる。参考として、2026年3月期末の自己株式を除く株数約3.33億株に120円を掛けた配当総額は約400億円で、過去10期の純利益の最小値(2020年3月期の434億円)の約92%に相当する(株数は将来変わる前提の筆算)。
- 減配、または2028年3月期の配当予想が120円を下回った場合。10期で減配がなかったことと「累進配当」の文言が、減益年でも維持されるという見立ての柱であり、これが崩れる。
- 自己資本比率が40%を割り込む、またはD/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)が0.9倍を超えた場合。2022年3月期のピーク局面(自己資本比率39.3%、有利子負債比率93.7%は二次情報)に戻ることを意味し、2026年3月期にかけての財務改善が一過性だったことになる。
- 海外セグメントの営業利益(2026年3月期738億円)が、国内のエネルギー・ソリューション(同1,502億円)を相殺できない水準まで縮小し、全社の営業利益が2027年3月期の会社予想1,860億円を大きく下回った場合。利益の下振れが2期以上続けば、増配を支える利益水準の前提が外れる。
よくある質問
- 東京ガスは減配したことがありますか?
- 本記事が短信で確認できた2017年3月期以降の10期に、減配はありません。併合後換算の年間配当は55円から110円へ、55→55→60→60→60→65→65→70→80→110円と推移しました。営業利益が-23.5%となったコロナ期の2021年3月期は60円据え置き、-38.7%となった2025年3月期は70円から80円へ増配です。2008〜2016年3月期は二次情報(IR BANK)で、2010〜2012年3月期の45円据え置きまでは確認できましたが、2009年3月期の配当は取得資料で確認できていません。
- 東京ガスの配当は100株でいくらになりますか?
- 2027年3月期の会社予想は年間120円(中間60円・期末60円)で、100株なら年間12,000円(中間・期末とも6,000円)です。前期(2026年3月期)の実績は年間110円(中間50円・期末60円)で、期初予想80円から大幅に増額されました。これは会社予想であり、確定ではありません。
- 2026年3月期は純利益が前期の約3倍になったのはなぜですか?
- 純利益は742億円から2,269億円へ増えました(+205.8%)。経常利益が1,136億円から1,937億円へ+70.5%増えたことに加え、特別利益として固定資産売却益487億円、投資有価証券売却益119億円、為替換算調整勘定取崩益680億円(計1,286億円)が入り、減損損失301億円が差し引かれたためです。会社は2027年3月期の純利益を1,370億円(-39.6%)と予想しており、2026年3月期の水準は特別利益を含む一過性の高さです。減損の対象資産は、本記事の資料の範囲では特定できませんでした。
参考文献・引用元
- 01東京瓦斯株式会社「2018年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2018年4月27日開示。2017年3月期(併合後基準のEPS・配当性向)と2018年3月期の業績、営業CF・投資CF、自己資本比率、配当の状況、期末発行済株式数・自己株式数、期中平均株式数(FY2017の461,674,618株)を参照。 / 2018/04/27 開示
- 02東京瓦斯株式会社「2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2020年4月28日開示。2019年3月期・2020年3月期の業績、営業CF・投資CF、配当の状況(2020年3月期の配当性向61.2%)、株数、2020年3月期の営業利益+8.3%・純利益-48.7%を参照。 / 2020/04/28 開示
- 03東京瓦斯株式会社「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2022年4月27日開示。2021年3月期の業績(前期列)と2022年3月期の当時の値(営業利益117,777、純利益88,745、EPS201.84円)、営業CF・投資CF、配当の状況(期末配当30円→35円)を参照。 / 2022/04/27 開示
- 04東京瓦斯株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2023年4月26日開示。2023年3月期の業績と、会計方針の変更に伴う遡及適用後の2022年3月期の前期列(営業利益127,525、純利益95,702、EPS217.67円、売上2,154,860)を参照。変更内容の詳細は短信の記載の範囲では特定できなかった。 / 2023/04/26 開示
- 05東京瓦斯株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年4月25日開示。2024年3月期の当時の値(売上2,664,518、営業利益220,308、経常利益228,179、純利益169,936、EPS411.88円、営業CF331,210)と、配当の状況・株数(2024年3月期の消却による発行済株式数の減少)を参照。 / 2024/04/25 開示
- 06東京瓦斯株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2025年4月28日開示。遡及適用後の2024年3月期の前期列(売上2,662,420、営業利益217,143、経常利益222,766、純利益165,481、EPS401.09円、営業CF316,323)と、2025年3月期の実数、配当の状況、利益配分方針の文言、p17の注記(米国連結子会社の会計基準をIFRSから米国会計基準へ変更し遡及適用)を参照。 / 2025/04/28 開示
- 07東京瓦斯株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2026年4月28日開示。2026年3月期の業績、特別利益(固定資産売却益・投資有価証券売却益・為替換算調整勘定取崩益)・減損損失・税金等調整前当期純利益、セグメント別営業利益、財務CF(自己株式取得・配当・借入)、貸借対照表(有利子負債の内訳・自己株式・鉱業権)、2027年3月期の会社予想と前提、配当の状況、利益配分方針の文言、株数、p17の中東情勢の記載を参照。 / 2026/04/28 開示
- 08IR BANK「東京瓦斯(9531)」「決算まとめ」「配当金の推移」
二次情報(有効数字が丸められている)。2026年10月9日の株価・時価総額、2008〜2016年3月期の営業利益の流れ(リーマン期・2012年3月期・2017年3月期の減益の位置づけ)、2010〜2012年3月期の配当、自己株式取得額、2021年3月期の配当性向、純資産配当率、有利子負債(2017年3月期・2022年3月期)の確認にのみ使用。2017〜2026年3月期の本文数値は短信から取っている。